ソードアートオンライン Monster Hunter World 作:GZL
キリトとユージオは既に少なくとも2日もの間、寒く、薄暗い牢獄に投獄されていた。審問するとアリスは言っていたが、そんな様子はなく、ただ退屈な時間ばかりが流れた。
太陽の光が入って来ない牢獄では時間の感覚も狂ってしまっていた。
「はあ、全く…いつまでここに居ればいいんだ…」
「そうだね。審問はおろか何も始まらないし…」
退屈凌ぎにキリトはユージオに2日前に会った2人、アリスとイーディスについて聞くことにした。
「ユージオ、もう一度確認するが、彼女らは本当に8年前に連れ去られたアリスとイーディスなんだな?」
「2人とも、8年前と同じだった。身長とか、雰囲気は変わっても…」
ユージオの凛とした眼力に、キリトは本当のことを言っているんだと改めて認識する。「なるほど」と相槌を打つと、ユージオもキリトに確認したいことがあるのか、同じく質問する。
「キリトも…アリスとは会ったことあるみたいだったけど…どうなの?」
「俺は……」
キリトは思わずアリスとの思い出を語ろうとしてしまうが、急いで口を閉じる。ユージオにSAOでの話をしてしまうと、今まで記憶喪失だった話が全て嘘になってしまう。それに自分自身が本当は何者かもバレてしまう。そうなると今よりも面倒ごとが増えてしまうと思い、キリトはすぐに話題を逸らそうとする。
「それよりも、アリスもイーディスも、ユージオを見ても何も感じていなかった。まるで…今までの記憶が抜け落ちたみたいに」
「でも、記憶を操る神聖術なんて…そんなもの…」
「ここの司祭様は天命や神聖術を自由自在に操れるんだろ?だったら、それくらい可能なはずさ」
ユージオは「まさか」と言うが、その表情は明らかに動揺しきっていた。ともかく、あの2人がユージオの探し続けていた彼女らだということは判明した。
次はどうやってこの牢獄から脱出するか…だ。キリトはそう思っているが、ユージオはどうなのか分からない。キリトはユージオに詰め寄り、今まで異常の眼力を向けて、こう言った。
「ユージオ、お前はこれからどうする気だ?」
「僕は………アリスとイーディスを助ける!記憶を奪われていようが、消されていようが、何があっても記憶を取り戻して、彼女らを救う!そのために、まずはここから出よう!」
ユージオの意志もキリトとほぼ同じだ。
だが、その脱出が1番の問題だった。キリトとユージオは壁に繋がれた鎖を腕に付けられ、他には簡易なベッドしかない。いつもの愛剣があれば、意図も簡単に切れただろうが…。
「…そういえば、ここでステイシアの窓は見れるのかな?」
「さあ…試してみようか…」
キリトとユージオは共に繋がれた鎖をステイシアの窓で確認する。
この鎖はオブジェクト権限が38、天命も30000を優に超えている。
「これじゃ、何をやっても砕けないわけだよ」
「いや、これは行けるかもしれないぞ、ユージオ」
キリトは立ち上がり、鎖を握る。ユージオにも同じように持ってもらう。
「キリト、何をするの?」
「この鎖のオブジェクト権限は38、40を超える俺たちには簡単に使いこなせる。それに同じ権限なら、天命を減らせるはずだ」
「なるほど」
ユージオもキリトの作戦を理解し、息を合わせて鎖をぶつける。すると、バキッとヒビ割れるような音と共に、繋がれた鎖の天命が半分以上減少する。
「よし、もう一回だ。ユージオ」
「「セーのッ‼︎」」と今度は声を掛け合い、互いに鎖を引っ張ると、先程よりも更に大きな音を出して砕けた。その反動で2人とも壁に激突するが、気にすることはない。
「よし、作戦成功だな。でもユージオ、良いのか?」
「何が…?」
「ここから脱獄するということは、公理教会と真っ向から反逆するって意味だ。いちいち、決断する時に迷ってる暇はないぞ?覚悟を決めるなら、今しかない」
「僕はもう迷ったりしない。アリスとイーディスを助けて、村で帰りを待つセルカとメアリのために…約束を果たすために…」
「…決まりだな」
キリトは腕に付いたままの鎖を振り上げ、鉄格子付の牢獄を破壊した。その時の音にもちろん、看守が気付いて、部屋から飛び出して来たが、ユージオが看守に突進し、鎖で喉元を締め上げて気絶させた。
