ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第3話 サンドイッチ

アスナの前でキリトは覇王剣に青白いエフェクトを帯びさせて、ドスイーオスに正方形の斬撃を与えた。

あれは片手剣水平4連撃SSホリゾンタルスクエアだ。

キリトがよく使っているのソードスキルだ。その攻撃に怯んだところでアスナは細剣に力を込め、単発SSリニアーを放った。彼女の愛剣『ロストバベル』はドスイーオスの頭を貫いて、相手を絶命させた。

敵が居なくなったところでキリトとアスナは息を吐いて、力んだ身体を和ませた。

 

「よし、行こうか」

 

「…うん」

 

アスナは胸に手を当てて、ときめく気持ちを抑えてそう答えた。

先程、クラディールに腕を掴まれて連れて行かれそうになった時、キリトは一度、アスナを渡そうとした。その時は、アスナはキリトにとってその程度の存在だったんだと思いながらも、抵抗を続けた。このまま連れて行かれてたまるかと、思った時、彼女の後ろから黒い腕が伸びて来てクラディールの腕を掴んで助けてくれた。

アスナは嬉しかった。

見捨ててなんていなかったんだと、改めてそう思えて、泣きそうになったのは彼にも言えない秘密だ。

今だって、彼女を守るために前に立って先導してくれている。

こうしてくれる彼に甘えたくなってしまう気持ちが大きくなるが、どうにか抑え込む。

実際はキリトにそんな気持ちはないんだろうなと思うアスナ。だが、やっぱりこの(くすぶ)る気持ちは止められそうにない。

 

「アスナ…あれを見ろよ…」

 

突然ずっと言葉を発さず、振り向くこともなかったキリトがアスナの方を見て、指を指した。

彼が指す先には巨大な扉が(そび)え立っていた。地獄に落とされた人間が凝集された様子を模された扉があって、色は黒に近い紫色だった。高さはキリトとアスナの身長を足しても全く届きそうになかった。

 

「これって…」

 

「間違いない…。ボス部屋だ…」

 

「どうしよう…入る?」

 

「バカか。入ったらいくら俺たちでも飛んで火に入る夏の虫だ。でも…中の様子を見るくらいなら問題ないと思う」

 

「そ、そうね…。攻略のヒントでも見つかればいいもんね」

 

「一応、転移結晶は持っておこう」

 

アスナは頷いて、キリトと共に重々しい扉を一緒に開ける。

ギギギ…と金属と金属が擦れ合う音が聞こえると、中には青い炎が立ち上っていた。

その炎に照らされて…1つの大きな巨体が映った。

青白い鱗をその身に纏い、黄色の巨大な尾、口元から漏れ出る冷気…。

姿を見ただけでキリトとアスナは身体を固めてしまった。

その怪物は2人に群青色の目を向けると、高々と咆哮を上げる。

そこで漸く2人は間抜けな悲鳴を上げながら、その場から逃げ出すのだった。

 

 

 

 

ボスの咆哮とその姿に完全にビビってしまった2人は速攻で逃げ出した。

キリトを先頭にアスナと共に駆けて、お互いに息が切れる程遠くのところまで走って、漸く足を止めて地面に座った。

 

「はあ…はあ…。あれは、インパクト絶大だな…」

 

「うん…。見た目は尻尾で攻撃するタイプに見えたけど…他にも何か持ち合わせていそうだね…」

 

「同感だ。何にせよ、タンクはかなり必要そうだな…」

 

「……まあ、さっき走っちゃったことだし、ここでお昼にしましょうか」

 

「え?」

 

キリトはなんと間の抜けた声が出たのだと思った。

アスナが昼御飯を持って来てくれたと分かると、どこか嬉しかったからだ。理由は、考えなくても分かった。

そして、懐かしい思い出がキリトの脳裏に蘇る。

 

「サチ…」

 

「?なんか言った?」

 

「あ、いや別に…。それにしたって…アスナ、どうして昼なんか作ったんだ?」

 

「どうしてって……お腹減るからに決まってるでしょ?それに今聞きたいことが出来た。キリトくん、どうして盾を持たないの?」

 

キリトは一番聞かれたくないことを聞かれ、無意識のうちにギクッとしてしまう。

 

「だって、片手剣の最大のメリットは盾が持てることだし、キリトくんが盾使っているの見たことない。私はスピード重視だから持っていないんだけどね」

 

