ソードアートオンライン Monster Hunter World 作:GZL
カーディナルが出してくれた扉の先は、武器庫だった。
あまりの武器と防具の多さにキリトもユージオも唖然としてしまった。
ここにキリトたちの愛剣があるというが、時間がかかりそうだった。
「キリト…最高司祭はダークテリトリーの侵攻に対して何も対策していないって言ってたけど、これらの武器は使わないのかな?」
「これらは使うというより…奪って、教会に反抗しないために備蓄してる方が正しいかな…」
キリトの推測にユージオは怒りを覚えてしまう。
最高司祭の独裁ぶりに…。
そんなことを思っていると、キリトが声を上げた。
「あったぞ、ユージオ!」
キリトが指差す先には黒色のキリトの剣とユージオの冰龍の剣が綺麗に立てられていた。それを手に取り、腰に挿す。
「どうする?鎧とかも貰う?」
「慣れないことはするべきじゃない。…まあ、そこの動きやすそうな服は貰っていくか」
キリトとユージオは学院服を脱ぎ、動きやすい新たな服へと着替える。
そして、武器庫から出て行こうと扉を開けた途端、数発の矢が飛んで来た。
「‼︎」
それが扉に刺さった途端、爆発を起こして吹き飛ばした。
そして、階段の上には紅蓮色の騎士が悠然と立っていた。
「あの騎士は…!」
ユージオは覚えていた。かの騎士はエルドリエの助太刀に入った者だと…。
「ユージオ!前に出るんだ‼︎」
キリトの声にユージオは急いで前に出る。
騎士は近くに来てくれたことで、更に狙いを絞ることが出来るため、兜の中で薄ら笑いを浮かべる。
弓筒に入れた矢を3本取り、キリトに向かって射る。
それを意図も簡単に弾き返すキリトに騎士は今度は全ての矢を弦に掛け、曲射で放った。無数の矢が2人に降り注ぐが、キリトは全てを弾き返し、ユージオは右方向へと回避する。
騎士の赤い弓の弦は今の射出で切れてしまうと同時に矢もない。
ここまで来れば、キリトは押し切れると思い、階段に足を踏み入れようとした時…。
「エンハンス…アーマメント」
武装完全支配術の詠唱を口ずさむと、弓の弦は完全に燃え落ち、更に騎士もろとも巨大な炎が纏われる。更に橙色の粉塵が周囲に舞い始め、カーペットは焼け焦げ、壁は溶ける寸前にまで高温になる。
「あれが…武装完全支配術…」
「すごいな…。あの弓は何の記憶を入れているんだ?」
「そんなこと考えている場合じゃないでしょ!」
騎士は一息吐くと、弓を構えながらキリトたちに話しかける。
「こうやって『炎王妃弓』の龍炎を纏うのは…いつぶりだろうか…。確かにお前らはただの学院生ではないな。その事は認めよう…。しかし、それを持っているのにも何故、騎士エルドリエを闇の術で惑わせた⁈」
怒りが篭っていく声に比例して、周囲の温度も更に上がる。既に2人の服の下は汗だらけで、脱水症状寸前だった。それでもユージオは弁明のために叫ぶ。
「違う!僕たちは…エルドリエさんを惑わせてなんていません!彼が騎士になる前の話を聞かせただけで…!」
「騎士になる前…?我ら整合騎士には過去などない。最高司祭様より、天界から召喚された存在…それだけだ!」
「っ…」
やはり、彼らはそういう風に記憶を改ざんされていることを改めて分かったユージオは歯を噛み締める。
「生かして捕らえよ、と元老長からは言われているが…この『炎王妃弓』の記憶を解放した以上、腕か足が焼け落ちると覚悟しておけ」
そう言い終え、騎士は手を広げる。そこに橙色の塵粉を集め、1本の炎の矢を生成した。そして、切れたはずの弦にかけ、ゆっくりとキリトたちに向けて構えた。
「あの矢…生半可な防御では確実に貫かれるな…」
「何か策はある?」
「連続で打てないことを祈るばかりだな…。そうじゃないと、こちらがやられる。俺がどうにか初撃を弾く。その後にユージオ、お前が斬り込むんだ」
「…祈る…か。でも、分かった」
キリトとユージオは構え、騎士の出方を見る。
騎士は炎の矢を弦に掛けはしたが、まだ射出する様子は見られない。
そこでキリトとユージオは先に前へと飛び出して、階段を上がっていく。
キリトは駆け上がりながらも、神聖術の詠唱を開始する。
(気休めとしか思えないが…ないよりはマシだ)
「システム・コール!ジェネレート・クライオゼニック・エレメント!」
キリトの手に5つの氷属性のエレメントを起こす。
そして、それを自分たちの前に5層の氷の壁を作った。
それを見た騎士は鼻で笑い、炎の矢を更に引く。
「笑止、そんなものでは我が一矢は防げぬ」
更に矢を引いていき、纏まった炎が騎士を覆うと…。
「受けるがいい、《超新星》‼︎」
放たれた矢は凄まじい速度で最初の氷の壁にぶつかると、1秒と持たずに砕けた。続く2つ目、3つ目、4つ目も意図も簡単に砕け、最後の5つ目で止まったと思われた時、キリトとユージオはその矢が変形していくところを見た。
「あれは…!」
氷の壁にぶつかって拮抗してると思いきや、矢は徐々に赤い立髪を有した、まるでジャガーのような龍へと変化する。その龍から塵粉が更に舞い、周囲を包み込み始める。
そして…最後にけたたましい咆哮の後に氷の壁を一瞬で破壊しつつ、広範囲に及ぶ大爆発を起こした。
「うおおおおおおおぉぉッ‼」
キリトは片手剣防御SSスピニングシールドで、爆風を防ごうと試みる。凄まじい爆発はキリトの後ろだけが安置となるが、それ以外のカーペット、大理石で作られた壁、手すり、階段…何もかもが一瞬で吹き飛ぶ。
しかし、この防御だけでは完全に防ぐことなど出来ない。
回転する剣の隙間から炎が漏れ、それがキリトの手、腕、足を徐々に焼いていく。
(もう少し…!もう少しで…!)
