セレナさんの事を無事(?)に封印できた僕は令音さんに呼び出された。
「ユウ……今日から来禅は三連休だ。彼女達とデートをすると良い。そしてデート終わりに
〈これ〉を渡してやってくれないか?」
令音さんは僕に、以前母さんから渡されたペンダントと同じ種類のペンダントを渡して来た。
「令音さん……このペンダントは……まさか?」
「ああ。君の両親と私は古い知り合いでね。飛鳥と浩平は私と嘗ては先輩後輩の間柄だ。そしてラタトスクに所属する研究員達でフラクシナスの建造者の一人でもある」
令音さんは何者なんだろう? すると令音さんは話を続けた。
「そして飛鳥にそのペンダントをプレゼントしたのも私だ。
〈新しい家族を迎えた記念に〉
……とね。そして巡り巡って今はユウの手にあるみたいだね」
令音さんの説明は僕の予想を遥かに越えていた。しかし納得できる部分も存在した。
「令音さん……今言ってた〈新しい家族〉って……」
「その続きはまた機会のあった時にしよう。明日からは翼達とデートをするのもユウの役割だからね。いずれ奴等は纏めてオレの手で吊るすがな。……今だけは幸せな時間に浸らせてやるさ」
最後の言葉は聞き取れなかったが、僕のやるべき事はわかった。
「ありがとうございます令音さん。さっそく明日から翼とデートに行って来ます!」
「是非楽しんで来ると良い。私達も彼女達の笑顔が見られるのは誇らしいからね」
僕は令音さんと別れてすぐに翼に連絡した。
「翼……お昼から連絡してゴメンね? 今日から来禅が三連休なのは覚えているよね?」
『ええ。それがどうしたの?』
「実はさ……せっかくだからデートにでも行かないかな? 僕もたまには羽を伸ばしたいからね?」
『ッ!!! 嬉しいわ! 何時からデートをするのかしら!』
「明日行かないかな? そろそろ過ごしやすい季節だからね。少し街を翼と歩きたいんだ」
『じゃあ明日の9時に天宮駅に集合しましょう?』
「良いよ。じゃあ明日の9時に天宮駅でね?」
『えぇ。明日が楽しみね?』
そうして僕は翼との通話を終了した。そしてもう1件の方も連絡をした。
「セレナさん……今時間は大丈夫ですか?」
『はい! 大丈夫ですよ? どうしましたか?』
「明後日に僕とデートをしませんか? セレナさんと今度はゆっくりとデートがしたくて」
するとセレナさんは電話越しにもわかる程喜んでくれた。
『良いんですか!? じゃあ明後日の朝9時に修さんと映画が見たいです!』
「映画……か。良いですよ。じゃあ明後日の9時に」
『はい! それでは明後日を楽しみにしています!』
僕達はそうして通話を終了した。
「アレ?そういえば場所はどうしよう?」
……不安が今になって押し寄せてきた。
約束の時間の15分前には翼が到着して近くのベンチに座っていた。僕……待たせたかな?
「ゴメンね翼……僕が待たせたかな?」
翼は僕に気付くと柔らかな笑顔を見せてくれた。そして僕の手を握るとこう告げて来た。
「大丈夫よ。少し感じの悪い人物に声をかけられたけど、あしらっておいたわ。だって修の事が待ちきれなかったもの」
「あはは……穏便に済んでいる事を願うよ。じゃあ行こうか?」
「えぇ……早く行きましょう?」
そうして僕と翼のデートは開始された。しかし僕は後から知ったが、翼と僕の待ち合わせたベンチの裏には数人の男性が意識を失った状態で積み重ねられていたらしい。後に友里さん達が情報操作をした時に教えてくれた。
「じゃあ翼が行きたいところを教えてよ? 僕は翼の行きたいところに行ってみたいからさ?」
「なら私は行きたいお店があるわ。そうね……まずは定番の……」
そうして僕が連れて来られたのは女性物の下着コーナーだった。えぇ……女性物!?
「翼……確かに僕は翼の行きたいところに同行すると言ったよ? だけどここはその……僕がいるべき場所じゃ……」
すると翼は僕の背後に回り込んで耳打ちをして来た。
「私は修の赤ちゃんが欲しいわよ? だったら夜の勝負下着も必要になるわよね? 私は修の好みが知りたいわ?」
そして言葉を告げると僕の耳は甘噛みされた。僕は不覚にもその行為に悲鳴をあげてしまった!
