ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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お久しぶりです。


第53話 (きらめ)く黒龍

キリト、アスナ、アリス、シノンを筆頭にした攻略に赴いた約100人近いプレイヤーが冷気を放つ扉の前に立っていた。オリジナルスキルを使用出来るキリトたちはボス部屋に入る前に既に発動しており、即座に戦闘態勢に入れるようにしていた。

キリトは「ふう」と息を吐いて、後ろで緊張によって硬くなっているプレイヤー全員に「行くぞ‼︎」と声をかけ、大きな扉を開けた。

途端に全員でボス部屋に突撃し、中にいるボスを確認する。

ボス部屋の中央には翼を畳んだ飛竜が横になっていた。寝ているように見えたが、すぐに外敵に気付いた途端にその冷気が止まる。ゆっくりと起き上がり、キリトたちに歩みを進めていくと、徐々に身体から蒸気が湧き上がる。それは一気に全てを焼き尽くさんと言わんばかりにまで上がり、飛竜は炎ブレスを部屋の至る所に吐いていく。最初は凍り付いていた部屋もその炎で燃え上がり、すぐに地獄の様相へと変わっていった。

そして…機械みたいな甲高い咆哮と共に、飛竜の頭上にボスモンスターの名前が表示される。

 

 

【Alatreon】…と。

 

 

戦闘を最初に走ったのはキリトと他のプレイヤー30人だった。

真正面から突っ込むのはどうかとキリトは思ったが、ボスの攻撃パターンを確認するためなら大丈夫だと思った。後ろにはサポートが可能なシノンが弓を構えて待っている。

まずキリトは突進SSソニックリープを発動する。後方のプレイヤーも簡単なソードスキルを繰り出す。

それらの攻撃が当たる前に、【Alatreon】の煌く双方の角が電撃を帯びる。

キリトたちの前方に電撃の柱が数本発生する。発生の速さに対応できなかったプレイヤーは巻き込まれ、一瞬にして塵と化す。

更に少し離れたところにいるアスナたちに向けて、数発の炎ブレスを吐き出す。

それらは綺麗な放物線を描きながら、地面に着弾すると同時にプロミネンスを起こしながら、アスナたちに向かっていく。

キリトはすぐに戻ろうとするが、それは杞憂に終わる。

アスナのオリジナルスキル【氷界創生】の効果で、プロミネンスを即座に凍り付かせる。アスナは逆に氷界を発生させ、四肢を拘束させる。

それを見たキリトとシノンはすぐに行動に移った。

キリトは重2連突撃SSヴォーパルスラッシュ、シノンは旋撃BS昇竜風を放つ。

拘束された【Alatreon】に2つのスキルは衝突する。

だが、ボスは微動だにせず、キリトに眼を向ける。

 

「!」

 

途端に身体からフレアが発生し、拘束していた氷とキリトを吹き飛ばす。

と同時に、前脚を地面に叩きつけると、火山の噴火如く、フィールドのあちこちから溶岩が吹き上がる。それらがプレイヤーたちを直撃し、一気に攻略組の人数を減らす。

 

「こいつ…!やめろぉ‼」

 

激昂したキリトは噴火があちこちで続く中で、無鉄砲に駆け込む。

それを感じ取った【Alatreon】は天角に更なる電撃を溜め込む。

それを見たアスナはキリトに急いで、引き留めようと声を上げる。

 

「キリトくん!ダメ!一旦離れて‼」

 

耳に辛うじて聞こえたアスナの声にキリトは足を止めようとするが、その前に巨大な落雷がキリトの頭上から落ちてくる。

 

「キリト‼」

 

シノンの旋風を纏った矢がキリトの頭上に投擲される。

旋風の矢が落雷を流し、キリトに叫ぶ。

 

「アスナ!キリトと一緒にそのまま進んで‼︎」

 

2人は頷き、構うことなく【Alatreon】に突っ走っていく。

それが分かっているボスも何度となく落雷を発生させる。しかし、落雷は旋風によってキリトとアスナの横に落ちる。

そして、アスナの剣先がボスの頭部に当たるかと思われたが、器用に頭部を動かして歪んだ角でアスナの細剣を引っ掛け、力の限りに振り回す。

 

