ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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遂にラスボスです。
何か…分かるでしょうか?


第55話 煌々たる赤雷

「…等々…ここまで来たんだね、キリトくん」

「ああ…」

 

キリト、アスナ、アリス、シノンや他の攻略組のプレイヤーは赤い煉瓦で建てられた巨大な居城を前に息を飲んでいた。

目の前に聳え立つ巨大な居城…通称『紅玉宮』。

あのデスゲームが始まった3年前…茅場彰彦の言っていた最上層…第100層のフロアである。

紅玉宮の周りは小さな噴水が並び立ち、綺麗に植えられた花が咲き誇り、その周りをマボロシチョウが優雅に舞っていた。

 

「行こう」

 

キリトが先陣を切って、紅玉宮の扉の前に立つ。その扉に触れ、開けた瞬間だった。赤い雷光が開けられたドアから飛んできて、キリトの後ろにいるプレイヤーたちに襲いかかったのだ。

 

「アスナッ‼︎」

 

だが、狙いはアスナ、アリス、シノンを除いたプレイヤーで、凄まじい速度で飛翔してきた雷光を避けることなど出来ず、ポリゴン片となることもなく、一撃のもとで塵と化した。

その様子を目の前で見た4人は改めて、ごくりと唾を飲み込んだ。

今までの攻略とは、明らかに違う雰囲気を出していた。

呆然としていると、今度は開けられたドアに吸い込まれるように4人は紅玉宮の中へと連れて行かれた。

 

「うわっ⁈」

 

突然の出来事の連発で付いていけない4人。

頭を摩りながら、前を見ると、そこは広い空間だった。

今までのボス戦フィールドとは桁違いの広さ、空間、更には戦いを見るためか分からないが、観客席のようなものまであった。そして…崩れた塔の隙間から漏れる光。

フィールドだけでも、相当なインパクトを与えてくるのだが、それ以上にキリトたちに衝撃を与える“者”が立っていた。

 

「あいつは…!」

 

崩れた赤煉瓦の塔の傍で聖剣を地面に突き刺して、待っている長髪で特徴的な男…。誰が見ても、あれはヒースクリフ…茅場彰彦だった。

 

「茅場…!」

 

「団長⁈」

 

アスナが『団長』と呼んだことに茅場は少し驚嘆の表情を浮かべた。

 

「未だに私をそう呼ぶのか、アスナくん」

 

「誰が何と言おうと、あなたは『血盟騎士団』の団長でした」

 

「…そうだったな」

 

「ここで決着を付けようか?茅場!今回は数が多いぜ?」

 

4人はそれぞれ武器を取り、茅場に対して敵意を向ける。

茅場は苦笑する。

 

「私はこのゲームのラスボスだと言ったろう?まだ、他のボスモンスターがいるではないか?『私の上』に」

 

キリトはそこで気付いた。

崩れかけの塔の頂上に…何かいるのを…。

そいつは長い首を持ち上げて、舌をベロンと出して、口の周りのゴミを拭き取る。その後、大きな翼を広げて飛び立ち、キリトたちと茅場の間に降り立つ。

その姿を見たキリトは…思わず退いてしまった。

 

「キリトくん?」

 

アスナの声も聞こえない。

目の前に立ちはだかる白い龍に、キリトは意識を奪われそうになるほどの衝撃を受けていた。

 

「キリトくんには、トラウマ的な存在だろう?」

 

「トラウマ?」

 

「キリトくん!あれを知ってるの⁈」

 

「…同じだ…」

 

無意識のうちに呟くキリト。

 

「ミラバルカンと…同じ容姿だ…」

 

「!」

 

『ミラバルカン』

キリトとアスナにとっては切っても切れない程の裏ボスモンスター…。

キリトと激闘の果てに倒すことが出来た古龍だったが、人の心を惑わせ、世界を終焉に(もたら)してしまう程の力を持った強大な存在…。

それと同じ容姿で、別のモンスター…。

それが何を意味しているか…分からないはずがなかった。

 

「まさか…」

 

「さあ、第100層、紅玉宮のボスモンスター『White Fatalis』を倒して見せよ‼︎私との戦いはそのあとだ」

 

そう告げて茅場は姿を一旦先程までボスがいた塔の頂上へと上がった。

『White Fatalis』と呼ばれるモンスターはキリトたちを視認したが、最初は相手にすることなく、身体中から赤い雷を放出させつつ、エネルギーを溜めていく。キリトたちは近づくのも恐れて、奴の思うがままにさせてしまっていた。

