ソードアートオンライン Monster Hunter World 作:GZL
キリトは自分に向けられた剣先とそれを向けるグラディウスを睨んでいる。
だが、キリトの右腕は切り落とされ、覇王剣は少し離れた場所に落ちている。その後ろでは黒ポンチョを被った男がアスナの首にキリトの覇王剣よりも濃い黒色の鎌を当てていて、動けずにいる。
「これで終わりだ…」
グラディウスは剣を振り下ろす。
キリトはただ、刃が自身に到達するのを待つことしか出来なかった…。
どうしてこのようなことになってしまったのか…。
グラディウスは団長室の机を容赦なく叩いた。机にへこみが出来てしまうくらいに…。
「クソッ‼あの小僧…!」
誰も聞いたことがないであろう、凄まじい悪態をつくグラディウスを、Pohは薄笑いを浮かべつつ、ワインを頬張った。
怒り心頭の原因はシノンの退団。
しかもシノンはキリトに影響されて退団した、というのが濃厚であった。彼女は退団するときに、その理由をグラディウスや幹部に告げなかった。はっきりしないまま退団したことが、グラディウスの怒りを更に高めた。
「で、どうするんだ?黒の剣士を殺るのか?」
「当然だ…。ガキにはガキらしい教育をしなければならん…」
Pohはワイングラスを回しながら、話を続ける。
「だが、お前の腕じゃ黒の剣士を殺ることは出来ねえぞ?」
「…お前も口の聞き方には気をつけろ?舐めたことばかり言っていると、首が吹っ飛ぶぞ?」
「ひゅー、こえ~」
Pohはワインを飲み終え、グラディウスの前に立つ。
「なら、俺に考えがあるぜ、Mister」
「確実に黒の剣士を殺せるプランなんだろうな?」
「Yes!」
グラディウスはPohの考えを聞くと、口角を上げ、腰に納めている剣に自然と手を伸ばしていくのだった。
-1時間前-
「ふう…ちょっと買い過ぎたかな?」
アスナは一杯になった買い物袋を3つ、華奢な腕で持って帰路に着いていた。
今日は自分とキリト、ユイ、シノンの4人で食事をする約束で、その食材を買っていたのだ。出来ればキリトにもついて来て欲しかったが、ただでさえ世間の風当たりが強いので、アスナ1人で行くことにしたのだ。
「まあ、転移結晶を使えばすぐだし、いいか」
アスナは転移結晶を握って、ログハウスに戻ろうとした。
ところが、直後に背後に殺気を感じた。
「Hey、閃光」
振り向くと、黒ポンチョを被った不気味な男が立っていた。アスナは買い物袋を全て降ろし、細剣を取り出そうとしたが、男の手に握られた黒い鎌がアスナの右手の甲を切った。
「っ」
「動かないでもらおうか、閃光」
「…『閃光』ってまだ呼んでるの、あなたくらいよ」
「呼びやすいだけさ。来てもらおうか、俺と一緒に」
「………」
アスナは抵抗せずにPohと共に転移結晶である場所に飛ぶ。
その場には買ったばかりの買い物袋が3つ、残された。
その頃キリトはログハウスの椅子に座りながら待っていたのだが…。
「遅いな、アスナ…」
少し買ってくると言ってただけなのに、と思っていると、キリトにメッセージが入って来た。
開くと『第66層に来てほしい。買い物袋が重くて大変なの、手伝って』と書いてあった。
キリトは不審に思いつつも、第66層に向かうことにした。ログハウスに来るであろうシノンに置手紙を置いて…。
第66層の転移エリアに着くと、そこにアスナはいた。
「おい、アスナ。どうしてここに…」
「キリトくん、来ちゃダメ‼」
アスナの警告は遅かった。
突如後方から飛び込んで来た黒ポンチョの男がキリトの右腕を切り落とした。
「ぐああっ⁈」
キリトは地面を転がって、男と距離を取りながら、オプションから覇王剣を取り出して、左手で持つ。慣れない左手で持ってしまったのが原因か、男に蹴られて簡単に落としてしまう。
「くっ…」
キリトは仰向けになりつつ、斬られた右腕を抑える。
黒ポンチョの男は夜の影と相まって、あまり見えない。
「安心しな、俺は殺しはしねえ…。殺すのは…」
男が向いた先には紺色の鎧を着て、左手に盾、右手に剣を持った青龍連合の団長グラディウスが現れた。
「よくやった、Poh。お前はその女を逃がさないように捕まえてろ」
