ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第46話 伝えなきゃいけないこと

ギシッと2人の眠るベッドが僅かに揺れる。

その揺れで眠りから覚めたアスナは、隣で寝息を立てているキリトに安堵してしまう。つい先週までは一人で寝ていたベッドであったが、今はキリトが居る。

それだけでも嬉しくて、胸がときめいてしまう。

あの後…アスナはキリトを離さなかった。ログハウスに戻ってきたキリトを見たユイの反応は凄まじいものだった。暫くキリトを見詰めたまま固まっていると、今度はポロポロと涙を溢れ出して、キリトの胸に飛び込んで大泣きした。最初に出会った頃と大差ない号泣に流石のキリトとアスナも慌ててしまう程だった。

アリスに関してだが、彼女は何かを伝える前に2人の前から行方を眩ましてしまい、最終的にアスナもどうすることも出来なかった。

 

「キリトくん…」

 

眠るキリトの身体を優しく抱き締めて、その胸に頭を置こうとした時。

 

『近付くな……!』

 

突然アスナの耳に聞いたことのない声が入り、ビックリしてベッドから飛び起きてしまう。それに反応して、キリトも目を擦りながら起きる。起きたキリトの視界に入ったのはビックリして、茫然としているアスナの表情だった。

 

「ど、どうしたんだよ…アスナ?」

 

「えっ…いや、大丈夫!私の気のせいだったみたい…」

 

そうは言うものの、はっきりとした老将の声に動揺を隠し切れてないアスナだったが、キリトは深く聞くこともなく、上半身裸のまま、アスナに背を向ける。その背中には…激闘の証である火傷の痕が痛々しく残っていた。

その傷痕にアスナの手が触れると、キリトの身体がピクッと震える。

 

「ごめん、痛かった?」

 

「ちょっとピリついただけだよ。そこまでじゃ……」

 

突然キリトの背中に優しい暖かさが感じられた。

振り向かなくても…アスナがキリトの背中に抱き付いていることは容易に想像が付いた。

 

「本当に…この暖かい身体を感じられて…幸せ」

 

心臓が早鐘になるキリト。だが、この暖かさは心地良い。

 

「俺が居なくて…辛かったか?」

 

「辛いなんてもんじゃないよ。地獄…それが1番当てはまる」

 

「すまなかった。アスナを救うためとはいえ…こんなことになってしまって…。嫌な傷痕も残して…思い出させる羽目に…」

 

「キリトくんは謝らないで。戻ってきてくれただけでいい」

 

「…ありがとう」

 

そう言うと、アスナの顎をくいっと持ち上げて、可憐な唇を奪って、再びベッドに押し倒す。キリトとアスナの荒い息にお互いに官能が大きく湧き上がり、抑え切れないものが膨れ上がっていく。

 

「キリトくん……私…」

 

「ああ…」

 

キリトは再び口付けをして、共にした。

 

 

 

2人が交わっているところを、アリスは聴覚スキルで聞いてしまい、思わずスキルを消して、耳を塞ぎたくなってしまう。こみ上げそうになる気持ちを必死に我慢してロッジの近くの森の中で身を隠す。

アリスは結局こうなってしまうんだと分かっていたが、素直に喜べなかった。

キリトに対して恋心を抱いてしまったことを後悔し、あの時の生活がどれほど幸せで…充実していたことか…と。

溢れ出る涙を何度も何度も拭いながら、修理した自宅へと(きびす)を返すアリス。だが、帰ったところで悲しみは消えるどころか増すばかりで、更に涙を溢れさせる要因を生み出してしまうだけだった。

 

「う…うぅ…!キリ…トぉ……」

 

会いたくて堪らない…。

その気持ちが一気に増す。そんな自分が嫌になって、アリスはベッドに飛び込んで、シーツを頭から被る。その日はもう何もかも忘れたくて、早めの眠りにつくのだった。

 

 

 

 

よく寝た…と思いながらアリスはベッドから起きて、ドアを開ける。

すると…家の前で立っていた人物に驚愕する。

 

「どうも…と言うべきかな?アリス…」

 

キリトだ。アリスが恋心を抱いているキリトが立っていたのだ。それだけで昨日、一生分泣いたと思っていた涙が再び溢れ出して、彼女の頬を濡らす。それに驚くキリトだったが、彼を困らせたくないとアリスもすぐに涙を拭い、彼を真正面から見るが、その後ろには腕を組んで睨んで立っているアスナもいた。

アスナに対して、警戒心を露わにするアリスにキリトが説明する。

 

