作者の力不足で申し訳ありませんが、1話の前に上げている「用語集」を見て頂けると読みやすくなると思います。
「それでは、これより新王国第1王女リーズシャルテ・アティスマータ対旧帝国元第7皇子ルクス・アーカディアの模擬戦を行う!」
審判の学園の教官の声が模擬戦の会場である学園内の演習場に響く。
土を敷いてリングに見立て、石壁で周りを覆う演習場はさながら闘技場やコロシアムを彷彿とさせる。
観戦席から多数の学園の女子に見られているルクスの心境は、さながら猛獣と闘う剣闘士に近かった。
「なんでこんなに人が集まっているんだろう・・・。」
「お前が旧帝国の元皇子だからじゃないか?ルクス・アーカディア」
ルクスに向かい不敵に笑うリーズシャルテ。
2人とも、まだ
試合は双方が
「いや、それもあるだろうけど、僕は貴女がここまでこだわる理由が気になるんだ」
「こだわる?何のことだ?」
リーズシャルテは訳がわからないと言うように首を傾げる。
「僕は浴場で貴女の裸を見てしまった。それは確かに悪くは思っているけれど、ここまですることじゃないと思うんだ」
「ーーー」
ルクスの返答にリーズシャルテは沈黙の後、笑顔が消える。
「お前・・・私の正体を知っていてそれを聞いているのか?」
「・・・?」
リーズシャルテの問いと鋭い視線に、ルクスは違和感を感じると同時に背筋を凍らせるような感覚を覚えた。
(この娘は、ただの王女じゃない!)
「お二方、接続の準備を!」
審判の声に我を忘れていたルクスは、正気を取り戻す。
2本持っている機攻殻剣の内の白い機攻殻剣の柄のボタンを押すと、
「来たれ、力の象徴たる紋章の翼竜。我が剣に従い飛翔せよ、《ワイバーン》」
契約者の声を認識すると同時に、青白い光の粒子が集まり、ルクスの目の前に青と白の機竜が姿を現す。
「
ルクスがそう呟くと瞬時に装甲が開かれ、全身を覆った。
ルクスの2回りは大きい機竜だが、リーズシャルテはルクスのワイバーンよりも更に巨大な機竜を纏っていた。
「そのもう1つの剣はお飾りかな?ルクス・アーカディア」
「・・・ッ!?」
ルクスを睨みつけながら語りかけるリーズシャルテは、アイリから聞いていた情報よりも遥かに威圧感を感じた。
「新王国の王族専用機、神装機竜《ティアマト》。この機竜は、そこいらの機竜とはわけが違うぞ?」
神装機竜。
それは世界に1種しか確認されていない、希少種の装甲機竜だ。
汎用機竜よりも機体性能は遥かに高いが、その分精神力や体力の消耗、操作難易度も高くなる。
使用時の疲労から死亡するケースも珍しくないことから、新王国では神装機竜の所持は法律で厳しく制限されている。
つまり、神装機竜を所持している時点で類い稀な才能と弛まない努力を続けてきたことの証明となる。
しかし、ルクスはその事実を認識した上で、冷静な精神を保っていた。
(大丈夫。十分戦えるはずだ)
ルクスの《ワイバーン》は部品と武装を防御特化に改造している。
ルクスはかつて旧帝国で最多数の模擬戦を行いながら、一度も敗北を喫していない、『無敗の最弱』と呼ばれた存在だ。
しかし、全ての模擬戦を相手の体力切れや
観客が場の空気を感じ取り、静かになる。
会場の静寂と緊張を切り裂くかのように、高いベルの音が鳴った。
「
審判の声と同時に、2機の装甲機竜が動き出した。
先手を取ったのは、《ティアマト》を纏ったリーズシャルテだった。
朱の機竜は、上空へ飛び立つと中空で動きを止め、主砲である
「いきなり撃つのか・・・!?」
ルクスは驚愕する。
ルクスは回避可能な間合いを取っているにも関わらず、
(彼女のこの行動には、何か考えがある・・・!)