「Hey」
Pohはアスナの両手を後ろに取って、それを首に当てる。
-現在-
「何が目的だ?グラディウス団長…」
「黙ってろ、クソガキが…」
そう言って、グラディウスはキリトの右腕を強く踏んだ。キリトは苦し気な声を上げて、痛みに耐える。
「お前がシノンを引っ張り出さなければ、俺のギルドは最強を維持出来た。貴様みたいなガキが最強だからって…調子に乗っているんじゃねえ‼」
更にグラディウスはキリトの顔を蹴り上げる。
その大人げない…いや、醜悪な行為にアスナは見かねて顔を背けた。
それでもキリトは気丈に笑って、グラディウスを挑発する。
「ガキ…か。確かに俺はガキだ。だけどな…そんな奴を使って俺の腕を斬らなきゃ戦えない雑魚には言われたくねえな!」
「黙れって言ってんだろ‼」
腹を蹴り上げ、キリトの胸ぐらを掴んで盾で殴るグラディウス。
「ぐはっ!」
「黒の剣士、貴様の弱点は二刀流でなければ、ただ強いプレイヤーであること。他にも【纏雷】はもう一方の剣でなければ発動できない。それさえ防いでしまえば、こっちのものだ」
グラディウスは剣にエフェクトを込める。キリトの見る限り、単発SSバーチカルだ。
あの一撃をもとにキリトを沈めるつもりだ。
それに気付いたアスナも半泣きの状態で、Pohの鎌が首に当たって血が垂れているのにも気づかないで、叫んだ。
「やめて!それだけはやめてえ‼」
アスナの懇願も虚しく、剣が振り下ろされる。
キリトはせめて急所だけはやられまいと、背中を見せる。
その時。
「!」
赤色の矢がグラディウスの剣を弾くと同時に爆発した。重撃BSスプライシングだ。
キリトが後方を向くと、弓を持って駆けてくるシノンの姿が見えた。
「シノン!どうしてここに…」
「そんなことどうでもいいでしょ!はいこれ!」
シノンは覇王剣と回復結晶を渡すと、グラディウスに向かっていく。
剣と弓がぶつかり、鍔迫り合いになる。
「シノン…貴様、何しに来た?」
「何って…友達を助けるために決まってるでしょ!」
そう叫ぶと、シノンは距離を取って矢を撃つ。
グラディウスはそれを盾で防いで、シノンの弓を弾く。
「くっ!」
「俺に逆らう奴は皆殺しだ!」
剣を振り上げたグラディウスだったが、振り上げた右腕は難なく斬り落とされた。
一瞬、グラディウスには何が起きたのか分からず、辺りを見回すと、すぐ横に青い目で睨みつけるキリトの姿があった。左手に握る白い剣の刀身には血が付いており、グラディウスの右腕を斬ったのはキリトであることがすぐに分かった。
「…貴様ら…ガキのくせに…。『閃光』がどうなってもいいのか?」
と、言うグラディウスだが、焦りは隠せていない。
手を上げて、Pohに指図するが、何故かPohは動かない。
「おい!テメエにはきちんと報酬をやってるだろ!その生意気な女を殺せ!」
「…Mister、悪いな…」
Pohがそう呟くと、アスナを解放して、グラディウスの頸動脈を裂いた。
また一瞬、何が起きたのか分からず茫然としていたが、すぐに痛みとHPの急激な減りに大慌てするグラディウスだが、Pohは首を掴んで、地面に押し倒す。
仲間割れにも見えるこの光景を3人は固唾を飲んで見守る。
グラディウスは首を掴まれて、声も出せず、HPも回復できずに暴れるが、Pohに抑えつけられてしまっては何も出来なかった。
「俺は俺なりの目的があるんだ。お前みたいな自分勝手に暴れる奴は……殺したくて仕方ないんだよ…」
「あっ……がっ……」
グラディウスは断末魔も上げれずに、そのまま静かに息絶えた。
ポリゴン片になったグラディウスを見終えてから、Pohは手に付いた血を舐め取り、キリトたちを見る。
「『閃光』を怖い目に逢わせて悪かったな、黒の剣士。安心しな、お前と戦うのはまだ先だ…。その時までに、俺を楽しませてくれるくらいに腕を上げておけよ?」
Pohはそう言うと、持っていた転移結晶でどこかへと消える。
その右腕に刻まれた、笑う顔と棺桶のマークをキリトたちに見せ、脳裏に刻ませながら…。
翌日、ギルド『青龍連合』は潰えた。
現在実施中のアンケート、1つ名前間違っていました。
恥ずかしいです…。