ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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説明会です。マジで原作となんら変わりありません。飛ばして頂いても結構なレベルです。


第24話 破られる封印

夜空の下、キリトとアリスは塔の縁で腰かけていた。

 

「まだ夜は明けそうもないな…」

 

「あと2時間はかかるでしょう。それまではここで気長に待つしかありません」

 

その時、アリスの腹が高く鳴る。それを聞いたキリトは笑いそうになるが、アリスが即座に剣を抜き、首に当てる。

 

「私を嘲笑するなら、その首を飛ばします」

 

それを言われたキリトは笑いをぐっと飲みこみ、「ふぅ…」と息を吐いた。

ただ、腹が減っているのはキリトも同じだった。

 

「確かに…この腹をどうにかしないとな…。…そうだ!」

 

キリトは懐から2つの小さな饅頭を取り出した。それに目を輝かせるアリスをよそにキリトは詠唱を開始する。

 

「システム・コール、バースト…」

 

「待ちなさい!」

 

アリスは声を荒げて、キリトの手から饅頭を奪い取った。

 

「な、なんだよ…」

 

「そんなことすれば、一瞬で黒焦げです!貸しなさい!」

 

アリスはそう言うと、改めて詠唱をする。

 

「ジェネレート・サーマル・エレメント、アクウィアス・エレメント、エアリアル・エレメント…」

 

彼女は3つのエレメントを指にかけ、それらを混合させると、饅頭はまるで小籠包のようにほかほかと湯気を立てながら、蒸されていたのだ。

その光景に今度はキリトが目を輝かせる。そんな彼の気持ちを逆なでするように、アリスは2つの蒸し饅頭を一気に口の中へ入れようとする。

 

「ちょ、ちょっと!」

 

「冗談です」

 

アリスは1つをキリトに渡すと、さっさと自分は口の中へ饅頭を放り込んだ。

キリトも同じように饅頭を頬張る。

まるで肉まんのような芳醇な味に酔いしれるキリト。すかさずアリスに感謝の言葉を述べた。

 

「いやあ、あの饅頭がここまで美味しくなるとはな。流石あの料理上手のセルカのお姉さんだ」

 

その言葉でアリスの機嫌を良く出来ると思っていたキリトだったが、それは全くの検討外れで終わる。胸ぐらを掴まれ、顔を無理やり向かされると思ったら、次に聞こえたのは静かな怒りと動揺を混じらせたアリスの声だった。

 

「今、何と言った?」

 

「え…」

 

「『お姉さん』とは…どういうことだ⁈」

 

口を滑らせてしまったキリトだが、今更釈明しようが遅い。そう考えたキリトは、自身が知っている事を全て話すことにした。

 

「君には…妹がいる、そう言ったんだ」

 

アリスの目は途端に丸くなる。

動揺で目が揺らぐアリスにキリトは更に言う。

 

「全て話すよ、俺の知っている事を」

 

「…話しなさい。しかし、もしそれが私を誑かす世迷言であった場合、その首を切り落とします」

 

「…分かった。まず、君の本名はアリス・ツーベルク。ユージオが生まれて育ったシナット村でイーディス共に暮らしていた」

 

「イーディス殿⁈そんな馬鹿な…!」

 

思わずアリスは剣を握ろうとするが、キリトは強い視線でアリスを見ながら語気を強めた。

 

「話を最後まで聞いてくれ、判断はそれからでも遅くないだろ?」

 

「…ッ」

 

アリスは深呼吸をして落ち着かせると、小さな声で「続けなさい」と呟いた。

 

「けど、君たちは果ての山脈を超えて、ダークテリトリーに入ってしまった。そのせいで整合騎士に連れ去られて、記憶を消されてしまった。ここで重要なのは、今いる君は確かにアリスではあるけど、『別人格のアリス』なんだ。他の整合騎士も…そのように最高司祭に変えられてしまった」

 

「じゃあ、我々整合騎士が天界から召喚された神の使いという話は…」

 

「全くのデタラメだ。都合の良い話を作っただけだ。俺たちは君とイーディス、他の整合騎士の記憶を取り戻すために教会に逆らったんだ」

 

「…今のお前の話を、全て信じたわけではありません。だけど、それだけのために最高司祭様を伏せるのはおかしいのではないですか?」

 

アリスの言葉に覇気はない。

まるで今聞いた話が嘘であってほしいかのように、新たな質問を投げ出した。

 

「…間もなく、ダークテリトリーが攻め入ってくる」

 

「!」

 

「恐らく、最高司祭はあんたら整合騎士に全てを任せる気だろう。だけど、そんな程度じゃ闇の軍勢を押し返すことは出来ない。そうさせないためにも、人界の民にも武器の指南をさせるべきだ」

 

「出来るはずがありません‼︎」

 

アリスは真っ向から否定する。

 

