ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第12話 懲罰という名の挑戦

サードレから貰った剣をお気に召したキリトは上機嫌に学院へと戻っていった。ユージオは先に部屋に帰ったが、キリトは試し切りをするために、学院内の裏庭へと向かった。普段誰も来ることがなく、サボる時もよく行く場所だった。

いつものように誰も居ないことを確認してから、キリトはそこへ足を踏み込んだ。もう一度剣を抜くが、先程のようなモンスターのシルエットは脳内へ流れることも、見えることもなかった。

 

「あれは…一体…」

 

ずっと気になっている事柄の1つだが、キリトはすぐにその思考を跳ね除け、剣を振るった。リーナと剣の稽古で扱う木剣も中々の重さであるものの、ユージオの持つ『冰龍の剣』に比べたら生易しいものだったため、キリトには物足りなかった。だから今日完成した剣を首を長くして待っていたのだ。

キリトは剣を構え、本気で振る。重さと威力を確かめながら…。

更に今まで木剣でも発動出来なかったソードスキルが扱えるかも確かめた。最初に4連撃SSバーチカル・スクエア、続いて同じ4連撃SSホリゾンタル・スクエア…。その次に重突撃SSヴォーパル・ストライクも放とうと構えたが、刀身が赤く発光するだけで強く踏み込むことは出来ない。この武器レベルでも未だに扱えないということなのだろうか…。

 

「くそ…これじゃ、リーナ先輩に見せれないな…」

 

キリトが新しい剣を欲していたのは別の理由もある。

つい数日前、いつものようにリーナと手合わせを終えた後にこんなことを言われたのだ。

 

『私にまだお前の本気を見せていないだろう?』と…。

 

それを言われた時、キリトはすぐに否定出来なかった。この仮想世界はSAOと違うことは確かだが、ソードスキルという部分は同じだ。

鍛錬を積み、習得すれば強力なソードスキルが発動出来るようになる。

そのためにリーナの下で剣術の鍛錬を行い、自分の実力を密かに上げていった。それを見破られたキリトは軽く受け流しながらも、『その時が来たら、必ずその力を見せる』と伝えた。だが、リーナはあと数ヶ月もすれば修剣学院を卒業してしまう。その前に何とかして、この高レベルなソードスキルを発動出来るようにしたいと思っているのだ。

 

(そのためにも…せめてヴォーパル・ストライクくらいは…!)

 

そう思ってもう一度、ソードスキルを発動させたが勢い余って剣が地面にめり込み、キリトは派手に転んでしまう。

 

「あたたた…やはり無理か…」

 

顎を抑えながら顔を上げると、そこに人影が…。

そこには豪傑の如く表情をし、制服の上からでも分かるくらいに筋肉が浮き上がった男…ウォロ・リーバンテイン上級修剣士が立っていた。だが、制服の上には泥で出来たシミがあり、明らかに自身のせいだとキリトは気付いた。

キリトはすぐさま膝を付き、謝罪する。

 

「リーバンテイン修剣士!あなたの服に泥を付けてしまったこと、伏して謝罪致します!」

 

堅苦しい言葉だが、相手が相手なのでどうしても緊張してしまう。

ウォロは上級修剣士検定を主席で突破した者で、剣術、剣圧、どれを取っても最上級の実力者だ。そんな彼に泥を付けるなど…切腹にも等しいものだろう。

だが、ウォロは強面の表情のままキリトを見下ろしつつ、静かに話し出した。

 

「お前はセルルト上級修剣士の傍付きの…」

 

「はい、キリト初等練士であります!」

 

「お前の剣術は見せてもらった。中々のものだ。だが、安息日に剣の稽古をすることは禁じられている」

 

「そ、それは…」

 

言い訳を考えるキリトだが、ウォロの表情はそこで何故か緩む。

 

「まあ、私も君と同じ考えの者だから…人のことは言えないがな」

 

「え?」

 

呆気を取られてしまうキリト。確かにウォロの右手には彼が愛用しているであろう長剣が握ってあった。

 

「安息日に何かとこじつけを付けて、剣の鍛錬をしようと思っているのは、私も同じということだ」

 

「そ、それでは…」

 

「安息日に剣を振るっていたことは不問にしてやろう」

 

