ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第25話 本当のシノン

アスナとシノンの一騎打ちが終わってから、3日が経つ。

連日、SAO内で出回る新聞には様々な情報とデマが飛び交っていた。

最初にキリト、アスナ、シノンの呼び名の変更だ。

キリトは【蒼雷(そうらい)の二刀流】、アスナは【白氷(はくひょう)の姫】、シノンは【翡翠の旋風】だ。

それとユイに関することだ。

ユイはキリトとアスナが行為をしたことによって出来た子供なのでは…と、大々的に載せられてしまって、2人とも酷く頭を抱えた。

そして、シノンに関することが最後に載っていた。シノンがアスナに負けたことで、青龍連合は最強のギルドではないことが、逆に露見してしまい、彼女はギルドから脱退されてしまったのでは…との憶測が飛び交ったが、キリトとアスナは違うと分かっていた。

最強ギルドにあれだけ(こだわ)る青龍連合がかなりの戦力となり得るシノンを捨てるとはとても思えなかったのだ。

 

「…それより」

 

キリトはコーヒーカップを片手に、アスナに振り向く。

 

「アスナはどうやって、あのユニークスキル【氷界創生】を発動したんだ?」

 

「私だってわかりたいよ」

 

アスナもカップを持ちつつ、言葉を返す。

 

「でも…私たちの想いの強さが、剣に秘められた力を貸してくれたんだと思う。いや、信じてる」

 

「そうだな。そういうことにしておくか」

 

キリトはコーヒーを飲み終えると、カップを机に戻して、椅子をゆらゆらをわざと揺らして、目を瞑る。アスナもカップを戻し、キリトの隣に座って、身体を彼に預ける。ここ最近はずっとこんな感じだ。

アスナもキリトもお互いに身体を休めることをせず、自らの命を危機にさらしたせいか、想いが増しているというか…甘えたくなってしまうようだ。

そんな光景を新聞に貼る記者連中に狙われていることも知らずに…。

だが、そこは問題ない。目を閉じていても、キリトの鋭敏な索敵スキルが発動し、カメラを針で撃ち抜くからだ。最初は何度もしつこく撮られていたが、キリトのあまりな正確な射撃で記者たちは徐々に来なくなっていった。

そのおかげで今もアスナとキリトはべったりと甘えることが出来ているのだ。

 

「うふふ……キリトくぅん…」

 

そんな寝言を聞いてしまったキリトは休もうにも休めない。逆に意識してしまって、寝れそうになくなったキリトは、アスナの頭を優しく撫でた。艶やかなこの栗色の髪も、シノンとの戦いで乱れてしまい、風呂で洗ったことを思い出す。そこで…行為に及んでしまったことも…。

 

「やべ…思い出しちまった…」

 

頭を抱え、早鐘する鼓動を抑えようとする。

が、アスナの可愛げな寝顔に興奮は収まりそうもなく、キリトは無意識のうちに彼女の唇に触れてしまう。柔らかな感触にとろけそうになる。

 

「愛してるよ、アスナ」

 

そう呟いた瞬間、キリトの索敵スキルが森の中にいるプレイヤーに反応した。

即座に腰から針を取り、それを投げる。

 

「きゃ…!」

 

森から小さな悲鳴が響いた。

いつもの記者かと思ったキリトだが、声質的に女性…それもアスナとあまり変わらないように思えた。

 

(今の声…どこかで…)

 

キリトはアスナを椅子に残したまま、森へと歩み寄っていく。

すると、森を駆けて逃げていく小さな人影が見えた。ユイよりも大きく、アスナより少し低い背…。そして、ここを知っている人となると、限られてくるため、キリトはなんとなく正体が掴めてきた。

 

「おい、待てよ!」

 

声をかけてみるが、応答はない。

だが、キリトは諦めなかった。

 

「俺に話があったんだろ?出てこいよ!」

 

そこまでキリトが言うと、木陰からゆっくりと出てきた姿に「やっぱり」とキリトは呟いた。

出てきたのはシノンだった。前のように、他人を威圧するような視線は消え、キリトに対しても直視出来ていない。

 

「…どうして、あそこにいることが分かったの?」

 

「索敵スキル、カンストしてるんだよ」

 

「そう…」

 

相変わらずシノンの声は元気がない。キリトは気を利かせて、湖の方に誘った。

シノンはキリトの誘いに反対することなく、共に湖の岸に座る。

 

「何かあったのか?」

 

「…アスナに負けたせいで、ギルドから信頼を失った…」

 

「まさか…奴らは本当にシノンを脱退させたのか?

