ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第49話 Poh VS アスナ・アリス・シノン

Pohの黒剣に宿る特殊スキル【代償】の効果をキリトに付与させてる最中、とんでもない殺気が後方から来たことに気付いた。素早く剣をキリトから抜き、単発SSホリゾンタルを放つと、細剣(レイピア)と激しい火花を散らしながら、ぶつかる。

それはアスナの単発SSリニアーとぶつかったことによるものだった。

 

「Pohッ‼︎」

 

「閃光…来るタイミングが悪いぜ?」

 

Pohは軽く剣を払い、アスナと距離を取る。

アスナは倒れたままのキリトを発見する。腹には青い炎が燃え上がり、血溜まりが徐々に大きくなっていく様に、焦りが募っていく。

 

「Poh、あなたには黒鉄宮に行ってもらう!今、この場で‼︎」

 

「そればっかだな、閃光…。俺の力を忘れた訳ではないだろ?閃光1人で俺を捕らえられるとでも思ってんのか?」

 

そう言った途端、Pohの腹に風穴が空く。

重貫通BSランサースピネルを放ったシノンがゆっくりと2人の前に歩み寄る。

 

「誰が1人だって?」

 

徐々に腹の穴が埋まっていくPohは「Suck」と呟きながら、黒いフードを外す。改めて見た奴の顔の一部には…黒い鱗のようなものが浮き出ていた。

 

「旋風までいるのか…。面倒だな…」

 

そう言いつつ、黒剣の柄を強く握ろうとした時。

 

「ッ⁈」

 

後方から金色の剣がPohの腹を貫いた。そのまま蒼い炎がメラメラと燃え出し、Pohの身体を焼いていく。

 

「私もいるわよ」

 

シノンの陽動に引っ掛かったPohはアリスに背後を取られてしまう失態を犯してしまう。

 

「やるな…。ただ真正面から突っ走ってくるだけではねえか…」

 

Pohが腕に力を入れようと思ったが、今度はアスナの剣が首を貫き、腕を抑える。

 

「動かないで」

 

「痛えじゃねえか、閃光」

 

「死なないんだからいいでしょ?」

 

そう言ってから、黒鉄宮へ直接転移させる回廊結晶を取り出した時。

紅い斬撃が4人の周囲を飛び交った。

 

「なっ⁈」

 

回廊結晶は斬撃によって砕かれ、4人はそれぞれ違った方向に飛ばされる。

 

「くっ…何…何が起きたの?」

 

アスナには分かっていた。今のは4連撃SSバーチカルスクエア、更には紅い斬撃となると…使用者は自然に誰か分かる。

思わず振り返った先には…紅い妖気を剣からではなく、身体中から放出させるキリトの姿があった。更に顔の表面、腕や脚の一部には紅い鱗が浮き出ている。

 

「ようやくだなあ…キリト!それがお前の『代償』か!」

 

キリトは背中に収まったままの白剣を取り、投げ捨てる。

紅い剣だけを持ち、アスナたちに襲いかかる。

 

「どうしたの‼︎キリトくん!」

 

「アスナ!後手に回らないで!今、Pohに操られているだけよ‼︎」

 

アスナは剣に力を込め、キリトと距離を取る。

そのキリトの後ろで黒い剣を拾い、傷付いた身体を徐々に治していくPoh 。キリトも後ろで動くPoh に殺気を向けるが、無表情だった顔が一瞬動き、すぐにアスナに視線を戻す。

 

「ヒュー、漸く分かってくれたか」

 

「どういうこと?…Poh!キリトくんに何をしたの⁈」

 

「何をしたかって?簡単なことだ。俺の黒剣とキリトの紅剣が呼応して、奴を真なる災厄の化身としたのさ…。今のキリトは本当の殺戮マシンさ…」

 

「そんな…!嘘よ‼︎キリトくんがそんな力に堕ちるはずがない!」

 

Pohはクスクスと笑う。

 

「それは目の前のキリトを見て言うんだな…」

 

キリトは紅剣を構えたのちに…再びアスナに斬りかかる。

ズシンと両腕に響く剣の重みにアスナは膝を着く。

ギリギリと剣同士が嫌な音を発し、刃はアスナの肩に徐々に入り込んでくる。そこで初めて…キリトが『笑み』という表情を見せ、更に力を込め、と同時に剛撃SSカリバーンを使う。

更なる力が加わったアスナには、もう【氷界創生】を使うしかなかった。氷がキリトの足と腕を拘束し、4連撃SSガドラプル・ペインで吹き飛ばす。キリトは喘ぎも吐くことなく、吹き飛んだまま動かなくなった。

だが、このソードスキルは本気で打てなかった。

キリトを傷付けるという行為が…アスナの勢いを割いてしまっていたからだ。

しかし、それもキリトの前だけの話だ。

首をゴキゴキ鳴らすPohには信じられない程の殺意の目を向ける。すると、怒りに呼応したのか、アスナの細剣からの冷気がより一層冷たくなり、剣に纏わせる氷も鋭さを増す。

