ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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第30話 転廻する力

刀身の半分が黄金色に輝いてる剣を軽く一振りすると、瀕死の重傷を負っていたアリスとイーディスの傷が一瞬にして回復する。

これはキリトもほぼ意識せずに行っており、彼自身も気付いていない。

 

「…流石に私もイラついてきたわ。どうしてそこまで戦うのかしら?既に結果は見えてるというのに」

 

「結果はどうでもいいんだ…。その過程こそが重要なんだ」

 

キリトは変化が訪れている黒剣を向け、ゆっくりと構える。

 

「いいわ、ならもう少しだけ付き合ってあげる。だけど…簡単には死なせないわよ?いくら許しを乞おうが、死にたいと嘆願しようとね」

 

「そんなのどうということないさ、今まで俺が積み上げてきた『罪』と比べればな…」

 

そう呟き、キリトはアドミニストレータに真っ直ぐ向かっていく。

最初に重撃SSアバランシュを放ったが、アドミニストレータの持つ白銀の剣で意図も簡単に弾き、6発の連撃がキリトの腹を貫いた。

あまりの早さにキリト自身、何度刺されたのかも把握できてない。

だが、アドミニストレータはご丁寧にも説明してくれる。

 

「どう?細剣6連撃SSクルーシフィクションよ」

 

(⁈今…ソードスキルって…!)

 

キリトは胸と腹に付いた傷を6つ確認しながらも、悠長にはしていられないと思えた。生半可なソードスキルでは簡単に返されて反撃される上に、アドミニストレータは秘奥義ではなくソードスキルを使ってくる。

下手に時間をかけていると…こちらがやられると踏んだキリトはまだ誰にも見せてないソードスキルを使用する。

 

(重2連突撃SSヴォーパル・スラッシュなら…どうだッ!)

 

「せやああああああああぁぁッ‼︎」

 

一撃目は髪の毛を数本掠めながら避けられるが、2発目が返ってくると思っていなかったのか…アドミニストレータの腹を捉えた。

と、思われたが…剣先が当たる直前で軽やかにいなし、キリトの腹に一閃する。この一撃に流石にキリトも耐えきれず、ソードスキルの勢いのまま前のめりで倒れて吐血する。

 

「単発SS居合」

 

「がはっ…ごふっ…!」

 

「この世界を作ったのは私なのよ?こんな技を作るくらい…なんてことないわ」

 

「そんな…馬鹿な…」

 

「さて…お遊びもここらで良いかしら?そろそろ死んでもらうわ」

 

アドミニストレータは今度は闇色のエフェクトを剣に纏わせると、キリトに高速で近付いてオリジナルのソードスキルを解き放った。

 

「無限連撃SS…絶死‼︎」

 

果てしない数の連撃がキリトを襲う。

最初の数撃はどうにか弾いていたが、あまりの高速の突き攻撃に対応しきれずに、まともに攻撃を受け続けてしまう。

 

「がはッ‼︎がっ…ぐあぁぁッ⁈」

 

「ふははははははは‼︎どうした小僧‼︎その程度なの⁈」

 

無限にも思える連撃を受け続けるキリトの意識が徐々に遠くなっていく。剣を握る力もほぼなく、ただ奴の攻撃を受け続けるだけの人形へと成り下がっていた。

アドミニストレータはこのまま止めを刺そうと、一際強く剣を突いたのだが、それはガキンと金属音を奏でて止まる。何事かと思えば、キリトは輝きを半分だけ帯びる黒剣でその一撃を防いでいたのだ。

更に何故か身体中の傷もすぐに癒えていく。

先程の事象といい、アドミニストレータでも理解しきれない事態が続出している。そうだとしても、アドミニストレータが優位なことに変わりはない。それなのに抵抗を続けるキリトに、彼女は問う。

 

「何故だ?何故そうやって…愚かにも運命に抗うのだ?」

 

「抗うことが……」

 

キリトは剣を振るい、アドミニストレータの肌に傷を付けた。

傷を付けられたことも驚く要因ではあったが、それよりも驚いたのは突然キリトの後ろから出てきた剣だ。先程までアドミニストレータの剣を受けていたものとは全く別の剣が突然後方から姿を現したのだ。

それは白色の刀、刀身には稲妻模様が入っている。

この剣をキリトは忘れるはずがない。SAOで苦楽を共にした『白雷剣エンクリシス』だ。

問題はどこから出したか、なのだが…キリト自身も全く把握してない。

 

