ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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修剣学院編は個人的にあまり好きではない(例の事件も含めて)ので、ここら辺もサクサクと進めていきます。
それ以降はきちんと書くので、許してください‼︎


アリシゼーション編 第2章 央都ドンドルマ
第11話 黒塗りの一太刀


「んー!美味い!」

 

キリトは『青い熊の蜂蜜パイ』を頬張りながら、そう呟く。僅かなお金で買った蜂蜜パイの味は最高で、キリトにとってはキツイ学院生活の何もかもを忘れさせてくれそうだった。

だがそれを見透かしたユージオは現実に戻す様な言葉を突き立てた。

 

「あのなあ、キリト…。いくら今日は安息日だからって、ゆったりし過ぎじゃないか?明日からはまたいつも通りなんだぞ?」

 

「ユージオくん…そういうことは言わないでくれたまえ。せっかくの安息日が台無しじゃないか」

 

「毎週来るんだから…一喜一憂してたらキリがないでしょ?」

 

ユージオの発言はいつも通り堅苦しい。逆にキリトは楽観的だ。

溜め息を吐きながら空を見上げると、視界に白く高く(そび)える巨塔に息を飲む。

キリトたちがこのドンドルマの央都にやって来たのは約1年前だ。シナット村から歩いて、2週間でユクモ村という温泉街に着き、そこで剣の腕を磨きながら、軽い仕事をすること1年間。更にユクモ村から離れた闘技場で央都の修剣学院に入るための試験として中型モンスターと闘い、剣術部門で表彰された。こうやって央都まで来ることが出来たキリトたちだが、ユージオは今でも夢なのではないかと疑ってしまう。

 

「夢…じゃないよな?」

 

「まだ言ってるのか?もうこのドンドルマに来て、1年も経つのに」

 

「そりゃあ…何十年も木こりをやってた僕からしたら夢だよ」

 

「はは、そうだな…。…俺も、まさか2年も経つとは…な」

 

ユージオに聞こえない声で呟くキリト。

キリトも…ここまで時が経つとは想定していなかった。もう既にSAOに閉じ込められた時間の半分を再び仮想世界で過ごしている。どうにかこの世界から抜け出そうとする手立てを探したが、一向に見つからず、時だけが経っていた。

ユージオの知らないところで母や父、アスナ、直葉、詩乃やみんなはどうしてるのか…考えてしまうことがあり、無性に悲しくなることもあった。

だが、それもユージオと一緒にいることで乗り越えられている。キリトの中でもユージオはもうかけがえのない存在にまで膨れ上がっていた。

 

「…どうしたの?」

 

「い、いや…今から貰いに行く剣。きちんと作れたかなあ…って…」

 

「ああ…サードレさんに作って貰っている剣ね。そういえば今日だったね、貰いに行く日」

 

キリトは央都に着くやいなや、サードレ金細工店に行って、シナット村で引き抜いた錆びた剣とギガスシダーの天辺の枝を預け、最高の剣を作って貰うように頼んだのだ。

何故そのようにしたのか、それはガリッタにそこへ行けと言われたからだ。一応、預けたは良いものの、キリトにはその作成料を払えるかということ、そして最高の剣を作ってくれたかが不安で堪らなかった。

その時、側面から不意に声がかかる。

 

「おや、キリトではないか」

 

驚き振り向くと、そこにはキリト専属の上級修剣士のソルティリーナ・セルルトが食材を抱えて立っていた。

彼女は修剣学院の中でも一二を争う剣術の腕であり、キリトでも勝ったことは一度もない実力者である。安息日だからいつもの制服は着ておらず、緩やかな私服に身を包んでいる。

 

「あ、リーナ先輩!」

 

キリトとユージオはすぐに礼をする。

 

「安息日くらい、そんな堅苦しくなくても良いだろう。まあ最初に頃に比べたらマシになったかな?」

 

キリトはギクッとしてしまい、「ははは…」と冷や汗をかきながら笑う。

 

「それで今日はどうした?」

 

「今から、自分の愛剣を頂きに向かおうかと…」

 

「おお、そうか!出来たら私にも見せなさいよ?」

 

「勿論です。先輩の要望には絶対応えます!」

 

「楽しみにしておくぞ?」

 

リーナはそう言って、2人に背を向けた。

2人ともリーナが見えなくなるまで敬礼を続けた。その時間は約15分。

それだけで疲れてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

それからは何事もなく、サードレ金細工店に到着した。

ドアを開けて中に入ると、すぐにサードレが「いらっしゃい!」と声をかけたが、キリトたちを見るなりその表情をイラつかせた。キリトは本日2度目のギクッ…を味わい、ゆっくりと彼の前に立った。