「そんなわけないでしょ…。貴重な戦力を捨てる程、彼らも馬鹿じゃないわ。だけど……」

 

そこでシノンは言葉に詰まり、唇や身体を震えさせる。更には目元に涙を溜めていく。

 

「居場所……」

 

「え?」

 

「居場所が…ないの……。ギルドにいるのが辛い…。どうしたらいいの?キリト…」

 

キリトは泣きじゃくるシノンを見詰める。普段の凛々しい彼女とはまるで真逆で、弱々しい姿だった。

 

「お前もアスナと一緒だな…」

 

「え?」

 

顔を覆って泣いていたシノンはキリトの言葉で漸くまともに顔を見た。

キリトは砂場に転がり、空を見ながら話す。

 

「アスナも最初の頃、とても厳しい奴でさ、『攻略の鬼』なんて呼ばれてる時もあったんだ。その良い例が第47層攻略会議だ。アスナはNPCを囮にして、ボスを攻略しようと言い出した。俺は大反対して、アスナと口論になった」

 

「キリトも、最初からアスナとデレデレしてたわけではないんだ…」

 

「まあね…。でも、その態度がより彼女を孤立させていて…ギルドはかなり辛かったみたいでさ…。護衛まで遣わされて、相当なストレスだったんだ。しかもそいつはアスナを狙っていて…」

 

シノンはアスナの壮絶な過去に耳を傾ける。そして思った。自分と同じだと…。

 

「でも俺はそんな気が強い部分だけでなく、人を愛し、尊重する彼女もあることを知った。そんなアスナに俺は魅かれたんだ。別の人を2人愛することは出来ないけど、お互いに心を通わせることが出来る人と親友にはなれると信じてるよ。シノン、君もその1人だ。ギルドが嫌なら、抜ければいい」

 

「…キリト」

 

シノンは胸に手を当てて、初めての感情に心を揺さぶられる。

 

「俺はそう思うけどな。どうかな?」

 

「…ギルドを抜ける、抜けないかは簡単には決められない。だけど…」

 

シノンは頬を赤らめて、キリトにお礼を言う。

 

「あり、がと…」

 

 

 

遠くでその話を聞いているアスナはキリトを引き摺ってでも、家に戻そうと思ったが、どうにかその衝動を止めた。

最初は楽しく話しているキリトに対して、嫉妬心で燃え上がりそうになったが、自分の過去とどう思っているかを改めて知ることが出来て、2人の間を引き裂くことが出来そうもなかった。

 

「…今日だけは許そうかな…」

 

そう小さく呟いて、木陰から出て、ログハウスに戻った。

ただ……2人が戻って来たのはその十数分後で、どうしてかアスナはイライラしてしまっていた。

それを感じ取ったキリトは顔が引きつり、どうしようかと思っている表情を作っていた。その隣にいるシノンの頬には涙の痕があり、アスナの前に立つと、シノンは黙ったまま、ゆっくりと上体を前に降ろした。

 

「し、シノン?」

 

「今までのこと、本当にごめんなさい。あなたとキリトのこと、何も理解せず…ギルドと自分のためだけに苦しめて…本当にごめんなさい」

 

「そんな…頭下げなくていいよ!もう過ぎたことだし…」

 

「アスナ…こんな最低な私でも……」

 

シノンはまた涙に濡れた瞳でアスナを見詰めながら…懇願しながら言った。

 

「私の仲間に…友達に……親友に…なってくれる?」

 

アスナはこの状態のシノンを見て分かった。

今の姿のシノンこそ…本当のシノンなんだと…。

アスナはくすっと笑って、手を差し伸べた。

 

「もちろん!よろしくね、シノン!」

 

差し伸べられた手を見たシノンは更に涙を溢れさせ、口を手で塞いで、喘ぎ声を我慢しながらアスナの手を繋ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

その数日後、シノンは青龍連合を脱退するのだった。




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