「マリア……僕は明美ちゃんにも君にも人殺しをさせたくはない。だから僕はできる事はするつもりだから」
昨日僕が見たモノと聞いた話が思い出せない理由が、僕の記憶に関係がある事もなんとなくは気づいている。その為にもマリアには会わないといけない。
「さて……じゃあ行こう。僕もデート自体はまだ慣れないけど、マリアを救う為には恥らいも捨ててやる!」
僕は覚悟を決めて街合わせの場所へと向かった。
「さて……マリア監視はあたし様自らやるか」
「勇さんとのデートだなんて許せませんね。このデートが最後の思い出にしてあげますよマリア姉さん」
「マリア……貴女は良いパートナーだったわ。だけど残念ね…………今日で貴女とお別れしないといけないなんて」
「デートの待ち合わせ場所と時間を教えた事を後悔しても遅いんだからね?」
僕の知らないところで〈何か〉が始まろうとしていたが、その事に気付く事はできなかった。
「さて……約束の時間か。マリアはどこに……」
僕は約束の10時に天宮駅の南改札口の側にいる。すると後ろから目隠しをされた。
「ふふっ誰かしら?」
背中に当てているその巨乳は男子高校生には辛い。思わず前屈みになりそうになった。
「うわぁ!!」
「もぅ……そこまで驚かなくても良いじゃない……。私は修に一目惚れしてしまったのよ? だからこんな事をしても恥ずかしくないのよ?」
マリアは僕にストレートな好意を告げて来た。どうしよう……すごく返答に困ってしまう……
「大丈夫よ修……。私が貴方を守ってあげるわよ。だって私は精霊だからね? 」
「マリア……うぅ……」
僕はマリアの耳打ちに真っ赤になって照れてしまった。そしてそんな僕をマリアは優しく抱きしめた。人通りの多いこの駅で……。
「あたし様の弟になんて破廉恥な事を……ぜってぇ殺してやるぞマリア……」
「私だけの修が……マリアなんかに……やっぱり胸なの? 胸が無いのは罪なの? マリアが憎い……あの巨乳が憎い……」
「マリアさん……酷いよぉ……私達の事を出し抜くなんてぇ……」
「姉さん……もう許せません。今日で仲の良かった姉妹の関係は終わりなんですね……」
四方からとても恐ろしい殺気が放たれていた。そしてインカムであおいさんより通信が入った。
『ごめんなさい修君。翼ちゃん達の霊力が逆流してるわ。恐らく修君のデートを盗撮してるのは間違い無いけど、こちらも彼女達がどこに隠れているかわからないの。だから彼女達を炙り出してもらえるかしら? そうすれば司令や緒川さんが確保に迎えるし、風見さん達も手伝える「その必要は無いわよあおいさん?」え? その声……マリアさんなの!?』
なんとマリアは僕のインカムと同じ種類の物を耳にしていた。そして僕達の通信に割り込んだのだ。
「修……少し携帯電話を借りるわね?」
するとマリアは僕の携帯のロックを外すとLINEアプリを起動させた。そして翼・姉さん・セレナ・未来の連絡先を見つけると(全員毎日LINEが来るのでトークルームでは上の方にある)素早く自分の携帯に登録した。
「はい。これで後は私がなんとかするわ。……修の連絡先? 当然入力済みよ? 初日に気絶してる間に入力と登録は済ませたわ。ロック解除なんて愛の前では簡単だもの」
嘘だろ……既に連絡先を知られてたなんて……
「マリア……それはどういう意味なの?」
僕がマリアに問いかける間にマリアは素早くスマホを操作していた。そして優しく僕に微笑んだ。
「もう大丈夫よ。今日の私達のデートを邪魔する害虫は大人しくなったわ」
マリア……一体何をしたんだ……
『マリアが〈クリス〉〈未来〉〈翼〉〈セレナ〉を招待しました』
「っ!」
あたしの携帯に送られた通知は驚く内容だった。
「マリア……なんの真似だ?」
すると招待された全員が秒でグループに参加した。マリアの奴はそれが終わると直ぐに1つの写真と複数のメッセージを送信して来た。
『私達は同じ精霊じゃない。みんな仲良くしましょう?』
『親愛なる貴女達の為に1つの宝物をあげるわ』
その写真はあの日の保健室で眠る修の寝顔の写真だった。
「ッ! 欲しい……修の写真がもっと欲しい!」
あたし達はそれぞれが保存した宝物の写真をひたすらトークルームに貼りつけた。同時に他の奴等が送信した写真は片っ端から保存した。
『これでわかってくれたかしら? 今日のデートを盗撮するのは構わないけど、写真は共有しましょう?』
マリアのそのメッセージを最後にあたし達はそれぞれの方角から修達のデートを監視して、その成果を全員が共有する事で今日1日だけは争わない事にした。
「さあ! 早くデートを始めるわよ! まずは服を買いたいわ!」
僕はマリアに手を引かれるままにモールへと入った。
「あぁ……とうとうここまで来たわ!」
マリアは興奮した足取りで下着コーナーへと向かった。ん? 〈下着コーナー〉?
