ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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題名長い…。


第14話 金色(こんじき)紫紺(しこん)

1つの丸テーブルを中心にキリトとアスナ、サーシャにユイ…そして、軍の幹部であるというユリエールが座っている。

『おり言ってのお願い』と聞き、まあ話を聞くだけならと2人は思い、サーシャの許諾も得て、現在、この場にいる。

まず、話を始める前にユリエールは頭を下げて、サーシャに謝罪した。

 

「私ども軍の部下が無頓着で…その横暴を見逃してしまい、申し訳ありません」

 

「いえいえ…。この2人が助けてくれたから…もういいですよ」

 

「…本当にすみません」

 

「どうして軍は今…こんなにも統制が取れてないんだ?コーバッツの時だって…」

 

キリトはそう言って、膝の上で拳を握った。

目の前で死んでいったコーバッツのことを考えてしまい、キリトはあの時、いかに自分が無力だったか痛感させられた。

 

「…現在、軍は2つの二大勢力が覇権を競っています。1人はシンカー、そして…あなた方はご存知でしょう。もう1人はキバオウです」

 

「…あいつか」

 

第1層攻略の時、一緒にレイドを組み、キリトを散々罵倒したプレイヤーだ。

 

(あんな奴が軍のトップとはな…)

 

「シンカーは私の上司みたいなものです。そのシンカーなのですが…キバオウたちによって、ダンジョンの奥深くに閉じ込められてしまったんです…。私一人の力ではどうにも出来なくて…」

 

切なげに語っているうちに、ユリエールの目に涙が溜まっていく。

 

「それでお願いに来たんです‼︎野蛮人同然な我が軍を…一瞬にして退けた2人に…!」

 

「で、でも…私たちは…」

 

アスナはその要望に応えることに、少し迷いを感じていた。

今、キリトとアスナは特例で許された休暇中の身だ。

ここで厄介ごとに関わって、それがヒースクリフや血盟騎士団のメンバーに知られてしまったら、面倒なことになってしまう。

だが、断ることも簡単に出来ない。

どうしようかと思っていると、不意にユイが口を開いた。

 

「大丈夫…だよ。この人、優しい…。だから、助けて…あげて」

 

「ユイちゃん…」

 

「…しゃあねえか」

 

キリトは後頭部を掻きながら、立ち上がった。

 

「俺たちも行きますよ、ユリエールさん。そこまで言われたら、断るのも難しいし…」

 

そう言いながら、アスナを見詰めた。

アスナも血盟騎士団の件については諦めがついたか、キリトに笑顔を見せた。

 

「そうだね、キリトくん。困ってる人が目の前にいるのに、放っておくのは酷いよね」

 

「…ありがとうございます‼︎」

 

ユリエールさんは涙目で2人に頭を下げた。

 

「よし、そうと決まれば善は急げだ。早速案内…」

 

「待って‼︎私も行く‼︎」

 

と、ここでユイが声を上げて、いつも以上に駄々をこねてきたのだ。

 

「ユイ、今からパパとママは危ないところに行くんだ。そんなところにユイを連れて行くことは出来ない」

 

「そうだよ、ユイちゃん。ここでサーシャさんと待ってて?」

 

「嫌だ嫌だ‼︎パパとママと一緒にいたい‼︎離れたくないぃ‼︎」

 

アスナのお腹の抱きついて離れようとしないユイ。

どうしようと言いたげなアスナ。

キリトはもう一度溜め息を吐いて、「仕方ないなあ…」と呟くのだった。

 

 

 

 

「えいっ‼︎はああああ‼︎」

 

目の前のキリトくんは黒と青の剣を振り回して、目の前に立ち塞がる大量のコンガを斬り刻んでいく。ソードスキルを使うこともなく、コンガは一撃で倒れて、消えていく。

現在、キリト、アスナ、ユリエールにユイは第1層の裏エリアに来ていた。

地下に広がる、暗闇の迷宮にユリエールが言うシンカーが退避エリアから動けずにいるらしい。

このエリアに来たのは2人も初めてで、少しばかり緊張していた。

それにアスナの傍にはユイがしがみついている。

怖がっているのか…強がっているのか…。どっちか分からないが、余程アスナとキリトの傍から離れたくないようだ。

 

「…すみません、彼ばかりに任せてしまって…」

 

「いいんですよ。あれは一種の病気です」

 

「酷い言い様だなあ。アスナだって同じようなものだろ?」

 

