ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第52話 キリトとアスナの出会い -衝突編-

「ふぅん…。要するにキリトとの最初の出会いはパン…ね」

 

「パッとしないわね」

 

アリスの物言いにアスナの脳内の血管が頭で切れる音が聞こえた。しかしアスナは「ふぅ」と息を吐くことで、落ち着きを取り戻そうとする。

 

「そ、そうね…。最初はあまり意識してなかったなぁ…好きな人としては…」

 

「今の話だと、キリトからのアピールはなかったようだけど…どうやって結婚にまで行き着いたのかしら?」

 

ワナワナと苛つきが更に増してくるアスナだが、心をどうにか落ち着かせて話を続ける。次は…お互いに反発して…いがみ合っていた時期だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビーター…良い呼び名だな、それ」

 

第1層のボス【リオレイア】の討伐後に起きた事件…。

それはキリトがボスの攻撃パターンを予め知っており、黙認していたことだった。そのせいでディアベルと一部のプレイヤーが死亡したのだと、キバオウが言及した。

キリトの優しさを前日の夜に知っていたアスナは、そのことを全面否定しようと思って、声を上げかけた時に…あの発言が耳に飛び込んできた。

 

「そうだ、俺はビーターだ。これからは他のβテスターと同じようにしてもらわないでもらおうか…」

 

キリトは先程のボス攻略から得た黒と緑色の混色のコートを纏って、プレイヤー全員に薄気味悪い笑みを浮かべて、アスナたちの前から離れていく。

アスナはその後ろ姿をじっと見詰める。アスナが見る限り、その姿は決意に満ちていると同時に…寂しげなものも含んでいた。だが、他のプレイヤーは蔑みと怒りを滲ませており、視線だけでも痛々しいものだった。

キリトの姿が見えなくなる前に…アスナは1人駆け出した。階段に上がる途中で声をかけて、キリトを止めようとしたが、彼は足を止めない。だからアスナは、彼の裾を強く掴んで止めた。

 

「待ってって言ったでしょ?」

 

「待つ必要ないだろ…。俺は一人で行くと決めたんだから…」

 

「…それは別に構わない。だけど、1つだけ聞かせて。…戦闘中…どうして私の名前が分かったの?」

 

キリトは「そんなことか」と思いながら、虚空に指差してその謎を教える。

 

「自分の見える視界の左上…そこにHPゲージと一緒に見えるよ…」

 

キリトに言われて、アスナは視界の左上を凝視する。

確かに自分の名前【Asuna】とその下に【Kirito】の名前があった。

こんなすぐ近くにあったのに、今まで気付かなかった自分が面白くて…思わずアスナは笑みを溢してしまった。

 

「なーんだ。こんなところにあったのに気付かなかったなんて…」

 

「…無邪気なところもあるんだな、アスナは。女の子らしいところも見れて良かったよ。でも、これでもう話すことはないから…じゃ…」

 

「待ってよ!納得いかないわ!あんな挑発的な態度でみんなを敵に回すようなこと言って……どうするつもりなの?」

 

キリトはコートのポケットに手を突っ込んで、一息吐いてから答えた。

 

「ソロで頑張るつもりだ。俺は許されない人間なんだ。それに…俺が居なくても、アスナは充分強いから…大丈夫だろう」

 

「そんな…」

 

「ギルドに誘われることがあるかもな…。入る入らないは自由だけど、まあ…頑張ってくれ」

 

それだけ言って、キリトは第2層の扉を開いて先に行ってしまう。

アスナは強い眼差しをキリトに向けながらも…胸が締め付けられるような感覚を感じていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1層のボス攻略後、犠牲者をほとんど出すことなく…ボス攻略は次々と成功していった。そんな中、第47層攻略会議で『初めて』キリトとアスナが対立した。

 

「ボスをこの村に追い込んで、NPCに気を取られているうちにボスを倒します。これが作戦の大まかな概要です」

 

「ちょっと待ってくれ!その作戦には反対だ!」

 

キリトが久しぶりにアスナに声をかけたことで、彼女は一気に胸が高鳴ったが、キリトの顔は怒りに満ちていた。

 

「NPCを囮にする?そんなことを了承すれば、いずれプレイヤーを囮にするとも言いかねない。俺はそれを避けるためにも、独力でボスを倒すべきだ」

 

「…問題ないです。NPCは所詮コンピューター。居なくなろうが、関係ないです」

 

この頃、アスナは血盟騎士団に入ったばかりかつ『閃光のアスナ』の異名と同時に『攻略の鬼』とも呼ばれていた。攻略をクリアするためなら、手段を選ばないという、どこかに居そうなキャラクターを演じていたのだ。

その雰囲気に全プレイヤーは飲まれてしまい、反論する者もいなかったのだが、今回初めて…キリトが食いかかってきた。それをエギルが止めようと声をかけるが、キリトの怒りは収まることはない。

 

「もしアスナがそんなことをするっていうなら、俺は今回の攻略には参加しない」

 

キリトのとんでもない発言にアスナだけではなく、他のプレイヤーも驚く。今までキリトは全プレイヤーから妬まれる対象ではあるが、ボス攻略の時は必要な存在だ。そんな彼が抜けてはとてもじゃないが、ダメージが大きすぎる。