「マリア……なんで下着コーナーなの? 僕すごく恥ずかしいんだけど?」
マリアは僕を笑顔で……そして優しく抱きしめた。僕はマリアの豊満な胸に再び溺れる事になった。
「あら? 男の子ね?」「隣の女性の付き添いかしら?」「きっと仲の良い姉弟なのね?」
周囲の女性の理解がなかったら僕の社会生活は終了するかもしれなかった。
「どうかしら修? 私には青と白の水着だとどちらが似合うかしら?」
この時に少しでも本能を抑えれば良かったのだろう。しかし僕は欲望に負けて正直なコメントをしてしまった。
「僕は……その……そこのマネキンにつけられてる黒のビキニがマリアには似合うと思うんだ。だから……選ぶならそれが良いかな?」
マリアの顔が途端に明るくなり僕を更に強く抱きしめた。
「〜ッ! 嬉しいわ! 早速着替えるから少し待ってて?」
マリアはカーテンを閉めると絹が擦れるような音がした。そして僕がその音にドキドキしていると別の人物達が声をかけて来た。
「おっ! 高崎じゃない! な〜に〜? 高崎も服探し? 美九先輩みたいとまでは言わないけど、並の女性より女性らしい格好ができる高崎があたしは羨ましいよ」
「勘弁してくれよ安藤……美九先輩のあの目に僕と士道先輩は軽いトラウマなんだよ……」
「ていうかアンタ翼さんはどうしたのよ! 泣かしたらあたし達は絶対許さないから!」
「その翼に命を脅かされてるんだけど! 僕だって最近は側にいてあげたいけど命も惜しいよ!」
「でも……修君も複数の女性との関係が噂されていますわ。士道さんみたいになるとは限りませんので火遊びは程々にする事をオススメしますわ」
「詩織……僕にそんな事できるメンタルがあると思う? とてもじゃないけど、あんな事僕には出来ないんよ?」
「修……待たせ……た……わね……?」
カーテンを開けたマリアが僕達と目があった。
「「「きゃああああ!!!」」」
僕は3人の叫びと共にぶっ飛ばされた。そしてその時に頭を強打したようだ。
「修! 目を開けて修! 」
僕は段々と意識を失った。
「ここは?」
僕は公園のベンチでマリアに膝枕されていた。意識を取り戻してすぐに大きな胸が視界に入ったから膝枕されていた事は間違い無い。
「あぁ……良かった……」
マリアは僕を本当に愛おしそうに抱きしめた。なんでこんな彼女が人を殺してしまうのか僕にはわからなかった。
「マリア……なんで君はASTや明美に命を狙われているの? 一体なんで殺人なんて……」
僕はマリアに直接確認する事にした。するとマリアは僕に驚くべき事実を告げた。
「ごめんなさい修。その為にはついて来てもらえるかしら?」
僕はマリアに連れられてある場所に来た。そしてそこには
「お疲れ様〈私達〉。首尾は順調みたいね?」
「ヒイィィィお前……ナイトメアか! 何故私を狙う! 私の他にも悪党は「御託はそれまでで充分よ?」あがぁ!」
マリアは拘束していた男性を射殺した。しかしその顔は悲痛な表情をしていた。
「ごめんなさい修。彼の名前は〈アドルフ博士〉よ。嘗てはアメリカから逃亡したマッドサイエンティストでサイコパスな人物だったの。私はその被害者からの依頼を受けて彼を捜索し、今仕事を終えたわ。〈私達〉……マムへの報告は大丈夫よね?」
『えぇ大丈夫よ? でも修に見られてしまったわ』
『仕方無いわよ。だっていずれは見られてしまったわよ?』
『でも優しい修なら……きっと……』
口々に複数のマリアが僕に囁く。なるほど……だからマリアは明美ちゃん達に殺されても……
「兄様! その女から離れてください! 」
叫び声が聞こえた直後に砲撃が僕とマリアを分断した。そしてその人物はすぐに登場した。
「明美……ちゃん?」
「えぇ。兄様の可愛い妹の明美です。しかし兄様は見てしまったのですね? マリアが殺人を犯すところを……」
明美ちゃんの目は光を映していなかった。そしてこう続けた。
「早くいつものように死んでくださいよナイトメア。ボク達の兄様は渡しません。それが彼女との約束です!」
「しつこいわよ明美。私は絶対に修を手に入れるわよ? でも今日は引き上げるわ。貴女がいては話なんて纏まらないもの……」
そう言うとマリアは礼装を纏い、マントを翻して僕達の前から姿を消した。
「明美ちゃん……マリアは誰からあんな事を頼まれているの?」
「恐らくは不当な扱いを受けた実験体やその関係者でしょうね。しかしだからと言ってもボク達の役割も変わりません。彼女が殺人を行うならボクは彼女を殺します。それが例えいたちごっこになろうとも……」
僕はその日……背負うにはとても大きな物がありすぎる2人の事を考えた。そして明日再会するとわかっているだけに少し憂鬱になった。
マリア……周到過ぎませんかねぇ……
次回〈マリアの力〉
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この続編……メインヒロイン交代しちゃいます?
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キャロル1択だよ!
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せっかくだからヒロイン交代で
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前任者達も参戦!
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精霊達に押し倒されてしまえ!