ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

19 / 102
サブタイトルで何か分かってしまうかも…。



第18話 青き結晶を纏う蠍

ボス攻略するメンバーはもう既にこの広場に集まっていた。

キリトとアスナも遅くなりながらも、到着した。

ただ、相変わらず2人に向けられる視線は刺々しいものだった。

ビーター、ユニークスキル使い、その他にもアスナとの関係など色々な要因でこのような結果になってしまったと言えるだろう。

 

「よう、キリト、アスナさん」

 

「お前らも来たのか」

 

声をかけてきたのはクラインとエギルだった。

彼らは数少ないキリトと友好的な関係を持つ者で、視線は全く厳しくなかった。

 

「楽しい新婚生活でも送っていた……ごふっ!」

 

調子に乗ったことをベラベラと言う前にキリトはクラインの顎を蹴り上げて黙らせた。

横ではエギルが溜め息を吐き、アスナも呆れた表情をしている。

そんな穏やかな会話をしている間に、血盟騎士団団長のヒースクリフが最後にこの場に数名の部下を引き連れて現れた。

回廊結晶を使って、攻略に赴くプレイヤー全員をボス部屋の前に連れて行けるように準備した。

 

「コリドー、オープン。さあ、行くぞ」

 

ヒースクリフを先頭にキリトたちもボス部屋のところに向かう。

結晶で開かれたゲートの先には大きな扉があり、扉に手をかけるヒースクリフ。

不安で満ち溢れる空気の中、アスナはキリトの左手に優しく触れた。

 

「アスナ…」

 

「大丈夫、私は死なない。それに君を守るのも私の仕事だよ?」

 

「…ああ。俺も絶対に死なない。そして君も守る」

 

「信じてるよ…」

 

甘えるような声で言い終えたアスナは表情を元に戻し、キリトがあげた白銀色の細剣(レイピア)を抜く。

キリトもアスナに(なら)って、背中に納めている二刀の剣を抜く。

 

「行くぞ‼突撃ぃ‼」

 

ヒースクリフの激励の声を筆頭に、キリトたちを含めた全てのプレイヤーは一斉にボス部屋の中へと雪崩れ込む。全員が入り終えたところで、不気味で巨大な扉は勝手に閉じ、姿を消す。

ボス部屋は丸い闘技場なもので、周囲には青く輝く結晶が煌々(こうこう)と輝きながら、(そび)え立っていた。だが、そこにボスの姿は全くなかった。

 

「何も…いない?」

 

誰かがそう呟き、一時の沈黙が流れる。

全員で耳を澄まし、周囲を探る。

その時、関節と関節が擦れるかのような音がアスナの耳に入った。

それがどこから聞こえるか、周囲を見渡そうとした時、アスナからその居場所は告げられた。

 

「天井よ!」

 

その声で全員が真上を振り向く。

そこでは青い結晶を頭部、(はさみ)、尾に散りばめている巨大な蠍が天井にへばりついていた。

そいつはボス部屋に入ってきたプレイヤーを視認した途端、黄色の複眼を赤色に変色させた。

そして名前も判明する。

 

 

【Agra Vasim】

 

 

「アグラ…ヴァシム?」

 

キリトが呟いた途端に、奴は天井から降りてくる。

 

「固まるな!距離を取れ‼」

 

ヒースクリフの言葉で全員が円形のエリアから端へと移動するが、恐怖のすぐに動けないプレイヤーもごく少数ながらいた。

 

「こっちだ!早く来い‼」

 

キリトの怒鳴り声で正気を戻したが、【Agra Vasim(アグラ・ヴァシム)】が地面に降りたと同時に発生した激しい振動でプレイヤー2名が動けなくなってしまう。

動けない間に奴の尾から青白い液体がビーム状に発射されて、プレイヤー2名に浴びせた。

 

「うわあ⁈な、なんだこれ⁈」

 

驚いたことに、その液体を浴びたプレイヤーには青い結晶がへばりつき、それは時間が経つにつれて、膨張していた。

 

「助けてくれ…!助けて‼」

 

「待ってて!すぐに…」

 

「アスナ!今すぐ離れろ!」

 

キリトはアスナの身体に体当たりする形で、彼らから距離を取らせる。

その数秒後、身体にへばり付く結晶は激しく爆発した。

キリトもアスナも数秒、その瞬間を固まって見ていた。2名のプレイヤーの身体がバラバラになって地面を転がるのを見ながら…。

 

「嘘…一撃で……」

 

Agra Vasim(アグラ・ヴァシム)】はプレイヤー2名を殺しただけで、満足なんかするはずもなく、新たな獲物を求めて、重厚な4つの重脚を器用に動かす。

そして、大きな鋏を1人のプレイヤー目掛けて振り下ろす。

 

「危ない!」

 

しかし、振り下ろされる前にヒースクリフが鋏の一撃を自慢の盾で防いで助ける。

だが…すぐに横に回って、取り逃した獲物を鋏で掴んで、圧死させた。

そこからも軽微なフットワークでプレイヤーに詰め寄り、惨殺を繰り返そうとする。

 

「っ!」

 

