ソードアートオンライン Monster Hunter World 作:GZL
シナット村に入ったキリトは早速、ユージオの伝手で教会に泊まることが出来た。
その時に出てきた白髪のおばさん…シスター・アザリアの非常に冷たい視線が、キリトの脳裏に印象深く残っている。
だが、それ以上に気になることがあった。そのシスターの後ろでキリトたちの様子を窺っていた茶髪の少女だ。彼女と目を合った時のユージオの様子は明らかに変だった。因みにその少女はキリトに対して、この教会の案内と規則を厳しく教えた。既に18歳のキリトにとって、細かすぎる規則に頭が痛くなりそうだった。
具体的には朝6時の神への祈りのために、朝5時半には起床。
他に朝食、昼食、夕食の時間、風呂の時間、就寝時間などなど。
それらを聞き終えたキリトは少女…名をセルカ…から、寝間着と毛布を受け取り、自身が使うベッドに座っていた。
「じゃあ、きちんと起きてね。寝坊したら、シスター・アザリアから大きな
「き、肝に銘じておきます…」
「よろしい」
そこまで言うと、セルカは部屋から出て行こうとする。その前にキリトが「おやすみ」と言うと、セルカは笑顔で「おやすみ」と返してくれた。
漸く寝心地の良いベッドで寝れることで、急激に睡魔が襲ってくる。昨日までは芝生の上で雑魚寝だったから当然だろう。だが、その前に…ランプを消そうと思ったが、消し方が分からない。少し右往左往したが、下につまみがあり、これを捻ることで消すことが出来た。
「全く…SAOでの癖は、1年くらいじゃ抜けないものだな…」
キリトは現実世界で帰りを待っているであろう直葉、詩乃、里香、エギル、そして…明日奈…。
「そういえば…未だにアリスは見つかっていないんだよなぁ…」
SAOで苦楽を共にし、蒼炎の使い手であるアリス。
ユージオが後悔して、央都に連れて行かれた少女の片割れの1人の名前もアリス…。
「まさかな…」
キリトは考えられない可能性を胸にしまいつつ、毛布に
翌朝、セルカの言いつけ通りにきちんと朝5時半に起きた。
…数年ぶりに。
この起床は普段深夜に動くキリトには非常にキツイことだった。必死に眠気を押し殺し、教会の祈りに参加した。因みに遅れた修道士らしき少年が、シスター・アザリアにめちゃくちゃ怒られているところを見たキリトは、心の中で(ひえ~)と思った。
朝食後、キリトは1人で村の中を歩いてみた。まだ朝6時半過ぎだというのに、村民はほぼ全員起きて、ユージオの言うそれぞれの天職を
その様子を熟視しながら、村を歩き回っていると、村の中の一番端に岩に突き刺さった何かがあった。よく見てみると黒い剣が、岩に刺さった状態で放置されていたのだ。長い間、刺さった状態なのか剣自体が錆びてしまい、下手に力を入れれば折れてしまいそうだった。だが、キリトは気になってしまい、その剣の柄に触れる。
その刹那。
「…!」
ゾクッという悪寒と圧倒的な力を感じた。
「これは…」
「気になるかね?」
そこに白髪の老人がやって来る。
「ほお、君はユージオが連れてきたベクタの迷子か。確か…ジンク以上の剣の使い手とか…」
(どこでその話が広まったんだ…)
「儂はガリッタという者だ。この錆びた剣は村長の祖先が残した聖剣だ。村の逸話ではこう言われている。『この剣は資格のある者だけが抜ける。そして、この剣を手にした者は輪廻転生の如く、何度も蘇り、全てを凌駕しうる力を有する』と…」
「それは…どういう意味なのでしょうか?」
「さあな。村長も知らぬ存ぜぬじゃからな。もしかしたら、眉唾ものかもしれぬ」
しかし、キリトは嘘だと思えなかった。剣に触れた時のあの感覚…。逸話以上の力があるように感じられた。その力に魅入られてしまったように、キリトは剣の前に再び立ち、その柄を強く握った。
そして、勢い引き抜こうと力を込めた。
「ぐおっ!」
剣は全く岩から抜ける気配はなかった。やはりダメかと思っていると、後ろにいるガリッタが驚愕の表情を浮かべている。キリトは(まずい、よそ者がやってはダメだったか)と不安になるが、それは徒労に終わる。
「お主…!どうやって…!」
「え?」
ガリッタが指差す先は剣の刀身だ。そこを見ると、なんと黒く煌く刀身が岩の中から少しだけ…見えていたのだ。先程までは全く見えなかったのに…だ。
「少し…抜けた?」
「馬鹿な!儂ら村の者もんが全員で引っ張ったり、その岩を砕こうともした。だが、その剣は1寸たりとも動かせなかった!岩も同じじゃ!どんなことをしても欠ける事はなかった!お主は…一体何者なんじゃ?只者ではないじゃろ?」
「い、いや…記憶がないから、何とも言えませんよ…。じゃ、じゃあ!」
キリトは逃げるようにガリッタから離れる。
離れながらも、その剣をもう一度見る。先程までとは明らかに違う雰囲気が醸し出されている。
