ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第6話 果ての山脈(前編)

その日もいつも通りだった。

教会の祈りを終え、朝食を食べ、ユージオのところへ赴こうとした時、シスター・アザリアに「ちょっと、よろしいですか?」と声をかけられ、止められる。

 

「はい、何か?」

 

「セルカを見ませんでしたか?今日は安息日だから、休んでも良いのですが…姿を見せないのは今回が初めてで…」

 

「いや、見てないですね…」

 

「そうですか…。失礼しました。セルカを見かけたら、教えて頂きたいです」

 

「分かりました」

 

シスター・アザリアはすぐに背を向けて、教会の中へと戻って行った。

すぐにキリトはユージオがいつもいるギガスシダーの大杉に向かい、セルカがいないことを話した。

 

「そうなんだ…」

 

「ユージオはセルカが行きそうな場所に心当たりはないか?」

 

「さあ、ここ数年彼女とは口も聞いてなかったし…。キリトはないのか?」

 

キリトは昨晩のことを思い出す。セルカはアリスの犯した罪について聞いた。そして、小さく『果ての山脈…』とだけ呟いていた。

 

「昨日、セルカにアリスの罪、『果ての山脈』でのことを話した。もしかして…彼女は『果ての山脈』に向かったのかもしれない」

 

それを聞いたユージオは焦燥の表情を作る。

 

「それはマズいよ!早く連れ戻さないと、セルカも…!」

 

ユージオはすぐさま、果ての山脈の方向へと駆け出す。キリトも急いで後を追う。本当に向かってるかは分からないが、キリト自身も動かないではいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトとユージオが果ての山脈の洞窟前に着く頃には2人とも息が絶え絶えになっていた。傍の川からは小さな氷塊が流れ落ちていて、ユージオが話した氷のことだろうとキリトは思った。

 

「この先が果ての山脈の中で、暗黒界に繋がってるのか?」

 

「そうだよ。子供の時は僕も驚いたよ」

 

洞窟の中は暗く、数メートル先も見えない。このまま進むには危ないと思い、ユージオに一旦、村に戻り灯りを取ってこようと言おうとした時、彼はポケットから猫じゃらしに似た植物を取り出した。

 

「システム・コール。ジェネレート・ルミナス・エレメント・アドヒア」

 

魔法の呪文を言い出したと思えば、猫じゃらしの箇所が黄色く輝き始めた。

 

「ユージオ、それ…!」

 

「ん?もしかしてキリト、これも覚えてないの?神聖術だよ。最も簡単なやつだけどね」

 

「その…『システム』とか、『ジェネレート』とか意味分かってるのか?」

 

「意味?分からないけど、詠唱だから知ってるだけだよ。さあ、急ごう!」

 

ユージオはさっさと中に入ってしまう。

急に神聖術と言う魔法を使い始めたことで、キリトは少々驚いていた。SAOの世界では存在しなかった神聖術に、SAOでも存在したモンスターが混在している世界…。ますます謎ばかりが募っていく。

ともかくキリトもユージオの後を追うのだが、徐々に冷気が洞窟の奥から流れてきた。

 

「さ、寒いな…」

 

「この上は永久凍土の世界だからね。しかもその世界は、あの冰龍が作り出したと言われているしね」

 

「ひ、冰龍ってそこまでの力を持つ存在なのか…」

 

今更ながら、あの剣を少し扱える自分が怖くなってきたキリト。

1つの自然を意のままに操れる龍…キリトもそんな龍とはもう逢いたくないと思っている。

 

(ミラバルカンみたいなやつは…もうごめんだ)

 

そんなことを思いながら先へと進んでいると、ユージオが不安そうに話を持ち掛けてくる。

 

「もし…セルカがダークテリトリーに入ってしまったら…どうしよう…」

 

「…整合騎士とやらが、罪人を捕まえに来るんだろ?だったら、その前に村から出て、誰も知らないところへ逃げればいいだろ?」

 

呑気に言うキリトにユージオは一瞬絶句するが、すぐにその考えを否定する。

 

「そんなの無理だよ…。天職もあるのに…」

 

「俺は天職も何も分からない、居候の身だ。俺が連れて逃げれば、文句ないだろ?」

 

「キリト…どうして、そこまでしてくれるの?」

 

「そもそも、俺がアリスの話をしたのが原因だし、何より…」

 

「何より?」

 

「充ても分からない、金もない俺を助けてくれたユージオ、セルカ、アザリアさんなどの人たちに恩返ししたいだけだよ」

 

