ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第30話 炎色の塵

ー半年後ー

第85層のボス部屋では、【纏雷】を発動したキリト、【氷界創生】を発動したアスナ、そして【一点突破】を発動したシノンを中心として、ボス【極み統べるグァンゾルム】と戦っていた。

そこにはキリトの妹の直葉が黄緑色の太刀を持って、キリトたちと同じようにボス攻略に参加していた。元々キリトたちの役に立ちたいと思っていた直葉からしてみれば、これほどのことは嬉しくて仕方がなかった。

 

「アスナ!スイッチ!」

 

キリトはボスの周りを飛ぶ飛竜【エギュラス】の攻撃をいなしつつ、アスナに叫んだ。

アスナはキリトの叫びに答えて、尖剛突撃SS氷剛刃凍撃を発動して、ボスの首の付け根を貫く。それでもボスは倒れない。

むしろ、空中で無防備なアスナに赤い目を光らせ、黄金色の翼をぶつけようとする。

だが、それはキリトが発動した24連撃SSスターバースト・ストリームによって防がれた。

身体の側面にこの連撃を与え、更にそこから剛撃SS蒼雷撃を発動させ、四肢の1つを切り裂いた。

バランスを崩して、倒れるボスに追い打ちをかけるようにシノンは旋剛2連撃BS双昇竜翔撃を発動し、その顔面に翡翠色の双龍をぶつけた。ぶつかった瞬間、ボスの顔面で爆発し、そこで漸くボスのHPバーが空になった。

カシャンとポリゴン片がボス部屋に散布され、攻略組は声を上げた。

キリトとアスナは剣を納め、シノンは腰に弓を戻した。

 

「お疲れ、アスナ。良いバックアップだったよ」

 

「キリトくんも、剣撃がいつも以上に凄まじかったね」

 

「そりゃあ…あんな壮大な化け物相手に手加減出来ないよ…」

 

そう気楽に話すキリトたちであったが、今回の攻略もかなりの犠牲者を出した。

元々そうであったが、攻略が進むに連れて、参加人数も減ってきていた。

それが原因か、最近はキリトたちのオリジナルスキルに頼り切っているプレイヤーが多くなってしまい、まともに参加するプレイヤーが減ってきている…が正しい表現だろう。

しかし、最近はそれ以外にも問題が発生しているために、状況が良くないのだった。

 

 

 

 

 

攻略を終え、キリトとアスナはログハウスに帰るために、22層に戻った時…その光景に目を疑ってしまった。いつもなら…森と湖が美しい光景が広がるはずが、今はその森や草原が炎々と燃えており、それを消火しようと焦るプレイヤーたちが走り回る光景が広がっていた。

 

「こ、これは…!」

 

「どうなってるの⁈」

 

「パパ!ママ!」

 

転移エリアのすぐ目の前にユイが泣きそうな表情をして立っていた。

 

「どうなっているんだ⁈」

 

「分からないんです!突然、火の粉のようなものが飛んで来て、森や家が…」

 

「まさか…私たちのログハウスまで…」

 

「そこは大丈夫ですけど、パパたちのログハウスの反対側が大火事で…」

 

「原因は後でだ!消火を手伝おう、アスナ!」

 

キリトとアスナは燃えている家々のところへ駆けていく。

攻略の疲れなど一瞬で吹き飛んでしまい、この豊かな世界を守ろうと必死になった。

完全に鎮火したのは、キリトたちが戻ってから、なんと半日も経った後だった。

 

 

 

ログハウスに戻ったキリトたち一行。

アスナは炭の臭いがついてすぐにでもシャワーを浴びたいと行って、風呂場へと行ってしまった。行く前に「どう?久しぶりに一緒に入る?」と、妖艶な笑みを浮かべながら聞いて来たが、流石のキリトも疲れが勝っていて、その要望には答えなかった。

むすっとした表情をしたアスナだったが、彼女も非常に疲れていたので、咎めもせず、さっさとシャワーを浴びることにした。

一方のキリトはログハウスまで炭の臭いだらけにするのは嫌だから、炭だらけの黒いコートを脱いで、外に放り投げた。

その後、いつもの椅子に座り、1日中緊張していた身体を少しだけ休ませる。

するとユイがキリトの膝の上に座り、顔を胸に押し付けてきた。

 

「どうした、ユイ」

 

「いつも無事に帰ってきて、嬉しいんです。もしかしたら帰ってこないかもって…思うことがあるんです」

 

「そんなわけないだろ。ユイもアスナも俺にとっては大切な家族なんだ。寂しい思いはさせないよ」

 

「それでこそパパです!ママを泣かせたら、私が許しませんからね!」

 

「重々承知しております…」

 

そう言いながらキリトはユイを優しく抱き締める。だが、ユイは顔をしかめて、正直にこう言った。

 

「パパ…焦げ臭いです」

 

この発言にキリトが相当傷付いたことは言うまでもなかった。

 

 

 

「ん…もう朝か…」

 

キリトがベッドから上体を起こした時、隣のベッドにはまだ膨らみがあった。アスナはまだ寝ているようだ。

昨日は散々なことがあったから、まだ疲れが抜けていないのだろう。

キリトもまだ疲れが残っている身体を起こしながら、外の景色を見る。昨日の大火事が影響してるのか、全体的に薄暗く見えた。だが…それよりも驚くべき光景が、寝ぼけたキリトの意識を覚醒させた。

いつもは快晴の青空が…炎色の塵で一杯になっており、それがこの第22層の更に上へと舞っていたのだ。

服をすぐに着替えて、外に出ると、キリトはむわっとした空気に若干の違和感を感じた。

 

「どうなっているんだ⁈」

 

上の層で何が起きているかは容易に想像がついた。

こっちよりも更なる火事が起きているのだろうと分かったキリトは、アスナを起こすのも忘れて、エギルがいる店へと急いだ。

エギルのいる第44層に着いた時、その光景はもっと酷かった。

家が密集している場所では、火の周りが早いのか、火事というより本当にただ炎上しているだけに見えてしまう。

炎の熱を感じながらも、エギルの店に着くと、そこは小火(ぼや)程度で済んでいた。水を入れたバケツを片手に「ふう」と息を吐くエギルを見たキリトは安堵した。

 

「エギル!無事だったか!」

 

「キリト!どうしてここに…」

 

「ログハウスから赤い塵が上層階に舞っているのが見えたんだ。それで…、でも無事で良かった」

 

「お前たちの層もやられたのか?」

 

「ああ、一部が…」

 

「まさか……本当に『あの伝説』が…」

 

「伝説?何のことだ?」

 

「お前には話すべきだと思うんだ。明日、また来てくれ」

 

エギルは自分勝手に話を進めて、店の中へと消えた。

キリトは溜め息を吐きながら、燃え落ちる街を眺めた。黒煙はまだ上がり続けていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かの龍は更に翼を扇ぐ。

赤い瞳は鋼鉄の空中城を見詰め、更なる災厄を呼び起こそうとするのであった。




【補足】
第85層ボス『極み統べるグァンゾルム』・エギュラス
MHFの極み個体の一体。
一番弱いと言われていたので、ここで出してもいいかなと思いました。
書き始めた当初は90層クラスにしようと思っていましたが、強さ的に違うかな?と。



新たなアンケートを開始します。
そして、遂に『奴』が登場します。何かは…言わなくても分かりますよね?
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