ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

51 / 102
第50話 超越

Pohの黒剣はアスナに向けて振り下ろされなかった。

剣はアスナの頬に軽く触れる程度で止まり、Pohの視線はアスナ、アリス、シノンのいずれも向いてなかった。遥か奥で銀色のオーラを身体から放つキリトに向けられている。しかし、その表情には余裕はなく、むしろ焦りの方が強く出ているようだった。

キリトはゆっくりと立ち上がり、まずは紅剣を掴む。そして、少し離れた距離に落ちていた白剣がキリトの方に飛んでいく。それを掴んだキリトは誰にも見えない速度でPohの間合いに入り、黒剣を握っている右手を一瞬にして切り落とした。

 

「‼︎」

 

あまりの速度にPohは反応が追いつかず、斬られてからすぐに後方に飛び退いた。しかも…再生するはずの身体が全く機能しない。

 

「キリト…お前、『代償』を…」

 

「ああ、俺は『代償』を『超越』した。俺の新たなスキル…『超越』だ」

 

「超越…」

 

アスナはキリトの身体から溢れ出る銀色のオーラに見惚れる。

【纏雷】、【紅焔の威光】と同じくキリトの黒いコート、身体に変化があるのだが…今回は今までと違う。

コートに浮かぶ蒼雷と紅焔、共にメタリックが付加されたかのように光り輝き、瞳も金色に輝く。その姿は今までの変化よりも、優しく…ずっと神々しいものであるが、力強さはあまり感じられない。

 

「…くっくっく…。はっはっはっはッ‼︎」

 

Pohは突然笑い出し、邪魔になったのか黒いフードを脱ぐ。

 

「そうでなくちゃなあ…キリトぉ…。お前はそれでいい…。俺が望むのはそれだ…。操られてナヨナヨした野郎にしようとした俺がfoolだったぜ…。そんな姿を見せるなら…俺もそれ相応のことをしないとなぁ!」

 

Pohは黒剣を拾い、振り上げたかと思えば、刃を自らの心臓に突き刺した。

 

「何を…⁈」

 

アスナは動揺した表情を見せるが、キリトは静かに傍観している。

心臓から溢れる血がPohの下に巨大な血溜まりとなるが、それが突然蒸発する。青白い炎がPohの身体を覆うと、暗闇色のオーラが以前よりも強く出て、瞳が赤黒く、不気味な姿になる。そして…今までいくら攻撃を与えようが減ることがなかったHPが、少しずつ…減り始めたのだ。

 

「面白れえだろ?こいつはな…この黒龍のスキル【最期ノ閃黒】だ。HPを減少させる代わりに、全てのステータスを化け物レベルで上げるってやつだ。俺には絶対的な死が待っているがな…」

 

「死ぬつもり…なのか?」

 

「お前と最高のショータイムが出来るんだ…。勝とうが負けようが、死のうが生きようが…俺が楽しめれば…」

 

Pohの足に力が篭る。

キリトも2つの剣を構えて、迫り来る悪魔に備える。

 

「それでいいんだよぉッ‼︎‼︎」

 

対をなす剣がぶつかる。あまりの衝撃に地面は砕ける。

互いにパワーアップしたキリトとPohの異次元の戦いに3人はただ茫然とするばかりだ。

キリトはPohの重い剣撃を弾くが、その直後にPohは3連撃SSダークマターを使用する。本体のPohとは別に、幻であるPohの虚像が2体出来上がる。そしてキリトに向かっていき、剣撃を与えてくる。

キリトは3連撃SSシャークネイルで奴の攻撃を受け流した後に、剛撃SS蒼雷撃を本体にぶつけようとしたが、幻の2人が身代わりになって受け止める。

 

「くっ…!」

 

「甘えな!」

 

攻撃を防いでくれた幻のPoh2人はソードスキルを受けて塵となって消える。その合間を縫って動き、Pohは龍撃SS黒覇を放つ。キリトも奴のソードスキルと同等の威力を持つ烈撃SS蒼速神撃を放つ。

互いのソードスキルが爆発し、2人は反動で吹き飛び。キリトはその影響で『白雷剣エンクリシス』を手放してしまう。Pohは倒れてもすぐに立ち上がり、剣を大袈裟に上げて、力を込める。

すると…振り上げた剣の上に8本の歪曲した青黒い角を有した黒龍が現れて、剣に取り込まれていく。濃い黒色のエフェクトが剣に纏っていき、太くなる。それがPohの放つ最凶のソードスキルだと分かったキリトはこちらも今放てる最強のソードスキルを放つしかなかった。

キリトもPohと同じように大袈裟に『獄・覇王紅剣【(ほむら)】』を構えると、自分の後ろにあの紅龍の姿が現れ、剣に取り込まれていくのが分かった。Pohにもそれは見えており、楽しみから狂笑する。

 

「Pohッ‼︎‼︎」

 

「キリトォッ‼︎‼︎」

 

Pohは黒龍神撃SS巨星神墜、キリトは紅龍神撃SS龍星王帝を放った。

最凶と最強のソードスキルがぶつかった瞬間、シノンたちは目を開けることも出来ない程の衝撃と閃光、更にボス部屋の壁、地面、天井、何もかもが吹き飛び、衝突を繰り返す。

お互いのソードスキルがほぼ同威力のせいで、押されては押し返す…これが繰り返されていた。しかし…徐々にPohの剣の方がキリトを圧倒し始める。Pohは笑みを零し、キリトが力負けするのを待つ。それも遠目でも分かったアスナは吹き荒れる威風と衝撃を受けながらも、キラリと光る『白雷剣エンクリシス』を取りに動く。それを掴んだアスナは重い白剣をキリトに向かって力を込めて投げた。