それを感じ取ったPohもいつもヘラヘラした態度は取れなくなった。

ゆっくりと歩みを進めるアスナに対して、Pohは黒剣を前に突き出し、黒い斬撃をいくつも飛ばす。それをアスナは8連撃SSスター・スプラッシュで全て弾き飛ばす。

それを見たPohは少なからず驚いた。

 

「やるなあ、閃光…。そんなにキリトを奪われたのが憎いか?」

 

「憎い…!絶対にあなただけは許さない!」

 

「それは…私も同じです」

 

「私も忘れてないかしら?」

 

右には同じく身体中から蒼炎を溢れ出させるアリス、旋風を巻き起こすシノンの姿もあった。後ろではキリトが拘束されたまま動けずにいる。今は動けないだろうが、いつまた襲いかかってくるか分からない。その前に…Pohを倒さなければならない。

 

「さあ来い‼︎Ladies!」

 

時間がないと分かっている3人は…一撃の下で奴を倒すと決めていた。

アスナとアリスは再び突っ込む。

そして…後方からシノンはオリジナルスキル【一点突破】を発動し、弓に風の矢を掛ける。アスナと戦った時に使用した旋速剛撃BS嵐神翔風を使う。

アスナとアリスはそれを避けるように、互いに左右に分かれる。

そしてアスナは細剣に氷を纏わせていくのだが、その形が【GearOrg(ギアオルグ)】の尻尾の形状となんら変わらないものになる。もはや細剣(レイピア)ではなく、鈍器…もしくは大剣だ。

だが、重くはない。むしろ力を与えてくれるような感じだった。

剣を両手で持ち、Pohに向けて一直線に突撃する。

恐らくアスナが現時点で使用できる最強のソードスキルだ。

名は氷獰尖撃SSギア・ペネトレイターだ。

それを見たアリスも、見様見真似で剣に炎を纏わせる。

すると、こっちは刀身が無くなり、もはや蒼炎が刀身となる。

大きく剣を振り上げ、炎の刀身をPohに投擲する。

蒼炎投撃SS劫炎の(つい)だ。

 

 

 

「「「いっけえええええええええぇぇぇッ‼︎‼︎」」」

 

 

 

3人の声が重なり、最強のソードスキルがPohの身体に当たる。

表現の仕方が分からない程の爆発音と衝撃がボス部屋に響き渡る。

3人はPohがどうなったか、静かに見詰める。

だが…。

 

「…くくく、それがお前らの本気か…」

 

「「⁈」」

 

Pohは腹と胸…合計3箇所に大きな風穴が空き、顔が半分以上失ってもなお…立ち続けていたのだ。

 

「いいぜぇ…お前らの『悪意』…。それが俺を更に強くさせる…」

 

黒剣が更に青く光り、Pohの双眸(そうぼう)までもが青く輝き出す。

その不気味な風貌に、3人は何故か身体が固まってしまう。

 

「な、何これ…。身体が…」

 

「2人は邪魔だ。俺の前から失せな…」

 

Pohの眼力だけで、アリスとシノンは吹き飛ぶ。

アスナに向かってゆっくりと足を運ばせ、固まったままのアスナを地面に倒し、黒剣に暗闇色のエフェクトを纏わせる。

 

「くっ…」

 

「お前を殺った後に、そこの2人…最後にキリトも送ってやるよ…。俺の身体に素晴らしい痛みをくれた…礼になぁッ‼︎」

 

黒剣が振り下ろされる。

硬直が解けないアスナは、もう叫ぶしかなかった。

 

 

 

 

 

 

「助けてッ…‼︎キリトくんッ‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…アスナ?」

 

アスナの叫びに身体を起こすキリトだが、目の前には倒したはずの紅龍が立ち塞がり、キリトを見下ろしている。剣を持たないキリトは暫し、紅龍に敵意の目を向けていたが、すぐにPohの言っていたことを思い出す。

紅龍は存在自体が忌み嫌われていることを…。

そんな可哀想…というより、不運な龍に何故か共感してしまうキリト。

キリトも自らが『ビーター』と名乗っただけで、ほとんどのプレイヤーから嫌われ、苦しい人生を送った。

 

「お前も…そうなんだな…」

 

キリトは紅龍の足に手を伸ばし、触れる。

あまりの熱さに思わず離れようとするが、キリトは寸での所で踏み止まる。

 

「俺はお前の苦しみと恨みを理解したつもりだ。だけど…こんな形で復讐することは望んでない。俺たちは傷付けることではなく、彼らの力になることで…その誤解を解くんだ。そのためにも…お前の力が必要なんだ!頼む…!俺の縛りを…解いてくれ!俺は…もう、アスナを2度と悲しませたくないんだ‼︎」

 

紅龍はキリトの言葉を邪魔することなく、じっと聞いていた。

そして…邪翼を大きく開き、周囲に淀んでいる黒い妖気を吹き払う。

 

「分かってくれたか…」

 

紅龍は答えない。

徐々に身体がボロボロと崩れていき、その場には紅剣だけが残る。

キリトはそれを掴み、更なる高みへと到達する。

 

「待ってろ、アスナ!」

 

この瞬間…キリトは『代償』を『超越』した。

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