ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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短いです。


第36話 懐かしい記憶

自宅に帰ったアリスは息を荒くして、扉の前で座っていた。

まさかあそこでアスナと出会ってしまうなんて予想外だった。キツイ言葉を浴びせて、すぐに逃げ帰ろうとしたが、あそこでキリトが転びそうになったのを止めようとした際に、『キリト』と言ってしまったことが全てを崩してしまった。

 

「ごめんね、キリト。私がしっかりしないから…」

 

アリスはマントと頭巾を脱ぎ、キリトにも着せているマント等を全て脱がして、暖炉の前に車椅子を移動させた。身体を動かせないキリトにとっては、外に出るだけでも厳しいと思ったからだ。

 

「すぐにご飯を作るわ。待っててね」

 

「………」

 

いくら話しかけても、言葉を発さないキリトに毎回心が締め付けられるような気持ちになるが、アリスは奥歯を噛み、虚しくなる心を抑えつけながら、キッチンに向かう。

自分が悲しんだらダメだと…心に鞭打って…。

 

 

 

 

夜、食器を片付け、暖炉の火を消して、キリトをベッドに寝かせる。

彼は服を着替えることも出来ないので、一旦裸にして、寝間着を着せる必要があるのだが…裸なんてアリスは見慣れてしまった。

ベッドに寝かせるのも、きちんと献身的にしないといけないため、毎日が大変な作業だった。これも慣れたが、今日はキリトも疲れたのか、眠りに入るのが早かった。

アリスもその隣に入って、眠りに身を任せようと思ったが、今日は中々寝つけなかった。隣で目を瞑って、寝息をスースー立てているキリトに何とも言えない感情が湧き上がってくる。

それと同時に…キリトと初めて会った時の記憶が甦える。

 

 

ー2年前ー

アリスは本当に初心者だった。

こういったゲームをして来なかったアリスにとって、何もかもが未知数だったからだ。楽しんで、ゆっくりとやっていくはずだったのに…あの日、全てが崩れた。

突然のデスゲーム宣言に、アリスも絶望した1人だった。

ただ、アリスはそのまま落ちぶれる訳ではなく、果敢に攻めていく方であった。それでも…このゲームの攻略方法をきちんと学び切れていなかったアリスはすぐに窮地に立った。

第2層の森林でアリスはジャギィの群れに囲まれ、どうすることも出来ずにいた。そして、1体のジャギィがアリスに飛びかかったその時だった。緑色の光が周囲に荒れ狂い、飛びかかった個体を含め、群れを気散らした。

茫然としていると、アリスの目の前に黒髪、黒服の少年が現れて、血が付着した剣を振り、一息吐いた。

 

「大丈夫か?君」

 

「あ、ありがとう…」

 

キリトは手を伸ばし、アリスの手を掴んだ。

その時、アリスの白い手につぅー…と血が流れてきた。

びっくりしたアリスがキリトの身体を凝視すると、腕に爪のようなもので抉られた傷があり、そこから血が溢れていたのだ。

 

「あなた…!怪我して…!」

 

「…これくらい慣れっこだよ…」

 

顔を少し(しか)めながら答えるキリトだが、徐々に身体を前に倒していき、地面に倒れる。

 

「ちょっ…!君…!」

 

「ちょっと疲れただけだよ…。大したことじゃない」

 

「大したことよ‼︎」

 

アリスは腰のポーチから回復薬を取り出し、それを傷口に付ける。

 

「それ…君のものだろ?大事に取っておけよ…」

 

「『君』じゃない。私はアリス。あなたは?」

 

「……名乗る程のものじゃないよ…」

 

キリトは暗い表情を作り、ゆっくりと上体を起こす。

インベントリから回復薬を1個取り出し、アリスに渡す。

 

「この森をずっと真っ直ぐ行けば、『ユクモの村』がある。それまでモンスターに遭うこともないから大丈夫だ」

 

「どうして知ってるの?」

 

「…後に分かるさ…」

 

暗い表情のまま、キリトは先に森の中へと消えていった。

アリスは彼に渡された回復薬を握りしめて、言われた通りの方向に進んでいくのだった。

 

 

そして、その数日後にアリスは助けてくれた彼の名前が『キリト』というプレイヤーだということ、更にこのSAOの中で最も忌み嫌われる『ビーター』という立ち位置であることを知った。

だが、とても噂で言われる『最低最悪のプレイヤー』だとは見えなかった。むしろ、どんなプレイヤーでも助けてくれる人だと思えた。

それからアリスはボス攻略で見る度に話しかけようと思ったが、彼にはいつもアスナがいた。

近付きたくても、近付けないアリスは徐々に孤立を深めていき、最終的に第100層までの攻略を諦め、83層の畔で隠れて住むことにしたのだ。

だとしても、アリスは本当のキリトを知らない。

1回助けてもらったことがあるだけで、どういう性格で…何が好きで、何が嫌いなのか…殆ど分からない。更には献身的に世話をしているうちに、異性として意識し始めていた。

初めて会った時にそのような気持ちが芽生えていたのかも…と、アリスは思い始めていた。

だがそれでも、彼には愛する女性がいる。キリトが心を戻した時、アスナのところに戻ってしまうと考えると、胸が張り裂けそうになった。

 

 

(出来ればこのままずっと……)

 

 

そう想いながら、アリスは今までしたこともなかった行動を取り始める。

心がないから…と、後ろめたさもあるが、アリスはキリトの身体に抱きつき、胸にすがる。その後、彼の唇に軽く自らの唇を触れかける位置まで近付く。

 

「キリト……」

 

アリスのちっぽけな想いで、キリトの心が戻らないか…。

そんなめちゃくちゃな理由でそんなことをしたアリスは、今度こそ睡魔に身を任せるのだった

 

 

 

 

 

 

翌日、むくっと何かに反応するかのように起きたアリスはあくびをしながら、長い金髪を結っていく。寝ているキリトも起こして、車椅子に座らせて、テーブルの横に配置する。暖炉の火を付けて、家自体を暖かくして、アリスはキッチンに立つ。

その時、家の玄関からコンコンとノック音が聞こえた。

 

「こんな朝から…誰かしら」

 

アリスは全く警戒することなく、ドアを開けながら「誰?」と言う。

扉を開ける途中、栗色の髪が風に(なび)いていることに気付いたアリス。誰がここに来たのか…分かってしまった。

 

「!」

 

アリスは急いで開けかけたドアを閉めようとしたのだが、手が割り込んで、力任せにドアをこじ開けた。

ドアを破られてしまったアリスにはもう武力で立ち向かうしかなかった。だが、既に目の前に立つ『少女』は手に白銀の細剣を持っており、僅かながら冷気も纏っていた。

 

「どこよ…」

 

今まで無言だったアスナは漸く口を開いた。

目の前にいる金髪の少女に向けて、更に怒声を上げる。

 

「キリトくんはどこよッ‼︎」




【補足1】
『ジャギィ』
MH3から出た小型モンスター。群れを成して、獲物を捕らえるエリマキトカゲとディノニクスを合体させたようなモンスター。
私の初邂逅はMH3で、初めてのモンハンだったことも相まって、マジでビビってた時期があった。

【補足2】
『ユクモの村』
MH3rdから登場した村。初めての和風な村。
あんまり思い入れがない村。(個人的に)
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