ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第58話 再び…

「……では、今日はこれまで。来週までに課題を終えておくこと」

 

教卓に立つ教師はそう言って、教室から出て行った。和人はバッグにタブレットとノートをしまって、教室を出た。昼食の時間だが、和人は弁当も持ってきていないし、食堂に向かうこともなく、中庭へと足を進めた。

小さな屋根付きの建物の下に…栗色の髪を弄って和人を待つ明日奈の姿があった。それを見つけた和人は安心したように笑みを溢して、明日奈の隣に腰かけた。

 

「お待たせ。待った?」

 

「遅いよ、キリトくん!」

 

「悪い、悪い。それと…ここではせめて『キリト』じゃなくて、『和人』と呼んでくれ。身バレしちゃうだろ?」

 

「あっ…ごめん。…じゃあ、私はどうなるのよ!」

 

明日奈のツッコミに和人は溜め息を吐きながら答える。

 

「本名をアバターネームにしてたんだから…自業自得だろ?…とは言っても、この学校自体がSAO被害者のために作られたものだから…殆どが元SAOプレイヤーで、身バレなんてとうにしているけど…」

 

やっていられないと言った表情を作った和人だったが、自然と明日奈の手を握っていた。それを感じた明日奈は顔を赤くさせる。

 

「もう…身体は大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だよ。まだ走れたり出来ないけど、生活に支障はないよ」

 

 

 

 

 

和人は目覚めた後、地獄のようなリハビリを重ねて、漸く今の身体の状態にまで持ち込んだ。

そして…愛する明日奈を探した。

明日奈が別の病院で入院しており、今もリハビリをしていると聞いた時、和人はもう待つことは出来なかった。

少し走っただけで、身体に溜まっていく倦怠感を感じながらも、和人は明日奈の病室に飛び込んだ。SAOに居た時よりも細々とした身体をしていて、本当に大丈夫なのかと疑う目で見ていた和人に対して、明日奈はもう一度最愛の人に会えた喜びから、気付けばポロポロと涙を流して、静かに呟いた。

 

「キリト…くん…」

 

その名を聞いた和人はピクッと身体を震えさせ、明日奈の方に足を進める。そして…ベッドの端に腰を下ろして、彼女を強く抱き締めた。

 

「アスナ…!アスナ‼︎また…君に会えた…!」

 

二度と会えないのではないか…。そんなことを密かに思っていた和人であったが、SAOで明日奈はこう言っていたのを、抱き締めながら思い出していた。

 

『あのね、私、これだけははっきり言えるの。ゲームをクリアしても…私は絶対またキリトくんに会うよ?そしてね、また…君のことを…好きだって…伝えるんだ…』

 

明日奈の言葉通りになったんだと思った和人は明日奈を見詰めて、その言葉を待つ。明日奈も決めていた。現実世界で和人に会ったら、真っ先に言おうと決めていた言葉を…。

それはもちろん…。

 

「愛しています…キリトくん」

 

『好き』ではなかったが、『愛している』も変わらない。

どっちの言葉であったとしても、和人にとっては最高の言葉だった。

和人は頷き、明日奈の唇を奪う。

その最中、入って来た看護師と明日奈の両親に見つかって、大変な事態になったのはまた別の話である。

 

 

 

 

そんなことを思い出していると、不意にお腹が悲鳴を上げた。

その音に明日奈は「ぷっ」と笑いを溢し、隣に置いている籠に手を伸ばした。

 

「キリトくんは仮想でも現実でも食いしん坊さんなんだね。はい、これ」

 

明日奈が手渡してくれたのはサンドイッチだった。

SAOの迷宮区第74層でご馳走になったあのサンドイッチと見た目が全く一緒のもので、それを見た和人は目を輝かせた。

 

「私が食べさせてあげる。はい、あーん♪」

 

和人は口を開けて、サンドイッチが口の中に来るのを待ち、来た途端に頬張りついた。

 

「ふふ、美味しい?」

 

「ああ、最高だ!これのために生きているって言っても過言じゃない」

 

「もう、大袈裟ねえ…。あっ…そういえば…」

 