キリトは我慢できず、ボスのところに駆ける。

 

「キリトくん!」

 

もう一度、鋏を振り上げている瞬間にキリトはボスの間合いに入り、鋏の一撃を防ごうとする。

ガキィンと金属と金属がぶつかる音が響くが、キリトはこの攻撃を耐えきれているわけではなかった。重みのある鋏の威力に耐えきれず、自らの剣が肩に食い込んでしまっていた。

 

「ぐっ…ぐぅぅ!お、重い…!」

 

肩から血が流れ、抉られる痛みに襲われるキリトに奴は容赦なく、もう一方の余った鋏を叩きつけようとしたが、それはヒースクリフの盾で防がれた。その隙にアスナが単発SSリニアーを顔面に食らわせて、怯ませた。

 

「2人がかりでなら、鋏の攻撃はガード出来る。尻尾も頑張ればどうとでもなる。私たちなら出来るよ!」

 

キリトを支えてくれたアスナがそう言う。

 

「…そうだな…」

 

そう話してる隙にも奴は赤い双眸(そうぼう)を2人に向け、突進してくる。

 

「鋏と尾は俺たちで防ぐ!みんなは側面から攻撃してくれ!」

 

それを聞いた他のプレイヤーは、キリトとアスナ、ヒースクリフの3人で【Agra Vasim(アグラ・ヴァシム)】の攻撃を防いでいる隙に側面へ回り、重脚を重点的に攻撃していく。

しかし、奴はキリトたちだけに標的を絞るわけではなく、4つの重脚や尾を激しく動かして、味方を蹴散らしていく。

だが、そこでも隙が生まれるため、キリトとアスナは更に叩く。

キリトが重突撃SSヴォーパルストライク、アスナは重突撃SSアニートレイを放って、顔面に付いた結晶を破壊する。奴も怯みはしたが、追撃される前に再び天井に張り付き、尾から爆発性を伴う結晶をビーム状にして、発射してきた。

キリトやアスナなどの高レベル帯のプレイヤーは避けることが出来たが、中レベル帯のプレイヤーたちはもろに受けてしまい、一気に()られてしまう。

あの尾を切り落とさない限り、この攻略は簡単には行かないとキリトは踏んだ。

どうやって天井から落とせるかと思っていると、アスナが一気に跳躍して、アグラ・ヴァシムの重脚の1つを最上位突進SSフラッシングペネトレイターで切断した。

落下して、ダウンしている奴にキリトもアスナに負けじと4連撃SSバーチカルスクエアでを重脚に叩きこんで、更に1本切り落とした。

これでまともに動けなくなると思えたが、突如奴は尾を地面に埋め込み、何かチャージをし始める。地面が青く光り出し、すぐにとんでもない規模の爆発が起きる。爆風にキリトたちは後方に吹き飛びかけてしまう。爆発の反動で奴は空中に飛び上がり、大プレスをかましてきた。

しかし、地面に着地した瞬間、ヒースクリフがいつの間にか奴の側面に回っており、残りの重脚を全て切り落とした。

 

(おかしい…)

 

キリトは今のヒースクリフの動きがおかしいと思った。

ボスの大技が発動したとき、ヒースクリフはキリトやアスナの傍にいた。

ほんの数秒で、ボスの攻撃を(かわ)しつつ、側面に移動するなんて不可能だと思えた。そんなヒースクリフの動きに疑問を抱いていると…。

 

「キリトくん!」

 

アスナの呼び声でキリトは我に返った。

先陣を切るアスナは重突撃SSアニートレイをボスの尾の根元に食い込ませる。亀裂が入った尾の根元にキリトは重2連突撃SSヴォーパルスラッシュを撃ち込む。

 

「うおおおおおおおおぉ‼」

 

これにより、奴の尾は根元から切り落とされ、残るは2つの鋏だけとなったが、前に出なければ、の鋏も脅威となることはなかった。

無様な姿になったボスを見たヒースクリフは全プレイヤーに叫んだ。

 

「全軍、突撃!」

 

これであとはもうなぶり殺しだった。

生き残った攻略組で一斉攻撃を仕掛け、1分も経つことなく、第75層のボス【Agra Vasim(アグラ・ヴァシム)】は死ぬのだった。




【補足1】
Agra Vasim(アグラ・ヴァシム)
MHF産の甲殻種モンスター。本作は辿異種を採用。麻痺と結晶を多用するサソリ型モンスターで、個人的に見た目のインパクトは凄いと思う。(アンケート1位の結果でもある。)
辿異種で出た『継続麻痺』を活かしたかったが、出せるような場面がなかった。
因みに英語表記は自分で勝手に付けたものです。


【補足2】
【重突撃SSアニートレイ】
キリトが使う重突撃SSヴォーパルストライクと似たような性質を持つ。
ただ、アスナが使うソードスキルなので、貫通力はこちらの方が上である。


【補足3】
【重2連突撃SSヴォーパルスラッシュ】
キリトの使う重突撃SSヴォーパルストライクを2つの剣をどちらも前に出して、突撃するソードスキル。威力はこちらの方が上だが、スピードは劣る。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。