ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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明けましておめでとうございます(今更)




第14話 大罪

ティーゼの告白にも近いことを言われて3日が経った。

その日もいつものように茶を飲んで、学技を学ぶキリトとユージオだったが、今日はいつもと違うことがあった。予定の時間になっても、ティーゼとロニエの報告がないのだ。外は台風のような暴風雨で、こんな状況でこんな遅くに外出するようなこともないはずだが…。

 

「遅いな…2人」

 

「確かに…。何かあったのかもしれない」

 

キリトは窓を開ける。

風と雨が室内に入ってくるが、キリトはお構いなしだ。

いつもならユージオが窓からの出入りをやめろと言うのだが、今回は状況が違う。

 

「ユージオ、俺は外に行く。2人は戻ってくるかもしれないから、部屋に残って待っててくれ」

 

「分かった。キリトも気を付けるんだよ?」

 

キリトはニッと笑い、窓から外出した。

ただ単に何か用事があって遅くなっていることだけを願うユージオだったが、その願いは…キリトが出て行ったとほぼ同時に部屋に入って来た1人の少女からの速達で打ち砕かれることになる。

その少女も髪や服がずぶ濡れで、息も絶え絶えだ。

 

「どうしたの?君は確か…フレニーカ…」

 

「同室のロニエとティーゼがジーゼック次席の部屋に行ったきり帰って来なくて…」

 

「どうして2人が…」

 

「私に対する扱いの抗議だと思います。だけど…ジーゼック次席は2人よりも高い位の2等爵家です。ユージオ上級修剣士はまだしも、2人が抗議なんてしたら…」

 

その時、ユージオの背中に嫌な汗が流れた。

心臓の鼓動が激しくなり、居ても立っても居られなくなった。

 

「フレニーカは自室で待ってるんだ。僕はウンベールたちのところに行ってくる」

 

ユージオは自身の愛剣『冰龍の剣』を掴むと、部屋から飛び出した。

すぐにウンベールたちの部屋の扉を開けた。普段ならノックなどをするユージオだが、今の彼にそんな余裕はなかった。部屋の中は暗く、灯りは壁に立て掛けてある蝋燭が数本のみ…。いつもとどこか様子が違う。

そして、ライオスとウンベールはソファに座っていた。いきなり入ってきたユージオに多少の驚きはあったものの、その表情にいつもの怒りや蔑みは無かった。

 

「突然の入室、お許しください。主席と次席に是非聞きたいことが……ッ⁈」

 

2人の横にある豪勢なベッドに目を移した瞬間、ユージオは息を飲み、言葉を失った。そのベッドには猿轡さるぐつわを掛けられ、身体中に赤い縄で縛られ、涙を流し恐怖に(おのの)くティーゼとロニエの姿があった。

そのあまりに酷い姿にユージオは怒鳴れずにいられなかった。

 

「ライオス…ウンベール…これはどういうことだ‼︎」

 

2人はニヤニヤと笑いながら、ソファから立ち上がる。

 

「どういうこと?見て分かるだろう?この2人の小娘は事もあろうか、一等爵家である私と、二等爵家であるウンベールに抗議を行ったのだ。それだけなら私もまだ許したが、彼女らはしつこくてね…。貴族債権を用いて、あのようになっているということだ」

 

ライオスは舐め回すようにユージオを見る。だが、ウンベールは徐々に2人の方に近付きつつ、上着を脱ぎ捨てた。

それを見たユージオは「止めろぉッ‼︎」と叫び、止めようとしたが、近くにいるライオスが同等の声で叫ぶ。

 

「止まれ‼︎平民がッ‼︎」

 

すると魔法でもかけられたのか、ユージオの身体が途端に硬直した。

いや…床と足が接着剤でくっ付いたかのように、足だけがどうしても彼らの方向に動かなくなったのだ。

 

「これは禁忌目録と貴族債権による『正当な』判決だ。また、それらを妨害する者は…罪人となる。…そこで見ていろ、可愛い傍付き共が我ら上級貴族に汚されるところをなぁッ‼︎」

 

そこで漸く2人の猿轡は外されるが、途端に2人の口から拒絶と悲鳴が絶叫に近い形で溢れ出した。

 

「いやッ…いやあああああああああああああぁッ‼︎‼︎」

 

「助けてッ‼︎ユージオ先輩っ‼︎せんぱぁぁいぃ‼︎」

 

下衆な奴らに自分の身体を汚されようとしているティーゼとロニエの悲鳴は凄まじいものだった。

ユージオも助けたいが、どうしても足が動かない。

歯を食い縛り、唇をいくら噛んでも身体は1mm足りとも動くことはない。

 

(どうして……どうしてこんなことが許されるんだ⁈禁忌目録にないからって…こんなこと…!)

