ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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あまりに前回の話が短かったので、続けて投稿しました。


第37話 劫炎(ごうえん)

湖の前でアスナは白銀の剣を、アリスは黄金の剣を抜く。

アスナはアリスの装備を訝しげに見ていた。

さっきの真っ青な私服とは打って変わって、重厚な黄金色の鎧を纏っている。あんなのを着ていて、動けるのかと思うが、それは剣を交われば分かることだと思い、自身は剣を強く握った。

既にデュエルのカウントダウンは進んでおり、お互いに剣を構えて、秒数が0になるのを待っている。一方、シノンは呆れ顔で見て、リーファはキリトの車椅子を押して、オドオドした様子で2人を見ている。

はっきり言って、お互いに相手の実力がどれくらいか分からない状態でのデュエルは極度に緊張してしまった。唯一分かることは、さっきの鍔迫り合いから、筋力パラメータが同等だってことくらいだけだ。

アリスは剣を突き出す形で構えるアスナを睨み、足腰に力を込める。

そして、秒数が0になった瞬間、2人の身体が同時に動き、剣と剣がぶつかった。

衝撃波のようなものが周囲に広がり、剣が交わったことで火花が散り、お互いに殺気にも似た表情が見えた。

 

「キリトくんは返してもらう!あなたなんかに渡さない‼︎」

 

「あなたが捨てたようなものでしょ⁈都合が良すぎるのよッ‼︎」

 

アリスは剣を振るい、鍔迫り合いの状態から外した。アリスは剣に白いソードエフェクトを纏わせる。これは重撃SSバーチカルブレイクだ。

アスナは見たことないソードスキルに目を見開き、対応するソードスキルを発動するのが遅れてしまった。なので、アスナは身体を後ろに回転させて、そのソードスキルを避ける。アリスの剣は空を斬り、逆にアスナは4連撃SSガドラプル・ペインを発動する。

4度の突き攻撃が1度に来るようなソードスキルに対応出来るはずがないと思っていたアスナだったが、アリスは歯を食いしばって、その4連撃をなんと刀身だけで防いだ。

しかもソードスキル無しでだ。

これにはアスナだけでなく、シノンも驚いた。

シノンでも一応あのソードスキルは弾き返せるが、ボウスキルがなくてはそれは出来ない。だが、アリスはソードスキルもなく、実力だけであの攻撃を防いだ。

下手をすれば実力はアスナよりも上の可能性があるとシノンは心の中で思った。

 

「くっ…!」

 

だが、防いだといえ、腕に来る衝撃は凄まじいものなので、アリスは険しい表情でアスナを睨んだ。

その睨みも、アスナにとってはかなり効果的だった。

想像以上の実力者に出逢ってしまったと同時に何故ここまで実力を有しているのに、どうして攻略に参加しないのかとも思ってしまう。だが、今はそんな状況ではない。

ガドラプル・ペインを防がれた今、アスナは更なるソードスキルを使って、相手の実力を測ろうと思った。最悪、マズイ状況になった場合は奥の手である【氷界創生】を発動して、一気に潰す予定だ。

 

「はあっ‼︎」

 

今度は重突撃SSアニートレイを放つ。青白いソードスキルが、アリスに向かっていく。

彼女はまたソードスキルを使うことなく、それを剣で受けるが、今度ばかりはソードスキルを受け止めることが出来ずに、剣先が腹に刺さり、吹き飛んでしまう。

 

「ごはっ…!」

 

軽く吹き飛び、口から血を吐き出すアリス。

そして、アスナは気付いてしまった。

アリスは簡単なソードスキルしか使えないのだということを…。

 

「アリス…あなた…」

 

アスナはもう降参した方がいいと告げようとする。

理由としては、これ以上やっては一方的な戦いになってしまうと思ったからだ。

だが…。

 

「!」

 

ヒュンと風を斬るような音がしたと思えば、アスナの前に口から血を垂らし、歯を食いしばるアリスが立っていた。重厚な鎧を身に纏っているにも関わらず、俊敏な動きを可能にしていた。更に黄金の剣に先程と同じソードスキル、バーチカルブレイクを発動し、アスナに叩き込んだ。