そんなルクスの思惑を知っていたかのように、リーズシャルテは。
機竜息砲の標準をルクスから横に逸らして、
「!?」
解き放った。
一連の不可解な行動により、ルクスは困惑していた。
そのため、横から近づいてくるリーズシャルテの本当の狙いに気づかず。
結果、リーズシャルテの放った
「あぁっ・・・!?」
ルクスの意識外からの一撃。
その正体から意識を切り替え、目の前まで迫っている機竜息砲に全ての集中力を注ぐことにした。
(この攻撃を防がなければ、負けてしまう・・・!)
咄嗟にブレードに
本来はブレードの切れ味や破壊力を増幅させる能力だが、ブレードを斜めに構えることで《ワイバーン》へのダメージをある程度抑え込むことに成功した。
その後、リーズシャルテからルクスに向けて高速の物体が4つ、飛来する。
壊れかけているブレードで弾き返すと、物体はリーズシャルテの元へと帰っていく。
「なるほど、なかなかやるじゃないか。砲撃の直後の体勢から綺麗に捌くとは、さすがは『無敗の最弱』と言ったところか?」
「・・・!?」
余裕の無いルクスに対し、笑みを浮かべるリーズシャルテ。
まだまだ余裕がありそうなリーズシャルテに、ルクスは冷や汗をかいた。
「どうしたんだ、妹から私の武装についても聞いたんだろう?」
「それはそうだけど・・・」
アイリからリーズシャルテの特殊武装について聞いていたためさほど驚きはしなかったが、ルクスに危機感を与えたのはその使うタイミングだった。
ティアマトの持つ特殊武装「
通常時はユニットを自在に操作することで、相手に直接ぶつけて攻撃する。
リーズシャルテの空挺要塞の使い方は至って単純で、言葉にすればルクスの死角からぶつけただけだ。
しかし、そのために最初に飛び立つタイミングで空挺要塞を相手に勘づかせないように射出したこと、主砲を囮に使い死角を作り出したことことは大胆であり、細緻な戦術であった。
「なあ、ルクス・アーカディア」
「・・・?」
体勢を立て直しているルクスへと、リーズシャルテが声をかけた。
「正直お前は弱いのだと思っていたが、撤回しよう。だからな、お前に忠告してやる。その半壊した《ワイバーン》を解除し、もう一本の機攻殻剣を使え。そうしないと、これ以上は生死に関わることになる」
リーズシャルテの放った忠告に、観客席からどよめきが起こる。
「じゃあ、一言だけ言わせていただくよ」
「忠告はありがたいけどーーー。この剣は、何があっても使うわけにはいかないんだ」
「ーーー」
リーズシャルテはルクスの言葉に、眉を引き攣らせ、顔を赤くする。
リーズシャルテにとっては舐められているように聞こえたらしい。
「なるほど、旧帝国の元皇子様にとって私は弱者か。甘く見たこと、後悔するなよ!」
リーズシャルテが機攻殻剣の切先を上に向け、高らかに唱える。
「《ティアマト》よ!本性を顕せ!」
リーズシャルテの声に反応するように、《ティアマト》の周囲に波紋が広がり、《ティアマト》の右肩と右腕部分に
7つの砲口を持つ、巨大な砲身。
「
普段は精神的負担が大きいため使用を控えているらしいが、ルクスの発言は、リーズシャルテの気に触れたらしい。
「ダンスは得意か?ルクス・アーカディア」
リーズシャルテが機攻殻剣を振るうと、波紋が現れ、広がっていく。
「私のダンスは荒っぽいが、せいぜい楽しませてくれ」
リーズシャルテの周囲には先程まで4つだった
武装の数に比例して負担や操作難易度も高くなるはずだがーーー。
「待ちなさい、これでは模擬戦の域を超えてしまっている!リーズシャルテ姫、貴方は相手を殺す気ですか!?」
審判の教官から声がかかるが、リーズシャルテは何食わぬ顔でルクスに問う。
「と、言っているが。負けを認めるわけではないよな?」
「ええ。心配はありがたいですが、僕は大丈夫なので」
はっきりと答えたルクスに、リーズシャルテは。
「では、この場で朽ち果てるが良い!」
機攻殻剣を振り、16の|空挺要塞「をこちらに差し向けた。
話を切る場所で悩みましたが、一旦ここで切らせていただきます。
次回も戦闘シーンなので時間がかかると思います。
読んで頂いている方は気長に待っていただけると幸いです。
追記:話の都合上、登場人物の性格等が皆様のイメージと異なる場合があります。ご了承ください。