焼かれる痛みを感じながらも、キリトの防御術で騎士が放った《超新星》は威力が落ちていくように見えた。
だが実際は違う。キリトが必死すぎて気付かないだけだが、黒剣から粒子が発生し、爆発を吸収していたのだ。
「く…お、おおおおおおおぉッ‼」
そんなこともつゆ知らないキリトは渾身の咆哮を無意識のうちに叫んだ。そのすぐ後に大爆発はキリトの防御術によって完全に掻き消された。しかし、同時にキリトの身体に負荷がかかり、ユージオが向かうところと逆に吹き飛ぶ。
「キリト‼」
大理石の壁に亀裂が入るほどにぶつかったキリトだったが、ユージオに叫んだ。
「止まるな!ユージオ‼」
キリトがそのまま地面へと倒れる姿を見たユージオだが、キリトの言葉に従って、階段を上がっていく。
舞い上がった塵で視界が悪かった騎士は、ユージオが突っ込んで来ていることに気付くのが少し遅かった。
「む…!」
ユージオは飛び上がり、剣を高々と上げていた。彼も渾身の一矢を放った騎士にはもう打つ手がないと踏んでいたが、それは甘かった。騎士が小声で何か言っていた。聞こえはしなかったものの、口の動きで《リリース・リコレクション》と言っていることが分かった。
(あれは…記憶解放術…!)
「全てを焼き尽くせ…!《獄炎》!」
赤い弓から青い塵粉が舞い上がり、更に騎士が抜いた剣にその青い塵を纏わせたのだ。
瞬く間に剣は高温となって、刀身が赤熱化するがその威力は凄まじいものだろうとユージオは分かった。
今更、この剣を引かせることは出来ない。
(どうする?)
ユージオは考えを巡らせる。この圧倒的に不利な状況から、どうやって打開するか…。
(いや…考えなくていい…。僕は、アリスを、イーディスを救うために、約束を果たすために戦っているんだ!前に…前に進むしか、道はないんだ!)
その想いが通じたのか、冰龍の剣に白銀色のエフェクトが走る。
「せええええええああああぁぁッ!」
白銀の剣と青炎の剣がぶつかる。途端に激しい衝突と小さな連鎖爆発、強大な風圧が一度に起こる。階段の上は焼き尽くされるような空間、下は凍えるような空間へと変貌する。
「ぎっ…くぅぅ…!」
「ぐぅぅ‼」
想定した以上の剣圧に、騎士は顔を歪める。だが…徐々に騎士が剣を押していく。
ユージオは柄を握る手を見るが、肉が焼けるような音が次第に耳の中に入ってくる。
(冰龍…お前は、あの極寒の世界…果ての山脈を創生した高貴な龍だろ?だったら…!)
