ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第23話 始まる対立

「まだ加入するように説得できていないのか?シノン」

 

「申し訳ありません、グラディウス団長」

 

「まあ、奴らが我々のギルド加入も時間の問題だろう。焦ることはない。着実に…確実に追い込むのだ」

 

「はい」

 

『下がって良い』と言われたシノンは一礼して、団長室から出て行った。

その後、グラディウスは椅子にどっと背中を降ろし、愚痴を溢した。

 

「…あのシノンを持っても、落ちないか…。そろそろ別の段階に移すべきか…」

 

グラディウスはそう言い、最上階の自室から崖下の町を見下ろした。

彼が(おさ)である『青龍連合』が支配する第66層は、崖ばかりの殺風景な街だった。だが、その街をグラディウスが開拓し、信頼を集めて、『青龍連合』という強力なギルドを作り上げた。

だが、真なる最強ではなかった。

ヒースクリフが最初期に作ったギルド『血盟騎士団』が最も大きく、強いギルドになってしまったので、真の最強ギルドとは呼ばれなかった。

しかし、それもあの黒の剣士『キリト』が全て暴いてくれたお陰で、形成が一気に変わった。

ヒースクリフの正体がまさかの茅場彰彦だったということで、最強ギルド『血盟騎士団』が崩壊し、『青龍連合』が最強ギルドの称号を勝ち取った。

 

「これであの2人が来れば、血盟騎士団の二の舞になることはない。そして、私に逆らう奴は…」

 

そこまで話したところで、不意に団長室のドアが開いた。

黒ポンチョを着た男だ。奴は悠々と部屋に入り、左手に持っていた袋を机に置いた。

 

「どうだ?楽しめたか?」

 

「ああ…。楽しめたぜ…。それにしても、あんたのところは良い仕事ばかりくれるなあ…。どうしてだ?」

 

「私はね、昔から私を馬鹿にしたり、逆らう奴を殺したくなるほど憎む特異な性格なんだ。だが、だからといって殺すことは現実では出来ない。ところがここでは出来る。素晴らしいと思うだろう?」

 

「それには同感だぜ、Mister…。さて、俺がここにいるのがバレたら面倒だし、そろそろ帰るぜ…」

 

そう言って、黒ポンチョの男はフードを更に深く被り、窓から出て行った。

男が消えてから、グラディウスは独り言のように呟くのだった。

 

「これからも裏の仕事を頼むぞ、Poh…」

 

 

 

 

 

シノンは自宅に戻ると、いつも携えている羽衣の弓を置き場所に立て掛ける。

更に胴、肘、膝に付けた防具も外し、疲れ切った身体を癒そうと背伸びする。

そして、食事も摂らずに、ベッドに横になる。

シノンはいつも食事を摂らない。何故かというと、ゲームの中で食事を摂っても意味がないと彼女は思っているからだ。

はっきり言うと、シノンは寝る間も惜しんで、迷宮区に乗り込んで攻略を進めたいと思っている。だが、最近、ボス戦以外でも強力なMobが出始めているので、ソロで潜り込むと死ぬ確率が上がってしまう。シノンはきちんと考えて進む方のタイプのため、あまりそこで野蛮なことはしない。

 

「…黒の剣士がいれば…攻略も…」

 

無意識のうちに呟いたシノンは後に頬を赤らめて、枕で顔を隠す。

第76層攻略時に見たあの勇敢な佇まい、そして優しい性格…。

どこか女の子に魅かれそうな感じに思えた。

初めてキリトを見たシノンの印象は…暗い…だった。

いつも攻略の時に黒の剣、黒のコートを着ているのもそうだが、彼の周りのオーラ自体の暗く、淀んでいる気がしてならなかった。だが、そんな彼も元血盟騎士団の副団長【閃光のアスナ】との結婚で、彼の暗い雰囲気は消えていた。