「流石だな」
「気絶している間に急いでここを出よう。キリト、これを」
ユージオは看守が持っていた貧相な槍をキリトに渡そうとするが、「ユージオが持っておけ」と言って、キリトは遠慮した。それから2人は即座に地下牢獄から外へと脱出し、薔薇で出来た通路に出る。ユージオは貴重な薔薇がここまで大量にあることに驚いているが、キリトは逆に追手がいないかを警戒していた。通路の陰に身を潜め、暫く息を殺していたが、誰も追ってくる様子はなかった。
「ここまで来れば…安心だろう」
「だと良いけどね。それにしても、信じられないな…。僕たち、本当にセントラル・カセドラルの内部にいるんだ」
「まあ、整合騎士ではなく、脱走した罪人…としてだけどな」
「来れただけ良いよ。アリスたちは…あの中にいるのかな?整合騎士は人界守護のために、飛竜であちこちに飛んでいると聞くし…」
「居なくても、最高司祭にどこにいるか聞けばいい。それに記憶のこともな…」
「記憶……もしかして、その方法さえ聞き出せば、キリトの記憶も…」
そんなことを言い出すユージオの優しさにキリトは思わず、「このっ!」と頭を小突く。
「全く、こんな時でも俺のことを考えているなんてな…。ユージオ、仮に俺の記憶が戻っても、俺はお前のことを助ける。それに一生の親友だ。安心しろ」
そこまで言うと、ユージオはニッコリ笑う。
その時だった。安心しきった2人の方面に1本の長剣が飛んできた。
「ユージオ!避けろ‼︎」
剣は地面に深々とめり込む。
「走るんだ‼︎」
追手が迫ってきたことで緊張感が一気に増す。
あてもなく走っていくと、広場に出て、その中央にはワイングラスとワインが置かれていた。誰かがここで待っていたようだ。
すると、1本の鞭がキリト達の目の前に入り込み、それを伝って青色のマントを翻して、新たな騎士がやって来た。
「やあ、罪人諸君。まさか脱走するとはね…。アリス様の言う通りになるとは…」
「アリス…様?」
目の前にいる騎士は鞭を腰に納め、左手に持つ剣をキリト達に向ける。
「悪いが、さっきの牢獄に戻ろうか?罪人」
「そんな簡単にお前の言う通りになると思っているのか?甘く見るなよ!整合騎士‼︎」
キリトが叫ぶと、その騎士は剣を地面に叩きつけ、更に右手で鞭を持って同じく地面を叩いた。
「ああ、これから貴様らを牢獄に帰す者の名前を言っておこう。私の名前はエルドリエ・シンセシス・サーティーワン、つい数日前に召喚されたばかりの騎士だが、貴様らを牢獄に戻すことくらいは何てことない」
「エルドリエ…どこかで…」
そこまで言うと、鞭を激しく振るった。
キリトは(この距離なら鞭は届くはずが…)と思っていたが、鞭は元の長さからは信じられない程に伸縮し、ユージオの方へと飛んでいく。
ユージオも同じで突然の攻撃に槍を構えたが、木製の柄は意図も簡単に砕ける。
「ユージオ!避けろ‼︎」
ユージオは折れた槍を捨て、即座に後ろへと退がる。鞭は地面にめり込み、未だに掘削を続けている。が、掘削のことはキリトもユージオも気付いていない。
「ふっ、所詮ただの罪人か…」
とだけ、エルドリエが呟く。
するとキリトの真下から鞭が飛び出して来た。思わずキリトは繋がれた鎖を使ってガードしようとしたが、完全には防ぎ切れず、鎖に軽く当たって勢いを落としたが、鞭はキリトの左腹に見事に突き刺さる。
「ぐうぅ⁈」
キリトは内臓を抉られるまでに突き刺されながらも、その鞭を掴み、エルドリエの動きを封じる。更に鎖を振り上げ、エルドリエの顔面にヒットさせる。
「っ!」
エルドリエは声を上げず、口端から血を流しながらキリトを睨む。その眼力は凄まじいものだったが、キリトが怯むことはない。
(ほう…この私の殺気に怯まないか…。ただの学院生ではないな)
睨みに意味がないと分かったエルドリエは鞭での攻撃を諦め、剣を振り上げる。ここでキリトが鞭を離せば剣撃は避けれるが、鞭の一撃は腹に受ける。かといって、鞭を離さずにいれば、剣撃を受けてしまう。
八方塞がりかと思われた時、剣が急に重くなる。思わず振り向くと、そこにはユージオが剣に鎖を巻き付け、エルドリエの動きを封じたのだ。
