ソードアートオンライン Monster Hunter World 作:GZL
では、新年最初の投稿です。どうぞ!
キリトとアスナが立つ目の前には机の中心に座っている血名騎士団の団長ヒースクリフが2人を見ていた。その目は然程俺には興味がない…というか、ギルドの権限を保とうとしている…そのように風に見えた。
「私と顔を合わせるのは…初めてかな?」
「面と向かってはな。たまに横から表情を伺ったことはあるよ、ヒースクリフ団長」
「それは良かった。何ぶん私は団長のくせに何もしていないと、他ギルドからバッシングを受けるのでね…。知っているだけでも有り難いよ」
「そんな話をするために…俺をここに呼んだと?」
そう言うと、ヒースクリフの柔らかな目が一瞬にして真面目な顔になった。
「私が君を呼んだ理由は他でもない。我が血盟騎士団に入らないかということだ」
「しかし団長!」
ここでアスナが割って入って来る。
「彼はまだギルドに入ることを拒んでいます。なのに…無理矢理連れてきて入れなんて…脅迫ではないですか!」
「アスナくん、それは許してほしい。我々のギルドを最強と言わせる最後の一手がキリトくんだ。他のギルドに回っては、最強の名が泣く」
やはりそんなものだとキリトは思った。
彼らは実際、『現実に帰りたい』と思っていると同時に、会社のようにギルドの信用を安定させておきたいとも思っているのだ。
そのための材料がキリトであった…というだけだ。
昔のキリトなら、すぐに断っていたことだろう。だが…。
「ともかく!キリトくんはギルドには…!」
「分かった。入ってやる」
「え?…えっ⁈」
アスナは驚きすぎて、2度も声を上げてしまっていた。
ヒースクリフ以外の幹部もキリトの言葉に動揺を隠せていなかった。
「あんたの手駒になってやるよ。ヒースクリフ団長」
「…こんなアッサリと承諾するとは思わなかったよ。近々、君には訓練が入るだろう。それまでは休んでいるといい」
そう言い残して、ヒースクリフは立ち上がって、俺の横を通る。
去り際、キリトに耳元で小さく放った言葉を、キリトは見逃さなかった。
「活躍を期待してるよ?キリトくん」
―2日後―
22層のログハウスでキリトはアスナを連れて、お茶を飲まされていた。
もう一度言う。『飲まされている』のだ。
とてもぷりぷりと怒ったような…呆れたような表情をしたアスナが突然やって来たのだ。その圧力にキリトは追い返すことも出来ず、彼女を家に入れてしまった。
「で…キリトくん、どうして団長の言う通りになったの?」
「これ以上奴らの誘いを受けるのが面倒だったからだよ。だから……というか…どうしてそんなに怒ってるんだ?アスナさん…」
「怒るよ‼︎私が折角追い返そうと思ったのに…!そうすれば……あっ…そう…すれ……ば……」
何かを言おうとしたが、途中で言葉を濁してしまい、アスナは顔を赤くさせて徐々に顔を俯かせていく。
キリトはソファに横になって、感慨に
「ギルド……かぁ…」
するとアスナは、キリトにふとこんな質問を投げかけてきた。
「キリトくんは…どうして、ギルドを避けるの?」
「……」
「【ビーター】だからとか…【ユニークスキル使い】だからじゃないよね?だって、キリトくんの性格は分かっているつもりだし…おかしいもん」
俺も顔を地面に向けて、随分昔のように思えたあの事件を話し始めた。
―1年前―
キリトは困惑していた。
ただ、Modに殺されかけているギルドを助けただけで、お礼をしたいと呼ばれて来たのだが…こんなに歓迎されるものかと思っていた。
「では…命の恩人であるキリトさんに…乾杯‼︎」
「「「「乾杯‼︎‼︎」」」」
「………」
彼らの明るさにキリトはついていけてなかった。
子供の頃からどちらかと言えば、暗いイメージを持っていたキリトにはこういうのが苦手かと言われたら、苦手な方だった。
「キリトさん、本当にありがとう!」
リーダーであるケイタにそう言われて、キリトは「いや…」としか答えられなかった。
「本当にありがとう…キリトが来なかったら…私たち死んでたかも…」