「ひゃう! 」
「可愛い声ね? だけど今日の目的はこれからよ?」
自分が耳が弱い自覚はなかった。だけど僕の腕を引く翼の可愛い仕草に感じてしまうものがあった。そして同時に何か重要な事を自分が忘れている事もなんとなく理解した。
「私には紫色と蒼色はどちらが似合うかしら?」
正直に言うと翼は並のモデルよりも美しいと思う。だから正直に答える事にした。
「色は蒼かな。そして僕個人としては翼は布面積が多い服も少ない服も似合うと思う。だって見える範囲だけでも翼が美人なのはわかるからね?」
「わっ私がびっ美人!? からかわないでよ!」
「本当だよ。だって現に今日ナンパされたんでしょ? だったら翼は端から見ても充分美人だよ。翼が惚れてる僕からの言葉だよ?」
翼は俯いてしまった。……僕……何か不味い事言ったかな?
「……りなさい。」
「え? 今翼はなんて言ったの?」
すると翼は僕を引き寄せて耳元で囁いた。
「私をこんな気持ちにさせた責任を取りなさいって言ったのよ? 覚悟は……していたでしょう?」
その言葉はいずれ聞くかもしれないと思っていた。しかしこんなに早く聞く事になるとは思っていなかった。
「そう……だね。確かに何時か話す事になるとは思っていた。だったら僕も言うべき事を言わないとね」
僕は恐らく最低の発言をするだろう。だけど姉さん達に協力すると決めた時、そしてセレナさんと出会った時に一つの〈想い〉があった。
「僕は翼やセレナさんの言葉を嬉しいと思っている。だけどそれと同時に何か大切な事を忘れているとも思うんだ。だからその返事は待って欲しい」
すると翼は涙を流していた。
「そう……なのね。やっぱり……***の影が今もあるのね……」
翼が小声で何かを呟いたが僕は言葉を続けた。
「だけど翼達の気持ちとも向き合いたいんだ。だから僕が来禅高校を卒業する時までに答えを出せなかったら、その時は〈ラタトスク〉に頭を下げてお願いするよ。〈複数の女性と籍を入れる事態になっても僕は彼女達の希望を叶えたいんだ〉ってね」
僕の言葉を聞いた翼は体を少しだけ震わせた。そして僕に一つの確認をして来た。
「もし修が私達と添い遂げた時は、私達と子供を作りなさい。そうしてくれるなら私は構わないわ? だって修は責任を放棄したりはしないでしょう?」
僕は翼の手を握って返事をした。
「約束するよ。その時には少し早いけど父親としての責任を持つ。だから待ってくれるのはありがたいよ」
「約束よ? 破ったら修の体は私の〈愛〉の刻印を施すからね?」
良かった……翼は何とか理解してくれた。
「少し早いけど帰りましょうか。私もやりたい事ができたからね?」
「なら翼……最後に良いかな?」
僕は翼を呼び止めた。そして令音さんに渡された蒼いペンダントを翼にかけてあげた。
「修……このペンダントって……もしかして?」
「うん。僕の持ってるペンダントと同じデザインだよ。もともとは別の人から母さんへのプレゼントだったけど、その人にお願いしたんだ。翼にもお揃いのペンダントを作って欲しいってね」
「修……愛しているわ」
翼はそう言うと僕にキスをしてきた。でもその味は気のせいか少し塩辛く感じた。でも悪くない気分だね。
「じゃあ翼……また次の登校日にね?」
「えぇ……楽しみにしているわ」
そうして翼と僕はそれぞれの帰路に着いた。
「では修さん! デートを始めますよ!」
セレナさんは翌日の朝8時に僕の部屋の扉を開けた。
「まだ……時間があると……」
僕の言葉は続かなかった。なぜならキスをされていた為だ。
「さて……とはいえ今の時間ではどこの施設も営業していないでしょうね……なので私達の済むマンションでデートをしましょう?」
そう。翼やセレナさんは僕の家の隣に建てられたマンションで現在生活をしている。これは〈ラタトスク〉が〈顕現装置〉を用いて建てられたと姉さんより説明があった。
「お家デート……か。悪くないですね。じゃあセレナさんのエスコートを楽しみにしていますよ?」
「えぇ。私オススメのビデオを借りて来ました。一緒に見ましょう?」
セレナさんに連れられて入った部屋は、それはもう〈女性の部屋〉という印象だった。可愛らしいデザインの家具に綺麗なシールの貼られた小物。手作りと思われるぬいぐるみ等、明らかに短期間で作り出せるような完成度ではなかったが、それは彼女の技量の高さの現れだろう。
「えぇ。結社での記憶が私にはありますからね。この程度の技術ならすぐに再現できますよ?」
「ん? なんて言いました?」
「ふふっ……何でもありませんよ?」
セレナさんはそう言うと慣れた手つきでビデオの再生を始めた。どうやら題材は恋愛映画みたいだ。
「はわわわわわ……一組の男女がベッドの中で……」
訂正。成人指定相当の映画だった。セレナさんのお顔がトマトみたいに真っ赤に「修さんも人の事言えませんよ?」……僕も同じレベルです。
「でもあんなに相思相愛だと羨ましいです。だって男性は記憶を失った状態でも女性に好かれていました。なのに男性には思い出してもらえない……彼女の心は相当辛いでしょうね?」
