妖精さんが運転する鉄道。
人間さんが乗るには意識を体から分離させることが必要です。
どの時間、空間にも行くことが出来、途中で見たい場面がある時はそこに妖精さんと関わるナニカがあればソレに憑依し記憶を追体験することが出来ます。
乗っている間は妖精さんが丁重にお体をお預かりしているので気にせず快適な旅が楽しめますよ。
「それでこれからの人類の月開発はどのくらいの程度で進むのですか?」
わけあって月に行かなければならないわたしは現在妖精さんが運転する鉄道で月に向かう途中です。
まあその鉄道は何やらタイムマシンみたいな時間と空間を無視して進む代物ですのでどうやって月まで送ってくれるのかは不安なのですが。
原始地球からようやく月開発が行えるほどの科学技術のある時代までやってくることが出来ました。
先程まで滞在していたとあるアジア圏の小国、天を突き抜ける一つの鉄塔と奥に見える独立峰が印象的な国、を鉄道が出発すると妖精さんが話します。
「うちゅうにいくのとうぶんさきになっちゃったみたい」
「あ~コスト面の問題とか技術面の問題ですかね?」
やはり科学技術が発達した時代とはいえ月に行くのは難しいのでしょう。
多大なコストを払ってまで月に行くメリットが少ないですからね。
まだ時代が追い付いていないということでしょうか。
そう思って口に出しましたが妖精さんの表情からどうやら違うようです。
「にんげんさんがすくなくなっちゃった」
「少ないってどれくらいですか?」
「ぜつめついっぽてまえみたいな?」
「えらいひとがぽちっとぼたんをおしてたらぜつめつしてたてきな?」
「でもどっちみちにんげんさんのすいたいはまぬがれぬてきな?」
妖精さんの口から思わぬ発言。
どうやらこの時代から人類の衰退期は始まったようです。
「それではつぎのていしゃえき。めぐりがおかー、めぐりがおかー」
鉄道はゆっくりと停まります。
車窓から外を見ると先程停車した場面からそれほど時間も進んでいないようですし人種や町の様子からも同じ国のようです。
この町が人類史の大きな分岐点となり人類が衰退する始まりなのでしょうか。
学者の端くれであるわたしは本来なら下車して調べなければいけませんがわたしの目的は月に行くこと。
ここは我慢して先に進みます。
「妖精さん、月に向かってくださいな」
「おりなくてよろしいのー?」
「びっぐいべんとがはじまるのにー?」
「ばすにのりおくれたらいけないのではー?」
「うぅ・・・」
このように言われると先程心に誓った先に進むという決意が揺らいできます。
ここは一つ妖精さんに確認してみましょう。
「あの、もしここで降りたとして月に着く時間は変わりないのですか?変わらないのであれば降りたいのですが」
「もんだいなっしーんぐ」
「ゆめのなかゆえじかんにしばられなーい」
「むしろしばられたーい」
ちょっと気になることを発言していましたがどうやら時間の流れは変わらないとのこと。
それなら降りて人類史の分岐点を確認しにいきましょう。
「それではにんげんさんいちめいさまごあんなーい!いってらっしゃい、みてらっしゃい」