ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第4話 冰龍の剣

「キリト…涙が出てるよ?…どうしたの?」

 

キリトはユージオに言われて気付き、急いで拭う。何故ここでも泣くのか、未だに分からないキリトは誤魔化すために適当な理由を口から出す。

 

「あくびだよ、あくび!それよりも…ユージオの天職の木こり?でいいのかな…。それを俺もやってみたいんだけど、いいかな?」

 

上手く話を逸らせようとするキリトにユージオは意図も簡単に引っ掛かる。

ユージオは置いてある斧を持ち、切り込みの入った場所の前に立つ。

 

「この太古の巨龍骨から作られた斧で、この切れ込みに刃を入れるだけさ。この切れ込みに上手く入れられないと、天命を減らすことが出来ないんだ」

 

そう言うと、ユージオは大きく振りかぶって、斧を切れ込みに叩き込む。すると、甲高いカーン!という音が森の中に響き渡る。ユージオは続いて、更に斧を叩き込む。それを繰り返すこと500回…。その努力にキリトは凄いとしか思わなかった。

 

「凄いな、ユージオ!これを休みがあるといえ、1日に2000回もやるんだろ?」

 

「もう慣れたよ。で、やってみる?」

 

「お昼ごはんを半分貰ったんだ。そのお礼をする時だ」

 

キリトはユージオから斧を受け取り、同じく構える。

軽々と持ち上げていたユージオとは違い、この骨の斧は少し重い。だが振れない程ではないため、1回試しに振ってみる。

 

「うおおおぉぉっ!」

 

振った斧は切れ込みに当たることはなく、非常に硬い皮に当たる。

更にほぼ同時にキリトの両手に途轍もない振動が痛みとなって響いた。

 

「ぐあっ⁈」

 

それを横で見ていたユージオは目元に涙を少し溜めて笑いを上げた。

 

「あはははは‼やっぱりね。初めてにしては振りは良かったけど、切り込みに当てることは無理だったね」

 

「そんなに笑うことはねえだろ…。はあ…いってぇ…」

 

未だに両手に痺れが残る。

キリトは自らの身体でステイシアの窓を開けてみる。

すると、僅かに天命が減っており、こういったことでも減るとなると、SAOの時以上に気をつけなければならないと思ってしまった。

 

「でも…こんな天職、すぐに終わると思うけどな…」

 

「そんな簡単によく言えるね…。このギガスシダーの天命を見てみなよ」

 

ユージオがこの大杉のステイシアの窓を開けると、そこには2万以上もの天命が残っており、たったの数百程度しか減っていなかったのだ。

 

「この数百の減少は僕を含めて7代続けて、漸くこれなんだ」

 

「7代⁈」

 

「そう。もう200年もこうやってるけど、これしか減らせてないんだ。しかも、この大杉は周囲の神聖力を吸収して、また大きくなるんだ。だから天命も回復する。…いたちごっこみたいなものだよ」

 

ユージオは笑いながら斧を拾って立てかけ、ぽろっと弱音を溢した。

 

「…絶対に、この天職は僕が生きている間には終わらないよ」

 

「この斧以上のものとかないのか?」

 

「馬鹿を言うなよ。この斧は滅多に手に入らない太古の巨龍骨を使っているんだぞ?武器の優先度はそこまで高くないけど、威力だけで見れば、非常に優れたものなんだよ?」

 

「そ、そうなのか…。それは失礼いたしました…」

 

「…いや、ちょっと待って」

 

そう呟くと、ユージオはどこかへと走っていった。何かを持ってくるのだろうと思いながら、キリトは空を再び見詰める。初めて見た星空と違い、白い雲がゆっくりと流れ、翼竜の群れらしきものが優雅に飛んでいる。

 

「あのユージオという少年…夢の中で出てくる…。彼とは会ったこともないのに…。そもそもここは仮想世界…NPCにも見えないのは、俺の気のせいか?」

 

ユージオの先程の話を聞く限り、彼は7年以上もシナット村と言う場所で暮らしているらしい。年単位も住んでいるNPCがいるとは到底考えられない。

 

「……待てよ。確か…菊岡が言ってたな…」

 

キリトは菊岡から勧められたバイトのことを思い出した。

 

『覚えなくてもいいけど、君が会う人たちはまさに【人の魂】さ。まあ、見ても触れあっても、分からないだろうけどね』

 

「『魂』…。じゃあユージオはAI?いや…だとしても…」

 

何度考えを巡らせても、結局答えは分からない。

 

「…とにかく、早くこの世界からログアウトしないと。…にしても、また仮想世界に閉じ込められたのかな?」

 