「キャアアアアァッ‼︎」

 

ぐるぐると振り回されたアスナは細剣から手を離してしまう。

吹き飛ばされたアスナをキリトが受け止める。

 

「アスナッ‼︎」

 

引っ掛かった細剣を【Alatreon】は遠くに投げ捨て、キリトに向けて突撃してくる。アスナを受け止めたことで隙が生まれたところを突いてきたのだ。

キリトは剣を交わらせて、歪んだ角による突撃も受け止める。

 

「ぐうぅ‼︎」

 

受け止めた時のダメージだけでHPが1/3吹き飛んだ。

更に角から冷気が発生し、キリトの足元を固定する。

 

「⁈」

 

ゆっくりと後退するボス。

そして…尻尾に炎を纏わせ、一気に振り回す。

今度は攻撃を『受け止める』のではなく、相殺しようとキリトは重2連撃SSバーチカル・ルークを放つ。互いの攻撃がぶつかった途端、足元を拘束していた氷が砕け、キリトは一瞬で吹き飛ばされた。

岩石の壁にぶつかり、キリトは吐血する。身体を強く打ってしまったことが原因だろう。

 

「うぐっ…ガハッ…」

 

ゆっくりと顔を上げると、すぐ目の前にボスは静かに立っていた。

 

「‼︎」

 

すぐにボスは鋭利な角を突き立てる。

キリトは横に転がり、回避する。勢いよく突き立てたことで、壁に突き刺さり動けなくなる。

 

「今だッ‼︎今のうちに…出来る限り奴のHPを削るんだ‼︎」

 

キリトの叫びに、今まで立ち尽くしていたプレイヤーたちが一斉に突っ走る。キリトは傷付いた身体とHPの回復に専念し、他のプレイヤーはどこでもいいからボスの身体に傷を付けにかかる。

ところが、刺さった角から再び電撃が溢れ、ボスの周囲に何発もの雷が落ちる。

それが多数のプレイヤーに直撃し、一撃の下に塵と化した。

ほんの十数秒の隙を晒した【Alatreon】だったが、そのHPは未だに半分以上健在だった。

それを見たキリトは、手加減をしている場合ではないと感じた。

いや…最初からオリジナルスキル【超越】を発動しておくべきだったと悔いてしまう。しかし、このスキルの発動後、長時間の経過は不可能なので、もう少しボスのHPが減少したら使用しようと思っていた。

 

「キリトくん」

 

アスナは右手に握る細剣から冷気を発生させながら、キリトに話しかける。

 

「行こう!」

 

「…ああ!」

 

キリトはここで最終手段【超越】を発動し、ボスに突っ走る。

ただならぬ気配を感じた【Alatreon】はキリトに双眸(そうぼう)を向ける。そして、巨大な火球を口から吐き出した。それはキリトにぶつかるのではなく、その前の地面に着弾すると、天上にぶつかるほどの火炎竜巻を作り出した。

キリトはその竜巻を斬って掻き消すが、すぐ目の前に火球が飛んできた。キリトがその竜巻を食らわないことを予知してたかのようだ。

 

「‼︎」

 

が、その火球は翡翠色の風が掻き消した。

後ろを少し振り向くと、シノンが再び羽衣の弓を構えて立っていた。

 

「何度も…出来るわけじゃないんだからね‼︎」

 

シノンはそう叫ぶ。

彼女の支援を感謝しつつ、キリトは更に突っ走る。

炎が効かないと分かったボスは今度は氷塊が数発飛んで来た。

キリトは剛3連撃SSクリムゾンネイルを使用し、飛んでくる氷塊を1発ずつ、確実に砕く。だが、最後の1発を砕くためのソードスキルが終わってしまい、今から氷塊を跳ね返せそうもない。

 

「今度は私の出番ですね」

 

すると、キリトの前に蒼炎を黄金の剣に纏わせたアリスが出てきた。

アリスは劫撃SS蒼炎の震撃を発動し、巨大な氷塊を砕くと同時に彼女の身体は側方へと吹き飛ぶ。

 

「アリスッ‼︎」

 

「あとは…頼みましたよ…!」

 