「抗うことが、俺がここで生きて…立っている理由だ」

 

「…ッ、ふざけるな…!ここは私の世界だッ‼︎お前如き何の権限も持たないクズが私の世界を汚すことは断じて許さんッ‼︎」

 

アドミニストレータはいつも以上に強い語気でキリトに慟哭するが、それでもキリトの変化に動揺を隠せ切れていない。

 

「膝を付けッ‼︎首を差し出せッ‼︎恭順せよッ‼︎」

 

アドミニストレータを纏う空気が一気に変わる。

剣から漏れ出る欲望のオーラが身体にも纏い、アドミニストレータの力が更に膨れ上がる。

 

「すぐに片付けてやるッ‼︎お前如き私に……なっ⁈」

 

アドミニストレータの言葉が突然動揺で完全に止まる。

それはキリトの身体を覆う蒼色の雷撃だった。足元から始まった電撃は徐々に上半身へと移動し、黒色のコートにも雷撃の模様が入る。

これはSAOに存在したオリジナルスキル【纏雷(てんらい)】だ。

キリトはその事に気付くと、ふっと笑みを浮かべた。

 

「何が、『私の世界』だ…。あなたはただの簒奪者だ。世界を愛さないお前に、支配者の資格はない!」

 

キリトは懐かしさを覚えながら、2つの剣を構えた。

まさに今の姿は【二刀流】だった。

 

「うるさい…うるさいッ‼︎うるさいッ‼︎‼︎貴様如き、すぐに片付けてやるッ‼︎」

 

アドミニストレータの剣が一段と太くなる。それから先程と同等の速度で振り下ろしてくるが、それは空を切った。

 

「!」

 

この空振りが…本格的な戦いの幕開けとなった。

キリトは即座にアドミニストレータの背後に移動し、剣を振る。

何度となく剣と剣ぶつかり、ぶつかる度に凄まじい風圧が発生する。その圧と剣がぶつかる金切り音に意識を失って倒れていたユージオがゆっくりと目を覚ます。

 

「う……」

 

(僕は…一体どうなって…)

 

頭を振りながら意識を戻そうとしたが、すぐに剣がぶつかる風圧で吹き飛んでしまう。何が起きたのか分からないユージオがキリトを見た時、思わず彼の変化に言葉が出せなかった。

キリト自身もユージオが目を覚めたことに気付いてはいたが、目の前の敵との戦闘で彼に声をかける余裕などない。

アドミニストレータは【纏雷】によって強化されたキリトの動きに少し遅れながらも対応していた。だが、防戦ばかりで中々攻撃を繰り出せないアドミニストレータ、苛つきばかりがどんどん膨れ上がる。

 

「舐めるなァッ‼︎小僧ッ‼︎」

 

ここでアドミニストレータの本気の一振りがキリトの剣にぶつかった。

 

「⁈」

 

凄まじい剣圧にキリトが一瞬仰反る。

その隙をアドミニストレータは見逃さない。剣を即座に大剣へと変化させ、一気に振り下ろした。剣を交えて防御姿勢を取るキリトだが、アドミニストレータの一撃は先程とは比べものにならないもので、両腕の骨にヒビが入り、悶絶する。

 

「ぎっ…!」

 

膝を付いてしまい、徐々に刀身がキリトの首元へと迫ってくる。

その様子を見ていたユージオも剣を握り、向かおうとした。

しかし…。

 

「来るなッ‼︎‼︎」

 

キリトはユージオに向かって叫ぶ。

 

「でもキリト…!このままじゃキリトが…!」

 

「お前はそこでアリスたちを守っていろ…!こいつは…俺が倒す…!」

 

キリトの声にユージオは慄いてしまう。

いつもの優しいキリトの声に一切の躊躇や後悔はない。ただ自分の信念に突き進んでいるだけだった。

 

(それに比べて…僕は…っ)

 

ユージオは自分がアドミニストレータの手に落ちたことを激しく後悔する。キリトたちにも多大な迷惑、心配をかけたことだろう。

そんなことを思っていると、ユージオの心を見透かしたかのようにキリトがもう一度叫んだ。

 

「それからな、ユージオ!こいつを倒したらお前は一回殴る‼︎」

 

「え?」

 

「…親友としてな…!…⁈ぐっ…ぐぅぅ‼︎」

 

だがアドミニストレータはそんな会話には毛頭興味なく、キリトを仕留めようと躍起になる。

 

