ソードアートオンライン Monster Hunter World 作:GZL
アドミニストレータの最期を見届けた4人だったが、それと同時にキリトが思わず呻き声を上げる。今まで蓄積されたダメージなどが戻ってきた感覚が襲い、思わず声を上げてしまった。
「キリト…‼︎アリス、キリトに治癒術を…手伝ってくれッ‼︎」
ユージオはキリトの失われた左腕から出る出血を止めようと、アリスは身体全体に出来ている火傷や傷を治そうと必死になって治癒術を詠唱する。しかし、いくら回復しようと、それらが無駄なことをキリトは知っていた。
「やめておけ…俺は…もう……」
「黙っていなさい!キリト…あなたは…これからも必要なんです‼︎これからの戦争に備えて…戦争後の人界を守る者としても!」
有難い言葉を貰うが、キリトは笑いながらこうも言った。
「もう…分かってるだろ…?俺は、この世界の人間じゃない…。そこまでして…助ける必要は…」
「「ある‼︎」」
アリスとユージオはほとんど同時にそう叫んだ。
「キリトがどこの世界から来ようと…僕の相棒で…英雄だッ‼︎そんなキリトを死なせるわけにはいかない‼︎」
必死になって傷口を塞ぐ2人だが、キリトの身体はどんなに治癒しても癒えることはなかった。天命残量を確認しようとしたユージオがキリトのステイシアの窓を開いた時、絶句した。
「こ…これは……」
ユージオが見たもの…それは、天命の上限値から凄まじい勢いで減少していくものだった。本来、天命の総量が減ることはあっても、上限値から減っていく事象は見たことも聞いたこともないユージオは、狼狽するばかりだった。
「…これが…俺の剣のデメリットさ…。アドミニストレータと戦っている時に気付いたよ…」
要するにキリトの黒剣は能力を使用するたびに自らの天命を捧げながら使用していたのだ。
「あいつの馬鹿でかい一撃を抑える時にもう…天命の上限値は最低レベルまで減少していたんだ…」
「それなら…それならどうして僕を助けたんだ⁈」
ユージオは思わずキリトの胸ぐらを掴んで叫ぶ。
その目に一杯の涙を溜めて…。
「僕は…アドミニストレータの誘惑に負けて…キリトたちを苦しめた‼︎僕を救う必要なんかない筈だ‼︎」
ユージオの叫びにキリトは笑いながら、懐のポケットからモジュールを取り出した。既にヒビが入っており、いつ砕けてもおかしくない状態だが、キリトはそれをユージオに見せる。
「それは…」
「俺の方こそ…馬鹿だよ…。これに触れるまで…何もかもを忘れていたんだ…。あの日の思い出を…」
キリトがそう言うと、ユージオの手にモジュールを触れさせる。
「アリスとイーディスも…触るんだ…。恐らく…2人にはこれが…奪われた記憶を見る…最後の機会になるだろうから…」
それを聞いた2人も思わず、モジュールに手を触れた。
途端に3人に流れ込む記憶の断片。
3人が見たもの、それは…幼き頃の自分たちだった。
ギガスシダーの木の根元で昼食を摂る風景、シナット村で鬼ごっこをして遊ぶ風景、そして…果ての山脈に探検に行く風景…。
そこで…何故アリスとイーディスが整合騎士に連れて行かれたのか…その時、キリトとユージオは何をしていたのか…何もかもが分かった。
気付けばアリスとイーディスは懐かしい思い出に涙を流し、ユージオは呆然とするばかりであった。
「…分かっただろ?俺は…あの村で一緒に育った1人だったんだ…。…嘘ついて…悪かったな…」
そう言うと、ユージオはキリトの傷付いた身体がどうなろうと知らずに、思いっきり掴み上げて怒気を込めた声を放った。
「だったら‼︎尚更死ぬなッ‼︎‼︎」
「ユージオ…」
「それなら…キリトは僕にとってもっと重要な存在だッ‼︎一緒に生きてきた親友を失うところなんて……もう見たくないんだッ‼︎」
その言葉を聞いても…キリトは心の中で「無理な相談だな…」とだけ思った。もう身体は限界だ…。アリスが行なっている治癒術が止まった途端に…彼の身体は消滅するだろう。
その前に…と、キリトは最後の力を振り絞り…輝きを失いつつある黒剣を握り…アリスの近くに置く。
「俺たちのために…自らの剣を砕いてくれた…アリスに…この剣を…。この剣は…まるで…運命を転廻するかのように…力を発揮する…。アリスの想いにも…応えてくれるはずだ…」
「そんな…そんな遺言みたいばことを言わないでください‼︎あなたは…約束したでしょう⁈私の記憶を戻す前に…その村に…妹に…セルカに会わせるとッ‼︎」
アリスは必死にキリトの命を繋ごうとするが、限界が近付いていた。
