ソードアートオンライン Monster Hunter World 作:GZL
ボスとの激闘から数日が経過した頃…キリトはこれからどうしようかと頭を抱えて悩んでいた。
あのボス戦でアスナと共にあの第73層を攻略したことをアスナが加盟している血盟騎士団に伝えると、どうやって2人だけで倒したのかと聞かれて、キリトは包み隠さずに全てを話した。
キリトはあのボス戦で使用したのは、エクストラスキル…要するに一個人でしか使用出来ないユニークスキルを使った。
その名は《二刀流》
いつの間にか設定の中に入っていたスキルで、公の場では出し惜しみしていたのだ。
だが、あの時は想定外で使わざるを得なかった。
それ以来、キリトに対するギルド加入の催促が後を絶たなくて、遂に自宅を手放すほどになってしまった。どこか落ち着きを取り戻したいと思って来た場所が22層のログハウスで、自らの所持金全額を払って、そこに落ち着いた。
キリトは揺れる椅子に座って、静かに眠ってはいたが、いつまでもここにいる訳にはいかなかった。
キリトを必要としてくれるプレイヤーはたくさんいる。
ギルド催促が嫌だからといって、前線に出ないのも気が引けてしまった。
「さて…どうしたものか……」
キリトは悩みつつ、とある決意を固めていた。
前線に戻るかは後にして、キリトはコンビを組んでくれたアスナに何かしらのお礼をしたいと思っていた。元は彼女が無理矢理押しかけて来て始まったことだが、昼食を奢ってくれたり、弱りきったところを支えてくれたりと、何かしてやらないと気が済まなかった。
でも、何を送ろうかと考えても……どうしても『アレ』しか思い付かなかった。
「…まだ居るかもしれないが、行くっきゃないか…」
キリトは椅子から立ち上がり、いつも来ている黒のコートではなく、薄い青色のフード付きのコートを身に纏った。
そして向かったのは第48層のリズベット武具店。
彼のもう1つの相棒の剣、『白雷剣エンクリシス』を作ってもらった場所と同じ場所である。
カランカランと鐘が鳴って、お客が来たことに気付いたリズベット。ずーんと沈んだ表情だったリズベットはキリトを見るなり、やる気が満ち溢れた表情になり、明るくなる。
「お!キリトじゃんか!暫く見なかったけど、隠居生活でも始めたのかしら?」
「みんなに追われてるからな…。少しでも違う服にしたんだが…雰囲気でバレちまってるな…」
「キリトは服を変えたくらいじゃ誤魔化せないわよ。それで、今日はどうしたの?」
「お願いがあって来たんだ。こいつを使って…
俺はポーチから数日前に倒したボス《
すると、彼女はキリトが初めて『覇王剣』を見せた時以上の反応を示した。
「うええっ⁈これ……どんだけレベル高い素材なのよ‼︎…でも、キリトって
「前のパートナーにプレゼントするだけだよ。かなりお世話になったからこれくらいしないとと思って…」
「ふうん…」
リズベットは暫し考えてから、何か思い当たったように笑みを浮かべた。それも相当面倒そうな笑みだ。
「あんたがあげようとしてる人物分かっちゃった。だけど…今回はこんな超高レベルの素材を持って来てくれたから…
「強請るなよな…」
キリトはリズベットに素材を渡し、作成料も払ったところで彼女からこんなことを…。
「悪いけど、出来上がるまでに時間がかかるから、あんたの家を教えてよ。送ってあげる」
「それはどうも」
キリトは彼女に自宅の場所を教えて、転移結晶で22層にまで戻った。
そしていざ、家の前に着いた時には、扉の前でキリトの帰りを待っていアスナの姿があった。
「ア、アスナ…どうしてここが…」
「…やっと見つけた。探すのに苦労したんだから!」
アスナは何の前触れもなく、キリトの胸に顔を押し付けた。
彼は今の状況について行けずにいる。
アスナが何故ここにいるのか…そしてどうやって探し出したのか…など。
「お、おい…アスナ…。とにかく話は家の中で…」
キリトはアスナを家に招き入れるのだった。
久しぶりにキリトに会ったアスナは思わず泣いてしまった。
あのボス戦以降、一回も会えていなかったのだ。原因はアスナもよく知っている。
アスナが加入しているギルド…血盟騎士団が遂に重い腰を上げて、キリトを加入させようと本腰を入れ出したのだ。
アスナの目の前で使ったユニークスキル《二刀流》…。あんな素晴らしいスキルを持ったプレイヤーを欲しがらないギルドがあるはずがない。
