遊戯王*ASTERISKs*(アスタリスクス)   作:kohatuka

10 / 64
第9話  2体目のアスタリスクス

―**ー(アスタリスクス)怪黒兎(ファントム)

★4/闇属性/獣族・エクシーズ・効果/ATK 2100/DEF 1000

ORU:1

 

 それは彼女が魅せたどんなパフォーマンスよりも、クラドに大きな驚愕を与えた。

 ふと隣のポーカーフェイスを伺えば、その目にも僅かながら困惑の色が浮かんでいる。

 

「ふふっ。そんなカード見たことも聞いたことも無い、という顔をしてらっしゃいますわね? それもその筈ですわ。このカードは代々ラムジョレーンの当主に受け継がれてきた秘蔵の1枚なのですから」

 

 得意げな表情を乗せた慎ましい胸を張って、アンリエールは甲高く笑い声を上げた。

 

「公の場では使用を禁じられていましたが、これは貴方らに制裁を下す為の決闘。もはや人の目を気にして出し渋る必要はありませんもの♪」

 

 初見のカードを相手にした決闘者の反応が見れて満足したのか、かなり上機嫌だ。実際にクラド達が驚いているのは、むしろ『2枚目』であるからなのだが。

 高笑いを隠れ蓑に、クラドがユウに耳打ちする。

 

「……センセー。こんな状況で言う台詞じゃねーのは分かってるんだが、このデュエル、ますます負けるワケにはいかなくなっちまったぜ?」

「分かっている。アスタリスクスについては俺も気掛かりだった。何としても情報を聞き出す」

 

 そんな2人の会話など毛ほども耳に入っていない様子で、アンリエールは高らかにカードの発動を宣言した。

 

「さぁ、まずはファントム第1の効果! このカードのエクシーズ召喚成功時に存在する自身のORUの数まで、フィールド上のモンスターを裏側守備表示に致しますわ! ORUは1つ、選択するのは《裁きの龍》! 『Sweet Dreams(良い夢を)』♪」

 

 ファントムが床を杖で突いた刹那。

 重くねっとりとした黒い霧が辺りに立ち込め、気高き白龍は無様に背を向けさせられた。 

 

「更に魔法カード《オーバーレイ・リジェネレート》を発動! このカードは発動後、モンスター・エクシーズのORUとなりますわ!」

 

 自身の勝利を先視したのだろうか、堪えきれずといった風に笑いを漏らす幽霊姫。

 ファントムの周囲を取り巻く光球が2つになったところで、意気揚々と宣言した。

 

「さぁ、ファントムの効果を発動! このカードはORUとなっているモンスター・エクシーズ1体を指定し、そのカードと同名カードとして扱い、同じ効果を得ますわ! 私が指定するのは無論、アルカード!」

 

 使い手の決定と共に、ファントムは自身のシルクハットをまるで虫取り網のように使ってORU――恐らくアルカードのものだろう――を1つ掬い取り、そのまま元通り目深に被り直した。

 

「姿を欺くは彼の十八番……『Re:take a lie(リテイク・ア・ライ)』!!」

 

 ハットのつばを押さえながら、ぼんやりと闇に溶け込んでいくファントム。

 それからほんの瞬きの間に《ゴーストリック・アルカード》へと姿を変えていた。

 

「……名称変更効果、か」

 

 見るも鮮やかな変装劇を目の前に、ユウは思考を巡らせる。

 ユウ自身も1度、ベルの持つヴァルキュリアを使用したことがある。あのカードもファントムも『他のカードの効果・名称をコピー』するという近しい効果を持っていた。

 だとするなら。《アスタリスクス》の名を持つカテゴリーは共通して『カード名称』について影響を与える効果があるのではないか。

 過去に何度か使用された記録が残るのみという幻のカテゴリ……ユウの静かな眼は既にこの決闘の先、来るべき『未知の脅威』を捉えていた。

 

ファントム(アルカード)の効果発動! ORUを1つ使い、伏せられたバックカードを破壊致します! 今一度御覧なさい、華麗なる技の再演(アンコール)を!」

 

 2度目とあってアンリエールのパフォーマンスこそ無かったものの、アルカードの効果をそのままトレースしたファントムは、未だ正体不明なユウの伏せカードを容易く打ち破った……かと思われたのだが。

 漆黒のマントに覆われたバックカードは、飲み込まれる間際に僅かな輝きを放った。

 

「……効果にチェーン発動、《針虫の巣窟》」

 

