ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第45話 紅焔の威光

爆散し、煙がもうもうとする中で、アスナはある一点を見詰めていた。

自分の前に立ち、紅剣を握る1人の《少年》を…。

そして、邪魔になった噴煙を紅剣で振り払う。

そこにいたのは…黒いコートを纏い、戻ってなかったはずの左腕をアスナの肩に回しているキリトだった。アスナは思わず夢ではないかと、声を絞り出した。

 

「キリトくん?キリトくん…なの?」

 

「見れば分かるだろ?俺だよ、アスナ。…ただいま」

 

「キリトくん……おかえり…」

 

キリトは少し笑って、目の前に(そび)える巨龍に視線を戻す。

すると、下からアリスの声と共に白雷剣エンクリシスが飛んできた。それをキリトは掴み、《二刀流》のスタイルになる。

 

「キリト!…これでケリを着けて‼︎」

 

「ああ…終わらせてやる」

 

キリトは2つの剣を同時に強く握る。

【纏雷】と、新たなオリジナルスキルが発動する。

紅剣から紅焔が沸き上がり、キリトの身体を覆う。そして、黒色のコートの右側に炎の模様が浮かび上がり、目の色も紅色になる。

【纏雷】もコートの左側に電撃の模様、目の色を青色に変えた。

 

 

新たな力…その名は【紅焔の威光】

 

 

ダラ・アマデュラは変化したキリトにただならぬものを感じ、剣山の頂上へと猛スピードで向かい、天に向けて咆哮する。

あの時と同じだ。

何か脅威になり得る者がいれば、即座に隕石を無数に落として、潰しにかかる。しかも今回はその隕石全てがキリト1人に向かって来ていた。

キリトは「はあ…」と深い息を吐き、剣を構える。

2つの剣にエフェクトを纏わせ、すぐ目の前にまで迫っている隕石にソードスキルをぶつける。

 

「せぇいッ‼︎」

 

白剣から繰り出されたのは7連撃SSデッドリーシンズだ。

たったの一撃で隕石を粉々に粉砕し、計7つもの隕石を破壊する。だが、隕石はこれで終わりではなく、もう1つ…格段に巨大なものが降って来ていた。

白剣によるソードスキルを終えたキリトには硬直が待っている。

このままでは攻撃を受けてしまうと思ったアスナは立ち上がろうとした時、今度は紅剣が眩しく光る。

ソードスキルによる硬直が起こらずに、新たなソードスキルの発動に成功したのだ。今度は重突撃SSヴォーパル・ストライクだ。

切先が隕石と衝突し、凄まじい衝撃波が起こる。

貫通させようと必死になるキリトだが、目覚めたばかりか…この【紅焔の威光】を扱い切れてないのか、徐々に押され始める。

 

「くっ……ぐぅ……」

 

ジリジリと押されるキリトにアスナは背中を押す。

 

「アスナ…!」

 

「行ける‼︎キリトくんなら…行けるよ!」

 

「ああ…このまま突っ切ってやる‼︎」

 

キリトも更なる力を込め、隕石だけでなく、ダラ・アマデュラの腹をも貫いてやろうと躍起になる。

 

「「はあああああああああああああああぁぁッ‼︎」」

 

アスナが剣の柄に触れた途端、その威力は倍増した。

アスナが1番得意としてるソードスキル…最上位突然SSフラッシングペネトレイターがキリトのソードスキルと融合し、新たなソードスキルが生まれる。

2人は全く気が付いてないが、それにより威力、貫通力が何倍にも膨れ上がり、巨大隕石は砕け、キリトだけ…突っ走っていく。

その姿を見たアスナは思わず叫んだ。

 

「勝って‼︎私の英雄ッ‼︎」

 

その叫びを聞いたキリトは微笑し、2つの剣に青いエフェクトを纏わせる。あれはアスナも何度となく見てきたソードスキルだ。キリトが最も得意とし、耐えたことのあるモンスターを見たことない代物…。

ダラ・アマデュラの背中を蹴って跳躍し、キリトは叫ぶ。そのソードスキルの名前を…。

 

「スターバースト…ストリーム‼︎」

 