自嘲するキリト。自分はこのような目に遭う運命なのかもとも思ってしまう。

すると、少し遠めにユージオの姿が見えた。背中に棒状のものを担いでいる。

 

「はあ…流石に…重くて大変だよ…」

 

「これは何だ?ユージオ」

 

「開けてみなよ。凄いものだから」

 

キリトが梱包を解くと、目の前に息を飲む程美しい剣が姿を見せる。

白銀と濃紺が混じった色で、剣の柄には氷の結晶模様がいくつも描かれている。刀身も白に近い色だが、よく見れば七色に輝いている箇所もある。長年放置されていたこともあるかもしれないが、やけに剣自体が冷たく感じられる。

 

「『冰龍の剣』…と僕たちのおとぎ話では呼ばれている」

 

「冰龍?」

 

「果ての山脈の先にいたとされる、幻の龍だよ。その龍から生成され、ずっとこの剣を守護する存在だった…とも言われている。これは僕がアリスたちと探検に行ったときに見つけたけど、重くて持っていけなかったんだ。だけど、2年前、たまたま果ての山脈に行ったときに一か月もかけて持って帰ったんだ。でも、その龍はもう死んだのか、骨になってたけど」

 

「一か月⁈それは大変だったな」

 

キリトは剣の柄を握り、持ち上げようとする。

だが、剣はちっとも上がらない。剣先が僅かに地面から上がる程度で、振るなどもってのほかだった。

これもSAOと違い、この仮想世界ではSTR(strength)が存在しないように思える。

 

「こ、これは本当に重いな…」

 

「だから言ったでしょ?そもそも振れたとしても、剣を使えない僕には無理だよ」

 

今のところ、全てユージオの言う通りだった。キリトでも持ち上げることは出来ない。

 

「まあ、とにかく今日は帰ろう。村の人たちにも君のことを話さないといけないし」

 

「分かった。剣はどうするんだ?」

 

「また、物置に戻すのは大変だから、このままここに置いておくよ」

 

「おいおい、誰か盗んだりしたらどうするんだ?」

 

だが、ユージオは頭の上で?を浮かべる。

 

「盗むはずがないよ。だって、盗みは禁忌目録で禁止されてるもの」

 

「あ…そ、そうなのか…。あはは…」

 

また笑って誤魔化しつつ、ユージオの後ろについていくキリト。

10分もすれば、小さな村が見えてくる。少し大きな教会だけが目立って見える。キリトはよそ者である自分が入っても問題ないのか、気にしてしまう。

その不安は的中して、村の入口で衛兵らしき男に止められる。

 

「ちょっと待った!よそ者を簡単に入れることは出来ない。ユージオ、こいつは?」

 

「キリトって言って、ベクタの迷子らしいよ」

 

それを聞いた男はキリトに対して、疑いの目を向ける。

当然だろうとキリトは思いつつ、「ど、どうも…」とだけ声をかけた。

 

「…まあ良いだろう。どうせ大した天職もついていなさそうだ。ユージオと同じくな」

 

それを聞いたユージオは顔を俯かせる。逆にキリトは沸々と怒りが立ち込める。

そして、キリトは目の前の男を黙らせようと、思い切ったウソをつく。

 

「…ああ、思い出した。もしかしたら、俺の天職は…剣士だったかも…」

 

この発言に男は一瞬固まったが、すぐに我に返ったのか、笑いを上げる。

 

「お前みたいな奴が剣士?面白いじゃねえか。だったら…」

 

男は腰に携えている剣をキリトに差し出す。そして、奥に見える細い木を指差す。この男は『本当に剣士なら、あの木を切ってみろ』と言いたいのだろう。

キリトは剣を受け取り、その木の前に立つ。この剣はさっきの斧よりも、冰龍の剣よりも軽い。何故か、この剣なら上手く行くと絶対的な自信を持つキリト。

そして…一気に踏み込み、剣を横に振る。

すると、青いエフェクトが発生して、細い木はスパッと綺麗に切れる。

それを見た男、そしてユージオも驚愕の表情を浮かべる。

 

「す、すごいよ!キリト!本当に剣士だったんだね!」

 

「い、いやあ…」

 

「ば、馬鹿な…」

 

キリトは男にウィンクして、意気揚々と村の中へと入っていった。




【補足】
『冰龍の剣』
原作『青薔薇の剣』に変わる剣。
名前から分かる通り、MHW:Iのメインモンスター『イヴェル・カーナ』の剣である。見た目は大体青薔薇の剣と変わらないが、異なる箇所が2つある。

1. 刀身に綺麗な虹色のグラデーションが薄く付いている。
2. 青薔薇の紋章のところは変わって、氷の結晶が連なったものが飾ってある。

能力等は後に紹介します。お楽しみに。
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