セレナさんの言う通りだ。映画の中の彼は頭部を不慮の事故で打ってしまい自分の記憶全てを失った。なのに恋人の女性は忘れられて尚男性の為に全てを捧げたのだ。
「その姿を見ると思いますよ……何でこんなに大切な想いまで失ったのか……ってね」
僕は自分の素直な気持ちを口にした。するとセレナさんは小声で何かを呟いた。
「貴方の事ですよ修さん? ***さんとしての記憶を失った今の貴方の……ね?」
そしてクライマックスに差し掛かると、キスをきっかけに男性は記憶を取り戻した。僕はその光景に涙が止まらなかった。
「……良い話ですね。まるで僕達みたいです。まあ……僕達の場合はセレナさん達が男性の立場ですけどね?」
するとセレナさんはお手洗いに行くと席を立った。
「本当の意味でこれは私達の事を表す映画ですよ? ***さんとしての記憶を失った修さんが……ですけどね?」
数分後にセレナさんは戻って来た。すると僕達は空腹感からお腹がなってしまった。
するとセレナさんは笑顔で僕に告げた。
「お昼を作りますのでお待ちくださいね?」
そうしてセレナさんは30分程で親子丼を持って戻って来た。
「自信作ですから早く食べましょう?」
「そうですね。では……」
「「いただきます」」
僕達は親子丼を美味しく食べ終えた。
「ご馳走様でした。美味しかったですよセレナさん」
「お粗末様です。では修さん……少しお話よろしいですか?」
セレナさんは下膳を終えると僕の前に座った。そして表情も真剣そのものだった。
「翼さんへの約束はクリスさん経由で聞きました。私達の想いに向き合ってくださるんですね?」
「僕が答えを見つけられなかったら……ですけどね。だからまだお返事ができずに申し訳ないです」
「大丈夫ですよ。急な話でしたからね?」
僕は今こそペンダントを渡すべきだと思った。
「セレナさん……僕の答えはまだ出せませんが、気持ちの表れとしてこのペンダントを受け取ってください!」
僕は令音さんに渡された白いペンダントをセレナさんの手に乗せた。
「……このペンダントは修さんのそれと同じ種類なんですね。私……とても嬉しいです。大切にしますね?」
そういうとセレナさんは僕の唇を奪った。
「ふふっ……油断大敵ですよ? 私も翼さん同様に修さんを愛していますからね?」
「……先に言われた……か。じゃあ僕もその想いに向き合います。だから……」
「その先はまだ言わないでくださいね? それと私は今日の出来事を日記にしますね」
「じゃあ僕も家に戻ります。それじゃあセレナさん……また明日も……」
「えぇ。お会いしましょう?」
僕達はそう言いあって別れた。凡そその1ヵ月後にセレナさんが来禅に一年生として転校してくるのはまた別の話だ。
「……この学校に彼がいるのね〈私達? 〉」
『えぇ。間違いないわよ。だって私達が見たんだもの』
『そうね。やっと見つけたわ。だから待っていて欲しいものね?』
「勝手な事はしないでね〈私達〉。そうやって物騒なあの〈魔術師〉や、頭のおかしくなる程にヤバイ※※※が動いたら〈私達〉じゃあ勝てないわよ?」
『そうね。じゃあ任せたわよ〈オリジナル〉。さあ……私達の悲願を叶える為の戦争(デート)を始めましょう?』
「ようやく手掛かりを見つけましたよ※※※。はぁ……まったく……〈彼女達〉にバレない為とはいえ手段が回りくどいです。でもそれが※※※のやり方ですからね。ならボクは※※※の為に行動します」
ボクはようやく天宮市に来る事ができました。ここまでの道のりは長かったですね。
「明美さ~ん! 早く来てくださ~い!」
「わかりました。すぐに行きますね!」
ボクは呼ばれた人物の元に急ぎました。
「皆……今回の〈ハーミット〉の映像がこれよ。私達は〈ハーミット〉さえ、無力化できていないのが現状ね。だから今回天宮市で確認された〈ナイトメア〉の対処の為に来てもらった〈北白 明美〉さんよ? 連携の重要性はわかっているわよね?」
「ボクの名前は北白 明美です。皆さん……よろしくお願いしますね?」
ボク達が資料として見ていた映像の中に映る男性には見覚えがあった。彼は※※※で、※※※の伴侶だ。
「ボクはこの世界でも頑張ります。必ず記憶を取り戻しましょうね※※※」
月日は流れて6月を迎える。そして新たな精霊があらわれる。
次回〈6月5日の転校生〉
更新をお待ちください。
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この続編……メインヒロイン交代しちゃいます?
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キャロル1択だよ!
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せっかくだからヒロイン交代で
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前任者達も参戦!
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精霊達に押し倒されてしまえ!