だが、今回は今までのスターバースト・ストリームとは違った。

直接身体に当てるのではなく、16個もの巨大な斬撃が…ダラ・アマデュラの身体全体に降りかかるのだ。

斬撃はダラ・アマデュラの腕、刃、背中、腹などを容易に切り裂く。

周りで見ているプレイヤーは自分たちの苦労は何だったのかと思ってしまうほど、キリトのソードスキルは強力で…綺麗なものだった。

全ての攻撃を終えたキリトは剣山に戻り、二刀の剣を鞘に納める。

同時にダラ・アマデュラは口から蒼い炎を吐きながら、剣山に身体をぶつけ、そのまま息絶えた。そして… 『Great subjugation quest clear』、『大討伐クエストのクリア』の文字が出る。

一息吐き、アスナのところへ駆け寄るキリト。

 

「終わったぞ、アスナ」

 

「………」

 

「アスナ?」

 

「スー……スー……」

 

キリトは思わず、顔を緩めて笑ってしまう。

アスナをおんぶし、崖の方向に戻ろうとした時、剣山が音を立てて崩れ始める。中心にある剣山からジャンプして、崖に行くのはほぼ不可能だ。ここまで来て、最後の最後で奈落の底はごめんだ。

 

「くそっ…アスナが本調子ならまだどうにかなったのに…」

 

今にも足元が崩れ落ちそうな時、1つの矢がロープと一緒になって飛んできた。

 

「早く掴まって!」

 

「言われるまでもねえよ‼︎」

 

キリトはロープを腕に巻き付け、シノンたちが引っ張ってくれるのを待つ。そして、シノンが「せーのっ!」という掛け声と共に、キリトとアスナの体重をもろともせずに早急に引っ張られる。

その直後、見事に聳え立っていた剣山はダラ・アマデュラの死骸と共に奈落の底へと消えていく。キリトはアスナを落とさないように気を付けながら、その様子を見詰め続けた。

 

「ほら、キリト」

 

シノンとアリスが手を差し伸べ、2人は何とか生還する。

アリスは気持ち良さそうに寝息を立てるアスナに溜め息を吐くが、気持ちは何となく察せるため、何も言わなかった。

そしてキリトは…全員から抱き締められ、『戻ってきてくれてありがとう』と、感謝の応酬が続いた。

最後にアリスがキリトを誰よりも強く抱き締め、涙を流す。

アリスは今までキリトの目覚めを誰よりも望んでおり、介護してきた。しかも、アスナと同等の恋心を持っているのだから当然だが、キリトは…。

 

「く、苦しい…。それに、君は…誰だ?」

 

「え…」

 

明らかにショックを受けているアリスにキリトは少し動揺してしまう。

それを汲み取ったシノンは2人の間に割って入る。

 

「ま、今日はとにかく帰りましょう。アスナもだろうけど、キリトもみんなも疲れてるだろうし…」

 

「そうだな…」

 

シノンの一言で、生き残ったプレイヤーは次々と広場へと帰還していく。アリスはキリトをもう一度見たが、一刻も早くこの場から消えたかったのか、すぐ様帰還した。

最後にアスナとキリトが残り、戻ろうと思ったが、キリトだけ転移結晶を持っていない。寝ているアスナのポーチから失敬しようと手を伸ばした時…自身の腕が突然、あの紅龍の手に見えて、思わず尻餅を着いてしまう。

目を何度も擦り、もう一度見直すが、いつもの腕でホッとする。

疲れで幻覚でも見えているのだろうと、言い聞かせて、キリトたちも帰還する。

その様子を遥か遠く…向かいの崖から見ていたPohは口元を歪ませる。

 

「…この時を…ずっと待っていたぜ…」

 

その時のPohの腕は獣の腕…更には目は青白く光っていた。




【補足】
『紅焔の威光』
MHFにあった複合スキル。火事場、火属性攻撃強化、ボマーと攻撃力を底上げさせるスキルである。今作では更なる攻撃力アップにソードスキルの威力上昇、固有スキルもあるが、固有スキルはここでは触れないでおく。だが、決定的な弱点がある。それはスキル『代償』の発動。
この『代償』が何か…それも秘密にする。何故なら、後々の話に大きく関わるからだ。

それとアンケートの期限は次の投稿までにします。
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