ソードアートオンライン Monster Hunter World 作:GZL
「いいや!盾突くんじゃない‼勝って…セルカを救うんだ!」
キリトの言葉にウガチはイラついた表情を更に濃くさせる。
その間にもキリトは敵陣の中に単身突っ込んでいく。剣を振って攻撃して来るゴブリンたちだが、キリトは避けながらも手に持つ剣をゴブリンたちの腹や腕を切り落としていく。そこから溢れ出る鮮血が剣やキリトの身体にこびり付くが、構わずウガチのところへ突っ込んでいく。恐らく、ゴブリンのリーダーと思われるウガチを倒せば、今いる集団も逃げ帰ると踏んだからだった。
更に前方から突っ込んでくるゴブリン2体を倒し、後方から奇襲を仕掛けた奴も断頭する。その様子を見たユージオは、ただ「凄い…」と遠くで一言で呟く。ウガチもキリトが只者ではない事を認識したようで、大鉈をきちんと構える。
そして、キリトはすぐにウガチの前に迫る。
互いに剣をぶつけ合い、火花が飛び散る。ウガチの方が力は強いので、キリトは若干押され気味だが、巧みなステップを刻み、翻弄する。大きな巨躯が仇となり、キリトはウガチの股下を掻い潜り、背中を一太刀する。
「があッ⁈この野郎!」
キリトは剣に力を込めるが、使いたいソードスキルが発動しない。
(くそ…武器レベルが低いからなのか?)
そんなことを思いながらも、別のソードスキルを思い出すと、それは使えるのか即座に刀身にライトエフェクトが出る。
3連撃SSシャープネイルだ。
「ふっ‼︎」
ウガチの攻撃を避け、まず腹に十字の剣撃を打ち込み、最後に巨大な腕も意図も簡単に切断した。ウガチは悲鳴を上げることもせず、ただ仁王立ちしたので、キリトはこれで倒したのだと思い込んでしまった。
ふと視線をウガチに再び向けた時、キリトに刃が迫っていた。
それはキリトの腕を抉り、血を撒き散らした。
「うあッ⁈」
「‼︎キリトッ‼︎大丈夫かッ⁈」
ユージオの心配する声が洞窟内に轟く。
キリトは斬られた腕を抑え、歯を食い縛る。
(この痛み…もう2度と味わいたくなかったぜ…!)
SAOでも感じた痛烈な激痛にキリトは懐かしみを感じると同時に忘れかけていた恐怖を感じた。本物に近い、死の恐怖に…。
それはウガチも同様で切断された腕を抑えている。更にキリトに恨みの視線を送りつつ、自らの爪で傷口を塞ぐ。その時に大量の血が噴水の如く噴き上がり、ウガチの目は黄色から赤く血走る。
「貴様ァ…‼︎許さん…許さんぞォ‼︎」
ウガチの殺気にキリトは気付き、腕を抑えながらも立ち上がる。
「お前は絶対に殺す…!その肉をバラバラにしても飽き足らんッ‼︎」
ウガチは剣を再び握り締める。
キリトも痛む腕を放置しつつ、再びソードスキルを叩き込む。
今度は耳を切断し、更に目も貫く。
しかしこれでもウガチは倒れない。むしろ凶暴性が更に上がり、キリトの胸ぐらを掴み上げると、結晶に叩きつける。
「ごはっ…!」
そして…剣を逆手に持ち替え、キリトの頭部に突き刺そうと構える。
ユージオはその様子を見ているだけで、身体がすくんで動かない。
(怖い…。僕は…あの時と同じだ…。いつまで経っても…変わらない…)
ユージオの脳裏にアリスとイーディスが連れ去られる記憶が蘇る。
あの時もユージオは誰かに『助けに行け‼︎』と言われていたのに、全く身体を動かせなかった。今回も同じように幕が降りるのかと思っていると、耳元に少女の声が聞こえた。
《ユージオ…大丈夫…。行ける…。絶対に…キリトを守れるよ…》
「!」
すぐに振り向くが、そこには何の気配もない。
(今の声は…)
聞き覚えがある声だったが、その前にやることがある。
ユージオは唇から血が垂れる程に噛み、勇気を振り絞って声を上げた。
「キリトオオォッ‼︎‼︎」
その声にもちろんウガチも反応し、そちらを向く。
ユージオは剣を適当に振り回すと同時に光る猫じゃらしを向けて、相手を翻弄する。光に怯むウガチだが、剣術がゼロのユージオの攻撃は意図も簡単に受け流される。
「僕がッ‼︎キリトを…‼︎みんなを…‼︎守るんだぁッ‼︎」
ここでウガチの表情が怪しく笑う。
キリトはユージオに急いで叫んだ。
「ユージオ‼︎離れろッ‼︎」
その警告も虚しく、次のユージオの攻撃を弾いたウガチはその刃をユージオの腹に突き立て、遠くに投げ飛ばした。
「がはっ…」
か細い悲鳴が洞窟に響く。
ユージオが飛ばされた方向にキリトは駆け込み、傷口を見る。
そこからは大量の血が溢れ出て、ユージオは吐血する。
「ユージオ!しっかりしろ‼︎どうしてこんな無茶を…!」
ユージオは枯れ切った声で答える。
「子供の頃…出来なかった事を…しようしただけだよ…。それに…アリスの声が…聞こえたんだ…。キリトを守れ…る…って…。その通りに…なった、じゃ…ない…か……」
そこまで言って、ユージオは意識を失ってしまう。