アスナは歯を軽く噛んで、キリトに叫んだ。

 

「本気で言ってるの⁈」

 

「ああ、俺はそんな人間の尊厳を失うような戦い方はしたくない」

 

キリトの言葉から本気度が伝わってきたアスナはどうしようかと考えを巡らせて、咄嗟に思いついたことを言う。

 

「なら、私と戦うなさい!」

 

『攻略の鬼』からまさかのデュエルの申し出にあのキリトも流石に焦った表情を作った。

 

「私が勝ったら、私の作戦でボス攻略に参加しなさい。もし私が負けたら…キリトくんの言う通りにするわ」

 

「……乗った」

 

キリトは無表情のまま、ただそう言った。

アスナとキリトはすぐ外に出て、デュエルの準備を始める。タイプは初撃ダメージで、一撃でも攻撃を受ければ負けるというものだ。因みにこれにしたのはアスナの凄まじい速度で一瞬キリトを蹂躙しようと考えているからだった。

一定の距離を作った2人は愛剣を抜いて、カウントダウンを待つ。

その間にアスナはキリトにこう言った。

 

「勝てないと思うのなら、今からでも遅くはないわよ?」

 

「やめないさ。俺が勝つ」

 

最初に出会った時とは明らかに違う自信の強さ。それだけでアスナは負けてしまうんじゃないかと思ってしまうが、頑張って威勢を取り戻して剣を構える。

そして、ゼロの数字が空中で出された瞬間に……。

 

「ッッ⁈‼︎」

 

キリトは誰にも見えない速度でアスナの間合いに入っていた。

剣を動かす暇もなかった。

キリトの剣撃がアスナの剣を天空へと弾き、アスナの華奢な腹に単発SSバーチカルを放って、少し吹き飛ばした。

開始2秒で…勝敗が決まった。

この結果にアスナはもちろん、見ていた他のプレイヤーもキリトのあまりの速さに絶句してしまっていた。

 

「約束通り、作戦は変更。NPCの囮は無しだ」

 

そう言いながらキリトは負けたアスナに手を差し伸ばしたが、アスナはそれを叩いて、キッと睨んだ。負けたから怒っているのではない。負けた自分に情けをかけられたことに怒りが湧き上がったのだ。

 

「…っ」

 

アスナは勝手に怒って、その場から消えた。

キリトはそんな彼女を見ながら…「はあ」と溜め息を吐きながら、黒髪を掻くのだった。

 

 

 

ボス攻略はキリトが立てた作戦が上手く成功して、犠牲者を出すこともなくクリアされた。

その次の日…キリトは大きな木の下で居眠りをしていると、突然後頭部に鈍器で殴られたような痛みが走って、飛び起きた。

 

「ってぇ!誰だよ…ったく」

 

苛立ちを見せながらもキリトは後ろを向くと、腰に手を置いて上から睨みつけるアスナの姿があった。どうやらかなりご立腹のようだとキリトは思った。

 

「なんだよ…まだ『あの時』のことを怒ってるのか?」

 

「いいえ、それは過ぎたことだし…。でも、寝てるってどういうこと?」

 

「はあっ?」

 

「みんなが真面目に迷宮区に行ってるのに、寝ているのはどういうことかって聞いてるのよ!」

 

アスナの怒声が静かな草原に木霊する。

キリトはもう一度草原に寝そべって…。

 

「今日はアインクラッドの天候で最高の気象設定なんだ」

 

「はあ?」

 

「こんなに良い天気なのに、息が詰まるような迷宮区に籠るのは勿体ないと思わないか?」

 

そこまで言うと、今度は彼の頬のすぐ横を細剣が突き刺さった。当たりはしなかったものの、先程よりも更に怒っているとキリトは感じた。

 

「どうしてそんなに余裕なの?強いから?ビーターだから?あなた1人がそうやって攻略をサボるから、現実での私たちの時間が失われていくの。分からないの?」

 

強い口調で言うアスナにキリトは寂しげな口調で答えた。

 

「…別に、現実になんて未練はない。むしろ現実から逃げたくて、『SAO』に来たんだ。デスゲームは嫌だったけどな…」

 

「………」

 

「だけど、俺たちが今生きているのはこのアインクラッドだ」

 

そう言われて、アスナは言葉を失う。その時、気持ちの良い風が辺りを吹き抜ける。その心地よさにキリトは更に言う。

 

「こんなに風が気持ち良いんだから、眠たくなるよ…。ここで寝ても誰も言わないし、少しは休んでいったらどうだ?アスナ副団長」

 

キリトはそこまで言って、再び昼寝を開始した。

アスナは優しく流れる風を受けながら、真上を通過する眩く光る太陽を見上げた。そして…寝ている彼の横で寝転がり、そのまま睡魔に任せて眠るのだった。

この時…キリトに特別な感情を抱き始めた瞬間でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…たったそんなことで?」

 

誰しもそう言って、アスナを問い詰めた。

アスナ自身も途中から話しながら羞恥を感じ始めており、顔は真っ赤に染まっていた。

 

「仕方ないじゃん……だって、好き…なんだから…」

 

「完全にデレデレね…」

 

「うんうん」と全員が頷き、アスナはその後…口を開くことはなかった。

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