シンオウの神竜と行く神装機竜の世界   作:松山新

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お久しぶりです。
読んでくださっている方には長らくお待たせしました。
今話は作者的には最も力が入った話になります。
戦闘シーンを何度も読み返しましたが、作者の技量的にはこれが限界でした。
それでは、どうぞ。


5話

雲の隙間を縫うように飛び降りてきた存在に、観客席では悲鳴と怒声が飛び交っていた。

 

「どうして幻神獣(アビス)が・・・!」

「警備隊は何をしてたのよ!」

 

幻神獣(アビス)」。その存在は古くから人類の天敵として知られており、種類によっては一夜にして小国を陥落させる程の知能と能力を持つ獣である。

世界に点在する遺跡(ルイン)からのみ出現するため、人への被害を防ぐ目的で遺跡(ルイン)の周囲には砦や関所が築いている。それらが突破されたとなると学園に何かしらの連絡が入るはずだがーーー。

 

「このままでは生徒に被害が出ます。それまでに避難を済ませましょう。それで良いですか、ライグリィ教官」

「その前に観客席に障壁を張る必要がある。お前以外の3年生が出払っている今、シャリスだけが頼りだ。出来るな?」

「了解しました」

「では、三和音(トライアド)の残りの2人は機竜を持っていない生徒の避難誘導を頼む。私は王都への連絡と教師部隊の指揮を取る」

 

 

ライグリィと三和音(トライアド)によって対処が始まりつつある中、ガルディアが静かに手を挙げた。

 

「少しよろしいですか、教官殿」

「ああ。君は・・・リーズシャルテの言っていた『もう1人の男』か?」

「これは申し遅れました。本日付けで学園の桐生整備士になりました、ガルディアと申します。私にも何かお手伝いできることが無いかと思い、志願させていただきました」

「了解した。では、避難の遅れているブロックの避難誘導を補助してくれ。そのブロック内に留学生のクルルシファーがいる。万が一があってはならないので、早急に保護を願いたい」

「分かりました」

 

一言だけで返すと、ガルディアは観客席裏の通路へ向かい、走り出した。

 

 

 

ライグリィが対処を始めている頃、上空ではルクスが幻神獣(アビス)の攻撃を逸らし、躱したりと、一方的な防戦を強いられていた。

 

『僕の《ワイバーン》には幻神獣(アビス)を破壊できる火力がありません。ですからリーズシャルテ様。貴女は地上から幻神獣(アビス)を撃ってください。タイミングは、僕が剣を振り切った直後です』

 

そう言い残し、幻神獣(アビス)の下へ飛び去っていったルクス。

 

(あいつは、一体・・・。)

 

汎用機竜1機とガーゴイル種の幻神獣(アビス)では、本来まともな戦闘にならない。

人間と同等の知能を持ち、個体によっては特殊な能力を使ったりすることもあるからだ。

そのため一流の機竜使い(ドラグナイト)が3人以上いて初めてガーゴイル種1匹に対処出来ると言われているが、あの男はどうだ。

ただの汎用機竜が、防戦のみとはいえどうして戦えているのか。

対して私はというと、暴走の直後のせいで簡単な操作すらままならない。

しかし、この時間で奴が考えた作戦は理解した。

成功したら奴は私以上の機竜使い(ドラグナイト)と言わざるを得?ないが、私は自分に割り当てられた役割を果たすだけだ。

だから。

(頑張れよ、「ルクス・アーカディア』)

 

 

 

 

(そろそろこちらの手の内は読んだか?)

 

ルクスは自分に幻神獣(アビス)の意識を向けることで、観客席への被害を防ぐことに徹していた。

大振りな動作はせず、最小限の動きで防御を続けているため、苛立ってきたのかガーゴイルに隙が見え始めている。

 

「・・・ハッ!」

 

熾烈(しれつ)な攻撃を潜り抜け、大きく振っているガーゴイルの爪の隙間から放つ、胴体への鋭い突き。

表面には小さな傷しか付かなかったものの、ガーゴイルの表情には動揺が見て取れた。

ルクスが少ないもののダメージを与えられることは、ガーゴイルに危機感を覚えさせるのに十分だったらしい。

『ルクス・アーカディア、教師部隊がそちらに向かっている!後5分だけ耐えてくれ!』

ライグリィから入る連絡に意識を向けた瞬間、ガーゴイルはルクスに背を向けて急降下を始めた。

 

「ギェェェァァアアア!」

 

(間違いない、観客席を狙っている!)