その言葉にユージオの瞳が揺れ動く。

その時、洞窟の奥から女性の悲鳴が響き渡った。その声は聴き間違えるはずがなかった。セルカのものだ。

 

「セルカ…!」

 

「急ごう‼」

 

悲鳴のした方向に走ると、広い場所に出た。

中には青色の結晶が至る所から生えており、中心には金貨や宝石の山が積み重なったおり、その横には龍の骨が置かれていた。あれがユージオが話していた冰龍の亡骸なのだろう。

だが、それよりも気になったのが松明を持った謎の集団だった。

緑色の体色で、人間に近い姿であるが、人間ではない。それぞれの手に武器を持っており、そこには赤い血や黒く凝固した何かがこびり付いている。

 

「あれは…?」

 

「多分、ゴブリンだと思う…。ダークテリトリーにいるはず、どうしてここに…」

 

ここはダークテリトリーと繋がっている。普段人界の人が近付かない、このような場所では彼らも自由に行き来することが出来るのだろう。その証拠に荷車には豚や羊といった家畜が首を切られて乗っている。他にも使い捨ての武器が山のように置いてあり、何回もここを行き来していることが推定出来た。

その豚の死体たちの中に…人影が見えた。

それは腕と足を縛られたセルカだった。

ユージオは思わず、それを見た途端に大きな声を上げてしまう。

 

「セルカッ‼」

 

「ば、馬鹿…!」

 

もちろん、その大声に反応したゴブリンたち全員はキリトとユージオを発見する。

黄色い不気味な目がギロリと動き、思わずユージオは固まってしまう。

 

「おい、今度はハンター…いや、また白いイウムが2匹やって来たぞ?」

 

「今度は男か…。どうしちまおうか…」

 

(いや)らしい笑みを浮かべながらキリトたちを見てると、暗闇から他の奴らよりも明らかに巨躯なゴブリンが大鉈を肩に置きながらやって来た。更にキリトたちを視認すると、「ケッ」と唾を飛ばす。

 

「男のイウムなんざ、売れもしねえ…。ここで殺して肉にしてしまえ…」

 

そう告げると、奴らの目付きが一気に変わった。

各々(おのおの)の武器を向け、ゆっくりと2人に迫ってくる。キリトは一旦ユージオと共に結晶の後ろに隠れ、作戦を伝える。最初は見つからないように助けたら、ただ逃げるだけで良かったのだが、見つかってしまった以上、戦うしかない。

 

「ユージオ!いいか?俺の合図でここから飛び出して、奴らに体当たりをするんだ!俺は向こうにある武器の山に行く!」

 

「そ、そんな!逃げようよ!」

 

「セルカを置いて逃げれるか!いいから行くぞ!」

 

キリトはゴブリンたちが近付くのを待つ。奴らも人数が多いから油断してるはずだ。

 

「今だ!」

 

キリトが先陣を切ると、ユージオも数秒遅れて飛び出す。

突然の奇襲にゴブリンたちに一瞬の焦りが生まれる。キリトは1体を突き飛ばし、彼らの間を抜けていく。ユージオも勇気を振り絞り、2体程突き飛ばす。

そして、キリトは一番手頃な片手剣をユージオに投げ飛ばす。

 

「ユージオ!それで近くに来る奴らを追い払え!」

 

「そんな簡単に言わないでくれ!」

 

ユージオは剣を掴みはするが、へっぴり腰で全く当てられそうにない。だが、それとは別にユージオには大きなアドバンテージがあった。腰につけている神聖術で光る猫じゃらし…これを見ると、ゴブリンたちは怯えるように下がる。

 

「…!そうか!奴ら、この光が苦手なんだ!」

 

キリトも武器の山の中から、適当に取る。

 

「流石に高レベルの武器はないか…」

 

SAOで言う初期武器:ハンターナイフの形状に近いものを握り、鞘を抜く。

戦闘の意志を見せるキリトたちに巨躯のゴブリンは吠えて威嚇する。その奇声に流石のキリトも少しビクつく。

 

「貴様ら…この『ギアノス狩りのウガチ』様に盾突くのかぁ⁈」

 

キリトは取り囲むゴブリンの数に言葉が出なくなりそうだったが、拘束されているセルカを見て、頭を横に振って嫌な考えを吹き飛ばす。

 

「いいや!盾突くんじゃない‼勝って…セルカを救うんだ!」




【補足】
『豚や羊』
こいつらはプーギーやムーファ(MHXXで登場)だと思ってくれ。

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