ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第27話 竜機兵

天井から鎧を身に纏ったユージオを見たキリトは彼から視線を外せなかった。彼がキリトを見る目に…以前のような優しさは一切見えない。

延々と暗い…底なしの瞳だった。

アドミニストレータはキリトの反応を楽しんでいるのか、被虐な笑みを浮かべる。

 

「どう?久しぶりの再会は?坊やも…アリスちゃんやイーディスちゃんも」

 

彼女たちはそう言われても、ユージオのことをあまり知らない…いや、覚えてないため反応に困ったが、キリトには絶大だった。ユージオが記憶を消され、整合騎士に変えられた事実に悲しむと同時にアドミニストレータに対して凄まじい怒りが沸き起こる。

 

「アドミニストレータァァッ‼︎‼︎」

 

怒りのままに彼女に突っ込んでいく。

突進SSソニックリープでアドミニストレータの身体に斬撃を与えようとしたが、刃が彼女の身体に当たる直前で止まる。障壁みたいなものが彼女の前に立ち塞がっている。

 

「くっ……おおおおおおおおおおおぉ‼︎」

 

力を最大まで込めるが、最後には弾き返されてしまう。

もう一度向かおうとするが、それはアリスとイーディスに止められる。

 

「待って、今は無理よ!落ち着いて…‼︎」

 

彼女らの説得が無ければ、キリトは自らの命を捨ててでも特攻するところだっただろう。キリトは一旦息を吐き、アドミニストレータに叫ぶ。

 

「アドミニストレータ‼︎ユージオに…何をしたッ⁈」

 

「何って…彼が欲しいもの…私の愛をあげただけよ?それに…私の愛を求めたのは、彼自身。私のせいではないわ」

 

「そんなわけない‼︎ユージオは…っ‼︎」

 

キリトは必死にユージオが整合騎士になってないと否定の言葉を叫ぶ。

しかし、それを見ていたユージオが漸く口を開く。

 

「…最高司祭様、僕は、何をすれば良いのでしょうか?」

 

「!ユージオ…」

 

「ふふふ…。ユージオ、あそこにいる黒髪の少年とアリスちゃんとイーディスちゃんを始末しなさい。そうすれば…あなたに私の愛を存分にあげるわ」

 

それを聞いたユージオは、ゆっくりと冰龍の剣を抜いた。

キリトはそれでも必死にユージオに語りかける。

 

「ユージオ!もうお前の目的は達成出来るんだぞ⁈アリスもイーディスも…ここにいるんだ!」

 

「…彼女たちは誰だい?それに…僕は最高司祭様から授かる愛があれば良い。その愛を手に入れるために、僕は君たちを斬り伏せる」

 

キリトは変わりきったユージオに言葉を失う。

意気消沈しているキリトたちに、チュデルキンは調子に乗って言葉を重ねる。

 

「そうだそうだ‼︎こんな奴ら、私がやらなくても騎士1人で十分だっ‼︎やってしま……がはぁぁっ⁈」

 

悪態を重ねるチュデルキンだったが、背後から彼の腹に剣が突き刺さる。それを行ったのは…ユージオであった。驚愕の表情で後ろを見るチュデルキンに、アドミニストレータは冷たく言い放つ。

 

「チュデルキン…あなたはもう要らない。それどころか、騎士たちもそこまで要らないのよね…。今まで私のためにご苦労様、もう休むと良いわ」

 

「そ、そんな……猊下……」

 

ユージオは腹に刺した剣を振り、壁の方へと投げ捨てる。

アドミニストレータの冷徹な所業を目の当たりにした3人は更に言葉を失う。しかし、キリトはグッと力を込めて彼女に叫ぶ。

 

「あんたにとって…この世界は…何なんだ⁈」

 

「この世界?そんなの…私のためにある『もの』でしょ?」

 

世界を物扱いするアドミニストレータにキリトだけでなく、アリスも怒りに忘れて怒号を言い放った。

 

「最高司祭‼︎そんな世界は…あなたのせいで滅びようとしてる‼︎ダークテリトリーからの侵攻をあなた1人で止められるとでも⁈」

 

