ソードアートオンライン Monster Hunter World   作:GZL

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ここから第4章です。
私の概算では第5章で完結にする予定です。



アリシゼーション編 第4章 無限の戦い
第33話 戦いの爪痕


優しい陽光が地面、木々、湖を照らす。

その湖の畔にアリスは腰掛けていた。央都では感じることが出来なかった優しい世界を…瞬きすることせずにずっと見詰めていた。

しかし…。

 

「おい、あそこにいるのは罪人のアリスじゃないか?」

 

ゆっくりと左目を後方に向けると、湖から魚を獲ろうとやって来たシナット村の村民が2人いた。その視線はまるでゴミでも見るかのように蔑み、軽蔑している。

 

「そうだな、どうやって抜け出したか知らんが…ま、いずれルーツ様に神の天罰として、殺されるだろうぜ!」

 

そう言って男たちは下品に笑う。

あまりに低俗な会話にアリスはまるで興味を示さなかった。むしろ…関わる方がアホらしかった。だが、それを知ってか知らずか…男たちはアリスの横を通る際に荷物をわざと彼女の身体にぶつける。

それでもアリスは何の反応も示さず、彼らと目も合わせようとしなかった。

 

「少しはなんか言えよ、この……」

 

男が怒鳴ろうとした時、木々が激しく揺れた。

そこから赤い竜が現れ、激しく咆哮した。

 

「な‼︎な、ななな、なんだぁ⁈」

 

「おい!早く逃げるぞ‼︎」

 

赤い竜は彼らを威嚇して、アリスの傍から遠ざけた。

アリスは立ち上がり、その竜の顔に触れる。

 

「赤王…あまり彼らを怖がらせないで?彼らは…ただ何も知らないだけだから…」

 

そう言っても、赤王の目は納得したようには見えなかった。

何故アリスがこんなに言われなければ…蔑みを受けなければならないのか…と。

何度となく彼女はその答えを口ずさむ。

 

「私のせいで…キリトは死に…ユージオも生気を失った。当然の罰よ」

 

そう言うと、赤王は湖の中に顔を突っ込む。

そして1匹のサシミウオを咥えると、アリスに差し出す。

 

「慰めてくれるの?ありがとう、赤王…。でもお前はもう私の竜じゃないのよ?好きに生きるといいわ」

 

そう言っても、赤王はアリスから離れようとしない。

(頼もしい友だこと…)と思っていると、冷たい風が吹き始める。同時に大降りの雨も降り始める。まるでこの世界自体が…悲しく泣いているかのように…。

 

「…帰りましょうか、赤王」

 

アリスは彼を連れて、自宅へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー3ヶ月前ー

キリトを失ったユージオとアリスはただ…呆然と何も言わずに…黙り尽くしていた。イーディスは何かを言おうと何度も口を動かそうとしたが、とてもじゃないが2人に何も言うことが出来なかった。

そんな時間が数分経つと、後方から複数の衛兵を連れたエルドリエがやって来た。

 

「アリス様…!ご無事で……っ⁈」

 

エルドリエは動揺した。

今まで涙を流したことないアリスが…大粒の涙をずっと流し続けていることに…。それと同時に彼女が涙を流す原因がその隣にいるユージオだとすぐに決めつけた。

 

「この愚か者がッ‼︎今すぐに殺してくれる…‼︎」

 

剣を抜くと、戦意のないユージオに向けて剣を振り下ろした。

それをイーディスが自らの鎧で防御する。

刃が鎧を貫き、イーディスの二の腕に到達し、ポタポタと血を流す。しかし、彼女に痛みなどなかった。キリトが…アリスたちが受けた痛みに比べれば、どうということがなかったからだ。

 

「イ…イーディス殿…⁈」

 

「剣を納めなさい、エルドリエ。…今すぐに!」

 

イーディスの殺意にも似た恫喝にエルドリエはすぐに剣を引いた。

 

「イーディス殿…何故奴らを庇うのです?こいつは教会に反逆した罪人ですよ⁈それに…私の師を泣かせた原因であることに間違い…」

 

「黙れッ‼︎」

 

エルドリエの言葉を切り、イーディスは叫んだ。

その声に漸くアリスが顔を上げ、イーディスを見た。

 

「イーディス…」

 

「彼らは…アドミニストレータによって…最も大切な友を失ったのよ…。泣いて当然だわ…。それに、本当に愚かなのは私たち整合騎士よ。助けるべき人を助けず…アドミニストレータの駒として動かされていたのだから」

 

「な…何を言っているのですか、イーディス殿!まさかあなたも罪人の言葉に自分を見失いましたか!それならもう容赦はしません」

 

やはり何を言っても無駄だった。

アドミニストレータによって記憶を消され、変えられた彼らの心を戻すことは簡単ではないのだろう。

イーディスにまで敵意を向けるエルドリエはジリジリと近寄って来る。

剣を持たないイーディスは(どうしたものか…)と思っていると…。

 