「サチ、相変わらず泣き虫だな」
「うるさいよ、テツオ」
仲が良い…。それがキリトが一番最初に思ったことだった。
それから1ヶ月後、そんな明るい場にも慣れてきた頃、そろそろ自分たちの家を持とうということになった。そのために何度も同じクエストに行ったり、少し難しいクエストに行ったりを繰り返していた。
そんな時、サチが…キリトと一緒にいる時に言い出した。
「ねえ…キリト…一緒に逃げ出そう…。誰にも見つからない場所に…」
「…どうしてだ?」
「だって…どうして私たちこんな目に遭っているの?訳わかんないよ、ただゲームをしていただけなのに…」
サチの心境はキリトにも分からなくもなかった。
いきなりのデスゲーム宣言を受け、死んだプレイヤーも少なくない。
いつも生と死のギリギリの境で戦っていたら…サチだけじゃなくて、誰でも
「誰かに攻略を任せるのはいい。だけど…このまま逃げ続けても何も進歩しないのだけは明らかだ。俺は逃げないよ、サチ」
「…強いね、キリトは」
「強くなんかない。俺は…」
暫く沈黙し、キリトはサチに手を差し伸べた。
「帰ろう。みんな待ってる」
「そうだね、でもキリト…今夜だけ…お願い聞いてくれる?」
そのお願いは一緒に寝てほしい…ということだった。
キリトは構わないと答えたが、異性と寝ることに耐えられるのかともサチに聞いた。サチは「大丈夫」と答えた。
早速ベッドに入ったキリトであったが、中々寝付けなかった。
異性と同じベッドで寝ていることで多少緊張しているのか…。
「ねえ…キリト、今日はありがとう。キリトが私のことを支えてくれるって分かったから…」
「ああ、そう思ってくれるなら嬉しいよ」
彼女は最後に小さく笑みを浮かべて、眠りに落ちていった。
この時まで楽しかった…。幸せだった。愉快だった。
なのに…“あの日”…全てが狂ってしまった。
家具を買うためにクエストに行った時、トラップに掛かったキリトたちはモンスターに囲まれて、容赦なく殺された。
レベルを隠していたキリトにとっては楽勝な相手だったが、サチたちのレベルでは到底太刀打ち出来ないモンスターで、1人…また1人と死んでいった。
そして、キリトが本当に守りたかったサチも…そこで死んでしまった。
悲しみに明け暮れるキリトは大雨の中、ベンチに座っていた。
周りの音が何も聞こえないくらいの大雨。
すると、ストレージになんとサチからメッセージが来たのだ。
キリトはどんなことを言われるのか…怖かったが、それでも恐る恐るそのメッセージを開いた。
『キリトへ
これを読んでる時、私は死んでいるでしょう。
どう…思ってるかな?キリトは…。私が死んで後悔とか…罪悪感に
誰も悪くない。これは定めだったと思えばいいの。
それでね…多分キリトと一緒に居る時に言えないだろうから…ここで言うね。
私、キリトがレベルを隠してるの知ってるよ。何でそんなことしてるのかは分からないけど…私たちのためだってことは信じるよ。
だって、キリトは私の…英雄だもの…。
さよなら、それとありがとう。そして…愛してる』
遺書にも似たような文章を読み終えた時、キリトは激しく泣いた。
こんなに大号泣したのはキリト自身、初めてだった。
大雨の中…キリトは延々と泣き続け、後悔するのだった。
それを聞いていたアスナは言葉を失い、目を大きく見開いていた。
「全て俺のせいだ。ビーターってことを隠してたから…彼らを殺した。俺は罪人だ。最低最悪の…」
俯いたまま、キリトはまた目尻に溜まった涙を拭った。
思い出す度に流れる涙に、飽き飽きとしてしまう。
すると、アスナは突然何を思ったのか…キリトの抱き締めた。
キリトは茫然とするばかり。
「私は死なないから…」
「えっ…」
「だって私は…君が……」
そこまで言って、アスナは更に抱擁を強くした。
キリトも彼女の背中に手を回そうと思ったが、そんな資格は俺にはないと言わせて…彼女にさせるがままにした。
そしてアスナはこう思っていた。
(間違いない。私は絶対…彼を……)