ソードアートオンライン Monster Hunter World 作:GZL
━現実世界━
SAO事件の被害者の親族、桐ケ谷直葉は鞄に入れたナーヴギアを持って、兄、桐ケ谷和人が入院する病院へと駆け込むために走っていた。
時間は無かった。ナーヴギアを持っていることが母親にバレてしまい、急がなければならなかったからだ。
後ろでは、母親が声を上げて呼び止めようとする。
直葉は車が往来する道路を駆け抜け、鍛え上げた下半身を必死に動かした。クラクションが鳴り響き、直葉に罵声を上げる大人の声も轟く。
息が絶え絶えになりつつ、直葉は病院に駆け込んだ。
何度も通った兄の病室に入り、直葉はナーヴギアをコンセントに差し込み、SAOのソフトを入れた。病院の外では慌ただしい足音がするのが聞こえる。
「お兄ちゃん…私も行くよ。お兄ちゃんを助けるために…」
病室の扉が激しく開く。
その瞬間、直葉はナーヴギアを被り、呟くのだった。
『リンクスタート』と……。
━仮想現実━
次に直葉…アバターネーム『リーファ』が目覚めた時には、第1層の広場に立っていた。
リーファは周りを見て、ここが本当に仮想現実なんだと理解した。しかし、この仮想現実に来て、兄を探すのは大変だと、今更ながら思った。
どうしたら良いのか、思案していると、ボロボロになった新聞が飛んで来て、リーファの足に引っ掛かった。それを拾い上げ、リーファは目を丸くした。当然だろう。そこには兄と見たことない女性の顔が一緒になっている写真が貼ってあったからだ。しかも、堂々と見出しには『元青龍連合団長グラディウスの殺害に加担か?元団員は報復の可能性を示唆する』と書かれていた。
これにより、兄が今とても危険な状態であることを理解したリーファは現実世界と同じように駆け出し、近くにいた人に詰め寄る。
「あのっ…!この新聞の人たちは今どこに…!」
その頃、キリトとアスナ、シノンまでもが元青龍連合団員たちに取り囲まれていた。
彼らはキリトたちに殺意も含めた怒りを露わにしていた。あのクズ団長のグラディウスはPohによって殺されたと伝えはしたが、彼らはそんなものを信じなかった。ましてや、グラディウスがPohと共闘して、アスナを拉致したことさえも、信じようとはしなかった。おそらく、自分たちのリーダーがそんなことをしていたとは信じたくないのだろう。その信念にも似たものが…キリトたちに『怒り』として向けられているのだ。
「貴様が…俺たちの団長を…!」
刃を向け、じりじりと寄ってくる元団員たち。キリトたちも迎え撃とうと、剣を出す。
しかし、キリトたちは彼らを殺そうとは思っていない。キリトたちなら、彼らの剣を弾くくらいのことは容易である。
突進してくる奴らに剣を構える。
ところが……。
「お兄ちゃん!」
キリトと彼らの間に割って入った謎の女性プレイヤーにその刃は当たった。
肩から脇腹にまで、ズバッと斬られた女性プレイヤーは苦痛の声を上げ、キリトの前に転がった。
「おい!しっかりしろ‼」
上体を起こし、呼び掛けるが、痛みのせいか一瞬にして気絶してしまっていた。
しかし…そのプレイヤーの顔を見た途端、キリトの顔は動揺したものになり、すぐに怒りの目を彼らに向けた。
その表情は…アスナでも見たことがないもので、思わず引いてしまった。
「キ、キリトくん?」
「お前ら……」
怒りを通り越した…『本当の殺意』がキリトに宿る。
それを感じ取ったシノンはアスナに叫んだ。
「キリトを止めて‼アスナ!」
アスナはシノンの叫びを聞いてから、その言葉の意味が分かった。アスナの前であるのにも関わらず、キリトは覇王剣を抜くなり、一番前にいるプレイヤーの右手を一瞬にして斬り落とした。プレイヤーは叫び声を上げ、地面をのたうち回る。後ろにいた元団員たちも、恐怖に負けて、どんどん後ろに退いてしまう。
『本当の殺意』を感じ取ったアスナは即座にキリトの前に出て、彼の身体を抑えた。
「キリトくん、やめて‼」
「…退いてくれ、アスナ。俺は……そいつだけは許せないんだ…!」
「でも、それじゃキリトくんは本当の人殺しになっちゃう!お願いだから、やめて…」
泣き声になりつつ、アスナは懇願した。
その姿に流石のキリトも落ち着きを取り戻したのか、覇王剣を下ろし、顔を俯かせた。
アスナは涙を拭い、後ろで恐怖で身体を震えさせるプレイヤーに怒鳴った。
「今日はこのくらいで勘弁してあげる。次、また私たちの前に現れたら…今度は私が容赦しない!他の人にも伝えなさい」
「ひぃ…!」
彼らは何度も転びながらも、キリトたちの前から消え失せた。
アスナは一息吐きつつ、キリトの方を見る。
キリトは剣を鞘に戻して、気絶している女性プレイヤーを背中におぶった。その光景にアスナは若干の驚きを感じながら、問いを投げかけた。
「キリトくん、その人は……」
「悪いアスナ。今日は先に帰っててくれ。俺は彼女と別の場所で寝泊まりする」
「え」
今の発言にアスナは言葉を失った。
有無を言わさずに、キリトは彼女を支えると2人の前から姿を消した。アスナは暫く茫然と立ち尽くしていたが、シノンが肩を叩くと、ハッとして彼女を見た。
「大丈夫よ、アスナ」
「え?何が…」
「あのキリトだもの。何か考えがあるんでしょ?」
「…そ、そうよね…。大丈夫よね…」
そう言って、自分自身を落ち着かせようとするアスナだったが、その動揺は誰がどう見ても隠せていなかった。
リーファは登場させようか迷いましたが、結局出しました。
【補足】
全プレイヤーの初期装備は『ハンターシリーズ』。多分3Gでの初期装備はこれのはず…。