「…たまたま、動いただけだろうな」
キリトは自分に言い聞かせるのだった。
「499!」
ユージオは本日499回目の斧を、切れ込みに当てた。カーン!と良い音が森に響き、驚いたケイコクチョウがどこかへと飛んでいく。
大杉に立てかけてある『冰龍の剣』が太陽に煌めく。
「そういえばキリト、あの伝説の聖剣を動かしたんだ……って‼︎」
500回目の斧振りをすると同時にユージオからそんな話題を聞かれる。キリトは小さな村だからなのか情報が飛び交う速度も速いのかと、何度となく思ってしまう。
「たまたまだよ。あそこまで錆びた剣だ。少しくらい抜けても不思議はないだろ?」
「そんなものなのかな…。はい、キリト。交代だよ」
ユージオは斧を渡そうとする。しかし、キリトは受け取らず、『冰龍の剣』を握る。
「どうせ出来ないと思うよ?」
「やってもないのにそんな事言うもんじゃないぞ?…アリスたちのことも、本当は助け出したいと思ってるんだろ?」
核心を突かれたユージオは黙ってしまう。
その間にキリトは切り込みの前に立ち、剣を強く握り締める。
「ふぅ…」
深く息を吐くと、刀身に青色のライトエフェクトが走る。
「はああああああああぁッ‼︎」
そして、勢いよく振る。
刀身はまた切り込みではなく、皮にぶつかり激しい火花を出す。そして、キリトは前回よりも更に吹き飛び、剣は突き刺さる。
「どわあ‼︎」
「嘘だ…!そんな事が…⁈」
ユージオは驚愕の表情を見せる。
キリトが放った単発SSホリゾンタルはギガスシダーの鋼鉄よりも遥かに硬い皮に浅く刺さっていたのだ。
「天命は減っていない。だけど、それは皮に刺さったからだ。柔らかい切れ込みに入ったら…どれだけの天命が減るか…」
「言っただろ?最初から出来ないなんて、言うもんじゃないだろ?」
「……そうだね」
ユージオは初めて心の底から浮かべた笑みをキリトに見せた。
そのことにキリトは少し安堵する。いつも暗い雰囲気を出しているユージオにどこか、昔の自分を重ねてしまっていたからだ。だが、原因はアリスたちのことなのは間違いない。
「…今晩、彼女に聞いてみるか…」
その日の夜、キリトは現在自室として使用している部屋にセルカを招いた。彼女は既に修道服ではなく、すぐに寝れるように私服に着替えてキリトを待っていた。
風呂から上がったキリトは部屋で待っていたセルカに「こんな夜に来てくれてありがとう」と言う。
「それで…話って何?」
「君のお姉さん…アリスについてだよ」
「姉様の?…どうして?」
「ユージオから聞いたんだ。アリスとイーディスって子が、整合騎士に連れて行かれたことを…」
それを聞いた途端、セルカを目を大きくさせ、キリトの服に掴みかかる勢いで逆に質問を返す。
「本当に⁈ユージオが⁈」
「あ、う…うん…」
「ご、ごめんなさい…!つい…」
セルカは落ち着いたらしく、もう一度ベッドに座る。
そして…ゆっくりと話し始める。
「私がまだ4歳の時、ユージオはいつも屈託なく笑っている明るい男の子だったわ。でも、姉様とイーディスお姉様が居なくなってから、笑顔が消えた。それに他の人とも関わらなくなって…次第に孤立しちゃった。ユージオがあんなことになったのは、半分は私たちが悪い。彼のことを…散々に責めてしまったから…」
「…ユージオは、誰も憎んでたり、恨んでる様子はなかったよ。過去の呪縛に囚われているようではあったけど…」
「そうなの…。でも、よそ者と等しいキリトにそんな事を話すってことは、心を開いたのね、あなたには…。それだけでも大きな進歩よ」
セルカの憶測は恐らく正しいだろう。
ユージオの心に住まう悲しみは徐々に薄れている感じではある。その証拠がキリトに見せたあの笑顔だ。
「こんな話をしてごめんなさい。遅いから、もう寝るね」
「ああ、俺こそ夜に呼び出してごめん。おやすみ」
セルカも「おやすみなさい」と言い、部屋から出ようとする。しかし扉の前で止まり、キリトに今日最後の質問をする。
「そういえば…姉様たちは禁忌目録の何を違反したか…ユージオから聞いたの?」
「確か…果ての山脈を越えて、誤ってダークテリトリーに侵入してしまったから…とユージオは言ってたな」
「果ての山脈…」
セルカは最後にそう呟き、キリトの部屋から出て行った。
彼女の最後の質問と表情にキリトはどこか気になって仕方がなかった。
しかし、キリト自室も『冰龍の剣』を振ったことで疲れてしまっていたために、すぐに眠りに就いてしまうのだった。
【補足】
『伝説の聖剣』
原作ではココット村で刺さっていたヒーローブレイド(片手剣)ことです。今作では盾は出てこないで、一本の太刀となります。
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