 

「くっ!」

 

アスナも叩き込まれる前に、重撃SSスプリントで受け流す。

突き攻撃でアリスの剣の軌道を逸らすのだが、剣の切っ先はアスナの服を掠った。そこからアリスの剣を弾き、後ろへ下がるアスナは荒くなった息を落ち着かせようと、深呼吸を繰り返す。

逆にアリスは今の速度で繰り出しても、弾き返されたことに少し驚愕していた。彼女が知る限り、今の攻撃を受け止めた人はいなかったからだ。

 

「どういう反射神経を持っているのよ…」

 

苛つきを交えた口調でアリスが呟くと、アスナも同じように言った。

 

「あなたこそ…その異常な攻撃センス…驚いたわ」

 

それからアスナは剣をアリスに向け、強く握った。と同時に、アスナを取り巻く空気が急速に冷えていく。アリスは何事かと思ったが、アスナの服に氷のような模様が浮かび上がり、栗色の瞳が白銀色に変わったことに気付き、あれが【白氷】の名がついた由縁だと理解した。

 

「出来れば使いたくなかったけど…。これを使わないとあなたには勝てない」

 

「………」

 

アリスは黙ったまま、相手の動きを見る。だが、意志とは別に身体はどんどん後退していくばかりで、前に行こうとはしなかった。彼女の本能が…アスナの力に恐怖しているのだ。

アスナはそれを悟ったのか、剣を地面に突き刺し、氷のサークルを形成していく。瞬く間にサークルはアリスの足元にまで広がり、その華奢な脚を氷で固めて拘束した。

 

「!」

 

「逃さないわ」

 

「逃げるなど…私は…!」

 

「強がっても無駄よ。だってあなた…」

 

そこまで言って、アスナの足が動いた。氷の上で瞬時に動いて、アリスの間合いに入っていった。剣には青白いエフェクトを纏わせて…。

尖撃SS氷刃撃を放った。

瞬発的にレイナは重撃SSバーチカルブレイクで受け止めようとしたが、圧倒的にアスナのソードスキルの方が威力は高く、アリスは氷上を転がる。

 

「くっ…!」

 

そこから更にアスナは剣に氷を纏わせ、鋭さを増させる。

そこから尖4連撃SSガドラプル・ペイン【凍】を発動させ、アリスの重厚な鎧を砕いていく。

 

「がはっ……ッ‼︎」

 

更にアリスは氷上を転がるが、剣を氷に突き刺して、途中で止まる。

今の4連撃はかなり重いものだと思われたが、鎧のお陰か耐え抜いていた。口元には血が垂れており、息遣いも荒くなっていたが、戦う意志を見せる目だけは失っていなかった。

そして、ここでアリスは今まで着ていた黄金色の鎧を外し、ゆっくりと立ち上がる。

アリスもこのままではアスナに勝てそうもないと悟り始めていた。

負けを潔く認める方が楽かもしれない…。

そう思った時、横で見ているキリトの虚な瞳に気付いた。

誰にも向いているわけではなく、ただ虚ろに虚空を見詰めているだけであるが、そのキリトを助けたのはアリスであり、彼女はキリトのことを愛し始めている。

そのせいか、負けたくない気持ちが一気に上がり始める。

そして、愛剣『飛竜刀【光月】』を強く握ると、突然大きな変化が訪れた。

バン!と小さな爆発音がしたかと思えば、地面の氷が溶け、シノンたちに届くまでの高熱が発生する。

 

「な、何⁈」

 

アスナが高熱に驚いていると、今度はアリスの身体から青い炎が出て、彼女の身体を覆っていく。そして…最後に派手で青い爆発を起こして、アリスは更なる高みへと昇った。

驚きで目を閉じていたアリスがが恐る恐る目を開くと、メッセージに『オリジナルスキル:【劫炎(ごうえん)】を入手しました』と出ていた。身体中に青い炎が纏っており、彼女の目はスカイブルーから濃いダークブルーに変わっていた。更に服にも濃い青色の炎模様が浮かび上がっていた。