アドミニストレータが使った技や回復のために空間神聖力がほとんどないに等しく、今行ってる治癒術も…もう数分と持たない。
「イーディス…正直…俺は君のことをよく知らない…。だけど…2人のことを…頼んだぞ…」
涙を拭い、イーディスは頷いた。
「ええ…分かった」
「何を言ってるのです!イーディス‼︎彼は…キリトは、死なせませんッ‼︎」
アリスの叫びのすぐ後…アドミニストレータが取り出したシステムコンソールから…声が轟いた。
『こちらラース!聞こえるか⁈』
その声に思わず振り返る3人。キリトは耳だけを傾けていたが、誰なのか…全く見当がつかなかった。
『キリトくん‼︎そこにいるか‼︎いるなら返事を…!』
「!き…くおか…」
次に聞こえた声の主は…菊岡だった。声を上げようとしたが、舌が回らない。その代わりに…ユージオが菊岡の応答に応える。
「だ…誰?どうしてキリトのことを…」
『そこにキリトくんがいるのか⁈』
「…誰か分からないけど…キリトを助け…」
『キリトくん‼︎よく聞け‼︎アリスという少女を探し出すんだ‼︎そしたら…』
ユージオの言葉を遮り、菊岡は叫んだ。それを聞いたユージオとイーディスは思わず顔を合わせる。
目の前にアリスがいて…何故彼らがアリスを探しているのか…皆目見当も付かなかったが…アリスにはすぐに分かった。
キリトが言っていた言葉も、同時に思い出した。
『違う、最高司祭をも見下ろす者の仕業だ』
今聞こえる声は…アドミニストレータをも手駒にする者たちの声だと…。それが分かった途端、今まで溜まりに溜まった怒りが爆発した。
「あなたたちがッ‼︎‼︎キリトをッ…私をッ…イーディスをッ、いや…この世界を狂わせたッ‼︎あなたたち…神々が…アドミニストレータの行為を黙認したせいで…キリトが…死にかけているんですッ‼︎責任を取ってくださいッ‼︎」
アリスの怒号が木霊してすぐに…別の人物の声が響いた。
『キリトくん⁈大丈夫⁈返事してッ‼︎キリトくんっ…キリトく…ッ‼︎』
女性の声は即座に耳をつん裂く音と共に途切れ、コンソールからは何も聞こえなくなった。
「アスナ…」
キリトがそう呟くと同時に…アリスの治癒術も終わる。
「キリトッ‼︎」
身体中から光を発しながら…今にも消え入りそうなキリト。
そんな状況でも…キリトはユージオの胸を掴み…最期にこう言った。
「ユージオ…この…悲しい世界を…絶対に…守り切るんだぞっ…!」
途端にキリトの腕が力なく倒れ、意識も消える。
アリスは「ダメ…!消えないでくださいッ‼︎」と叫ぶも…彼の身体は…そのまま空彼方へと飛散していった…。彼らの思い出が詰まった…モジュールと共に…。
そしてユージオは…涙で頬を濡らし…鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、天に向けて…叫ぶのだった。
「キリトーーーーーーーーーッ‼︎‼︎」
【補足】
キリトの黒剣:『転廻の剣』
シナット村に刺さっていた英雄の剣、それとギガスシダーの天辺の巨大な枝を使用して作られた黒い潤沢の長剣。
ギガスシダーの記憶と凡ゆるものを蝕み、食らう黒龍の記憶が入っている。共通能力で、相手の心意や属性を吸収・放出できる。ただし、あまりに強大な技や攻撃を吸収する場合は自身の天命上限値を代償にしなければ、吸収出来ない。
武装完全支配術:『
『転廻の剣【混沌状態】』
アドミニストレータ戦で、刀身の右半分が黄金色に輝いている状態のことを指す。これはキリトの想いに剣が答え、更なる力を発揮したものである。追加効果で、キリトが今まで戦い…見てきた剣を全て作り出すことが可能になる。キリトは戦闘で『白雷剣エンクリシス』しか使っていなかったが、他にも様々な剣を作り出すことが出来る。しかし、これにも天命上限値の減少が伴う。先程の武装完全支配術よりも早い速度で減るため、長期戦には不向きである。
最後にキリトの剣が元の錆びた状態に戻ってしまったが、これにはきちんと理由があります。それはまた後日…説明させて頂きたいと思います。
元ネタはココット村のヒーローブレイド、サンブレイク参戦が決定した黒蝕龍ゴア・マガラです。1番最初…構想段階でもう決まり切っていました。だから…サンブレイク参戦に合わせたのではない、とだけは断言しておきます。
因みに記憶解放術の記載がないですが、これはまたいつか…書けたらいいなと思っています。
はい、最初にも記載した通り第3章…終幕です。
次回から第4章ですが、まだ構想をちっとも練っていません。なので…暫く投稿が止まると思います。楽しみに待って頂けると幸いです。