 発動されたカードはデッキの上から5枚のカードを墓地へ送るという、通常であればデメリットでしかない効果だが、墓地で効果を発揮するカードの多い【ライトロード】では逆転の狼煙を上げる可能性を秘めたギャンブルカードと化す。

 

「何を伏せていたかと思えば……行き当たりばったりの墓地肥やしカードでしたのね?」

 

 溜め息をつくアンリエールにユウは一瞥もくれず、デッキトップを眺めながら答えた。

 

「……良くも悪くも、このカードにデュエルの明暗が託された。俺の望むカードが落ちる可能性は僅かだが、その僅かな可能性が時に勝者をも喰らう」

「説教じみた講義は結構。仮に貴方が逆転のカードを引いたとしても、私の勝利に揺るぎはありませんわ」

 

 苛々とした口調で言い捨てたアンリエールだったが、その『手ごたえ』の無さに益々怒りの色を強めた。舞台(デュエル)の主役たる自分のことをまるで見ていない。否、気にも留めていない。

 華美な装飾でデュエルを着飾るアンリエール。それとは全くの対極に位置するユウの無機質なデュエルは、彼女の神経を執拗に逆撫でする。

 

「……効果を処理。墓地へ送られたカードは《ソーラー・エクスチェンジ》《超電磁タートル》《スキル・サクセサー》《レベル・スティーラー》《ライトロード・ウォリアー ガロス》」

 

 何気なく墓地へ送ったユウの手札、そのカードを確認したアンリエールの表情が苦々しく歪んだ。

 

「ッ……ふん。《超電磁タートル》とは、何とも無粋な時間稼ぎですこと」

 

 墓地へ落ちたカードの中で最も厄介であるそのカードは、バトルフェイズ時に墓地に存在するこのカード自身を除外することでバトルフェイズを強制終了させる、という効果を持つ。今のアンリエールの手札には、その効果を妨害できるカードは無い。

 

(それにしても。このターンは確実に凌げるからといってあの余裕は何ですの? ライフコストも払えず、裁きの龍は効果を封じられ……攻撃力ばかり高くても《ゴーストリック・ハウス》の効果で私が受けるダメージは半減。更に言えば手札には――)

 

 ちらり、とアンリエールは手札に抱えた2枚のカードに目を落とす。

 彼女のライフを刈り取るには、ユウは残された1ターンで7000ものダメージを与えなければならない。普通のデッキ相手なら【ライトロード】にとってその程度は造作も無い条件だが、【ゴーストリック】は防御・妨害に長けたカテゴリデッキだ。

 アンリエールが序盤に手札に加えておいた《ゴーストリック・ランタン》は、相手からの直接攻撃と「ゴーストリック」モンスターへの攻撃を無効にして、手札から裏側守備表示で特殊召喚される防御型モンスター。つまり、最低でも2回はユウの攻撃は防がれることになる。

 それは相手(ユウ)とて理解している筈。だというのに――。

 

「……どうやら。俺はまだここで終わる訳にはいかないらしい」

 

 そんなことを呟くものだから、アンリエールの苛立ちは直後に沸騰した。

 

「ッ……!! 魔女をリバースして効果を発動、ケルビムを裏側守備表示に! 平伏しなさい!」

 

 魔女が竹箒を振り回して魔法をばら撒くと、光騎士団の誇る大天使も無防備な背を向けた。

 

「バトルフェイズ! 貴方のフィールドのモンスターは全て裏側表示! ハウスの効果により魔女でダイレクトアタックしますわ!」

 

 ユウのライフは1000。ともすればこの瞬間に宣言されるべきは《超電磁タートル》の効果発動。しかしユウが手を伸ばしたのは墓地ではなく、手札に残る1枚のカードだった。

 

「……手札から《バトルフェーダー》の効果を発動。相手の直接攻撃宣言時、手札のこのカードを特殊召喚しバトルフェイズを終了する」

「なっ!?」

 

《バトルフェーダー》

☆1/闇属性/悪魔族・効果/ATK 0/DEF 0

 

 振り子時計のようなソレはバトルフェイズの終了を告げるように3度鐘を鳴らすと、何事も無かったかのようにユウのフィールドに収まった。

 予想とは異なるユウの宣言に驚くのもつかの間。アンリエールの表情に憎しみにも似た色が湧き上がる。

 

「貴方……私をからかってますの?」

 

 墓地へ落ちたカードに関係なく、ユウはこのターン確実に攻撃を凌ぐことが可能だった訳だ。それを知りつつ、あたかも《針虫の巣窟》に全てを掛けたような台詞を吐き、更には存在の知られていない手札の《バトルフェーダー》から見せ付けるように効果を発動した。