ユージオは恐怖に打ち勝ち、自らを犠牲にしようとしてまでキリトを守ろうとした。
(それなのに…俺は…)
背後からウガチが静かに歩み寄って来る。
ユージオの最期を看取らせてやろうという思いやりはないのだろう。
だが、ウガチは一瞬キリトを斬ろうとする行為を止めてしまう。
キリトから放たれる圧倒的な怒りと殺意に、怯んだのだ。
そして…キリトの怒涛の反撃が始まる。
「はあああああああああぁッ‼︎‼︎」
キリトの連続攻撃に片腕しか残ってないウガチは一気に押される。
だが、ゴブリンとしてのプライドか、諦めることはない。
「白イウムが‼︎調子に乗ってんじゃねえ‼︎」
キリトの剣を1回弾き、歯を剥き出しにして肉を食い千切ろうとする。
キリトは身体を回転させて避けながら、ウガチと距離を取る。
「俺はイウムなんて名前じゃない‼︎キリトだッ‼︎」
「だから⁈テメエの名前なんかどうでもいいんだよ‼︎」
迫り来る巨躯にキリトは剣を構えて、更なるソードスキルを発動する。2連撃SSバーチカル・アークだ。
最初の一撃はウガチの剣を砕き、2撃目で首を跳ねた。
甲高い悲鳴の後にウガチの身体は永遠に動かなくなる。キリトはその首を他のゴブリン共に見せつけるようにして、大声を上げる。
「お前らの親玉を倒した!まだ戦い足りない奴は俺に挑んでこい‼︎死にたくないなら、今すぐ闇の国に帰れ‼︎」
この発言はゴブリンたちには相当なインパクトだったようで、ものの数秒で全てのゴブリンが奥の洞窟へと逃げ帰って行った。
キリトは剣を捨てて、すぐにユージオの天命を確認する。彼の天命は今も着々と減少しており、1分もすればゼロになってしまう程だった。
「くそっ!」
キリトは拘束されているセルカの縄を解き、急いで叩き起こす。
「セルカ!起きてくれ!」
「ん……キリト、どうして…私…」
「説明はあとでする!ユージオが大ケガしたんだ!」
それを聞いたセルカは目を大きく見開き、遠くで鮮血の海に倒れるユージオに視線が釘付けになる。
「む、無理だよ…。私の神聖術じゃ、こんな傷治せない…。姉さまじゃないと…」
「セルカ!」
キリトはセルカの肩を掴み、叫びに近い言葉をかける。
「ユージオは君のために傷を負ったんだ!アリスのためじゃない!このままじゃ…折角セルカを助けたのに、ユージオが死んでしまう!頼む…セルカの力が必要なんだ‼」
「キリト…」
キリトの懇願に、セルカは賭けに出る。
「普通の治癒術じゃ、治せない。高位神聖術を試すけど、失敗したら私もキリトも死ぬ。それでも構わない?」
「…それしかないなら、やってやる」
「左手を貸して」
キリトの左手を握ったセルカはユージオの左手を握る。
そして、詠唱を開始する。
「システム・コール。トランスファー・ヒューマンユニット・デュラビリティ。ライト・トゥ・レフト!」
途端にキリトとセルカの手が輝き、ユージオへと流れる。
(俺とセルカの天命を、ユージオに渡してるってことか…)
すぐにユージオの腹に空いた傷がゆっくりと塞がり始める。だが、完治とまでは未だに行きそうもない。
すると、キリトの意識が急速に薄れ始める。まるで血液が急激に減った時に意識を失うのと同じように、この世界では天命の減少はやはり意識の維持に関わることがよく分かる。
「キリト、大丈夫?」
「ああ…大丈夫だ…。もっと…ユージオ…に…」
意識の次は呂律が回らなくなる。
視界も歪んで、ちょっとでも気を抜けば意識が飛んでしまいそうだった。
その時…。
『キリト…ユージオ…。待ってるわ…。セントラル・カセドラルの最上階で…。ずっと待ってるよ…私たち…』
背後から聞こえた少女の声。
意識がほぼないに等しいキリトでもはっきりと聞こえた。
ゆっくりと振り向くと、天空へと消えゆく金色の長髪を有した少女…その後ろには灰色の長髪の少女が目に入った。どこか懐かしく感じながらも、記憶にないキリト。更に目尻からは涙が溢れる。
「君たち…は…」
『焦らないで…。いつまでも待ってるから…。会える時を…楽しみにしているよ…』
「誰……」
そこでキリトの意識は限界を迎え、ユージオの上に倒れる。
「キ、キリト⁈」
意識を失っても、彼の手は輝きを失っていなかった。
火属性という観点だけで見たら、どれが1番強いと思う?
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リオレウス
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アグナコトル
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ディノバルド
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ウラガンキン