「どうだ⁈これならいくら整合騎士でも…!」
キリトは鎖を振り上げようとする。
ところが、エルドリエは何か小さく神聖術を詠唱すると、キリトの握る鞭が途端に変化する。細長いモンスターの頭になると、即座に高速で回転し始めた。
それによりキリトの腕を派手に抉り散らし、血飛沫を上げる。
「がっ…!ぐああああぁ⁈」
「キリト‼︎」
キリトが痛みのあまりに鞭を離すと、今度はユージオの方に向かっていき、剣を封じる鎖を砕いた。
完全に相手のペースに持っていかれたユージオは右腕を抑えるキリトの傍に急ぎ、支える。
「キリト!大丈夫か⁈」
「こいつは…流石にやばいかもな…」
キリトの右腕は見るも無惨な状態で、物を握ることすら出来そうになかった。
「我が『
改めてエルドリエを見詰めるユージオは、ここで彼が何者か思い出した。
「…そうだ。思い出したぞ!あなたは西ドンドルマ統一大会で優勝したエルドリエ・ウールスブルーグ!」
「何を言っている…。私は最高司祭より召喚された整合騎士だ!そんな名前など知らぬ!」
そう叫ぶが、明らかに動揺していた。ユージオはそこに勝機を見たのか、エルドリエに関することを叫び続けた。
「エルドリエ!あなたは西ドンドルマ帝国の上級貴族出身者で、彼は北帝国代表剣士として去年行われたドンドルマ統一大会の優勝者で、ソルティリーナ先輩やリーバンテイン主席を上回る凄腕の剣士だったんだ!母親の名前は……アルメラ、アルメラだ!ここまで言っても、思い出せないのかッ‼︎」
ユージオの血を吐くような叫びに、エルドリエは頭を抑え、苦しみ始める。そして…天に向かって絶叫すると、額から三角柱状の物体が出て来たのだ。
2人ともそれが何か分からないが 、少なくとも記憶を制御するものであることくらいは容易に想像出来た。ユージオはゆっくりと近付き、その三角柱状のものに触れかけた時…。
「エルドリエ・シンセシス・サーティーワンに何をしている⁈」
エルドリエの名前が庭園に響くと同時に、ユージオのすぐ足元に矢が突き刺さった。上空を見ると、飛竜に乗った紅蓮色の鎧を身に纏う整合騎士が弓を構えていたのだ。
「まずい…!」
ユージオは重傷のキリトを支えながら、元来た道へ引き返す。
「逃すかッ‼︎愚かな罪人‼︎」
紅蓮色の騎士は更に矢を放つ。しかも、矢が地面に着弾すると同時に派手な爆発を起こす。ユージオは必死にキリトを支えながら走るが、この先は行き止まりだった。
ここまでかと思われた時、右前方に扉が出現し、手招きする腕が見えた。
「こっちじゃ!」
敵か味方か分からないが、考えてる暇はなかった。
ユージオは最後の力を振り絞り、光の扉へ飛び込むのだった。
【補足】
『
エルドリエの持つ神器。その一振りで岩は砕け、どれほど強固な防具でも穿つ力を有している。この鞭は『凍戈竜』の記憶が入ったものであり、優れた伸縮性と貫通性を持っている。
完全武装支配術では伸縮性と貫通性で相手を追尾する能力を得る。
また、記憶解放術では鞭の先端が尖った形状に変化し、凄まじい速度で回転する。この回転によって相手を貫くと同時に肉体を抉る。仮に躱されても追尾、隠れても貫通、非常に強力な神器である。しかし、弱点は多数ある。鞭の先端以外は貫通性を有しておらず、先端での攻撃が当たらなければ、決定的な一撃は与えずらい。
当初はガララアジャラ亜種の記憶で作り上げた『水蛇鞭』にして、一回振るうだけで水弾が発射され、何度と反射させることが可能になるというものにしようと思ったが、あまりに強くてキリトたちが勝てないと思い、上記のものに変更しました。
太陽と言われて1番結びつくモンスターは?
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マム・タロト
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リオレウス希少種
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トリドクレス
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クアルセプス