 アンリエールのデッキには墓地の《超電磁タートル》を除外できる《生者の書―禁断の秘術―》が存在しているのを確認しているにも関わらず、だ。

 そんな疑問を全て内包したアンリエールの問いに、ユウは静かに被りを振って答えた。

 

「それは否定する。俺はこの状況を打ち破るべき一手を選択した。それだけだ」

「……そうですの。だとしたら随分とお粗末なプレイングですわね。私はこれでターンエンド致します」

 

 怒りに震える声を抑えることも無く、最後に吐き捨てるような溜め息をついてアンリエールはターンをユウへと受け渡した。

 

「……俺のターン、ドロー」

 

 ユウ  LP1000

     手札・0→1 モンスター・3 魔/罠・0

 アンリエール LP3500

     手札・3 モンスター・3 魔/罠・1

 

 ドローカードに目を落とし、ユウは再び『アンリエールの方を向かずに』呟いた。

 

「……残念だが。勝負の天秤は俺に傾いたらしい」

「なんですって?」

 

「裁きの龍、ケルビムを表側攻撃表示に変更。更に墓地の《レベル・スティーラー》の効果を発動。裁きの龍のレベルを1つ減らし、墓地から特殊召喚」

 

《レベル・スティーラー》

☆1/闇属性/昆虫族・効果/ATK 600/DEF 0

 

《裁きの龍》

☆8→7

 

「……俺は☆1のバトルフェーダーと、レベル・スティーラーでオーバーレイ」

「エクシーズ召喚、ですって?」

 

 ユウのフィールドに発生する光の渦。

 それは先程アンリエールが見せたものと何ら遜色は無かった。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚。《No.(ナンバーズ)63 おしゃもじソルジャー》」

 

《No.63 おしゃもじソルジャー》

★1/光属性/天使族・エクシーズ・効果/ATK 0/DEF 2000

 

 現れたのは可愛らしい、『しゃもじ』を象ったマスコットキャラクターのようなモンスターだ。しかしその頭部には、しっかりと自身の『No.』が刻まれていた。

 

 ――《No.》。全部で100枚が存在し、それぞれが数字を与えられた(ナンバリングされた)特別なモンスター・エクシーズ。

 その性質上、ナンバーズは世界で1枚しか存在せず、これらのカードを持つことは決闘者の間で一種のステータスとして認識されている。

 とはいえ、全てのナンバーズが強力無比な効果を持っているかといえばそうではなく、入手したナンバーズが必ずしも持ち手にとって有益になるとは限らない場合が多い。

 おしゃもじソルジャーもどちらかといえば『そういう類』の効果だが、今回のデュエルではまさに逆転劇の幕を上げるに相応しい役にはまったのだ。

 

「黒の人間でも入手困難なカードを、何故貴方のような……まぁ良いでしょう。紳士としての心得を多少はお持ちであった、というだけのこと。それで? その可愛らしいナンバーズでどうするおつもりですの?」

「……No.63の効果を発動。ORUを1つ使い、お互いに1000ポイントのライフを回復する」

 

 ユウ LP1000→2000

 アンリエール LP3500→4500

 

 アンリエールの問いかけに応えたのかどうか。ユウは効果を淡々と読み上げる。

 ライフの回復。それが意味するのは――。

 

「裁きの龍、効果発動。1000ポイントライフを払い、このカード以外のフィールド上のカードを全て破壊する。『ディスポティック・レイ』」

 

 ユウ LP2000→1000

 

 枯渇の檻から解き放たれた白き龍が、雄々しく遠吠えを上げる。

 輝く龍燐に収束された聖なる粒子が、全てを飲み込む光の奔流と化した。

 

「ッ……破壊されたファントム、並びにORUとして墓地へ送られたアルカードの効果を発動!」

 

 大破壊の余波から顔を覆いながら、アンリエールが声を張り上げて効果の発動を宣言する。

 愛らしい小さなナンバーズすら飲み込んだ光の奔流は、彼女の敷いた布陣を容易く飲み込んだ。しかし――。

 

「まずはファントムの効果で墓地より《ゴーストリック・パニック》を手札に加えます! 更にファントムの効果を発動、ORUを持ったこのカードが墓地へ送られた場合、そのORUの数まで相手フィールド上のカードを裏側表示に変更致します……ORUは1枚、よって選択するのは裁きの龍!」

 

 消え行く刹那に黒き霧と化したファントムが裁きの龍を無様な姿へと裏返してしまった。

 

「だっ!? あのアスタリスクス、そんな隠し玉まで持ってやがったのか!?」

 