「あなただって…見たのでしょう?この国の上流貴族を…。下卑た考えしか持たぬ彼らが…戦うはずがありません!」

 

「彼らの他にも戦ってくれる人たちはたくさんいる。このカセドラルに集めた武器や防具を渡せば、それなりの戦力になる。だが、これは最高司祭が存在する限り、絶対に実現できない。あいつは…自分の支配に少しでも反対する者を生みたくないからな…」

 

そこまで話して、キリトはアリスを再び見る。

彼女は少し憔悴しているように見えた。

 

「…私に、妹がいるのは、本当なのですか?」

 

改めて聞いてくるアリスにキリトは「ああ」と答える。

 

「セルカ……セルカ……ダメ、やっぱり思い出せない」

 

アリスは壊れた人形のように『セルカ』の名を呟く。

すると、すぅーと涙が流れた。それはアリス自身、気付くのが遅かった。恐らく無意識の現象だろうが、これは記憶を消されても、身体が何かを感じ取ったのだろう。

 

「本当…なんですね…」

 

それが分かったアリスは初めて…涙を溢れ出せ、俯いた。

数分泣いた後、アリスは新たな問いを言う。

 

「この身体を…元のアリス・ツーベルクに返すことは出来るのでしょうか?」

 

「出来る。だが、その時戻るのはアリス・ツーベルクの人格だ。戻った途端、君の人格は消えるだろう」

 

「…そうですか。しかし、借りたものは返さなくてはなりません。ですが…」

 

アリスはキリトの方を真剣な眼差しで見ながら、嘆願する。

 

「アリス・ツーベルクに返す前に…セルカを…シナット村を…全てを見て回りたいです。全てを知って消える…これが、私がする最後の責務です」

 

「…分かった。約束する」

 

すると、アリスは不意に立ち上がり、深呼吸をする。

そして…静かな夜空に向かって声を上げた。

 

「整合騎士アリスは、今日よりその責務を捨て、最高司祭に……ッツ⁈ぐっ⁈」

 

「アリス?」

 

「あっ…がああぁぁぁッ⁈」

 

右目を抑えながら、苦しみもがき始めた。キリトもすぐに立ち上がり、彼女の右目を見る。確かに薄く赤く充血しているように見える。

しかし、それはすぐにただの身体の不調ではないことが分かった。彼女の右の瞳の中には、バーコードらしきものと『Code:871』と書かれていたのだ。神聖術の術式でも言葉でもないため、これは最高司祭が仕掛けたものではない。

 

「キリト…右目が…焼ける…。痛い……痛いぃ…」

 

再び涙を溢れさせるアリス。今度は痛みによるものだが…。

 

「それ以上、教会に反抗する事を考えるな!目玉が吹っ飛ぶぞ!」

 

この現象を見たのは2度目だった。

ユージオもライオスたちに斬りかかった時に、右目を失っていた。

今から考えてみれば、あれは禁忌目録に逆らわないための障壁だったのだろう。しかし、それを破ったためにユージオの右目は一旦失われた。

今、それがアリスに起きようとしている。

 

「これも……最高司祭猊下が……」

 

「違う、最高司祭をも見下ろす者の仕業だ」

 

「そんな…酷い…。記憶を消され、誤った認識を強制されているのに…今度は意志すら強制されるなんて……。確かに…私は他者の身体を占有する、醜い存在だ…。しかし…ッ」

 

アリスは痛みのあまり、キリトの肩を徐々に強く握り始める。

しかし、今度はアリスの更なる怒声が響いた。

 

「私は人形ではないッ‼︎身体は汚くても、心はあるッ‼︎意志をも強制されるなんて…私は絶対にイヤだッ‼︎」

 

「アリス…」

 

アリスは涙でぐちゃぐちゃの顔でキリトに申し出をする。

 

「キリト…私の身体を…暴れないように抑えて欲しい…。たの…むッ」

 

言葉も徐々に続かなくなっている。痛みが激しさを増している証拠だ。

彼女の嘆願を無下に出来ないキリトは「分かった」とだけ言って、彼女を抱き締める。

そしてアリスは息を吸うと、天に向かって叫んだ。

 

「最高司祭アドミニストレータ…、名も知らぬ者たち……私は………あなたたちとッ…戦いますッ‼︎‼︎」

 

途端に彼女の右目は弾け飛んだ。キリトの頬にまで血が飛び、その勢いでアリスは気を失ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷に下半身が埋まった状態から、イーディスは紫幻剣を振るうことで脱出した。ようやく拘束から解放されたイーディスだったが、気分は全く晴れていない。

まず第一に…最高司祭への明らかな疑念。

更に右目から流れる血涙と痛みのイーディスは顔を歪める。

だが、その表情はユージオとの戦いよりも…覚悟の決まったものに変わっていた。

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