明るく、生きていることを楽しんでいる…そう見えた。

それがシノンにとっては憎たらしかった。

なんでこんな地獄みたいな世界で楽しんでいるんだ…嬉しそうなんだ…と問い詰めたかった。

それを言おうとあの日、彼らが住むというログハウスに足を運んだ。

ところが、そこでシノンが見たものは想像を超えていた。

幸せそうに子供と一緒に野菜を育て、笑顔を見せる3人に…シノンは怒りと嫉妬が爆発した。それが原因で、シノンは冷静さを失い、ユイにボウスキルを放ってしまったのだ。

もちろん、キリトとアスナが怒りに満ちるのも分かっていた。だが、あの時のシノンはやけくそで、どうでもよかったのだ。流石にアスナの怒りが想定以上にすごくて、襲われた時は焦ってしまったが…。

 

「流石にマズかったかなあ…」

 

ユイに対する攻撃を受けていれば…キリトの助けがなければ、明らかにユイは助かっていなかった。

もはやシノンはユイを殺す気でいたからだ。

あれ以降、アスナが出す視線は常に殺気に満ちていた。

しかし、シノンはそれが自分のせいではなく、彼らが幸せな生活を送っているからだと、自分の中で勝手に合理化した。

暫くベッドの上に寝転がっていたが、起き上がって、シノンの相棒とも呼べる弓『凶弓【小夜嵐】』を取る。第70層の裏ボスに相当するもので、シノンはこの弓の力を完全に出し切っていない。

 

「…私は負けない。絶対に」

 

そう呟くと、ベランダに出て、矢を取って構える。

そして、弦を引いて、空を優雅に飛ぶ鳥に向かって射る。

矢はベランダからおよそ150m程離れた大きな鳥の翼を撃ち抜き、撃墜させた。

シノンの正確な射撃能力が垣間見えた瞬間だった。

 

 

 

 

「はい、朝ごはんだよ!」

 

アスナがテーブルにコーヒーとサンドイッチを出す。ユイの分もあるのだが、ユイは昨日の一件がまだ疲れとして残っているようで、まだ寝室から出て来ない。キリトは先に起きているので、アスナの食事に手を伸ばす。

その時…。

 

バリン‼

 

「えっ⁈」

 

ログハウスの窓ガラスが割れて、石が投げ込まれた。

キリトは飲んでいたコーヒーを置き、外を見る。索敵スキルで周囲を警戒するが、森が深いため、簡単には見つけられそうもなかった。

このゲームは仮にガラスを割られても、すぐに元に戻せるからいいのだが、キリトとアスナの気分は下降する。

 

「一体誰が…」

 

アスナがそう言いながら、ガラスの破片を拾おうとするが、その破片で指を切ってしまう。

 

「いたっ…」

 

「おいおい、いくら仮想現実のゲームだからって、油断し過ぎじゃないか?」

 

「ご、ごめん…」

 

血が流れるアスナの指をキリトが手を取り、それを口の中に入れた。

 

「はわわわわっ…!き、キリトくん…⁈」

 

生暖かい感触がアスナの指に伝わる。

焦り、顔を真っ赤にするアスナだが、キリトは「当然だろ?」と言った表情だ。

全ての血を舐め終わり、そこで漸くキリトはアスナの指を離した。

アスナはまだ顔を赤くして、俯かせたままだ。

 

「はい、治った」

 

「うぅ…キリトくん、ずるいよぉ…」

 

アスナはそのまま顔を近付けて、キリトとキスをしようとする。

すると、扉がコンコンとノックされる。2人はそこに視線を向けると…。

 

「いいかしら?全く、朝からお熱いことで…」

 

キリトもアスナもわなわなと震えさせて、いつの間にかドアの前に立っていたシノンに向かって同時に叫んだ。

 

「「何でここにいるんだ、シノンは~⁈‼」




【補足】
『凶弓【小夜嵐】』
アマツマガツチの武器。MHXXで更なる強化名があるが、個人的にこっちが好きなので。私にとっても思い入れのある武器だったので、絶対に出したかったです。


そして、次話は絶対に書こうと思っていた話の一つ!
楽しみにしていてください!
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