 

「キリトくん…‼︎これをッ‼︎」

 

飛んできた白剣をキリトは左手を紅剣から離して掴んだ。そして、オリジナルスキル『超越』によって強化された【纏雷】を発動させる。

すると…今まで拮抗していたソードスキルに一瞬で差が生まれた。

バキバキとPohの黒い剣にヒビが入り、最後には粉々に砕け散って、Pohは後ろに倒れるように身体が浮く。

ソードスキルが終わり、キリトは残ったPohの体力を消すために…最後の最後で究極の連撃ソードスキルを発動する。

 

 

「せやああああああああああああああああぁぁぁッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

紅と青が入り乱れる乱舞。

ミラバルカンとの戦いで発動したソードスキルと非常に似ているが、明らかに強化されており…威力、スピードと共に何もかもが規格外になっている。誰の目にも…剣の振りは見えない。

紅焔20連撃SSメテオバースト・ストリーム。

武器を失ったPohはただキリトの攻撃を受けることしか出来ず、無惨にソードスキルを受け続けた。最後の一撃がPohの右肩から左脇腹付近まで抉ったのちに、激しい爆発を引き起こして終わった。

数十秒の沈黙の後に粉塵が落ちて、アリスたちは2人を視界に捉える。

キリトの剣は既にPohの身体から引き抜かれており、Pohは直立したまま微動だにしなかった。

 

「ごはっ……くくく…楽しかった…ぜ…キリトぉ…」

 

黒剣を砕かれた今でも、PohのHPは着実に減り続けている。

 

「お前はここで終わりだ…」

 

「ふっ、そう…かもな…。だが、これで終わりじゃねえぜ?黒き悪魔が消えた後は…白き王がお前らを断罪するからな…」

 

意味不明なことを話し始めるPoh。キリトがそのことを詳しく聞こうと思った時、PohのHPは遂にゼロになる。

そして…Pohの身体はまるで燃え尽きたかのように、ボロボロと砕け散っていく。

 

「あの世で……待ってるからな…」

 

恨み言葉を残して消えるPohは、最期まで悪魔そのものだった。

 

「キリトくんっ…」

 

アスナがキリトに駆け寄ろうと思った時、ふらりと身体が揺れると、そのまま地面へ後ろから倒れた。

それを見た3人は急いで彼に駆け寄るが、キリトは息を荒くしているだけで、気絶はしていなかった。

 

「【超越】の影響らしい…。暫く身体が動かせなくなるらしい…」

 

「キリトくん、ありがとう…。私たちを守ってくれて…。これで…漸く…!」

 

アスナは2人がいるのも構わずのキリトの上に乗って、キスの雨を降らす。その行動にシノンは溜め息を、アリスは顔を真っ赤にさせてワナワナと震えている。

キリトがどうにかアスナを離すが、アリスからの追撃から逃れることは出来そうもない。今にも暴走しそうなアリスの肩に、シノンは手を置いて落ち着かせる。

 

「まあ、アリス…。今日は2人きりにさせてあげましょう?1番嬉しいのはアスナのはずだし…」

 

「…アスナ!今日と明日だけだからね⁈」

 

悔しそうに言うと、プンプン怒りながら2人はキリトたちの目の前から消えた。キリトは恐怖に(おのの)いた笑みを浮かべながらも、涙で瞳を潤わせたアスナを抱き寄せるのだった。




【補足1】
『超越』
MHW:Iでミラボレアスの装備4部位で発動するスキル。
原作では体力とスタミナ増加、『真・業物/弾丸節約』が発動する。
本作では同じく体力とスタミナの大幅増加、それに加え、全てのソードスキルとオリジナルスキルの強化が発動する。この強化はMHFの辿異スキル(例:纏雷強化)がベースである。そして発動後に反動で、身体が動かせなくなるという弱点がある。
また本作ではミラボレアスではなく、ミラバルカンの武器で何故このスキルを発動出来るかというと、ミラバルカンは仮称で本当はミラボレアス亜種だから…という身勝手な解釈です。

【補足2】
『最期ノ閃黒』
MHFの極限征伐ミラボレアスの専用スキル。
本作と同じく、体力の減少と引き換えに強力なスキルが発動する。更に発動したら最後、死ぬまでスキルは終わらないので、本当の切り札である。
相違点があるのは、スピードも強化されたくらいである。

【補足3】
『黒龍神撃SS巨星神墜』
このソードスキルの元ネタは、MHFの極限征伐ミラボレアスの大技『星落とし(自分の勝手な仮称)』である。
非常に印象に残っていた技だったので、どこかで使いたいとは思いました。どこかのボスでミラボレアスを登場させて…でも良かったのですが、あれはどう考えても対応出来ないので、ソードスキルでの登場にしました。

【補足4】
『紅龍神撃SS龍星王帝』
ミラバルカンの代名詞「メテオ」をベースにしたソードスキルです。
…ただそれだけです。
先程の【補足3】の対にしたいな…とも思いました。




それと急ですが、アンケートはこれにて終了します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。