「何やってんだ?お前ら…」

 

聞き覚えのある声にユージオを除いた全員が振り返った。

そこには偵察から帰還を招集され、たった今戻って来たであろう整合騎士騎士団長ベルクーリが立っていた。

 

「騎士長‼︎」

 

「こいつは…何があったんだ?お嬢ちゃん」

 

「叔父様…」

 

漸く胸の内を開かせる者が来たからか…アリスはゆっくりと立ち上がり、ベルクーリに全てを話した。この世界のこと…アドミニストレータについて…そして、キリトたちがやろうとしていたことを…。

 

 

 

もちろんほとんどの騎士はアドミニストレータの蛮行を信じようとしなかった。アリスもイーディスも罪人に惑わされただけだと…。

すぐにユージオは投獄され、アリスはすぐに元の役職に戻るように言われた。イーディスに関しては、どうなったのか…よく分かっていない。あの日以降、彼女の顔を見ない。

ベルクーリはアドミニストレータの死が暗黒界に知れ渡る前に、彼らとの戦いに備えるように各々の騎士に通達した。今はアドミニストレータを討ったユージオの処遇は後回しにする…と。

この好機を、アリスは見逃さなかった。

牢屋から生気のないユージオを引き摺り出し、赤王に乗って央都ドンドルマを後にした。どこへ行こうか…悩みに悩んだ挙句、キリトが言っていたアリスたちの生まれ故郷…シナット村に行くことにした。もしかしたら匿ってくれるかもしれない…と、微かな希望を抱いて…。

 

 

 

 

アリスは歩くこともままならないユージオを支えながら、シナット村に入る。だが、当然衛兵のジンクに止められる。

 

「おい!よそ者が勝手に入ることは…って、お前はユージオ⁈それに…あんたは…」

 

「私はアリス。村長の…ガスフト・ツーベルクと話がしたい」

 

その願いは即座に受け入られ、村長の…もといアリスの父親の家の前に待たされた。罪人として連れて行かれたアリスが戻ってきたことに、村人が一眼見ようと集まっていた。

そして…ガスフトがアリスを見た瞬間、彼は恐る恐る彼女に口を開いた。

 

「アリス…なのか?」

 

「…はい」

 

「どうやって帰ってきた?お前の罪は…許されたのか?」

 

「……私の罪が許されたかは分かりません。しかし、その罰としてこの村で育った記憶は消されてしまいました。…そこでお願いがあります。ユージオの保護と…可能ならば、私を…この村に…置いて…頂けないでしょうか?」

 

(本当に父親なら…娘である私の願いは聞き入れてくれるはず…)

 

そんな勝手なことを考えていると、ガスフトからはこう言われた。

 

「…去れ」

 

「え…」

 

ガスフトの言葉に思わず、アリスは微かに動揺してしまった。

 

「ユージオは…元の役職を終えたのだろう。この村に置いてもいい。だが…アリス…。罪人を…この村に置くことは出来ない」

 

アリスは数秒俯き、「分かりました」と小さく呟く。

ユージオを彼の家族に預け、アリスはゆっくりと踵を返す。

後ろではガスフトが歯を噛み締めていたのだが…アリスはそれを知る由もない。

村を出て少し…後方から声が聞こえた。

 

「待って…!待って‼︎」

 

修道服姿の女の子が走ってきたのだ。

その顔を見て…アリスは思わず涙を流した。

覚えているはずがないのに…涙だけがずっと出てくるのだ。

 

「アリス…お姉様…だよね?」

 

目の前にいる彼女が…キリトが言っていた妹のセルカであることに間違いないとすぐに分かった。

 

「私の名前はセルカ…覚えてないかもしれないけど、私は…」

 

その時…アリスは彼女の言葉を切って抱き締めた。

 

「会ってみたかった…。妹に…セルカに…」

 

おどおどしているセルカだが、もう一つアリスに聞きたいことがあった。

 

「ねえ、キリトは?」

 

その質問にアリスは言葉を詰まらせた。

セルカと目を合わせることも出来ず、どこから説明したらいいのか分からない。

だが、アリスは息を吸い…セルカに知っていること全てを話した。

アリスとイーディスの記憶が2度と元に戻らないこと、イーディスはきちんと生きていること、そして…キリトが死んだこと。

セルカは首を横に振り、「嘘…」とだけ呟いた。

キリトの死が原因で、ユージオも抜け殻同然であることも伝える。

そこでセルカも咽び始める。

 

「私が…私が、アリスお姉様を連れて帰って来てなんて言ったから…私が…」

 

アリスは咽び泣くセルカを抱き締める。

アリスの瞳にも涙が浮かぶが、落としはしなかった。

あの戦いで残ったものは…各々の心に、深い傷となり、深く刻まれているのだった。




お久しぶりです、また不定期ですが、執筆を再開しようと思います。
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