そして…充填し終えた赤い雷を天に向けて放つ。

天井が開いた紅玉宮から、赤雷が放たれて、これらは第100層以下の層へと降り注ぐ。

そして数秒後…浮遊城『アインロック』自体が激しく揺れた。

 

「何だ⁈」

 

「何をしたの?あいつは…」

 

「君ら以外の全てのプレイヤーを消したのだよ」

 

上で見学している茅場はそう言った。

しかし、キリトたちには信じられなかった。何故かといえば、本来ボスモンスターは安全地帯…圏内にいるプレイヤーに対して、傷を与えることも出来ないからだった。

 

「この『White Fatalis』は神とも呼ばれる祖なる龍だ。このゲーム設定では、全てを統べる『白き王』だ」

 

『白き王』

その名はPohとの決戦で聞いたことがあった。

 

『白き王がお前らを断罪するからな…』

 

白き王とは…ラスボスの『White Fatalis』のことだったのかと理解する。

何故Pohがラスボスのことを知っていたかは今となっては分からないが…。

 

「そんな…じゃあ、生き残りは…」

 

「君ら4人だけだ」

 

4人の間に沈黙が流れるが、同時に怒りも湧き上がってくる。

今まで…犠牲者を出さないために戦ってきたキリトは歯を噛み締め、キッと『White Fatalis』に強い視線を向けると一気に駆け出した。【纏雷】と【紅焔の威光】を同時に発動したキリトは上体を立たせたままのWhite Fatalisに重2連撃SSヴォーパル・スラッシュを放った。

 

「貴様アアアアァァァッ‼」

 

「キリトくん!ダメ!止まって‼」

 

アスナの制止はキリトの耳には入ったが、もう止まらなかった。

ソードスキルが柔らかい胸に直撃する寸前、長い尾が攻撃を完全に防いでいた。

 

「!」

 

奴は赤い眼を光らせて、尾を素早く動かして、キリトの攻撃を跳ね返す。そして…尾に赤い雷撃を纏わせて、プラズマカッターを放った。空中で身動きが容易ではないキリトであったが、どうにか身体を捻らせて、その攻撃を躱した。それはアスナたちのところにも飛んで行き、彼女らもギリギリで避けた。だが、紅玉宮の壁に綺麗な線状の穴が開いた。

 

「くっ!」

 

キリトは態勢を立て直し、一旦『White Fatalis』から距離を取る。

だが、遠距離でも構わず、ボスは口元に赤雷を溜めて、球状のブレスとして何発も放った。

キリトは赤い剣にエフェクトを纏わせる。剛重撃SSバーチカル・クレイだ。

キリトは臆することなく、突っ込んでいく。

ブレスはキリトの眼前にまで飛んできたが、当たる直前で翡翠色の旋風がブレスを別の方向へと飛ばした。

キリトが横を向くと、シノンが【一点突破】を発動して、攻撃の軌道をずらしていたのだ。キリトは頼もしい仲間だと思いながら、そのまま真っすぐ突き進んでいく。

だが、シノンも楽ではなかった。大きさも速度もそこまでではないのだが、威力と重さが凄まじく、軌道をずらすにはかなりのボウスキルを使用しなくてはならなかった。

 

「くっ!キツイッ!」

 

シノンは旋剛2連撃SS双昇竜翔撃をもう一度放った。実際、このボウスキルは2番目に威力の高いボウスキルだ。

二つの旋風の龍は赤雷のブレスを少しだけずらし、共に壁とぶつかって消えた。

『White Fatalis』の間合いに入ったキリトとテンポを合わせて、アスナとレイナもミラルーツに近付き、アスナは尖剛突撃SS氷剛刃凍撃、アリスは劫炎突撃SSブルーフレイムストライクを放った。

 

「せやあああぁぁッ!」

「はあああああああぁ‼」

 

3人のソードスキルが『White Fatalis』に当たる直前、今度はバチッと漏電でも起こしたような音が聞こえたかと思えば、赤い電磁フィールドが3人それぞれのソードスキルを無効にしていた。

 

「⁈離れろ!」

 

キリトが咄嗟に叫んで、3人ともミラルーツから距離を取ろうとしたとき、『White Fatalis』はキリトに照準を合わせて、口元に赤雷を溜め込む。

そして…極太の電撃ビームを放った。ソードスキルを使用したばかりのキリトには、この攻撃を防ぐことも出来ないし、何よりビーム自体が太くて避けることも不可能だった。

 

