ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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今更ながらの人物が登場します。


第43話 持てる力を全て用いて

アスナは今、目の前に広がる光景に唖然としていた。

あんな演説みたいなメッセージを送っておいて、彼女自身は誰も来ないのだろうと軽く諦めていた。だが、気分乗らないまま、第87層攻略広場前に行ってみると、そこら中に人、人、人がいた。

驚きのあまり固まっていると、肩に軽く手を置き、シノンが言った。

 

「みんな、アスナの言葉に動かされたのよ。やるじゃん」

 

「みんな……」

 

思わず泣きそうになるが、アスナはそれを抑える。

泣くのは勝利してからだ。そう決めたアスナは、少し高い場所に立ち、剣を抜いた。

 

「みんな!来てくれてありがとう‼︎今日…これからの戦いは今までの攻略の中で最も厳しいものになると思う。怖いかもしれない…。だけど、私たちがボスに挑んだ時点で、私たちは己の恐怖に勝った!だから絶対にクリアしよう!」

 

アスナの掛け声と共に約3600人が一斉に声を出す。

この勢いのまま、アスナたちは全員の前に立ち、転移結晶に手をかける。その途端、プレイヤー全員が光に包まれ、とある場所へと転移された。

あまりの眩しさに目を開けた時には、もう状況は一変していた。

エリア中央以外は底が見えない崖となっており、プレイヤーが立てる地面は中央の剣のような形状の山と周囲にある崖だけで、高いレベルのプレイヤーは山に、その他はアスナたちを取り囲むように配置されていた。もちろん、崖にはバリスタや大砲、他にも見たことがない兵器が残っていた。

だが、それは中央の剣山にいるアスナ、アリス、シノン、など、合計数百人のプレイヤーには関係のない話だった。剣を手に握っていても、肝心のボスの姿が見えず、右往左往してしまう。

アスナも周囲に警戒心を広げながら、辺りを見回す。すると、剣山の頂上で紅く何かが光った。それがキリトの剣であることくらい、すぐに分かった。

アスナはボスのことも忘れて、凄まじい角度で(そび)え立つ剣山を登ろうとした時、『奴』は動き出した。

ゴゴゴ…と岩石が削れる音に何かが近付いてくる音が同時に聞こえ始め、遥か地下から身体に刃を纏った巨龍がとうとう姿を現した。

それは山肌をも切り裂き、抉られた跡を残し、自らの巣に入ってきた愚か者を見詰める。

蛇のような見た目だが、手や足もあり、全てを逸脱した巨体に全てのプレイヤーが固まってしまう。そして、数秒後…剣山に崖、地面をも吹き飛ばすのではないかと思える程の咆哮を放ち、戦いが始まりを迎える。

誰からの指示もないのに、誰かがバリスタをダラ・アマデュラに向けて発射する。バチんと身体に当たる音がしたが、強固な堅殻には刺さることもなく、弾き返された。

それと同時に、ダラ・アマデュラも剣山と崖を行き来し始める。ボスにしてみれば、単なる移動でしかないが、アスナたちプレイヤーから見れば、動くだけでも危険性が高い。

実際、ダラ・アマデュラの動きを読めず、奴の刃に犠牲になるプレイヤーも数十人はいた。

これだけで怯むわけにはいかず、アスナたちも無鉄砲に突っ込んでいく。どこを攻撃すればダメージが入るのか…考えている時間はなかった。軽い動きだけでも大ダメージのダラ・アマデュラに悠長なことなど言ってられなかったのだ。アスナたちに続いて、周りの崖にいるプレイヤーも1人1人が必死に大砲の弾を運んで装填したり、よく分からないスイッチを作動させようと奔放したりしていた。

だが、スイッチは固く閉ざされているのか、ピクリとも動かなかった。それに嫌気が刺したエギルは、「退け!」と叫び、スイッチを抱く。そして、自らのパワーを全開にして、動かそうとすると、ミシッという音の後に僅かに動くのを確認した。

 

「お前ら!一緒に引っ張るぞ!」

 

エギルの他にも数人のプレイヤーが束になって、『せーの』の合図で動かす。すると、バキバキという音が聞こえ、固く閉ざされていたスイッチが左から右へと動いた。

すると、崖の壁面から巨大な槍…撃龍槍が6本飛び出し、ダラ・アマデュラの身体の刃を砕きつつ、突き刺した。流石の奴もこれは流石に効いたのか、大袈裟な怯みの後に頭を剣山の中腹…つまりアスナたちのいる場所に降ってきた。

 

「避けて‼︎」

 

もちろん、降ってくる頭も脅威でしかない。

剣山全体が揺れる程のダウンを起こしたダラ・アマデュラの頭部にアスナたちは突撃する。

アスナは重突撃SSアニートレイを、アリスは重撃SSバーチカルブレイクを放ったが、鼻先に当たった瞬間、悉く弾かれた。お互いに顔を見合わせ、何が起こったのか分からなかった。気を取り直して、アスナはもう一度同じソードスキルをぶつけたが、同じように弾かれてしまう。

 

「こいつ…頭部の肉質が信じられないくらい硬い!」

 

「剣のダメージで無理なら…属性のダメージを使うまでよ」

 