 

その時、キリトの言葉が脳裏で蘇る。

 

『自分が間違ったことだと思ったなら、すぐに行動を起こせるようになるんだ』

 

「!」

 

すると今度は右目の奥が熱くなる。

ゆっくりとユージオは固まった足を僅かに動かし始め、剣の柄を握ろうとする。

 

(友達のために…勇気を振り絞ってアイツらに抗議した2人が…それだけであのような罰を受けることが『善』だと言うなら…僕は…僕はッ‼︎)

 

そして、漸く剣の柄に触れる。

その時ユージオの右目が赤く発光し、凄まじい痛みが襲う。

 

「うぐあああああああぁッ⁈」

 

ユージオの悲鳴に4人が一斉に釘付けになる。

明らかに様子のおかしいユージオにライオスとウンベールもたじろぐ。

 

「な、なんだ…あの目は…?」

 

「せん……ぱい…?」

 

(許さない…!)

 

柄を握る力が更に強くなる。

 

(絶対に……)

 

「許さないッ‼︎」

 

そして…右目が破裂すると同時にユージオは剣を抜き、単発SSホリゾンタルを放った。突然の攻撃にライオスはベッドから飛び降りる。しかし、回避の間に合わなかったウンベールは左肩から右腰にかけて、深い斬撃が入った。

 

「ひっ…ぎゃああああああああああああああああぁぁッ‼︎」

 

ユージオの渾身の一撃により、ウンベールは血濡れたベッドの上で息絶えた。ユージオは膝を付き、破裂した右目を抑えて苦しむ。

 

「ぐっ…ぐぅぅ…」

 

もう剣を振ることすら出来ないだろう。

それを見て取ったライオスはウンベールのことなど気にもせず、ゆっくりと自慢の愛剣が掛けてあるところへと歩みを進める。

 

「まさか…これほどまでとはな…」

 

ライオスは剣の鞘を捨て、ユージオに矛先を向ける。

 

「くっ…」

 

「全く!素晴らしいぞ、ユージオ修剣士!こんな大罪を犯してくれるとはなぁ…。ここまで来れば、貴様を殺しても私は罪に問われないだろう。ははは‼︎」

 

壊れた人形のように笑うライオス。

それをただ眺めることしか出来ないユージオ。

 

「ユージオ修剣士…いや、大罪人ユージオ‼︎今ここで…貴様の首を落としてやろう!感謝するがいいぃ‼︎」

 

「やめて‼︎ユージオ先輩ッ‼︎」

 

ティーゼの声が届くはずもなく、ライオスは思いっきり剣を振り下ろした。ところが窓ガラスを割って入ってきた乱入者がライオスの剣を受け止めた。

 

「キリト…」

 

やって来たのはキリトだ。彼もまた、黒剣でライオスの剣を受けつつ、奴に退くように忠告する。

 

「剣を納めろ、ライオス。ユージオは殺させやしない‼︎」

 

「邪魔をするな、平民風情が…。お前の相棒は禁忌目録に反した大罪人だ。横で首が跳ね飛ぶところを見ているがいい!」

 

キリトはゆっくりと周囲を見る。ベッドには血塗れで死んでいるウンベールに、その返り血で汚れ、縛られたティーゼとロニエの姿があった。この状況下でユージオが何をしようとしたのか、分からないはずがなかった。キリトは剣圧を徐々に上げていき、ライオスに言う。

 

「禁忌目録がどうとか…貴族がどうとか知ったことではない。だがライオス…お前とそこで死んでいるウンベール…貴様らはどんな人間よりも下劣で最低なクズ野郎だッ‼︎‼︎」

 

その言葉にライオスは動揺し、剣圧を緩めたためキリトが弾き返す。

最初はここまで酷い言葉をかけられたことがなかったため、放心状態かと思われたが、すぐに下品な笑みを浮かべて、キリトを罵った。

 

「下劣は貴様らだ!貴族に反抗した罪、これまた大罪だ…。ああ…今日はなんて運が良い日だ…。下級貴族の娘を汚し、邪魔な平民共も殺せる…。これもルーツ様の導きか…!」

 

ライオスは剣を高々と上げ、鮮血のエフェクトを走らせた。

それを見たユージオは立ち上がって、自分も加勢しようと思ったがキリトに止められた。

 

