ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

67 / 102
第8話 旅立ち

ユージオは大きく斧を振り上げ、一気に切れ込みへと振り下ろす。

だが、本日最後の一撃は硬い皮に当たり、甲高い音を鳴らすだけで終わる。

 

「はあ…」

 

ユージオは溜息を吐きながら、つい3日前に貫かれた腹に触れる。

あの後は大変だった。

キリトが意識を失った後にユージオがすぐに目を覚まし、セルカと共に果ての山脈の洞窟から脱出した。シナット村に着いてから、ユージオも疲れで再び気絶してしまい、2人とも完治したのは本日であった。

身体がガチガチに固まってしまっているため、ユージオも斧を当てることが上手く出来なかった。

 

「調子悪いようだな。ユージオ、俺が変わるよ」

 

キリトは冰龍の剣を握りながら、そう言う。

 

「またそれ使うのか…。今回は少し期待しておくよ」

 

「ああ、そうしてくれ」

 

今回のキリトはいつも以上に自信がありそうだった。

あの洞窟でのゴブリン戦で、キリトの扱える武器優先度がかなり向上したことで、この冰龍の剣も楽に持てるようになり、更には強力なソードスキルを扱えるとキリトは踏んでいる。

その証拠に刀身が緑色に輝き、一気に振り切ると、今までの斧が当たる音よりも大きい、かつ重い一撃がギガスシダーに打ち込まれる。

途端に天命が今まで見たことない速度で減少する。見た感じでも切れ込みが大きく抉れているのが明確だった。

それを見たユージオは圧倒され、呆然してしまう。

そんなユージオにキリトは剣を渡す。

 

「この剣はユージオのものだ。お前が使うべきだ」

 

「…キリト、頼みがある」

 

ユージオは剣を置くと、膝を着いて土下座する。

 

「キリト!僕に…僕に剣術を教えてくれ‼︎僕は…諦めてばかりだった。何をやっても無駄だだとか…僕には無理だとか…理由を付けて逃げてきた。あのゴブリンの時だって…僕は逃げそうになった。でも…もう逃げたくない!アリスとイーディスを助けたい‼︎そのためには、この剣を扱えるようにならなくてはならないんだ‼︎お願いだ…!キリト…!」

 

熱く語っている間にユージオは自身の目が熱くなっていくことに気付く。ここまで自分の気持ちを伝えたのは初めてだったかもしれないとも思った。

 

「当たり前だろ。俺はユージオのパートナーだ。でも、そんなに甘くないぞ?」

 

「ああ、是非そうしてくれ‼︎あ、そういえば…キリトの剣技の流派は何?」

 

「流派?そうだなあ…」

 

キリトは自らのソードスキルの流派は何かなあと暫し考える。

すぐに名前が思い付いたキリトはニヤッと笑って、ユージオに言った。

 

「アインロック流だ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

それからキリト教官による剣術を教わる時間が一気に増えた。

斧をほぼ振らず、冰龍の剣を使い慣れることとソードスキル発動の練習を何十回と続けた。もちろんど素人のユージオは全く使えない。雨が強く降っても、風が強くても毎日、鍛錬を積み重ねた。キリトも非常に苦労したが、更に3週間後…遂にユージオに大きな変化が現れ始めた。ユージオが振る剣にライトエフェクトが漸く走るようになったのだ。

これでソードスキルが扱えると思ったキリトは、ギガスシダーにぶつけるように言った。その鍛錬を続けること更に1週間…とうとう、その時はやって来た。

 

「ユージオ、残り3000ちょっとだ。いいぞ?」

 

ギガスシダーの天命を伝えたキリトはユージオに合図を送る。

ユージオはというと、「はあ…」と深呼吸して、鞘から剣を引き抜く。そして…単発突進SSソニックリープを放つ。

 

「はああああああああああぁぁ‼︎」

 

ズーン…と重たい振動音と金切音が周囲に鳴り響く。更に近くの鳥たちが一斉に逃げる。この成長ぶりにキリトも驚きを隠し切れなかった。

そして、ギガスシダーの大杉はバキバキと音を立てながら、倒れていった。あまりの大きさに周囲の森にいる生物全ては逃げ出し、倒れた時に地震と間違える振動と砂埃が発生する。砂埃や振動が無くなった後に、ギガスシダーを見ると、キリトたちに巨大な切り株だけが残り、上部は横に倒れていた。

暫し呆然としている2人だったが、ユージオはポツリと呟く。

 

「夢みたいだ…。こんな日が来るなんて…」

 

「…そうだな」

 

「キリト、僕は漸く分かったよ。僕は…君と出会うために7年間、ここで待ち続けていたんだ」

 

「俺も…ユージオと出会うために、この杉の下で寝ていたんだ」

 

「寝てた?せめて待っていたと言いなよ」

 

「そうか?」

 

2人はそこで抑え切れず、大きく笑い転げた。

 

 

 

 

 

 

その晩、ギガスシダーの大杉が倒されたことを記念に祭りが開催された。主人公はもちろんユージオで、既に舞台の上に立っている。腰に冰龍の剣を携えて…。

 

