ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第3話 ギガスシダーの大杉

背中から感じる柔らかい草木の感触が心地良い。

キリトはそれを感じながら、ゆっくりと目を開ける。上空には眩しい程に輝く星々が見えた。

ゆっくりと上体を起こしながら、キリトは周囲を見渡す。

周りは大きな木々が鬱蒼と生い茂っており、蛍が煌々と飛び交っている。キリトはこんな場所に来た覚えはなく、今まで何をやっていたのかを思い出そうと必死に頭の中を整理する。

 

(確か…明日奈とエギルの店を出て、彼女を送って……それから…)

 

そこでキリトは思い出した。

何者かに襲われてしまったことに…。

だとしても、謎だ。

 

「どうして…俺はこんなところに…」

 

キリトは自身の腹に手を当てる。痛みも血の流れた後もない。無傷なのは間違いないが、状況が全く読み込めない。

 

「ここは、どこなんだ?」

 

見た感じ、現実世界であるようには見えない。かといって、飛び交う蛍や風に揺れる木々が3Dのデータにも見えない。

現実世界か仮想世界なのか、区別が出来ないキリトは立ち尽くしてしまう。

 

「…とにかく、早くこの森を抜けよう。何かに出会う前に」

 

そう呟くと、すぐに茂みから音がする。

ギクっとその方向に目を向けると、青と黒の縞模様と特徴的な鶏冠(とさか)を有した、キリトの覚えがあるモンスターが姿を現した。

 

「こいつは…!」

 

ギィ、ギィと耳障りな奇声を発するモンスター『Velociprey』は1体だけでなく、数体も出てくる。

奴らはかつてキリトが3年も幽閉された居城【SAO】に出てくる初期モンスターだ。これではっきりした。

キリトが今いるここは、『仮想世界』なんだと…。

 

「って、そんな事を呑気に考えてる場合じゃねえ!」

 

キリトは考えるよりも前に足を動かした。明らかに獲物としか見てない『Velociprey』たちから逃げるために、キリトは道もない、ただ永遠に続く森の中を突き進む。途中で枝や葉で身体が傷付き、痛みが少し走る。いくら走っても、『Velociprey』たちの追走は終わらない。

そんな時、キリトの視界に巨大な大杉が見えた。あの大杉に登れることが出来れば、奴らを振り切れるかもと思ったキリトは更に足を速める。

ところが…大杉からおよそ30m程のところで、突然1体の『Velociprey』が突然苦しみ、地面の上に倒れる。そして、身体の肉が何かに吸われるように骨だけが浮き彫りになり、最終的に身体が輝いて消え失せる。

その光景を見た他の個体は、逃げるように森の中へと消えた。

漸く奴らの追撃を躱しきれたキリトは安堵し、杉の幹に寄りかかるように倒れる。

 

「はあ…はあ…」

 

全速力で走ったために、体力は限界だ。しかも仮想世界のはずなのに、『疲れ』がある。傷を負った時の痛みはいつも通りだが、この『疲れ』は異常だった。

 

「ここが仮想世界なら…出る方法があるはず…」

 

『SAO』の癖で、オプションを開こうと右手を虚空で上から下に動かす。しかし、何も出てくることはない。

 

「また…閉じ込められたのか?それとも…天国か地獄か…夢…か…」

 

そんな事を考えている内にキリトは眠気に襲われる。

夜空に輝く星々を見ながら…キリトは目を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キリト!早く早く‼︎』

 

「待てよ、■■■!ほら、さっさと天職を始めるぞ!」

 

(また…夢か…)

 

キリトは幼い自分と亜麻色の髪を持つ少年と共にはしゃいでいる夢を見ているようだった。そこに更に2人の少女がやって来る。

 

『キリト‼︎■■■‼︎遊んでないで、早くお昼を食べて‼︎』

 

『2人とも…相変わらずね』

 

だが、その少女たちの顔をしっかりと見ること…と言うよりは思い出すことが出来ない。

 

『お、やっとお待ちかねのお昼だ!』

 

そこからキリトを含めて、4人で騒ぐ少年少女たち。

しかし、その夢は一瞬にして怒号と悲壮したものに変わる。

 

「■■■‼︎早く!助けるんだ‼︎」

 

『出来ない…。動かない…!』

 

そこで初めて…キリトはその少年の名を呼ぶ。

 

 

 

 

「ユージオォォッ‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「‼︎」

 

キリトが目を開けると、目の前には亜麻色の髪…先程の夢で出てきた少年と同じ髪色の者がキリトの顔を覗き込んでいた。あまりに驚いたキリトは互いの顔が近くにあるのにも関わらず、一気に身体を起こしてしまい、額をぶつけてしまう。

 

「いたっ!」

「いてっ!」

 

額を抑えるキリトと少年。

少年は左手にバスケット、右手に骨で出来た大きな斧を携えていた。

 

「いててて…大丈夫?」

 

「だ、大丈夫だ…」

 

「君…どうしてギガスシダーの下で寝ていたの?お家とか、どうしたの?」

 

「えーと……それは…」

 

キリトは言い訳を考えようとする。流石に『現実世界からやって来た、どうして来たのかも分かりません』、なんてことを言えるはずもなく、しどろもどろしてしまう。

だが、目の前にいる少年がその言い訳を作ってくれる。

 

「もしかして…ベクタの迷子?」

 

「ベクタの迷子?何だそれ?」

 