すると最初に出されたのは小さな石ころだった。何だか分からず、目を泳がせていると、サードレの怒声と机を強く叩く音が店内に高々と響いた。

 

「ッ!」

 

「貴様ら!これが何か分かるか?」

 

「さ、さあ…」

 

冷や汗が背中を伝うキリト。

 

紅鷲眼玉髄(べにわしめぎょくずい)が一瞬にして、使えなくなった!他の鉱石ではあの杉と錆び付いた剣を研げず、非常に苦労したんだ!」

 

紅鷲眼玉髄(べにわしめぎょくずい)』…。

ユージオは修剣学院にあった本では希少な鉱石で、腕の立つ職人でなければ扱うことすら出来ない代物だと読んだ記憶があった。

 

(それがこんな小石になるなんて…)

 

それほどギガスシダーとあの剣は硬く、価値があるんだろうと想像が出来た。

そして一通りの説教を終えて、サードレは店の裏から布に包まれた剣を持ってきた。それを机に置いたのだが、途端に支えが折れて剣は地面に叩き落とされたかのような音を店中に響かせた。

 

「これが…」

 

「だが、この剣は凄まじい素質を持っておる。儂が今まで作ってきた剣の中で最高のものだろう。それで…作成料だが…」

 

キリトは「あ、はい!」と懐から財布を取り出そうとする。ユージオもキリトの持ち金だけでは足りないと思い、実は全財産を持ってきていたのだが…サードレから信じられないことを告げられる。

 

無料(ただ)にしてやってもよいぞ?」

 

「「ええっ⁈」」

 

「ただし!」

 

サードレは条件をつけた。

 

「お前さんがこの剣を扱えるのなら…の話じゃがな。無理だったら、身包み剥がしてでも代金は貰うぞ?」

 

キリトはそう言われると、吸い寄せられるように剣の包みを剥がしていく。剥がす時に剣を立てたのだが、サードレでは運ぶだけでも精一杯の代物をキリトが楽に持ち上げたことから、「ほぉ…」と小さく感嘆の声を漏らした。

そして…姿を現した剣は、黒い一太刀であった。

引き抜いた時の錆は全くなく、店外から溢れる光に当たり、黒く煌めいていた。キリトは息を飲みながら、その柄を握る。すると…岩から引き抜いた時と同じように…シルエットだけしか分からないモンスターが頭の中に飛び込んできた。すぐに消えてしまったが…。

 

「どうしたの?キリト…」

 

「あ、いや…何でもないよ」

 

あのモンスターが何か気になるが、今はこの剣を扱えるかどうかが問題だ。キリトの全財産がかかっているからだ。

ゆっくりと引き抜くと、刀身までもが漆を塗られたかの如く、黒くなっていた。

奇しくもSAOで愛用していた『覇王剣』と同じような剣だった。

 

(これも…運命ってやつかな…)

 

そして、キリトが軽く剣を振り下ろすと、その覇気が店内に広がった。

掛けられている剣、置物、ポスターなどが忙しなく動き、窓はガタガタと異様な音を奏でた。

横でユージオが拍手し、サードレは顎に手を置いていた。

 

「凄いよ!キリト!」

 

「学院の傍付きのくせに…その剣を振れるとはな…」

 

キリトは改めて剣を眺め、サードレに礼を言った。

 

「良い剣です!」

 

「当たり前じゃ!言ったじゃろ?最高の剣を作ったとな。約束は約束だ。そいつはお前さんのものじゃ…」

 

「はい、ありがとうございます‼︎」

 

キリトは再び剣を布に戻し、サードレの店を後にした。

サードレはキリトとユージオの姿を見て、独り言のように呟くのだった。

 

「あのヒヨッコども…。のちに何か大きなことをしそうだな…」




【補足1】
『青い熊の蜂蜜パイ』
完全オリジナル食品。もちろん、青い熊とは青熊獣アオアシラのことです。

【補足2】
『央都ドンドルマ』
原作でいうセントリアに代わる名前。
モンハンには色々な村や都市の名前がありますが、個人的に一番しっくり来た名前だったので、これを採用しました。

【補足3】
紅鷲眼玉髄(べにわしめぎょくずい)
獄炎石の別名。個人的によく取れるくせにあまり使われない鉱石だと思う。




神聖術はどのような表記がいい?

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