キリトはそこでホッと胸を撫で下ろす。礼を言おうと思ったところで、ウォロはとんでもないことを言い出す。

 

「安心するにはまだ早いぞ、キリト練士」

 

「え?」

 

ウォロは服に付いた泥のシミを指差す。

キリトが(まさか…)と思っていると…。

 

()()に関しては許してないぞ?」

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、闘技場。本来ならここでは中型または大型モンスターと一騎打ちをする場所だが、今回はそこにキリトとウォロ…それを見守るリーナが立っていた。

ウォロが下した懲罰の内容は、手合わせすること。

先程も言っていたが、キリトの剣技に多少の興味を持ったことだと、耳打ちで明かした。普段の木剣では本気を出せないことだろうということで、お互いの武器で戦うことになったのだ。しかも、その戦いを一目見ようとたくさんの生徒が見に来ている。

中にはユージオもおり、溜め息を吐いていた。

始まってしまったことは仕方がない。キリトは先程頂いた黒剣を取り、前に歩み出そうとした時、リーナがキリトを止めた。

 

「リーナ先輩?」

 

「キリト、ウォロの剣術は凄まじい。勝てるとははっきり言って思っていない。私でさえ臆してしまう相手だ」

 

「…最初から勝てないなんて思ってたら、どんな相手だろうと勝てませんよ。大丈夫です、俺は勝ちます」

 

「どこからその余裕が出てくるんだ…。だが、私は君の上役として見守る。キリトの全てをここで見せろ!約束のな…」

 

そう言われて、キリトは「はい!」とはっきり答える。

対戦形式は寸止めだと思っていると、ウォロはとんでもないことを言い出す。

 

「ああ、そうだ。キリト練士殿、私は基本寸止めをしない。一撃形式の対戦しかしない馬鹿者でね。それでもよろしいかな?」

 

「!」

 

「まあキリト練士は寸止めで良いかもしれないな。だが、少し手を抜けば…軽い怪我では済まないぞ?」

 

流石の物言いにリーナが抗議しようとしたが、キリトは止める。

 

(これはウォロからの挑戦状だ。明らかに俺と本気で戦うことを望んでいる…。だったら…)

 

キリトは軽く会釈し、ウォロと共に剣を抜く。

2人の剣はあまりに対照的だった。ウォロの剣は白く、鈍重そうなものであるのに対し、キリトは細く…黒塗りの剣だった。

それを見た観客はキリトの剣に様々な反応を見せる。バカにする者…興味を示す者…と様々だ。

だが、そんな声などキリトには聞こえていない。

全神経をウォロ1人に集中させ、いつ踏み込もうかと考える。

その間にウォロは剣を高々と上げ、構える。あれはハイ・ノルキア流剣技『金剛斬』だ。一度斬り込みに入れば、止まることはないと言われている。

 

(そっちが一撃で行くなら…俺は連続剣技だ!)

 

途端にウォロが先に声を上げて、キリトに迫ってきた。

 

「うおおおおおおおぉぉッ‼︎」

 

赤いエフェクトが走る刀身が迫ってくる。

キリトも1秒遅れて動き出す。放ったのは使い慣れた4連撃SSバーチカル・スクエアだ。

1撃目。

金属音が響くだけで、ウォロの剣は止まらない。

2撃目。

同じことが続く。

しかし、3撃目…ここで今までの中で最も大きい金属音が響き、ウォロの剣が止まった。その事にウォロを含め、闘技場にいた全ての観客が度肝を抜かれた。何故なら、ウォロの剣技を止めた者など、誰一人としていなかったからだ。

ギリギリと耳をつんざくような音を出しながら、キリトは剣技を受け止め、相手の態勢を崩そうとする。

 

(この攻撃を防げば…俺には最後の4撃目がある…!)

 

ところが…ここでウォロの背後に大量の人影と白い鎧のような外殻を纏ったモンスターが入ってきた。大量の人影は恐らくリーバンテイン家の者…そして、剣の素材として使われたモンスターのイメージがキリトに流れ込んで来ているのだ。

 

(これが…イメージの力…!このままじゃ…!)

 

キリトの膝が地面に付き、ウォロの剣が肩に触れそうになる。

 

(あんたがどれだけのものを背負っているかは分かった…。だけど、俺だって…俺だってなぁ…!)