だが、キリトの目はギルドに入るのを拒むのと同時に恐れていた。
だから、アスナは敢えて何もしなかった。
業務があると言い訳して、彼を探さなかったのだ。
それでも、あのボス戦で見たキリトの
『私が支える』。そんな母性のようなものがあったのかもしれない。でも…。
(それとも……もしかしたら私は……)
暫くして涙が止まって、アスナは漸く彼に目を向けることが出来た。
「ごめん…突然現れて泣いたりして…」
「大丈夫…というか、アスナこそ大丈夫?」
「うん…。それよりキリトくんって黒以外の服なんて持ってたんだ」
不意に思ったことを言うと、キリトくんは苦笑した。
「いつもあのコートだしな。それに今はあまり目立ちたくないんだ」
「やっぱり…《二刀流》の件?」
「ああ…」
キリトくんはソファの背もたれにどっと背中を預けて溜め息を吐いた。
暫く沈黙が続いていると、不意にピピピッと音が鳴って、キリトの前に長細い小包みが届く。
「…来ちゃったか」
「何それ?」
「まあ、簡単に言ったら…プレゼント…」
「誰の?」
「…アスナに…」
顔を少し赤くさせているキリトにそう言われて、アスナは耳を疑った。
キリト本人からのプレゼントに驚愕して、勝手に嬉しさが湧き上がってくる。
キリトはぎこちなく、アスナに梱包された箱を差し出す。
「何だろう…」
キリトから渡された箱を受け取って、中身を確認する。
それは第73層のボス《
その場にあるだけで空気が冷えて、鋭く磨がれた刃先は白銀に輝いていた。
「私のために…作ってくれたの?」
「レア食材とあの時の昼食のお返しだよ」
「ありがとう!私…こんなに嬉しい贈り物初めてだよ‼」
「それなら良かった…。実際、女の子にプレゼントするの初めてだったし…」
キリトがそう言うから、アスナは驚いて聞き返してしまった。
「ええ?キリトくんって、女子の扱い分かっていそうなのに」
「…まあ、初めて心が通えた彼女は…………はっ‼︎」
そこまでキリトくんは言ってから口を押さえた。
何か言ってならないことを誤って口走ってしまったかのような反応だった。
「…どうしたの?…もしかして…サチって子のこと…?」
「!」
キリトの身体が途端に震える。
どうしてその事を知っているんだ…と言いたそうな表情を作り、何かを恐れるように…アスナから視線を逸らした。
「ねえ、私にそのサチのことを教えてくれない?」
「…どうして知りたいんだ?」
「何か役に立ちたいから。それだけ。私はキリトくんのためなら何だって出来る」
「…!」
アスナがそう言った途端、キリトの身体は更に小刻みに震え始めた。
すると彼は紺色のフードを被って、そっぽを向き、アスナに言った。
「帰ってくれ…」
「え?」
「いいから帰ってくれ‼︎」
キリトの2度目の怒鳴り声。
だが、アスナは一度、キリトの怒声を聞いているので、何も恐れるものはなかった。
「いやだ。聞くまで帰らないよ」
「………」
椅子から立ち上がってキリトの肩に触れる。
そして、彼女はもう一度だけ…頼んでみた。
「キリトく…」
「帰れって言ってるだろ‼︎」
怒りが爆発したのか、キリトの拳がアスナの頬を直撃した。
「あうっ…!」
ソファにぶつかる形でアスナは倒れた。
一瞬、打たれたことに気付かなかったアスナは痛みから自然と流れ出る涙を含んだ瞳で彼を見た。
キリトはフードを被ったままであったが、『申し訳ない』、打ったことに対する後悔を有した表情をしていた。
だが、アスナは打たれたことがショックで…悲しくて、彼から貰ったばかりの
「キリトくんなんて大嫌いっ‼︎‼︎」
逃げ出すように飛び出たアスナはさっさと自宅に籠るのだった。
コロコロと新しく作った
折角プレゼントしたのに…台無しになってしまった。
「はは…」
キリトはもう笑うことしか出来なかった。
結局…手を差し伸ばしてくれたアスナも拒絶した。
キリトは拒絶したことを後悔し、全てを失ってしまったと、心にポッカリと穴が空いた感じになった。
それからキリトは何も考えることなく、眠りに落ちていくのだった。
補足1
『白雷剣エンクリシス』
デザインは3Gのラギアクルス亜種素材の太刀最終強化。キリトに日本刀はどうかと思いましたが、他に良いものが思い浮かびませんでした…。
補足2
『
辿異種ギアオルグ★4の尾(発達部位)の破壊報酬。
辿異種の中でも手に入れにくい素材だった記憶がある。