「くそ…」

 

遠くからシノンがボウスキルでキリトを飛ばそうとも思ったが、シノン自身も今更放っても間に合いそうもないと思った。

キリトは剣をクロスに構えて、HPがゼロにならないようにしようと最善の対策を取る。しかし、その受け身を取る前に…横から身体を強くど突かれて、ビームの射程から外れた。何かと思い 

その方向を見ると、どこから飛んできたのか…直葉がビームの射程内におり、餌食となった。

 

「スグーーーーーッ‼︎」

 

直葉の下半身はビームで焼かれて、完全に失われてしまった。

キリトは剣を投げ捨てて、地面に落ちる前に直葉をキャッチした。継続するダメージで徐々にHPは減少していたが、まだ死んではいなかった。

 

「しっかりしろ!どうして…こんなことを…」

 

「せめて…最後の攻略で、お兄ちゃんの手伝いが出来たらなあ…って思って…」

 

「馬鹿野郎!俺は…俺は、お前を生きて返さないと…母さんに…」

 

「いいよ…もう…。お兄ちゃんに会えただけで、十分だから…」

 

そこで…直葉のHPバーは空となった。カシャンと砕ける直葉にキリトは何も言えず、茫然としてしまう。そんな動かないキリトを狙って、再び『White Fatalis』はブレスを放つ。動かない(まと)ほど、狙いやすいものはない。

今度はアスナとアリスがブレスを剣で弾き返そうとする。

お互いに剣を前に突き出して、ガードするが…ミラルーツのブレスは赤雷の中で多段にヒットし、アスナたちをジリジリと後ろへと動かす。

 

「キリトくんッ‼しっかりして!勝つんでしょ⁈」

 

「キリト!ここままじゃ…持たない!立って!」

 

2人の声は耳に入ってくるが、キリトは立とうとしない。

すると、アスナが…。

 

「立ってよ‼私たちの英雄!」

 

『英雄』…。

キリトはその言葉に反応して、顔を上げる。

2人がどうにかブレスを防いでいる様子が目に入った。だが、アリスの金色の剣が細かに震えて、パキンと小さな破砕音が響いた。

 

「も、もう持たない…!」

 

限界が来たアスナとアリスはブレスの威力で吹き飛ばされる。

 

「キリトくん!」

 

だが、アスナがキリトを見たとき、彼は2つの剣を両手に持って、青い電撃を身体中に纏わせていた。

真正面から飛来してきたブレスを青い剣で意図も簡単に弾き返した。

その姿にアスナ、アリス、シノンだけでなく、見物している茅場でさえ、動揺していた。

 

「ほぅ…」

 

これは既にオリジナルスキル【超越】を発動しているだけなのだが、それ以上の迫力があった。

その後、キリトは目視出来ない速度で『White Fatalis』の腹に剣を突き立て、そこから新たなソードスキルを発動する。

紅焔20連撃SSメテオバースト・ストリームだ。

アスナとアリスもそれに続いて、アスナは氷剛尖11連撃SSアイシクル・レギュラシー、レイナは劫炎8連撃SS黄金の戟炎を放つ。

ミラルーツは何故か分からないが、ソードスキルを防ごうとせず、これらの攻撃を全て受け止めた。

合計で39もの斬撃が飛び交い、『White Fatalis』の長い長いHPがゼロになった。

4人は歓喜の声を漏らそうとしたとき、キリトだけがその異変に気付いた。

『White Fatalis』は身体に再び、赤雷を溜め込み始めていた。それはキリトたちのソードスキルが始まってすぐに開始した。溜めに溜めて、傷口からいくつもの赤雷ビームを放った。

 

「「「「!」」」」

 

紅玉宮の壁が完全に崩れ落ち、砂塵が舞い散る。

『White Fatalis』は勝利の咆哮を何度も吠えるのだった。




【補足】
『White Fatalis(ミラルーツ)』
本作の第100層のボスモンスター。ベースはMH4Gをイメージしてもらえると良いかも。
原作では全ての龍の祖と呼ばれる存在。
最後のモンスターだが、耐久力は然程高くはない。その代わりに異常な攻撃力とほぼ全ての攻撃を跳ね返せる電磁フィールドを使う。更にHPがゼロになった瞬間、大規模な落雷放出を行う。

次回、茅場との最終決戦。
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