そして、アリスは一呼吸を置いてから、アスナに向かっていった。彼女の剣には青い炎とエフェクト、2つを纏って、進化したソードスキルがアスナを襲う。

劫撃SS蒼炎の震撃。

打って変わって、アスナは炎とは真逆の氷を纏わせて、尖撃SS氷刃撃で迎え撃つ。

2つの正反対のソードスキルが衝突すると、周囲の地面を抉って、火花が大きく炸裂する。

アスナもアリスも必死だった。

2人とも、愛する人を奪われないために戦っている。

そのためならば、どんなことだって出来る覚悟でいた。

2人の放ったソードスキルは途中で終わってしまい、2人はすぐに距離を取って、新たなソードスキルを発動しようとする。

 

「あんたなんかに…!」

「あなたなんかに…!」

 

2人は剣をギュッと更に握って、一気に突っ走る。

 

「キリトくんを渡してたまるかぁッ‼︎‼︎」

「キリトを奪われてたまるかぁッ‼︎‼︎」

 

アスナとレイナのソードスキルだけでなく、想いまでもが激突する。

アスナは尖剛突撃SS氷剛刃凍撃、アリスは劫炎突撃SSブルーフレイムストライクを放った。

ところが…その時、白い光が2人の間に割って入った。

2人のソードスキルと白い光がぶつかった途端、凄まじい爆発が起きて、シノンたちの視界を奪った。煙と塵が周囲に舞って、どうなっているか分からなかったシノンたちだったが、数十秒後…その視界が漸く見えて来た。

噴煙の中では、アスナ、アリスが共に立って固まっていた。

発動していたオリジナルスキルは消えている。

だが、2人の間には…キリトの愛剣『白雷剣エンクリシス』が輝きを失いつつ、2人のソードスキルを受け止めていた。

独りでにキリトの剣が動いたことに2人は驚きを隠せていなかった。

そして、2人はほぼ同時にキリトの方を見た。

もちろん、剣は鞘から抜かれており、キリトの右目からは悲痛な視線が刺さった。力のない視線ではあったが、自分のことで争ってほしくない…そういった様子のものだった。

 

「キリトくん…」

 

それを見てしまったアスナは剣を落とし、思わず自分はなんてことをしていたんだと、後悔が心の底から這い上がってくる。

アリスもほとんど同じようなものだった。

切っ先に付いた僅かな血痕に、悔恨がばかりが出てくる。

悲しみに暮れる2人に、シノンがゆっくりと近寄り、アスナに話しかける。

 

「アスナ、今日は退きましょう…。アリス、キリトは暫く預けるわ」

 

アスナは力なく頷き、落とした剣を拾った。

そして去り行くアスナの傍らを支えつつ、アリスにこうも言った。

 

「アリス、あなたの気持ち…分からない程私もバカではないわ。だけど…人を傷付けてまで欲しいと思うのは…少し違うんじゃないの?」

 

その言葉はアリスの脳裏にこびり付いた。

その後、すぐに3人はアリスの前から消えた。

回復結晶を使い、HPを満タンにしてから、車椅子に座るキリトへと足を進める。

左手にはキリトの剣を握り、その鞘にもとに戻す。

反応がないキリトの前で座り、アリスは涙目になって、キリトに問いかけた。

 

「ねえ…私、間違ってたの?私は…どうすればよかったの…?」

 

もちろん、キリトは答えるはずもなく、静寂のみが…湖が眺望出来るこの広場を流れるのであった。




【補足】
劫炎(ごうえん)
完全オリジナルスキル。
キリト、アスナ、シノンの持つオリジナルスキルと同等の力を持っている。
蒼炎による防御力上昇と剣に蒼炎を纏わせることによる攻撃力上昇を持っているが、俊敏性は落ちる。
リオレイア希少種が持つ特殊な状態をベースにしました。
当初はMHW:Iから登場した【金火竜の真髄】にしようと思いましたが、アリスが状態異常(リオレイア希少種だから毒)を操るのはどうかと思い、この状態をそのままスキル名に変えて、採用しました。
理由はもう一つ。蒼い炎って、カッコよくないですか?
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