 

幻神獣(アビス)は本能的に人の多い場所を狙うため、観客席を攻撃するのは自然なことではあるがーーー。

急降下をしたのち、ガーゴイルは肩を紫色に光らせる。

遺跡(ルイン)警備の雑用で幾度と無く見た、羽根型の光弾を射出するモーション。

観客席にはまだ生徒が残っており、障壁が張り終わっていない部分もあるため、光弾が射出されれば生徒に被害が出る可能性が高い。

ルクスも急降下し、ガーゴイルに一撃を入れようと、大きく剣を振りかぶる。

 

「ギェアッ」

 

突如、ガーゴイルが振り返った。

 

「・・・!?」

 

ルクスは今、ガーゴイルに追撃するため、剣を振り下ろしている。

考えを分かっていたかのように、ルクスの全力を込めた剣をするりと避けたガーゴイルを目前に、

 

「ギェァァアアア!」

 

ルクスは大きな隙を晒すことになる。

当然、高い知能を持つガーゴイルがこの隙を見逃す訳が無く、ルクスに向かって爪を振り下ろした。

 

「ぐあっ!」

 

機竜、ルクスの両方へのダメージが大きかったらしく、《ワイバーン》のシステムはダウンし、ルクスは気絶して自由落下を始める。

 

「シャアアアア!」

 

勝利を確信したのか雄叫びをあげるガーゴイル。

今まで相手をしていたルクスも気絶し落下していく中、生徒への被害は免れないと思われた、その時だった。

 

「やはり、そういう事だったか」

 

笑みを浮かべ、巨大な砲身をガーゴイルに向ける者が1人。

 

「守りに徹する者が晒した隙は全力を以って仕留めに行く。同じ立場なら、私もそうしていただろうよ」

 

強敵を撃破し油断していたガーゴイルにとって、思いもよらぬ一撃。

七つの竜頭(セブンス・ヘッズ)による砲撃は、間違い無くガーゴイルを貫くはずだった。

しかしここで、予想外の事態が起こる。

 

「くっ・・・!」

 

暴走の影響で手元が逸れ、あらぬ方向へと光柱が伸びていく。

 

(しまった、このままだとガーゴイルが生徒に・・・!)

 

「ギィィィイイイアアアア!」

 

気づいた時にはもう遅く、ガーゴイルが観客席へと攻撃を始めようとしている。

ガーゴイルの翼は光りーーー。

 

 

 

 

ーーーフォン。

 

逆行(Re:birth day)

 

水色の球体のような領域が広がり、リーズシャルテたちを包み込んでいく。

 

(何だ、これは・・・?)

 

呆然とするリーズシャルテを置き去りにするかのように、続け様に不思議な現象が起こる。

七つの竜頭(セブンス・ヘッズ)の放った光柱が砲口へと戻り、気絶し、落下を始めていたルクスが再び空中へと浮かび上がっていく。

まるで、()()()()()()()()()()()()()()()

 

(私は、何を見ている?世界の時間が戻ったとでもいうのか!?)

 

「まあ良い。何故かはわからんが、次こそは灰も残さず消し去ってくれる!」

 

状況を僅かながらも把握したリーズシャルテは、多少の動揺を見せつつももう一度七つの竜頭(セブンス・ヘッズ)を構える。

再度狙うは幻神獣(アビス)、ガーゴイル。

時間はルクスが落下を始める時点で巻き戻りを止め、世界は同じ時間を刻み始めた。

 

「これで(しま)いだ!」

 

ァァアアアァァアアアァァァァアアッ!

 

七つの竜頭(セブンス・ヘッズ)に直撃したガーゴイルは一瞬にして融解し、強烈な断末魔を残して消えていった。

 

(何はともあれ勝ったものの・・・何だったんだ、あれは?それに、あの透き通るような静かな声は、一体・・・?)

 

目を疑うような現象に頭を悩ませつつも、リーズシャルテは現状を確認した。

避難は済んでおり、これ以降の脅威は無いと判断したため、肩の力を抜き、《ティアマト》を解除する。

すると、教師部隊の1人が声をかけてきた。

 

「リーズシャルテ姫、ご無事ですか!?」

「私のことは後だ!まずはあいつ、ルクス・アーカディアの治療に当たれ!」

 

ルクスは演習場の中心で倒れ、《ワイバーン》は持ち主の身体を守るという役割を果たしたため解除されていた。

 

「それにしても・・・凄いな、お前は」

 

改めて感心したかのようにリーズシャルテはルクスを見つめ、微笑する。

 

『タイミングは、僕が剣を振り切った直後です』

 

つまりあのガーゴイルは、襲来直後から終始ルクスの掌の上で踊らされていたということだ。

幻神獣(アビス)の思考、互いを読み合う駆け引き、わざと負けて油断を誘うところまで、どこか1つでも間違えていれば2人で撃破することは叶わなかっただろう。

それらを可能にするルクスの戦術や技術、見ず知らずの生徒を守ろうとするその意思に、リーズシャルテは感服する他無かった。

 

リーズシャルテの心は試合前の暗い気持ちは微塵も無く、澄み切った青空のような暖かさでいっぱいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうだったでしょうか?
オリジナルの神装のルビは、自分の好きな曲から来ています。(それについては賛否両論あると思いますが)
話の流れも原作と多少変えましたが、どうだったかなどを感想で書いていただけると嬉しいです。
これからもできる限り頑張っていきますので、高評価、感想等よろしくお願いします。
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