それを聞いているアドミニストレータはため息を吐きながら、アリスの問いに答える。

 

「ダークテリトリーなんて…その気になれば今からでも潰せるわ。しなかったのは面倒なだけ。それに…もう彼らを潰す手も考えてある。…あなたたち騎士やこの国の住民を使った、最高の兵器でね…」

 

淡々と話すアドミニストレータの言葉に、この国がどうなろうが…民がどうなろうが知ったことはないということが瞬時に分かる。

更にアリスが叫ぼうとした時、キリトが唐突にこんなことを言い出す。

 

「もし…この世界そのものが消えるとしたら、どうする?」

 

「…ん?」

 

流石に今まで面倒そうに答えていたアドミニストレータも、反応が変わる。

 

「あんたよりも高い位にいる住人…天界の神々なんてそんなレベルじゃない。この世界そのものを変えられる程の存在たちは、1つボタンを押すだけで全てを消し去れるんだ!それはアドミニストレータ、あんたも例外じゃない」

 

「……じゃあ、私にどうしろと?」

 

「今すぐ、支配をやめ…この世界のために最善を尽くすんだ!そうすれば…」

 

「ぷっ……あっはははははははははは‼︎‼︎」

 

キリトの言葉を遮り、アドミニストレータは高らかと笑う。

 

「坊や…分かっているわよ?向こう側の人間でしょ?あなたが来たのはこの世界を自由がままにする私に業を煮やしたのかしら?」

 

「…俺も、どうしてここに来たかは分からない。だけど、あんたを止めに来たことだけは合っている」

 

「じゃあ坊やは考えたことあるのかしら?あなた達向こう側の世界も更なる上位者によって作られた世界で、消されないように彼らの満足の行くように振る舞っているのではないかって」

 

「そ…それは…」

 

「無いわよねえ、それ故にあなたが私の作り出した世界にとやかく言う権利はない。この足は他者を踏みつけ支配するためにあり…」

 

そこでアドミニストレータの空気が一気に変わる。

長く伸びた髪の毛は派手に揺れ、眼力も凄まじく強いものになる。

 

「断じて膝を着くためにあるのでは無いッ‼︎」

 

「ならば…!あなたは偽りの玉座で世界が滅びるのを待つだけか‼︎」

 

「さっきも言ったじゃない?もう最高の兵器は完成していると。感謝しなさい、あなたたちが初めて見るのだから。さあ…!姿を現すといいわ!」

 

アドミニストレータは手に持っているパイエティモジュールを掲げ、記憶解放術の術式を唱えた。

 

「リリース・リコレクション‼︎」

 

途端に壁に飾られているあらゆるモンスターの素材、武器が鎖から放たれ、集合していく。更にアドミニストレータは楽しみを増すために、ユージオのモジュールとも共鳴させ、冰龍の剣とユージオの身体を合体させる。

 

「ユージオ‼︎」

 

キリトは溜まらず突っ込んで行くが、アドミニストレータが掌から放った風のエレメント3つが順にキリトを襲い、吹き飛ばした。

 

「ぐあっ‼︎」

 

同じようにイーディスもアドミニストレータの横に瞬時に動き、剣を抜く。しかし、壁に飾られていた剣の1つがイーディスの一撃を防御し、その隙にアドミニストレータの強烈な蹴りが彼女の鎧を砕きつつ、吹き飛ばす。

 

「ごふっ…⁈」

 

「イーディス殿‼︎」

 

アリスは倒れたままのイーディスの元へ急ぐ。

その間にユージオの身体は巨大な剣となり…同じように集合していく。

そして…出来上がった『もの』にキリトたちは目を丸くさせた。

アドミニストレータの背後に聳え浮く『物体』はまるで翼を生やす龍の容姿だったが、身体は鉄などを纏っており、脚先は鋭い剣などが使われている。

しかし、何よりも驚きなのがその巨体だ。キリトたちを完全に見下ろすレベルの大きさであり、一度の術式で完成出来るような物には到底見えなかった。

 