だが、【Alatreon】は更に口から火炎放射を吐き出す。

それをアスナがオリジナルスキル【氷界創生】で掻き消そうとするが、完全に消すことは出来ず、熱のダメージがジワジワとアスナのHPを減らす。

 

「下がれ!アスナ!」

 

キリトは火炎放射を正面から防ぐアスナの前に出て、大きく一振りする。すると、斬撃が【Alatreon】の角にぶつかり、僅かにひびを入れる。更に怯みも入る。

その隙に懐へと入り込み、紅焔20連撃SSメテオバースト・ストリームを発動する。

ボスもすぐに距離を取ろうとしたが、アリスが後ろ脚に剣を突き刺し、アスナは前脚に氷を纏わらせ、拘束する。

それらはすぐさま、身体から高温を発することで解放させたが、その時にはキリトの斬撃が頭部…特に角に向けて当てられていた。

 

「うおおおおおおおおおぉぉぉッ‼‼」

 

そして、20連撃目が直撃した瞬間、角の片割れが砕け散る。HPもほぼなくなるところまで行った。

ところがここでボスは大きく咆哮すると、エリアの中心に向かうと、何か力を籠め始めた。周囲の地面は燃え滾るように熱くなり、空気も歪むほどにまでなる。

 

「まずい…!」

 

キリトはアスナたちを一つの場所に集め、二つの剣に更なる力を溜め込み、地面に突き刺す。

そして…ボス【Alatreon】は翼を広げながら、跳躍すると急激な爆発を引き起こした。それはボス部屋の地面、壁を吹き飛ばし、空気中の原子までも焼き尽くしていった。

キリトが突き刺した二つの剣と【超越】による防御スキルを発動して、アスナたちを助けようと奮闘する。

ところがキリトの手や腕、足元があまりの熱で焼け始める。更には剣自体も急激に高温で熱せられ、赤く輝き溶けそうになる。

 

「くっ…くそ…」

 

いつまで続くのか分からない急激な熱波攻撃にキリトは膝を付いて、倒れそうになってしまう。

それをアスナとアリスが支える。

 

「アスナ……アリス……」

 

「キリトくん、1人だけには任せられない」

「わたしもよ」

 

アスナは『白雷剣エンクリシス』を、アリスは『獄・覇王紅剣【(ほむら)】』を握り、キリトを支える。

更に2人のオリジナルスキルによって、剣自体の能力が一時的に上昇する。

それを感じ取ったキリトは熱くなっている剣の柄を強く握り、雄叫びを上げる。

 

「くっ…う、おおおおおおおおおぉぉぉッ‼‼」

 

その十数秒後には、漸く熱波攻撃も終わり、【Alatreon】はゆっくりと地上に降り立つ。

その刹那…アスナが最上位突撃SSフラッシング・ペネトレイターがボスの首元を貫いた。

これが最後の止めとなり、【Alatreon】は静かな重低音の声を出しながら絶命した。

 

「はあっ…はあっ…」

 

アスナは荒い息を吐きながら、地面に膝を付く。

キリトも力を使い果たしたこと、更に【超越】の影響で地面に倒れてしまう。

 

「キリト‼」

「キリトくん‼」

 

アスナはすぐにキリトの元に駆け寄る。

倒れてはいるが、キリトの顔はスッキリしたようなものであり、アスナを見るなり嬉しそうな表情を作って言った。

 

「アスナ…あと1つだ…。漸く…ここまで来たんだ…」

 

「……そうだね」

 

嬉しそうなキリトに対して、アスナは複雑な表情を作っていた。

それを見逃さなかったアリスは訝しげな表情を向けているのだった。




【補足】
【Alatreon】
第99層ボスモンスター。アンケート結果の『アルバトリオン』である。
禁忌のモンスターであり、個人的には格好いい…というより、3Gでトラウマを植え付けられたことの方が印象に残っている。
原作との相違点は、MHW:Iで追加された活性状態がないこと、捻じれた角が硬化している点である。
そして、最後の『熱波攻撃』は同じくMHW:Iで追加された『エスカトンジャッジメント』である。相違点は持続時間が原作よりも圧倒的に長いこと、それとボス部屋の地形を完全に変形させてしまうことである。因みにこの攻撃、角を壊すことで弱体化させるといったメリットを今作では加えている。
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