「ダークテリトリーの神、ベクタが僕たち人界の人の記憶を消して、どこか遠くに飛ばしてしまう…っておとぎ話さ。…それも知らないの?」

 

『ダークテリトリー』、『ベクタ』、『人界』…。聞いたこともない単語を何個も並べられて、キリトは混乱しかけたが、どうにか軌道修正しようと、必死に頷いた。変に突っかかると、更に面倒になると思ったからだ。

 

「そうか…。じゃあ、今日から僕の村『シナット村』に来ると良いよ」

 

「ありがとう。えーと…」

 

キリトは少年の名前を呼ぼうとしたが、夢の中で自分自身が叫んだ名前を言うことは出来なかった。

 

「ユージオだよ。僕の名前は、ユージオ」

 

「ユージオ……。ありがとう。俺の名前はキリトだ」

 

キリトがそう言うと、彼の腹が大きく鳴った。

それを聞いたユージオはぷっと笑う。

 

「お腹が空いているようだね。じゃあ、僕が持ってきた昼食、半分分けてあげるよ」

 

「いや……お言葉に甘えさせて頂きます」

 

キリトの隣にユージオも座り、バスケットからパンを取り出す。その色はキリトがSAOの第1層で食べたあの固いパンにそっくりだった。見た目だけでなく、感触も…。味もどうなのかと、ちぎって口に入れてみる。

 

「…同じだ」

 

「ん?同じ?食べたことでもあるの?」

 

「い、いや!」

 

「美味しくないでしょ?」

 

「そんなことないよ。至って普通だよ」

 

キリトは淡々と食べていくが、ユージオは食べるよりも先に何かをやっている。

パンの前でS字を描くと、オプションのようなものが出て、それを確認していた。

 

「!あれは…!」

 

「まさか、『ステイシアの窓』も分からないとかって言わないよね?キリト」

 

「い、いいや!流石にそれは…」

 

キリトも見様見真似でパンの前でS字を描く。

『ステイシアの窓』というものには3つの項目があり、真ん中の項目は分数になっており、今見ているこの瞬間にも減少している。

 

「天命はそんなすぐには減らないから、急がなくても大丈夫だよ」

 

(天命…。SAOでいう、HPか…)

 

「すごいね、キリトは…。僕は最初の頃は硬くて全然食べられなかったよ」

 

「じゃあ、ユージオはいつもは何を食べてたんだよ?」

 

そう聞くと、ユージオは黙ってしまった。

そして、思い出すようにユージオは語り始める。

 

「僕の天職はこの大杉…ギガスシダーを切ることなんだ。午前と午後でこの斧で1000回ずつ叩く。幼い頃の僕は1000回もやったらバテてしまって、大変だった。そこにお昼ごはんを持って来てくれる人たちがいたんだ。2人の作ってくれるサンドイッチは最高だったよ」

 

サンドイッチを作ってくれる人…それを聞いたキリトは明日奈のことを嫌でも思い出してしまう。

 

「2人が持って来てくれるサンドイッチだけで、僕は元気が出たよ。でも…7年前のあの日、僕があんなことを言い出したせいで…2人は……」

 

ユージオは辛そうな表情をして、そこで一旦口を止めてしまう。キリトは『もういい』と言おうとしたが、ユージオはまだ続ける。

 

「2人の作るサンドイッチは夏では天命がすぐに消えてしまって…食べれなくなることが多々あった。それを無くすために、果ての山脈で氷を得られるってことを聞いたんだ。それがあれば、サンドイッチを長く保存できる。だから…僕たち3人で氷を探しに行った。だけど、その帰りに…2人は禁忌目録に書いてある『ダークテリトリーの侵入』を犯してしまった…。それで2人は、整合騎士に央都ドンドルマに連れて行かれてしまった」

 

ユージオの話を聞き入ってしまったキリトは何故か懐かしい気持ちになっていた。

今の話を昔、どこかで…聞いたどころか、自らの記憶のどこかに残っているような気がした。

 

「…そうだったのか…。それは…辛かっただろうな」

 

「でも、そろそろ忘れようと思ってる。…いつまで悔いても、意味ないからね」

 

「それで…その2人の名前は何て言うんだ?」

 

ユージオは一拍置いてから、言った。

しかし、それを聞いた瞬間…キリトの中で何かが動くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリスと、イーディスだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…」

 

どくんとキリトの鼓動が高鳴る。

そして…何度目となる、涙が頬を流れるのだった




【補足1】
『Velociprey』
ランポスの英語名。
原作では咬ませ犬役の彼だが、今作でも咬ませ犬になってもらいました(笑)。

【補足2】
『ギガスシダーの大杉』
原作でも恐れらている悪魔の杉だが、今作は土中の栄養だけでなく、地上の生物をも捕食する。では、何故キリトやユージオが平気なのか…。それは後々分かります。

【補足3】
『シナット村』
初代MHの拠点『ココット村』、MH4の拠点『シナト村』を合わせた造語。
因みに意味なく、作った造語ではありません。その意味も後々分かります。お楽しみに。

【注意!(再び)】
私は今作、イーディスを登場させようと思っていますが、イーディスの能力、性格、口調…何から何まで全く分かりません!頑張ろうと思いますが、キャラ崩壊してしまう可能性が高いので、ご了承くださいm(__)m

最後に、今シリーズは()を多用していきます。

時穿剣と同じ能力、もしくは近しい能力を持ったモンスターっている?

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