「見事、あの悪魔の大杉を切り倒したユージオは転職を全うした‼︎掟に則り、ユージオには次の転職を決める権利が与えられる。ユージオ、何がいい?」

 

「僕は…剣士になりたいです!」

 

その発言に村民全員が言葉を失う。

 

「僕は剣士になって…央都に駆け上がります‼︎」

 

それを聞いた村長は何かを悟ったような表情を作る。

 

「…そうか。理由は聞かない。掟は破ってないからな。シナット村の村長として、新たな転職『剣士』になることを認める!」

 

村長の宣言と共に歓声が湧き上がる。

この日は夜が更けても、祭りは続くのだった。

 

 

 

 

 

その頃、キリトは例の伝説の聖剣が刺さっている場所に立っていた。

自分から来たのではなく、この剣に呼ばれたかのようだった。

 

「……」

 

キリトは再び剣の柄を握り締め、力を込める。これもほぼ無意識で、何故か…抜けるような感覚があった。

 

「…っ」

 

ゆっくりと上へと引き上げると、意図も簡単に剣は抜けた。

その途端、刀身は太陽の光を超える程の光量を出し、村全体を明るくさせる。あまりに眩しすぎて、1番近くにいるキリトはまともに目を開けることも出来ない。だが、その光の奥…そこに1体の龍が居た。

 

「あれは…」

 

それは影だけで容姿はほぼ分からない。

ただ翼を持つ龍としか分からない。

しかし、その光はものの数秒で消え、剣は錆び付いたような姿に戻ってしまう。

 

「何だったんだ…今のは…」

 

キリトが剣から視線を逸らすと、周囲には村民が群がっており、あの伝説の聖剣が引き抜かれたことに驚愕しているようだった。

そして、1人の村人がこんな事を言い出した。

 

「英雄だ…!伝承にあった英雄だ‼︎」

 

そんなことを言い出すと、村民は全員頭を下げる。こういう事に慣れていないキリトはただ困惑するばかり。なので、キリトは釈明するように村民に言う。

 

「いや…ただ剣が抜けただけだから…頭を上げてくれ…」

 

そう言っても、村民は全く頭を上げようとしない。

キリトはどうしたら良いものか…頭を悩ませるのだった。

 

 

 

 

 

朝、央都に旅立つ前にユージオはセルカと会うために、教会の裏の井戸に寄った。もちろんセルカがおり、ユージオの来訪に少し驚く。

 

「ユージオ!」

 

「セルカ、最後に話があって来たんだ」

 

ユージオはセルカの目をしっかりと見て、話を始める。

 

「僕は今日、王都に向かう。その目的は言うまでもない。アリスとイーディスを救うためだ!…僕はあの時何も出来なかった。随分遅くなったけど、僕は漸く2人を救えるだけの力を手に入れることが出来た。だから…待っててほしい。この村で…僕が2人を連れて帰ってくるのを…」

 

そんな事を話していると、教会の中からもう1人…少女が姿を出す。

 

「…その話…本当?」

 

「メアリ!」

 

メアリはイーディスの妹だ。ユージオは彼女の瞳も強く見ながら、しっかりと「本当だ」と返す。

 

「…じゃあ、お願い。絶対…3人でこの村に帰ってきて。いつか…必ず」

 

「ああ」

 

ユージオは2人を抱き締める。

2人を悲しませないために…ユージオは今日、起つ。

 

 

 

 

 

 

キリトはユージオが来るのを待っていたが、ユージオの他にもセルカとメアリがやって来た。後者の2人は見送りらしい。

 

「ユージオ、行こうか」

 

「キリト、大丈夫か?僕よりも荷物は多いと思うんだけど…」

 

「ああ…結構肩が辛いよ…」

 

キリトが左肩で担いでいる袋の中には引き抜いた聖剣の他に、ギガスシダーの天辺の枝も入っている。枝と言ったが、それでも太くて重い。これはガリッタに持っていけと言われたもので、どうすれば良いかも全て教わった。

 

「でも、この杉が武器になればこの上なく嬉しいことだよ」

 

ユージオは頷き、同じく荷物を担ぐ。

出発しようとした矢先、セルカが言う。

 

「さっき…『3人』で帰ってくるって言ってたけど、ユージオ…『4人』で帰って来て。絶対に」

 

「ユージオ、キリト…だっけ?お願い、お姉ちゃんとアリスお姉ちゃんを絶対に助けて。約束だから!」

 

キリトとユージオは顔を見合わせ、頷く。

 

「ああ、約束だ。アリスとイーディスを絶対に連れ帰るよ」

 

「勿論だ。俺とユージオにかかれば、何でも出来るんだからな」

 

『それは言い過ぎ』と言おうとしたユージオだったが、それで喜ぶ2人を見て、敢えて何も言わなかった。

 

「さて、行こうか。キリト」

 

「ああ」

 

キリトとユージオは旅立つ。先は果てしなく続く道だけ。何が起こるかなんて全く分からない。それでも2人共同じ事を思っていた。

 

 

 

 

2人でいれば、どんなことでもやり遂げ、突破出来ると…。

火属性という観点だけで見たら、どれが1番強いと思う?

  • リオレウス
  • アグナコトル
  • ディノバルド
  • ウラガンキン
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。