龍脈の申し子も異世界へ来るそうですよ 作:ナタルア
「クソ親父ぃいいいいいいいいいいいいッッッ!!!」
「私に子など居ないッッッ!!!」
大上段から飛び掛かるように振り下ろされた一刀と、受け止めるように卍鍔の黒刀がぶつかり合う。
出力では、単純に受け止める側が上だ。だが、その上回る筈の彼はそれでもその振り下ろしを押し返すことが出来ずにいた。
出力?馬力?筋力?技術?それら一切合切を塗り返す強烈なまでの意志の力。
少年だけではない。銀色の侍が、子兎が、受け継ぐ者が、皆が今ここに一丸となって男に挑んでいった。
どれだけの血が流れただろうか。どれだけの命が零れ落ちて行っただろうか。
後少し手を伸ばせば救えたかもしれない命もあった。そして、救えた命もあったが、それ以上に取りこぼしてしまった命も多々あった。
だからこそ、
「―――――終わってくれ、クソ親父」
+*+
「随分と髪が伸びたじゃねぇかよ」
「そうかな?いや、切っても、斬っても直ぐ伸びて、この長さになっちまうんだけども」
「けっ、小憎たらしいガキだ。マジで可愛げ何ぞありゃしねぇ。そのさらさらキューティクル寄越しやがれください」
「ふはっ!アニキって何時もそうだよな。それから、無理じゃないかな。アニキの頭は死ぬまでクルクルだよ」
「だぁれがチリチリパーマだコラ」
「そこまで言ってないよ。そういえば、アニキって下の毛も銀色なのか?だったら、陰毛頭だね」
「ちょっとセンセー!?御宅のお子さん口悪いんですけどーーーーッ!?」
ギャンギャン騒ぐ兄貴分に、少年はニヤリと笑みを浮かべる。
そんな彼の左の腰には三振りの刀が差されていた。
一つは、木刀。柄には洞爺湖の文字。一つは、卍の鍔を持った刀。柄鍔鞘、どれも黒い。一つは、脇差程の妙な鍔をした刀。
どこのかの海賊マンガに出てくる、海賊狩りのような格好だがこの三振りは確りと理由があって差しているのだ。
「まっつん。もしもイジメられたら私に言うが良いネ。直ぐに飛んで行ってボコボコにしてやるアル」
「お、ありがとな神楽。もしもの時は、頼るかもな」
「松風君、元気で」
「おう、ぱっつぁんもな」
チャイナ娘、眼鏡にそれぞれ手を差し出せば、パチリとハイタッチ。
見送りはこの三人だけだが、そもそも今日の出発だって誰にも伝えずに消えるつもりだった彼にしてみれば多い方だろう。
そろそろ、時間である。
「それじゃあ、アニキ、神楽、ぱっつぁん。世話になった」
「そうだね。体には気を付けて―――――」
「面白みが無いネ。そんなんだから、眼鏡は新八何て言われンダヨ」
「いや、新八が名前だから。眼鏡の方が付属品だからね。というか、人の名前つまらないみたいに言うんじゃないよ」
「大丈夫だぜ、ぱっつぁん。俺ァ、ぱっつぁんが出来る眼鏡掛け器だって知ってるからな」
「いや、出来る眼鏡掛け器って何?眼鏡が本体じゃないからね?」
「分かってるって
「ルビがおかしい……!」
突っ込みを入れる少年も、チャイナ服の少女も楽しそうに笑いながらも何処か寂しさを滲ませる。
大きな戦いを幾つも超えて成長してきた二人だが、やはりそれでも寂しいモノは寂しい。
それも、もう二度と会えないことが確定しているのならば猶更。
「辛気臭い顔すんなよ、お前ら」
ガシガシと混ぜるように、彼は二人の頭を撫でる。
「んじゃ、そろそろ行くぜ」
「ッ、うん」
「…………精々元気でやれヨ」
「おうさ」
一頻り撫でて満足したのか、彼は残る魚の死んだような目をした男へと目を向けた。
「アニキ、行ってくるぜ」
「…………おう」
「甘いモノばっかり食い過ぎんなよ?糖尿病になって、パフェが本格的に食えなくなるぜ?」
「分かってんよ。テメーは俺のかーちゃんか」
「弟分さ。パチンカスも結構だけど、生活費は残すように。それから、アニキは酒、そんなに強くないんだから飲み過ぎるなよ。糖尿病の前に、肝臓病でくたばりかねないから」
「分かってるっての!何だ、オマエ!ここまで来ても小言の嵐かよ!神楽や新八相手だと、あんなに優しかったのに、兄貴分の銀さんには小言ばっかりか!?」
「いや、神楽もぱっつぁんも割と自分で何とかできそうだけど、アニキはほら……マダオじゃん?ぶっちゃけ、職をマジで探してる長谷川さんの方がマシなとこあるし」
「ちゃんと、万事屋の看板掲げてんだろうが!依頼だって入ってんだよ!人をぷー太郎みたいに言うんじゃねぇ!!!」
「銀ちゃん、認めるね。銀ちゃんはぷーアル」
「お前まで何で俺のメンタルぶすぶす刺してんだよ!?そんなに言うなら給料差っ引いてやっても良いんだぞテメー!」
「いや、僕ら給料ろくに貰わなかったことの方が多いですよね」
「家賃も滞納しまくりネ」
「ぶっちゃけ、アニキってジャンプ読みながら椅子にふんぞり返ってるだけだよな」
「何でここぞとばかりに結託して攻めてくるんだテメーらはよぉ…………」
落ち込んだように肩を落とす男だが、その瞳に宿る色は優しかった。
いつものやり取りだから。日常を感じられるから。
一頻り、四人は笑い。そして、その時はやって来る。
「―――――時間だな」
三本の刀を腰に差した少年は、白い羽織を揺らして一歩その場を離れた。
「アニキ、神楽、ぱっつぁん―――――行ってきます」
少年はもう、振り返らなかった。
自分で背負ったその運命を、自分の手で終わらせるその為に。
業を絶つ為に。
そんな彼の下へと届く、一通の封筒。旅を始めて、暫く経った時の事だった。
そして彼、