「俺がやる」

 

この『やる』という言葉に…ユージオはキリトの覚悟が感じられた。

キリトは剣を構えると、一瞬にして刀身が太くなり、青白いエフェクトを走らせた。そして…空気が破裂するような音と共に、全てを吹き飛ばさんばかりの旋風が巻き起こる。

その力にライオスは一瞬狼狽えたが、すぐに強気な言葉を吐く。

 

「ははは…!そのような黒塗りの剣、我が秘奥義『竜怨斬』で打ち砕いてくれる‼︎」

 

「来い!ライオス‼︎」

 

ライオスは剣を振り下ろし、逆にキリトは振り上げた。

お互いの秘奥義がぶつかると、全ての窓ガラス、ベッドカバーや布類などが全て吹き飛んだ。

最初は拮抗しているように見えたが、徐々にキリトの剣が押され始める。

 

「そうだろうなぁ‼︎貴様如き平民に、このライオス・アンティノス様が遅れを取るわけがないのだぁッ‼︎」

 

そう叫んだ途端、ライオスの剣の刀身が赤黒く変色する。

これがライオスの持つ貴族の自尊心というものなのだろう。

更にライオスが使用している秘奥義『竜怨斬』は相手の秘奥義の力に比例して、威力が上がる。このまま行けばキリトは真っ二つになってしまうだろう。

だが、ここでキリトの剣にも変化が出る。

黒い粒子がライオスの剣に纏わりつくと、エフェクトを消してしまったのだ。

この隙をキリトは見逃さなかった。

相手の秘奥義が消えたところで剣をへし折り、更に別のソードスキルを発動させる。今度はリーナに習ったセルルト流秘奥義『桜花回転斬』を放ち、ライオスの腹に大きな斬撃を与えた。

 

「ぐぎゃああああああああああああああぁッ⁈」

 

ライオスは腹を抑え、床の上でのたうち回る。

あまりの痛みに絶叫しか出ていなかった。

その間にキリトはティーゼとロニエの縄を解き、彼女らの露わになった身体を隠すためにシーツを被せた。その間にもライオスは絶叫し続けていたが、今度は同じ言葉を何度となく叫び始める。

『天命!禁忌!』を何度となく、壊れた機械の如く反復すると、最後には人間の悲鳴とは思えない奇声を上げ、血の海に倒れた。

最後の死に様に4人は固まってしまう。

 

(今のは一体なんだ?)

 

そんなことを思っていると、涙目の2人がベッドから降りて来て、それぞれ抱き付いた。あまりの過酷な責め苦に、彼女は誰かに縋り付かなければ耐えられなかったのだろう。

 

「ティーゼ…辛かっただろう…。もう、大丈夫だよ…」

 

「でも…先輩たちが…」

 

「僕たちのことは…気にしなくていいよ。これは…これが、僕の意志だったんだから」

 

「ユージオ、お前も右目…大丈夫か?」

 

「大丈夫…じゃないね…」

 

ユージオは苦しそうに笑う。

そして、この騒ぎを聞いた寮長やアズリカ先生たちが部屋に雪崩れ込んできた。この惨状を目の当たりにした彼らは言葉を失うと同時に、キリトとユージオを連行する。後方ではティーゼたちがこうなった経緯(いきさつ)を叫ぶが、禁忌目録に違反した2人を解放してくれるはずがなかった。

 

 

 

 

更に…部屋の上部では謎の声が小さく響き、その声は誰にも聞こえることはなかった。

 

 

『シンギュラーユニット・デテクティド。IDトレーシング・コーディネート・フィクスト。リポートコンプリート』




【補足1】
『ルーツ様』
後に更なる詳細を書くが、アンダーワールドにおける最初の神。
元ネタはもちろん祖龍ミラルーツ。

【補足2】
秘奥義『竜怨斬』
原作では狩り技『震怒竜怨斬』である。
原作同様に相手の攻撃力によって威力が変化する。ただし、本作での弱点は武器優先度が高い相手だと、秘奥義の攻撃力に武器がついて行けなくなることである。

【補足3】
秘奥義『桜花回転斬』
原作では狩り技『桜花気刃斬り』である。
本作では威力上昇はないが、やろうとすれば2回から4回まで連続で回転しつつ、斬撃を与えることが出来る。ただ、これも武器優先度が高い武器がなければ、上手く扱えない。

太陽と言われて1番結びつくモンスターは?

  • マム・タロト
  • リオレウス希少種
  • トリドクレス
  • クアルセプス
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