明日奈は思い出したことがあるらしく、和人に質問する。

 

「団長って…どうなったの?」

 

和人はそれを聞いた途端、黙ってしまった。

口の横に付いたソースを拭いながら、数秒黙った後に、口を開いた。

 

「ヒースクリフ…茅場彰彦は…死んでいたって。自殺らしい」

 

「自殺?」

 

「長野の山中で遺体が見つかった。死因は脳の高出力スキャンらしい…」

 

「それって…自分の意志をコンピューターに移すこと…だよね?」

 

「確率は1000/1にも満たない。だけど…俺は茅場が成功していると思う。あいつの仮想現実に対する想いは…俺たちよりも強かったからな…」

 

和人はそこまで言って、明日奈の手を優しく握る。

 

「でも、もう終わったことだ。これからは俺たちの意志で生きていける」

 

「そうだね…。それに今日、知ってるよね?エギルさんの店であること」

 

「もちろん。分かっているさ」

 

明日奈は「良かった」と言って、和人の肩に頭を乗せて、心地よく目を瞑った。このまま寝るつもりなのかと和人は思ったが、それでもいいやと思いながら、和人も目を瞑った。

その様子を…校舎の3階から覗き込む1人の少女がいた。

購買で買ったパンを噛み締めながら、和人たちのデレデレ具合に歯を噛み締める者が…。

 

「くっそ〜、いくら明日奈だからって、アレはやりすぎだよ!」

 

「キリト…」

 

そんな間抜けなことをしているリズベットこと里香とシノンこと詩乃は声をかける。

 

「やめなさいよ。覗き見なんて趣味悪いわよ?」

 

「別にいいよ。あんなところでイチャイチャしてる明日奈たちが悪いんだから」

 

里香はそう言って踏ん反り変える。

詩乃はこれから先もこんな学園生活を送っていくのかと思うと、溜め息が止まらないのだった。

 

 

 

 

放課後、和人と明日奈は手を取りながら、エギルの店へと行った。その後ろで直葉が(いぶか)しげな表情で見ていて、2人とも手を繋いでいるが、落ち着かなかった。

そして、彼が店をやっている喫茶店を見つける3人。

初めてこういった店に入るので、3人とも緊張して、ゆっくりと中に足を踏み入れた。

すると…。

 

「いらっしゃい!キリト御一行‼︎」

 

その言葉のすぐ後にクラッカーの音が何度も響き、和人たちにカラフルなテープと紙ふぶきが舞って、頭の上に乗った。そして、いそいそと里香たちが3人に飲み物を握らせると、「乾杯‼︎」と叫んで、再度クラッカーを発射した。

そして…店のど真ん中に【Congratulations】の文字が貼ってあった。

 

「これは…」

 

訳が分からず、混乱している和人に里香が説明する。

 

「和人がゲームをクリアしたのに、誰もそれを祝ってなかったでしょ?だから、詩乃たちと協力して、サプライズパーティーを開くことにしたの。()()()とは別にね」

 

里香の説明を聞いて、和人たちは納得した。

だが、明日奈だけ、納得していない部分があった。

 

()()()って…何?」

 

「後で教えるよ」

 

和人は笑って、明日奈の質問をいなす。

そして、パーティーが終わりを迎えた時に和人は綺麗にラッピングした箱を明日奈に渡した。

 

「家で開いて。多分…明日奈にとっては嬉しいものだと思うよ?」

 

明日奈は首を(かし)げて、パーティーが終わり次第、自宅へと帰るのだった。

 

 

 

 

明日奈は家に帰り、和人から貰った箱を開けた。

中にはつい先日発売された新たなVRインターフェースの《アミュスフィア》だった。これを見た明日奈は動揺した。これはナーヴギアの後継として作られたもので、安全機能を重視した最新のマシンで、値段自体もそこそこ張るものなのだ。