「こんな…炎なんかに…!」
「な、なんだ…⁈腕が…!」
ユージオの剣から冷気が発生する。
それは恐らく1万度を超す炎を掻き消すと同時に、騎士の上半身の半分を完全に凍結させた。それによって勢いを無くした騎士は後方に退かれ、ユージオは更なるソードスキルを腹に打ち込んだ。
「せやあああぁ‼」
1撃目が騎士の頑丈な鎧をもろともせずに切り裂く。
「ぐあっ⁈」
「逃がさない…!」
怯んだ隙をユージオは見逃さない。弓でユージオの剣撃を防ごうとしたが、2撃目が騎士を襲う。
それも同じく騎士の腹に入り、赤い鎧に綺麗な×印の傷が残る。そこで…騎士は力尽きたのか、地面に座る。
そこで…全てを焼き尽くす青炎も、凍り付かせる氷結も…全てが消えた。
キリトは傷付いた『はず』身体を引き摺りながら、ユージオと騎士の元へと歩く。
何故かキリトの身体は手や腕に火傷は負ってはいたものの、どれも重症と呼ぶには程遠いものだった。
(自分で神聖術で傷を塞いだはずでもないのに…何故…)
そんな疑問を抱きつつ、ユージオを見ると、彼は剣を逆手に持ち替えて、騎士の頭目掛けて落とそうとしているところだった。輝かしいばかりの光を放つ冰龍の剣であるが、そこにこびり付いた血が目立っていた。
「おい、ユージオ!やめろ!」
思わずユージオの腕を抑え、剣を取ろうとしたが、振り向いたユージオの顔は激しい怒りに染まっていた。
「ユ、ユージオ…」
「こいつは…!こいつが…‼アリスとイーディスを連れて行った騎士だったんだ!今でも覚えてる!あの声…色は違えど、その鎧の風貌…!」
「落ち着け、ユージオ!そうだとしても…彼は…」
「お主らは…何を言っている…」
騎士は掠れた声で、2人に話しかける。
「我が…誰を連れ去ったというのだ…。そんな愚行…我は知らぬ…」
「ウソをつくな!」
ユージオの怒号に騎士は臆することはない。その様子にユージオも本当に知らないのではないかと思い始める。
「こいつはその時の記憶を最高司祭に消されたんだ。もしも、自分が罪人として連れてきた人間が整合騎士になっていたら、混乱してしまうからな。だって、整合騎士は過去が存在しない、天界から召喚された存在だからな。それにその大層な弓を頂いたのも、もしかして9年前なんじゃないのか?」
キリトの推測に、騎士はゆっくりと頷き、兜を脱いだ。兜の下は、豪傑な顔の男だった。
「その通りだ。我…デュソルバード・シンセシス・セブンは突然、このセントラル・カセドラルの警備を任されたのが9年前…。その前の記憶は……」
漸く名前を名乗った騎士、デュソルバードは頭に手を当てながら考え始める。しかし、それ以降の記憶が思い起こせず、目の前のキリトの推測が当たっているのではないかと至り始める。
「思い…出せぬ。我は…我は一体…」
「騎士、デュソルバード、過去に大罪を犯したあなたは記憶を消され、整合騎士にされたんだ。そうしたのはもちろん最高司祭だ。要するにあんたは天界から召喚された騎士じゃない、俺たちと同じ、人間だ」
デュソルバードは信じられないといった感じで首を振るが、その瞳は明らかに動揺しきっていた。
キリトは追い打ちをかけるように言った。
「信じるも信じないもあんたの勝手だ。だけど、俺の言ったことが眉唾物か…よく考えてから動くんだな。俺たちを追って捉えるか…最高司祭様に罰を受けるか…」
そこまで言うと、キリトは背を向けた。すぐにユージオの方も見る。首を横に振り、戦う気のないデュソルバードを殺してはいけないと、眼力だけで伝える。
ユージオは悔しそうに歯を噛むが、冰龍の剣の柄を強く握ると、ゆっくりと鞘に納めた。そしてすぐにキリトの後を追う。後ろで項垂れるデュソルバードは、もうキリトたちを追う気力は残されていなかった。
【補足】
神器『
デュソルバード・シンセシス・セブンが最高司祭から渡された神器。
人界の南方に位置するラティオ活火山に棲んでいた炎を纏う雌雄の龍の記憶を埋め込んだ弓である。その一矢は全てを破壊する爆発を起こし、弓から発生する青炎は骨まで残らず焼き尽くす力を持つ。
武装完全支配術《超新星》。自分の意志で爆発させる位置を限定できる。また、その爆発する炎の矢を何本も出すことが出来る。しかし、1発出すたびに弓の天命が大幅に減少するため、連射は余程のことがない限り行わない。
記憶解放術《獄炎》。弓から青い炎を出すことが可能となり、自身の拳や蹴り、または剣、大概のものに纏わせることが可能となり、その青い炎を纏った武器での攻撃はガードしてもその熱でものの数秒で身体が焼き尽くされる。ただし、あまりの高温の炎で自身の身体も焼かれかねない。
元ネタはもちろん、テオ・テスカトルとナナ・テスカトリの2体。武装完全支配術《超新星》はテオの大技『スーパーノヴァ』、記憶解放術《獄炎》はナナの大技『ヘルフレア』をイメージしました。デュソルバードの神器は作成当初から決まっていました。因みにユージオが《ヘルフレア》の攻撃を受け止めることが出来たのは、冰龍の剣によって熱を冷気で相殺することが出来たからである。キリトの黒い剣だった場合、死んでいました。
当初はそのまま『スーパーノヴァ』、『ヘルフレア』としようと思っていましたが、変な感じがしたので、漢字表記にしました。
それにしても、次回…リネルとフィゼルどうしようか…。まだ次話を執筆してないんですが、登場させようか、かなり迷ってます。登場させても…何だよなあ…。