「………」

 

キリトは何とも言えない。

この秘密をアスナはもちろん誰にも知られるわけにはいかないキリト。

これが知られたら…静かに生きていけないからだ。

 

「…まあいっか!誰しも秘密は1つや2つあるもんね!はい、これがお昼!」

 

アスナがポーチから出したのは、サンドイッチだった。

キャベツにトマト、美味しそうなソースが絡んでいる肉が挟まった分厚いサンドイッチ…。

こんなものを食べれるのかと思ったら、自然とお腹が鳴った。

 

「ぷっ…そんなにお腹が減っていたの?食いしん坊さんだね、君は」

 

「当たり前だろ?俺は()()()()()()()()()()()()()は、ろくに食べ物が口を通らなかった…………!」

 

「……え?」

 

キリトも今の発言は相当マズイと感じた。

彼は今までアスナにはきちんと食事を取っているかと聞かれて、適当に受け流していたのだが、これで全く食事を取っていないことがバレてしまった。

 

「食事取ってなかったの?つい最近まで?どうして?」

 

「……ちょっと…な」

 

キリトはそう言って、がぶりとサンドイッチに食いついた。

レア食材…程ではないが、普段のキリトからしたら絶品ものだった。

 

「美味い!何でこんなに美味しいんだろう?」

 

「それは君がろくに食べてなかったからでしょ?」

 

「そうかもだけどさ、やっぱアスナのご飯は最高だよ。これを毎日食べられたらさぞ幸せだろうなあ…」

 

そう言うと、アスナは恥ずかしかったのか顔を赤くして俯く。

そして小さな声で言った。

 

「キ、キリトくん…言い過ぎだよ…」

 

そうやって楽しく昼食を摂っていると、転移エリアから1つのグループが現れた。

黒いマントに鎧…あれは…解放軍だ。

だが、やけに疲弊しているように見えた。その中のリーダーらしき者が2人に近付いてくる。

 

「そこの2人、私たちが何者か分かっているな?」

 

「ああ、解放軍だよな。俺はソロのキリトだ」

 

「ふむ。ここの攻略はどこまで行ったのかね?」

 

「…どうしてそんなこと聞くの?」

 

ここでアスナが割って入った。

アスナが苛つくのも無理はない。軍はゲームクリアという名目で大量のプレイヤーに税金やら、物資の強奪など何でもやり放題だ。

その軍が2人の進捗情報を聞きたいなど…何をしたいのかよく分かる。

 

「どうせ、そこまでのマップを提供しろ…だろ?」

 

「分かっているなら話が早い。早速渡してもらおうか」

 

「ちょっと待ちなさい!何の見返りもなしにマップ提供って…道理に合わないわ!」

 

「黙れ!我々はすぐにでも現実に帰還するために必死に命を張っているんだ‼︎貴様らのような子供みたいに遊んでいるわけではないのだ‼︎」

 

アスナの怒りも頂点に達したのか、剣に手が伸びそうになった。

ここで問題を起こしたら、キリトにまで被害が及ぶため、彼は手を上げてアスナの暴挙を止めた。

 

「アスナ、元々このマップは街に戻ったら掲示するつもりだった。別に構わない」

 

「でも……」

 

キリトは素直にこいつらにマップを渡した。

彼はふむふむと頷く。

 

「ご協力感謝する」

 

「1つ言っとくけど、ボスには挑まない方がいい!さっき見てきた!お前らの装備と体力でどうにかなる相手じゃない」

 

「…………」

 

彼は何も言わなかった。

部下たちに早く立つように言われ、ノロノロと迷宮区の奥へと進んでいった。

彼らが見えなくなってから、アスナはキリトに聞いてきた。

 

「これで良かったの?」

 

「警告はした。あとはあいつら次第だ。流石の奴らもボスにあの数で挑むことはないと思うが…」

 

だがその考えは甘かった。

奴らには、『逃げる』という文字がなかったのだろう。

突然、迷宮区に甲高い悲鳴が鳴り響いた。

 

「…!今のって!」

 

「まさか…あいつら!」

 

キリトとアスナは先程のボス部屋へと急ぐのだった。




【補足1】
アスナの武器『ロストバベル』
3Gなどで登場する金色のランス(本作、アスナは盾を持っていない)。
個人的に見た目は格好いいと思っています。



それとボスが何か考えてみてください。
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