剣を振りすぎたのか、腕をぐるぐる回して解すキリトはそう言い返してきた。

 

「私はか弱い乙女です!」

 

「…ふうん…そうかい…。強がってるのも今のうちだ…ぞ‼︎」

 

そう言うと、アスナの前に未だにビクビクと動くコンガの腕を見せた。

それが見えた瞬間、アスナは「ひえっ‼︎」と、(あわ)れもない声を上げてしまい、キリトに恥ずかしいところを見られてしまう。

 

「やっぱりアスナ、幽霊だけでなくてゲテモノも苦手だな?これ、帰ったら調理して俺に食わせてくれよ」

 

最後まで意地悪なキリトにとうとう堪忍袋の尾が切れたアスナは細剣(レイピア)を素早く抜き、彼の頬すれすれを斬った。

 

「………」

 

ヒュウウウゥ…と良い風の音が響いた気がする。

 

「次やったら…鼻の穴が3個になるからね?」

 

「い、以後気を付けます…」

 

「宜しい」

 

そんなやり取りをしていると、静かな迷宮にユリエールの笑い声が響いた。

すると…。

 

「笑った!」

 

「え?」

 

ユイが『笑った』と言ったのは、もちろんユリエールのことだ。

確かに彼女はここまで1回も笑ってはいなかったが、ユイはそれを気にしていたのだろう。

ユイの言葉1つで、この場の雰囲気が明るくなった気がした。

 

 

 

 

暫く進んでいくと、少し遠いが、前方に白い小部屋が見えた。

見る限り、そこには人影が見えて、ユリエールもいつの間にか小走りになっていた。

 

「ユリエール‼︎」

 

ユリエールの名前を呼ぶ男性の声…。

その声にユリエールさんは涙を溢れさせる。

 

「シンカー‼︎」

 

2人は良かったと思い、お互いに顔を見合わせて笑顔を出した。

だが…。

 

「来ちゃダメだ‼︎この通路には…!」

 

シンカーの言う通り、広い通路の右端に…闇色のオーラが見えた。

狙いはユリエールだ。

 

「ユリエールさん‼︎戻って‼︎」

 

キリトは今からユリエールが回避行動を取っても間に合わないと思い、『覇王剣』を抜いて、ユリエールさんのすぐ側の地面に突き刺した。刺して1秒も経たないうちに、黒いオーラを纏った金色の翼脚がキリトの剣にぶつかった。

その威力にキリトは顔を歪ませる。

 

「ユイちゃん、ユリエールさんのところに!」

 

アスナはユイが巻き込まれないように、ユリエールと一緒に安全エリアへ避難させた。

それからアスナも細剣を抜いて、キリトの隣に立つ。

 

「こいつ…ヤバイかもな…」

 

キリトは腕にまだ鈍く残る痛みを感じつつ、そう呟いた。

今、2人の目の前にいるには見たこともないモンスターだった。

身体からは紫色の胞子状のものが空気に舞っており、身体の約半分は金色、もう半分は黒色になっている。頭には(いびつ)な角が2本、天に向かって立っていた。

 

「アスナ、逃げろ」

 

「逃げろって…キリトくんを置いてなんて…」

 

「アスナも分かってるだろ‼︎ボス名が表示されてないってことは、まだ到達してない層のレベルのモンスターだってことを!今の武器ではやり合えない!」

 

「なら一緒に…!」

 

「俺が奴を引き付けている間にアスナは先に逃げるんだ‼︎俺はどうにかする!」

 

キリトの意志を尊重したいアスナだが、愛するキリトを置いて行くことは出来るはずがなかった。

2人を心配そうに見詰めているユイにアスナは目を一瞬向けたが、すぐに前を向いて、ユリエールとシンカーに叫んだ。

 

「ユイちゃんをお願いします‼︎3人で脱出を‼︎」

 

「お、おい!」

 

「死ぬ時は一緒よ」

 

キリトはアスナの説得を諦めたようで、目の前のモンスターに視線を戻す。

謎のモンスターは金色の翼脚に紫色の粒子を溜め、天に振り上げた。

キリトとアスナはお互いの剣をクロスさせて、防御態勢を作る。

そして、モンスターの翼脚が凄まじい速度で飛んでくる。

一瞬、眩しい光がぶつかった衝撃で起きたが、すぐに防御態勢は崩されてしまい、2人は派手に吹き飛ばされた。

 