アスナは『飛竜刀【光月】』を強く握り、【劫炎】を発動させ、一振りすると、頭部は蒼い炎で包まれた。あれはアスナに秘密にしていた劫柔撃SSダンシングフレイムだ。

その炎にダウンしたまま動かなかったダラ・アマデュラが突然、悲鳴を周囲に木霊させる。

 

「流石ね」

 

「昨日のメッセージと比べたら、大したことないわ」

 

アスナはその返事を聞いて、思わず笑みを浮かべてしまう。

アリスも同じく、勝てると思ったのか、安堵の表情を浮かべた。

だが、ここでダラ・アマデュラに変化が起きる。

頭部を纏っていた蒼炎を体内に吸収してしまう。そして、剣山の頂上へと動き出すと同時に黒い銀色の鱗を落としていく。しかも、その鱗は粉塵となって散り、爆発を起こす。

最終的に…ダラ・アマデュラは蛇の脱皮を終えたかのように、身体中の鱗、刃、爪、目に至るまで、何から何までを剥がし、美しく輝く金色の姿となった。そして…刃は赤く神々しく輝きを放っていた。

突然の変化にアスナたちのムードは一気に冷めていく。そして…青白い粉塵がエリア全体に広がると同時に…咆哮するダラ・アマデュラ。

そして…青い隕石がエリア全体に何十個と降り注ぐ。

全てのプレイヤーは逃げることだけで精一杯で、兵器は一瞬で壊されてしまった。逃げられなかったプレイヤーも多数いた。

隕石の襲来が終わった時には…もう誰しも諦めていた。

焦げた臭いが立ち込め、ダラ・アマデュラのHPバーは未だに3本は残っている。しかも、プレイヤーは約1000人近く殺されている。数で押すことも出来そうもなかった。

その時、誰かが叫んだ。

 

「おい!なんだあれ⁈」

 

アスナたちもその方向を見ると、確かにこちらに向かってくる赫い彗星が見えた。新たな敵かと思われたが、それはダラ・アマデュラの身体に直撃し、爆発する。ダラ・アマデュラも突然の襲撃に対応出来ず、背中の刃を砕かれ、大ダメージを負ってしまう。

そして、地面に降り立つ龍に乗っている人物にアスナは思わず叫んだ。

 

「シリカちゃん…!」

 

まさかのシリカだったのだ。

ビーストテイマーのシリカはにっこり笑って、アスナたちと同じ地面に立つ。

 

「遅くなってごめんなさい!『彼』を連れて来るのに苦労しちゃって…」

 

「『彼』って…この古龍のこと?」

 

シリカはその古龍の頭を撫でて、「良くやった」と褒める。

 

「私の相棒で、『銀翼の凶星』の異名で知られるバルファルクよ!名前はバル」

 

アスナたちはポカンとするしかなかった。

こんな強大な古龍を従えるシリカは、どのようなことをしたのかと聞きたくなった。

 

「私とバルであの龍をやっつけます!皆さんは下がっていてください!」

 

「危険よ!シリカちゃん!今のは不意打ちが効いただけで、2度も同じことが出来るとは思えない」

 

「…大丈夫です。私とバルは…」

 

バルファルクの翼から龍気が放出される。

 

「負けません!」

 

バルファルクは高速で高空域にまで上昇し、再び降下する。

赫くて彗星のように目立つバルファルクに狙いを絞ったダラ・アマデュラは口元に青い炎を溜めていく。

そして、ぶつかった途端、同じように龍気が頭部で炸裂するが、さっきと同じようになることはなかった。

ダラ・アマデュラは器用にバルファルクを喰らい付き、シリカ共々端の崖に放り投げる。

 

「シリカちゃん!」

 

すぐにエギルがシリカとバルファルクに駆け寄るが、シリカは片腕を失っただけで大した怪我ではなかった。問題はバルファルクで、身体中が焼かれた状態だった。

シリカはバルファルクの頭を撫でながら、こう言った。

 

「大丈夫だよ…。バルは頑張った…。頑張ったんだよ?ほら…ボスのHPは残り1本…。あとはアスナさんたちがどうにかしてくれるよ…。それに…キリトさんだって…いるんだから…」

 

シリカは上空から見えていた。

キリトが…必死になって、紅剣に手を伸ばそうとしているところを…。




【補足1】
『ダラ・アマデュラの肉質に関して』
今作はどこも非常に硬くなっている。腕はかろうじて斬れるが、頭部や身体の刃、腹、背中、尻尾など殆どの部位は『かなり高度な武器』でなくては弾かれる。

【補足2】
『天彗龍バルファルク』
【銀翼の凶星】の異名で知られる災厄の古龍。
今作はシリカの相棒として登場させました。高高度からの襲撃が何度でも行えるようになってるが、行えばバルファルク自身にもダメージが発生するので、無限には出来ない。
どこかで登場させたいと思ってたので、ここで出しました。

【補足3】
『シリカ』
武器として短剣を所持しているが、モンスターに乗って共に戦うのがメインとなっている。
ここで初めて登場させました。バルファルク同様、どこかで出したいなと思ってました。因みに登場が遅れた理由として、ビーストテイマーの設定を活かせるモンスターがあまり思い浮かばなかったからです。
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