ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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また短いです。


第36話 想像を超えた傷

「キリトくんはどこよッ‼」

 

声を荒げたアスナだったが、暖炉の前に座る黒髪の少年を見て、強張っていた顔を途端に緩めた。

その油断がアリスにチャンスを与えた。

瞬時に壁の方に跳躍して、黄金色の太刀『飛竜刀【光月】』を掴んで、鞘からその剣を抜いた。アスナも敵意を見せたアリスに容赦はすることなく、剣をぶつける。

黄金と白銀が火花を散らす。

久しぶりに剣を持ったアリスだったが、『キリトを奪われたくない』、その想いだけで力が沸き起こるのか、アスナとほぼ互角の鍔迫り合いをしていた。

そこに様子を見に来たシノンとリーファも乱入して、暴れるアスナを抑える。

 

「アスナ!何してるの!」

 

「こいつのせいで…!こいつのせいでッ‼キリトくんは…!キリトくんは……ッ‼」

 

殺気を丸出しにして、アリスに叫ぶアスナに到頭堪忍袋の緒が切れたシノンはアスナの頬を打った。

 

「いい加減にしなさい‼この人に何も聞かずに、ただ勝手に自分で決めつけて…。少しは話し合いとかできないの⁈」

 

「………」

 

アスナは俯き、震える腕を抑えながらも剣を納めた。アリスもアスナに敵意がなくなったことに気付き、大人しく剣をしまった。

 

「いきなりの訪問でごめんなさい。でもこの人…アスナさんの大切な人を、あなたが保護しているんじゃないかと思って…」

 

「ええ、してるわ。もう1週間くらい」

 

淡々と事実を述べるアリスに一同は驚愕する。

 

「私の名前はアリス。立ち話も何だし、そこの椅子にどうぞ」

 

アリスは3人に座るように促して、自身も座った。

シノンとリーファは頷き、大人しく座る。アスナはというと、相変わらずアリスを睨んでいるが、「ふう」と自分を落ち着かせるために息を吐いて、彼女の前に座った。

 

「どうして…あなたがキリトくんを保護してるの?」

 

「……それは、口で言うよりキリトを見てもらった方がいいわ」

 

アリスは立ち上がり、車椅子に座っているキリトを彼らに見せた。

その姿に…3人は絶句した。

左目は陥没して、右腕も失われいる。果てには3人を見たキリトは残された右目から涙を流し、「あ……あ……」と、か細い声しか発せなかった。そのあまりに酷い姿に、アスナとリーファもキリトと同様に涙を止めることが出来なかった。

 

「今はまだ良い方よ。最初…湖で見つけた時は身体中に火傷があって、見るに堪えなかったわ…」

 

アスナは涙を拭いて、唐突にアリスの手を取った。

ビクッとアリスは身構えてしまったが、アスナの口からは感謝の言葉が出てきた。

 

「ありがとう…!キリトくんを…助けてくれて…」

 

「……」

 

「じゃあ、あとは私たちがどうにかするから…キリトくんを…」

 

「何を言ってるの?返すわけがないじゃない」

 

「え…」

 

茫然とするアスナの手を振り払い、アリスは公言した。

 

「キリトをあなたたちの元に返す気はないわ」

 

その発言に落ち着きを取り戻しかけていたアスナが再び激昂する。

アリスの胸ぐらを掴み、顔を近付けて怒鳴る。

 

「どうしてよッ⁈キリトくんは私のものよ‼」

 

「キリトとあなたの関係を知らないわけではない。結婚してることくらい知ってるわ。だけど、あなた…彼に何をしてあげた?」

 

「何って…」

 

「キリトに対して何をしてあげたって聞いてるのよ。1週間も、勝手に死んだと決めつけて、1人のうのうと生きていた。キリトがどういった理由であんなボロボロだったかは知らないけど、その様子から見て、あなたのためだったようね。そんな彼が命を懸けたのに…見捨てられて…。だから、今もなお心に傷を負って…未だに元に戻らないんじゃないの?」

 

アリスの説教にも近い言葉に、アスナは全く反論出来なかった。

確かにアスナはキリトがまだ生きていると思ったこともなかったし、探そうとすることもなかった。そして…アスナの心にこんな思いが漏れてくる。

 

『本当に…私はキリトくんを愛していたのだろうか…』と。

 

だが、アスナはその考えを頭を振って吹き飛ばし、ならば…と思い、アリスにこんな提案をする。

 

「それなら、キリトくんをかけて決闘よ」

 

アリスは突然の宣戦布告に、少し驚いたような表情を作ったが、すぐに冷静さを取り戻し、言い返した。

 

「受けて立つわ。どれくらいの実力かは分からないけど、負けないわ」

 

「早速あっちでやりましょう。結果は決まってるけど」

 

煽るような物言いに、アリスの表情が固くなる。

先にアスナが自宅から出て行って、アリスはその後ろ姿を眺める。

そして、右手に握る愛剣『飛竜刀【光月】』を見る。

約数か月と使っていない剣ではあるが、さっきアスナと鍔迫り合いになった時に、感覚が失われていないことだけは分かった。

負けない。

その気持ちだけがアリスの心を埋め尽くす。

その様子を虚な目で見詰めるキリトは何も答えることなく、もう一度…涙を一筋流すのだった。

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