「そんな餓鬼みたいな話をしていて…私を倒せるのかし…らぁッ⁈」

 

キリトは力を込めようとするが、腕に力が入らない。

そんな時、黒剣が再び輝き出した。何事かと思った時、腕の痛みは一気に消えて、先程よりも力を増した。

 

「くっ…お、おおぉッ‼︎」

 

「⁈な、何ッ!」

 

あれ程の重症だったキリトの回復にアドミニストレータはまたもや驚きを声を上げる。だが、その直後、彼女は見抜いた。キリトの超回復、そして剣の創造、更に覚醒の真実を…。

不気味とも表現できない程下卑た笑いを浮かべたかと思えば、途端にアドミニストレータの表情が怒りに塗れる。

 

「私以外がこの世界を支配するなどッ‼︎絶対にさせないッ‼︎もう面倒ね…このカセドラルごと葬ってやるッ‼︎」

 

アドミニストレータは剣を再び元の形状に戻すと、今度は天に向ける。

その時キリトたちには見えていないが、カセドラル上空では凄まじいエネルギーが集約しており、それを解き放とうとしていたのだ。

キリトはアドミニストレータの行動にすぐに気付き、ユージオに向かって叫んだ。

 

「ユージオ‼︎冰龍の剣で、アリスたちを守ってくれッ‼︎全ての力を使い果たすくらいの防御技を‼︎」

 

「キリトはどうするんだ!そんな特大の技が来るんだとしたら、キリトが耐えられないんじゃ…!」

 

「俺のことは心配するな!いいから早くしろッ‼︎」

 

ユージオはキリトに言われるがままに、アリスたちの方へと向かう。

アドミニストレータは勝ち誇ったかのように言う。

 

「私の技を防げたとしても…生きては帰さない…。あなたもよ、向こう側の坊や…どうやって私の技を受け切るつもりなのかしら?」

 

キリトは彼女からの問いに一切答えなかった。

今のうちにキリトは2つの剣に力を込めて、相手の攻撃を待っていたのだ。それを読み取ったアドミニストレータは笑いながら…その技を発動させるのだった。

 

「受けてみなさい…!冥龍刀の真の力を…!リリース・リコレクション‼︎」

 

途端にセントラル・カセドラルの頂上が赤黒く輝き始める。

その輝きは夜であったため、あらゆる住民に見られ、彼らを恐怖の底に叩き落とした。

 

「堕ちよ…【冥鎚】ッ‼︎」

 

集約された黒雷の塊が巨大なブレスのように天から降ってくる。それは悠にカセドラルの外壁を破壊しながら、キリトたちに向けてやって来る。それを見るユージオは口を閉じられなかった。

キリトは一息吐くと、2つを剣を構える。

そして…渾身のソードスキルを発動させた。

それは剛撃SS蒼雷撃だった。しかし、その威力はSAOとは比較出来ない。上空へ剣を振り上げた瞬間、蒼白色の竜とシルエットがはっきりしない龍の翼脚が交わり、アドミニストレータの一撃と激しくぶつかる。

 

「ぐっ……せやあああああああああああああァッ‼︎‼︎」

 

激しく衝突を繰り返す技と技…。

ほんの数秒だけ繰り返した衝突だったが、すぐに激しく爆散し、セントラル・カセドラルの100階から75階を吹き飛ばすのだった。




補足
『アドミニストレータが使う神器:冥龍刀』
素材元は暗黒界に存在していた、常に身体中から黒い雷を放出し、近付くだけでも死に至る強大な龍。しかし、アドミニストレータの手で回収され、強力な神器に変換される。
武装完全支配術『堕雷』。
黒い雷を落とせる技で、その威力はどの神器にも負けない。更に対象は焼かれるだけでなく、冥雷という特殊な属性で、神聖術、武装完全支配術、および記憶解放術の使用を完全に遮断する。
記憶解放術『冥鎚』。
超巨大な黒雷を落とす技。これには発動まで少し時間がかかるデメリットがあるが、発動したら最後止まらない。威力はセントラル・カセドラルを全壊させるほどで、この技だけは全く別の性質で、黒雷で《焼く》のではなく、その高温で《溶かす》ことに特化している。更に範囲が膨大であるため避けることは不可能に近い。
元ネタはフロンティア産モンスターの冥雷竜ドラギュロス。


次回、恐らくですけど、ようやくキリトの黒剣に関する補足説明が出来ると思います。
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