ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第40話 動き出す巨龍

Pohとの戦いが終わり、アスナはログハウスのベッドでキリトと共に眠りに就いていた。彼の身体を優しく抱き締めた形で寝ていたアスナであったが、1つだけ…気になることがあった。

それは寝ている時も片時と離さない紅い剣のことだった。

何故か分からないが、Pohの黒剣と交えてから、炎を纏いながら刀身を取り戻していき、別の姿となって復活した『覇王剣』。そこから妖しげなものが漏れている気がしてならなかった。

 

「もう起きようか…」

 

アスナはそう呟き、寝間着から私服に変えて、キリトを車椅子に乗せる。あの時…意識を取り戻したのでは…と、微かな期待を持ったが、そういったことは全くなかった。

あの後もキリトは虚空を見つめたままで、どうやって剣を握ったのかと思うくらい身体は動かなかった。

やはり、この剣に何かあるのでは…とアスナは思い始めていた。

 

「…今日、リズのところに行ってみよう。武具屋なんだから、少しは分かるかもしれない」

 

アスナはそれからすぐに、リズベットに連絡を取るのだった。

 

 

 

「全く…。アスナのお願いだから聞いてあげたんだからね?感謝しなさいよ?」

 

「ありがとう、リズ。見てもらいたいのは…この剣なんだけど…」

 

アスナは車椅子に乗り、左腕で軽く支える紅剣を取る。

すると、キリトの身体が少し強張り、左腕が僅かに力んだ。まるで、この剣を奪われたくないように見えたアスナは優しく語りかける。

 

「ちょっとだけ見せるだけよ?お願い、ね?」

 

そう言うと、キリトの身体はゆっくりと身体を弛緩させていく。

 

「ありがとう」

 

彼の頬にキスをし、アスナはその剣を彼から取る。

その時。

 

「‼︎」

 

凄まじい悪寒と何者かの視線がアスナを襲った。

今まで戦ってきたどのボスモンスターよりも…恐ろしくて、威圧感のある視線にアスナは耐えられず、悲鳴を上げながらその剣を床へと投げ捨てた。

 

「い、いやッ‼︎

 

ガタンと大きな音を立てて、剣は床に落ちる。

突然の事態にリズベットは動揺を隠せず、身体を震えさせるアスナの傍に近寄った。

 

「ちょっと!大丈夫⁈どうしたの?」

 

「この剣を…掴んだ途端…恐ろしい視線を感じて……怖くなって…」

 

「何言ってんの?そんなの聞こえなかったわよ?幻聴じゃないの?」

 

「幻聴…そんなはずは…」

 

気を取り直して、アスナは再び紅剣に手を触れる。

今度はそういった視線や恐怖も感じなかったため、胸を撫で下ろす。

リズベットの手元に置き、武器の鑑定を頼んだ。

 

「お願いね。全て教えて」

 

「了解。えーと…なになに…」

 

リズベットは紅剣に軽く触れて、そのステータスを見る。

すると…見る見るうちにリズベッドの顔面は蒼白になっていった。

 

「どうしたの?」

 

「嘘…こんなの…信じられないステータス…。キリトの『覇王剣』やアスナの『アイシテューレ』なんか比べられないレベル…」

 

リズベットがそれをアスナを見せる。

そこにはこう書かれていた。

 

 

『獄・覇王紅剣【(ほむら)

 怒れる邪龍から作られし、全てを喰らう伝説の太刀。

 一太刀は大地を紅蓮に染め上げ、魅入られた者には世界を終末に導く

 力を与えると言われている。                』

 

 

「…どういうこと?」

 

「分からないけど…なんかやばそう。これは処分した方が…」

 

リズベットがそう言った途端、紅剣が勝手に動き出し、リズベットの方面へと刃を向けた。アスナはすぐに細剣(レイピア)を抜き、紅剣を弾いて、遠くに飛ばす。

 

「何よ…この剣…」

 

「リズ、今日は帰るわ。ありがとう。確かにこの剣は危険な気がする。どうすればいいか考えるわ」

 

アスナはそう言って、足早に武具屋を後にした。

残されたリズベットはあの紅剣が与えた衝撃に、身体が硬直してしまうのだった。

 

 

 

勢いのままにリズベット武具店を出たアスナだったが、キリトの手に握られた紅剣が気になって落ち着きを失っていた。

先程、リズベットに向けて紅剣は勝手に動き出し、明確な殺意を持っていた。恐らく、『処分』という言葉に反応したのだろう。

 

「どうしよう…。このままじゃ…キリトくんにも何か影響が出るんじゃ…」

 

そんなことを呟きながら、街中で車椅子を押しながら歩いていると、不意に周囲の視線が『注目』から、『恐怖』に変わった。何事かとアスナが周囲を見ると、ほとんどのプレイヤーがアスナの後方を見つつ、逃げていた。

何かいる…。

そう思って、アスナはゆっくりと後ろを向いた。

そして、そこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…獣の目があった。

(いびつ)な角を冠した紅蓮色の鱗を纏った龍が…そこにはいたのだ。それを見たアスナは目を丸くし、思わずキリトが持つ紅剣を取って、投げ捨てた。

それからすぐにアスナは転移結晶でログハウスに逃げ戻った。

 

「はあっ…!はあっ…!」

 

身体中から汗が噴き出す程に恐怖するアスナ。

 

「何…何なの…あの龍は…」

 

そう呟くが、何なのかは分かっていた。

キリトが倒したという伝説の龍『ミラバルカン』に間違いなかった。

紅剣が何か影響を及ぼしているとアスナは予見していたが、あそこまで衝撃的なものであるとは、想像以上だった。

だが、その剣も捨てた。

もう大丈夫だろうと安堵しかけた時、ログハウスの壁を破って、何かが飛んできた。それを見た時、アスナの恐怖は限界を超えた。

正しく…あの紅剣だった。

僅かに紅い妖気を出しつつ、ゆっくりとキリトの腕の中に移動して、収まった。

 

「どうして…何よ…これ…」

 

あまりの恐怖で、アスナはキリトと一緒にいること自体に耐えれなくなりそうだった。どうしたらいいのか…アスナは頭を抱え、悩みに悩んだ結果、アリスの自宅へと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第25層の洞窟の中…。

そこには巨大な岩のオブジェがあり、そこに巻き付く形で1体の巨龍が眠りに就いていた。

ところが…その龍が突然長い眠りから目を覚ます。

下の層から感じる恐ろしい気配にその龍は耐えれなくなり、逃げるように自らの住処を破壊し始める。

山の如き巨龍が怯え、逃げ出す程の存在とは一体何なのだろうか…。

それが分かるのは、また少し先の話。

そして、巨龍は洞窟を抜け出し、第25層にいるプレイヤーを全て殺しながら…更なる層へと移動を開始するのだった。

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