「あんな感じだけど…元はアスナが俺をここに連れてきて…」

 

キリトが言い切る前にアリスは彼を家の中に引き込んで、アスナから遠ざける。突然かつ大胆な行動にビックリするアスナはドアを壊してでも、キリトを取り戻そうと思ったが、あの時…レイナに言われた言葉に身体を止める。

 

『あなただって…愛する人を独り占めしたい気持ちは分かるでしょ⁈』

 

「……ふう、今日だけは特別よ、アリス」

 

アスナはそう呟いて、近くの木陰に腰を下ろす。

2人の話が終わるまで、大人しく待つと決めたのだ。アスナも…女子の心を無闇に(えぐ)ることはしたくないからだった。

 

 

 

 

キリトは突然のアリスの行動に驚きを隠せないでいた。

家の中に無理矢理引き込んだと思えば、胸に顔を押し付けながらも抱き付いたのだ。アスナに見られていないが、生きた心地はしないキリト。

それにキリトはアリスという少女をあまり知らない。

廃人同然の状態の時に、献身的に世話をしてくれたと、アスナから詳しく聞いてはいたが、実際どういう感じなのかは全くだった。

 

「あの…アリスさん?これは一体どういったことで…」

 

「キリトは…」

 

数秒の抱擁の後、アリスから発せられた言葉にキリトは絶句する。

 

「2人の女子に愛されたら…どうするつもりですか?」

 

「えっ⁈それはつまり…どういう…」

 

「私はキリトを愛しています。アスナなんかよりもずっと…」

 

告白にキリトは狼狽えるばかりだが、アリスはむしろ積極的だ。

彼の手を掴んで、豊かな胸に持っていこうとする。

それに気付いたキリトはすぐに手を振り払い、アリスの異常とも言える行動を止める。

 

「何するんだ⁈俺は今日、長い間、世話してくれたアリスに礼を言おうとも思ったけど…こんなこと…」

 

「たったそれだけ…それだけじゃ…満足出来ません!」

 

「アリス…」

 

「もっと一緒にいたいです‼︎いや…ずっと一緒にいたい‼︎居てほしい‼︎キリトは…私が嫌いなんですか?」

 

金色の長髪が揺らめき、潤んだ青い瞳で見詰められてしまっては、キリトもどう返答したらよいか分からなかったが、アスナのことを思い出して、落ち着いてアリスに話しかける。

 

「アリスの気持ちは嬉しい。だけど、俺にはアスナしかいないんだ。愛せる人は…。それでも忘れないでほしい。俺はアリスが助けてくれたことには感謝してるし、告白を断ったからって、態度は変えない。このゲームを一緒にクリアして…現実世界で盟友として、仲良くしていきたいんだ」

 

「盟友…」

 

「そうだ、友達としていてほしい」

 

そう言うと、アリスも漸く落ち着きを取り戻したのか、キリトにきちんと向き合う。その顔は今までの悩みなどが吹き飛んだような感じだった。

が…。

 

「じゃあ、最後のお願い」

 

そう言って、キリトの唇を奪う。バチッとハラスメント防止コードが働いて、アリスの身体に紫色の電流が走るが、それでも構わなかった。

最後の口付けくらい…彼の意識が覚醒している時くらいにしたかったからだ。

 

「……」

 

キリトは唇に触れて、アリスの唇の感触に酔いしててしまった。

 

「これで思い残すことはないわ。これからはよろしくお願いします♪キリト」

 

だが、ここでドアが勢いよく開いたかと思えば、怒りに身体をワナワナ震えさせるアスナの姿があった。キリトは恐怖でビビリ、レイナは恋敵に対して、胸を張って対抗しようとする。

 

「キぃリぃトぉくぅん?後できっちり話を聞かせてもらうとして……」

 

アスナは拳を作って、アリスに歩み寄る。

 

「この寝取り野郎がぁーッ‼︎‼︎」

 

アスナの怒りは爆発して、アリスに襲いかかった。

2人は取っ組み合いの喧嘩になり、お互いの顔面や身体を殴ったり蹴り合ったりした。

もちろんキリトに止められるはずがなくて、この喧嘩は2人の体力と精神が尽き果てるまで続いたのだった。

更に…夜にはアスナからの鉄拳制裁がキリトにもあり…。

 

「アスナさん‼︎‼︎勘弁してくれええええええええ‼︎」

 

「このバカキリトくんがー‼︎」

 

ログハウスは…キリトの悲鳴とアスナの怒声が飛び交うのだった。

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