「これが私が作り出した最高の兵器…名前は【竜機兵】、とでもしようかしら?」

 

「竜機兵…」

 

最後にアドミニストレータは赤色のパイエティモジュールを竜機兵の胸に装着させる。途端に兵器の目は緑色に輝き出し、耳をつん裂くような咆哮が辺りに響いた。そして…標的をキリトたちに定める。

 

「はあああぁッ‼︎」

 

アリスはイーディスを置いて、単身突っ込んで行くが、アリスの神器でも奴には傷1つ付かなかった。付くどころか、意図も簡単に弾かれ、大きく隙を晒してしまう。その間に奴は口元に炎を溜めており、一気も放射する。

後ろでイーディスが倒れているため、アリスは渾身の力で防御する。

 

「アリスッ‼︎イーディスッ‼︎」

 

炎の放射は十数秒にも及んだ。終わった後に残った煙には1つの影が見える。それは間違いなくアリスのものだったが、黄金の鎧は熱で溶け、身体中に大火傷を負っていた。

 

「これしき……のことで…私…は…っ…」

 

強がりを見せるアリスだったが、力なく倒れてしまう。

それを見たキリトは再び激昂し、アリスと同じように竜機兵へと乗り込む。しかし、一撃与えた剣撃は意味を成さず、大きな後ろ足でキリトの腹に突き刺し、アリスたちと同じ方向に投げ飛ばした。

 

「がはっ…!」

 

キリトは溜まらず吐血し、倒れたまま大きな血の池を作り出す。

イーディスはその惨状に言葉を失う。

キリトの実力はよく知らないが、アリスの実力を持ってしても奴に傷1つ付けられないことに…イーディスは絶望する。

その様子を上で見るアドミニストレータはクスクスと笑う。

竜機兵は3人に留めを刺すために、今度は腕に雷撃を纏わせる。

しかしイーディスも諦めていない。

剣から濃霧を発生させ、目眩しを図る。

その隙に2人を抱えて、一旦離脱しようとしたが…。

 

「あぐっ⁈」

 

足に灼熱の痛みが走り、そのまま倒れてしまう。

振り向くと、奴がお構いなしに炎のブレスを広範囲に走らせていたのだ。それがイーディスの左足を焼き、動きを封じてしまったのだ。更に炎によって、霧も一瞬で晴れてしまう。

イーディスはそれでも剣を握り、一矢報いるつもりで向かおうとした時。

 

『キリトが胸元にかけている短剣を地面に刺すのじゃ‼︎』

 

「え?」

 

『いいから早くッ‼︎‼︎』

 

誰かも分からない声がイーディスの耳に響くが、迷っていられない。

ほぼ意識のないキリトの胸元から血がべっとり付いた短剣を取り、無我夢中で地面に突き刺した。

そして…竜機兵が渾身の雷撃を纏った腕を振り下ろしたのもほぼ同時だった。ガキィンと大きな金切り音が部屋に響いたが、それはイーディスたちには当たってない。

 

「こ…これは…⁈」

 

「ふふふ…やっと出て来たわね…」

 

アドミニストレータはまるで分かっていたかのように呟く。

イーディスの後ろに1つの扉が生成され、そこから金色の雷撃が竜機兵を襲った。耐えようとする奴だが、威力に負けてそのまま吹き飛ばされ、身体を痙攣させて動かなくなった。

そして…扉から現れたのは、カーディナルだった。

 

「久しぶりじゃの、アドミニストレータ…!」




【補足】
『竜機兵』
ソードゴーレムに代わる殺戮兵器。ありとあらゆる竜の神器、素材を使用し、術式で完成された人造古龍。全ての属性を使うことが可能で、身体は凄まじい硬度を誇っている。更に空中歩行も可能で、遠近双方隙がない。
モチーフは時系列で初代モンハンよりも昔の設定『竜大戦時代』に古代人が作り出した人造兵器である。別名『イコールドラゴンウェポン』
今作ではその竜機兵にユージオの剣と身体が取り込まれている。
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