なのに、和人はこれを明日奈に渡した。

何故…。

疑問ばかりが明日奈を襲うが、明日奈はこれを付けて、また現実に戻れるのか一抹の不安を覚える。

()()()も大事件に発展するまでのことが起きるなど、予期していなかった。今回は大丈夫なのか…。

そう思ったが、中にはアミュスフィアの他にソフトが一つと、メモ用紙が入っていた。

ソフト名は【ALfheim(アルヴヘイム) Online(オンライン)】。『妖精たちの国』だ。

そしてメモ用紙には…和人の文章が書いてあった。

 

『いきなりこんなものをあげてしまって、酷く混乱していると思う。明日奈、あの仮想世界に行きたいと思うのなら、ぜひ来てほしい。見せたいものもあるから』

 

和人の願いを明日奈が無視できるはずがなくて、先程の迷いはどこかへ消えて、構うことなくアミュスフィアを付けた。そして…ALOを接続して…数か月ぶりの仮想世界へとダイブするのだった。

 

 

 

 

アスナはSAOと同じアバターネームで、ALOの世界に入った。栗色の髪は種族の関係で水色へと変わってしまっているが、それ以外は現実と大差ない…ように見えた。

そして…最初に確認したのが設定のログアウトボタンがあるかどうかだった。

設定を開くのは逆の手で出せるようになってはいたが、きちんとログアウトボタンは存在した。それを知れて、アスナは心底ホッとした。すると…。

 

「やっぱり、アスナもそれを確認したか」

 

後ろからキリトの声が聞こえて、アスナは急いで振り向いた。

そこには現実世界よりも髪が荒れており、背中に大剣を背負ったキリトが立っていた。SAOとはどこか違う雰囲気を醸し出していたが、紛れもなくキリト本人だった。

 

「いきなり話しかけないでよ、びっくりしちゃったじゃない」

 

「悪い悪い」

 

「それよりキリトくん、アミュスフィア…どうやって買ったの?キリトくんの小遣いじゃ…」

 

「あ……まあ、独自のコネを使ったというか…」

 

アミュスフィアの入手方法をあまり話したくないキリトは、アスナの手を握って、このゲームで使用できる『飛翔能力』を使って、空を飛び始める。

 

「ちょ、ちょっとキリトくん⁈わわわ……」

 

慌てふためくアスナが面白いキリトはどんどん高度を上げていき、所定の場所で止まった。

 

「どうしたの?」

 

「あそこ。見てろよ、アスナ」

 

キリトが指差す先を凝視していると、黄金色の輝きと共に…見慣れた城が姿を現し始めた。それが何か、分かった時、アスナは思わず声を漏らしていた。

 

「どうして…。どうして、アインロック城が…」

 

「ALOを作った会社が、また独自にSAOを作ってくれたんだ。簡単に言えば…リメイクされたSAO…って言えばいいかな?」

 

キリトはアスナの方を見る。

 

「あそこに行けば…俺たちが住んでいた22層のログハウスに戻れるし、何より…最後のクリアを見れなかった俺たちにはリベンジマッチになる。…協力してくれるよな?アスナ」

 

真っすぐ見詰める瞳に、アスナはゆっくりではあるが、しっかり頷いた。

 

「当たり前だよ。どこまで行くよ?君と一緒なら…」

 

そう言って、彼の唇を塞いだ。その数秒後、地上から更にプレイヤーが飛び上がってきた。

 

「アスナ!先に行ってるわよ!」

 

「お先!」

 

「イチャイチャしないでよ!目の前で!」

 

「パパ、ママ、行きましょう!」

 

ユイ、シノン、リズベット、エギルなどのプレイヤーは我先へと天空の居城へと飛んで行く。

キリトは右手にアスナの手、左手にユイの手を取って、羽を大きく広げる。

 

「よし!行くぞ!」

 

キリトの一声と共に、新たなゲームがまた一つ…幕を開けるのだった。

 

 

            ―アインロック編 完結―




遂に完結しました。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
次回作なのですが、アンケートを見る限り『書いてほしい』とあり、大変うれしく思う所存です。

ですが、現在ネタが全く思い付きません!
なので、頑張ろうとは思いますが、投稿までかなり期間が空くと思います。←多分何か月も空く。もしくは、書けない可能性もあります。まあふとネタが思い付くときもあるので、そこはご了承ください!

何はともあれ、本当にありがとうございました。
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