 

キリトの脳裏に今までの戦歴が流れてくる。

全ての力を剣に注ぎ込み、我を忘れて叫んだ。

 

「ここで負けられないんだァッ‼︎」

 

その途端、キリトの剣に変化が現れる。黒い粒子がウォロの剣に纏わりついたかと思えば、剣圧が一気に無くなる。

 

(な、なんだこれは⁈心意が…私の力が奪われてる⁈)

 

その次に黒剣は一瞬にして太さが増す。細かった刀身はウォロの刀身と大差がなくなったが、重さはそのままだ。

 

(剣が太くなった⁈これはいった………っ⁈)

 

その時、ウォロは見た。

キリトの背後に巨大な杉の木のイメージと…翼脚でウォロの剣を掴んでいる謎のモンスターを…。

 

「なっ⁈」

 

キリトもこの現象について行けてないが、こんな好都合なことはない。一気に力を込め、ウォロを自分から引き放した。

 

「はああああああああぁぁッ‼︎」

 

ウォロは態勢を崩しつつ、後退する。

キリトは間髪入れず、新たな剣技でウォロに攻撃する。裏庭では出せなかったはずの重突撃SSヴォーパル・ストライクが、発動できたのだ。

だが、ウォロは凄まじい速度で迫ってくるキリトの剣技を必死に弾き返し、再び金剛斬を打ち込もうと思った時、凛とした女性の声で「そこまで‼︎」と闘技場内に響いた。

もう動けそうもなかったキリトの目の前に、ウォロの剣が止まっていた。ウォロはゆっくりと声のした方を見ると、そこにはアズリカ初等修錬士寮寮長が立っていた。

 

「あの方の裁定なら、従わないわけにはいかない」

 

「えっ?えーと…何故ですか?」

 

「あの方は、7年前の統一剣武大会における北ドンドルマ帝国の第一代表剣士だからだ」

 

「ええッ⁈」

 

そして、ウォロは高々に言う。

 

「これにてキリト練士の懲罰を終了とする!これからは、人に泥をかけるようなことをするなよ?」

 

剣を鞘に収めながら言うウォロはキリトの真横を通る。

すると、耳打ちで何かを言ってきた。

 

「お前の剣…素晴らしいものを秘めてるな。楽しかったぞ」

 

「…ありがとうございました!」

 

キリトは感謝の言葉を表す。

そして、ウォロが闘技場から出て行ったと同時に耳をつん裂くような歓声の嵐が巻き起こった。キリトは笑いながら、色んな人に手を上げて振る。

そして剣を再び見てみたが、元の大きさに戻っており、何がどうなってあのような現象になったか…結局分からず仕舞いだった。

すると今度は両肩を思いっきり叩かれ、振り向かれる。目の前には泣き顔のリーナ先輩があった。

 

「斬られた…と思ったぞ…。この大馬鹿者め!」

 

リーナは人目も気にせず抱きつき、怪我がないことを確認した。

 

「あはは…すいません」

 

「お前の勇姿、この目でしかと見せてもらったぞ。独り占め出来なかったのが残念だったが、十分だ!今日はこの後飲むぞ。キリトの友人、ユージオも連れてくるといい」

 

「…はい!」

 

この日、キリトとユージオはリーナとゴルゴロッソと共に酒を飲み明かすのだった。

 

 

その3ヶ月後、リーナは無事に北ドンドルマ修剣学院を無事に卒業した。




【補足1】
ハイ・ノルキア流剣技『金剛斬』
これはMHRiseで登場する入れ替え技『金剛溜め斬り』をベースにしました。
今作では非常に重い一撃であり、極めた者は受け止めることすら不可能の秘奥義である。

【補足2】
『白い鎧のような外殻を纏ったモンスター』
初代MHから登場する古参モンスター『グラビモス』のことです。
採用した理由ですが、一撃が重たいモンスターと言ったら何かと考えた結果です。他にもそういうモンスターは大量にいますが、皆さんが想像するようなモンスターは後半で登場します(多分)。

【補足3】
『翼脚でウォロの剣を掴んでいる謎のモンスター』
ここで詳しい解説を入れるとネタバレになるので触れませんが、皆さん大体の想像はついていますよね?キリトの剣に関することは物語の最終盤で触れて行こうと思います。


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