「うわあああ‼︎」

 

「ぐあああ‼︎」

 

2人とも壁に叩きつけられ、アスナは武器を手から落としてしまう。

HPもアスナは9割、キリトは5割も消し飛んでしまっている。

 

「あっ……くぅ…」

 

立ち上がることもままならないアスナは顔を上げて、あのモンスターを見る。

奴は足音を一切立てることなく、ゆっくりとキリトの方に歩み寄っている。

キリトは残り半分のHPでも逃げることなく、立ち上がって、二刀の剣を構える。

 

「ここで…終わってたまるか…!」

 

口から紫色の粒子を(よだれ)のように吐き出しつつ、謎のモンスターは高々と咆哮する。咆哮したことで、地下迷宮は何度も反響を繰り返し、2人の耳を刺激する。

 

「うおおおおおおおぉぉぉ‼」

 

キリトも奴に負けないくらいの声を張り上げ、突っ込んでいく。

『覇王剣』を前に出し、一気に突っ込むソードスキル、重突撃SSヴォーパルストライクを発動させる。赤く発光する剣先を頭に突き刺そうとしたが、金色の翼脚がそれを防ぎ、もう片方の翼脚でキリトを掴んで、地面に叩きつける。

 

「がはっ……っ!」

 

翼脚でキリトを抑えながらも、謎のモンスターは口元に紫色の粒子を蓄え、ブレスとして炸裂させようとしていた。

キリトのHPは既に2割を切っている。この攻撃を受ければ、耐えることは出来ないだろう。

身体が未だに言うことを聞かないアスナは無意識のうちに泣き叫んでいた。

 

「キリトくんッ‼」

 

ブレスが炸裂する直前。

 

「ユイちゃん‼︎ダメ‼︎もど…」

 

安全エリアから出てきた人影にアスナは驚愕した。

ユイはなんと、無鉄砲にも謎のモンスターのところに走っていたのだ。

 

「何してるの⁈早く逃げて!ユイちゃん‼︎」

 

キリトも同じくユイが自身のところに向かってきていることに気付き、どうにか動く口で叫んだ。

 

「来るな…!ユイ…‼死ぬぞ⁈」

 

謎のモンスターはブレスの炸裂を止め、ユイに視線を向けていた。

ところがユイは…。

 

「大丈夫だよ…パパ、ママ…」

 

異常な程、落ち着いた声で答えた。

それと同時に奴の翼脚がユイに振り下ろされた。

 

「ユイちゃん‼︎‼︎」

 

モンスターの一撃がユイを捉えかけた時、ガキーン‼と印象に残る音を立てて、モンスターの攻撃を逆に防いでいた。

そして、ユイの頭の上には『Immortal Object』の文字が出ていた。

 

「破壊不能…オブジェクト?」

 

茫然としてると、今度はユイの身体から放電が走り、着ていた服を一瞬で初めて会った時の白いワンピースに戻した。更にその小さな手には青く放電する長剣が握られていた。

そして、それをそのまま振り下ろし、謎のモンスターの翼脚を切り落とし、キリトを助ける。苦しみのたうち回るモンスターにユイは容赦することなく、もう一度斬撃を与える。すると、謎のモンスターは電撃に包まれて姿を消した。

この様子を見ていた2人は、恐る恐るユイに声をかけた。

 

「ユイちゃん…君は…」

 

「ユイ…これは…」

 

「全部、思い出したんだよ…。パパ、ママ」

 

ユイの目には、僅かに涙が溜まっていた。




【補足1】
『コンガ』
別名『桃毛獣』。キモくて、ウザい…。これしかないと思った。

【補足2】
『謎のモンスター』
アンケート結果の第1位、『混沌に呻くゴア・マガラ』。下書き段階では『凶気のナルガクルガ』にしてましたが、ちょっと微妙な気がしたので、(くだん)のアンケートで何が良いか聞きました。
あんまり戦ったことないので、描写が結構大変でした。それと、狂竜ウィルス活かせなかった…。



ここで、何故アンケートに『ドラギュロス』や『メラギナス』があったのか、書き記したいと思います。

『ドラギュロス』
別名が『冥雷竜』だから。因みに『冥雷』は龍属性の雷のことです。

『メラギナス』
棲んでいる場所が暗い洞窟の中だし、何より使う属性が『闇』属性だから。
因みに『闇属性』は氷と龍の複合属性です。


そして、次回、第2回アンケート実施します。
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