 クラドが思わず頭を抱える。裁きの龍はターンの初めに表示形式を変更してしまったため、このターンはもう立ち上がることは出来ないのだ。

 しかしそんな常識を、ポーカーフェイスは易々と超えて見せた。

 

「……墓地の《ADチェンジャー》の効果発動。自分のメインフェイズに墓地のこのカードを除外することで、フィールド上のモンスターの表示形式を変更する。俺は裏側守備表示の裁きの龍を表側攻撃表示へ変更する」

「!? そんなカード、いつ墓地へ……」

「よっしゃ、上手いぞセンセー!!」

 

 三者三様の感情が入り乱れる中、アンリエールは己の不注意に心中で毒づいた。

 序盤で落とされた大量のライトロード『以外』のカード達の中に、確かにそれは存在していたのだ。他にも墓地発動の効果はいくつかあったが、彼女の戦略上で全く障害にならなかった為に意識の外へ飛ばしていたらしい。

 墓地は常に対戦相手に晒され続ける貴重な公開情報。相手を侮り、確認を怠った代償は決して小さくは無かったのだ。

 

「ですが……お忘れですの? 私の手札には攻撃を防ぐランタンが2体、更に攻撃が通ったとしても、残りライフは4500。仮にその手札1枚がモンスターだったとして、このターンの突破は不可能ですわ。次のターンで幾らでも巻き返しは――」

「……それはどうだろうな。俺は手札から《ライトロード・アサシン ライデン》を通常召喚」

 

《ライトロード・アサシン ライデン》

☆4/光属性/戦士族・チューナー・効果/ATK 1700/DEF 1000

 

 残された手札から現れたのは、冷酷な瞳を尖らせる褐色の暗殺者。

 言葉を聞かずとも主の思考を読み取れたのか、沈黙のまま宙へと飛び上がった。

 

「☆7となった裁きの龍に、☆4チューナー・ライデンをチューニング」

 

 更なる高みへ導くが如く、緑光の輪が天へと連なる。

 駆け上がる白き龍はその輪郭のみを残し、大気を貫かんばかりに咆哮を響かせた。

 

「……惑星(ほし)をも喰らう伝承の巨影。散り舞う光をその眼に宿し、姿を成せ」

 

 調律の終わりを告げる光の柱が、地響きを立てて舞い降りる。

 合計レベルは超大台の11。その圧倒的な質量にAR空間が僅かなノイズを走らせた。

 

「シンクロ召喚、《星態龍》」

 

 光を切り裂き現れたのは、桁違いに大きな体格を持つ胴長の巨龍。

 燃え盛る恒星を思わせる紅い体をなびかせ、災害じみた爆音量で威嚇の咆哮を上げた。

 

《星態龍》

☆11/光属性/ドラゴン族・シンクロ・効果/ATK 3200/DEF 2800

 

「☆11……!? なんて品の無い……!!」

 

 忌々しげにアンリエールが見上げ睨むも、もはやその『品の無いモンスター』と彼女を阻む壁はどこにも存在しない。少なくとも、フィールド上には。

 

「今更そんなモンスターを出したところで。フィールドはがら空きですが、手札にはランタンが2枚。モンスターの数を減らして頂けたならむしろ好都合、というもので――」

「墓地の《スキル・サクセサー》の効果を発動。墓地のこのカードをゲームから除外し、自分モンスターの攻撃力を800ポイントアップさせる。更にもう1枚のスキル・サクセサーを効果発動させる」

 

《星態龍》

 ATK 3200→4000→4800

 

(2枚!? また序盤に落としたカードを……)

 

 幽霊姫の驚愕に答えを示すかのように、2枚のカードがユウの墓地から取り除かれる。その攻撃力は決着の幕を降ろすに相応しい数値となって、アンリエールのディスクに表示された。

 

「な、何度も言っているでしょう!? いくら攻撃力が上がろうと、私の手札には!!」

「……星態龍が攻撃する場合。ダメージステップ終了時までこのカード以外の効果を受けない。お前の手札にあるランタンは『相手モンスターの攻撃を無効にする効果』。よって『効果を受けない』星態龍は――」

 

 手札にあった筈の『障害』も消え失せ。一歩、また一歩と後退するアンリエール。

 舞台の主役は、降板を余儀なくされた。

 

「お前の『手札』を、突破する。バトルフェイズだ」

 

 大きく開いた顎に、星屑の如き小さな煌きが収束していく。

 

「ダイレクトアタック」

 

 アンリエールに向けて放たれたブレスは、まるで金銀に光り輝く紙吹雪。

 華やかな幽霊姫の舞台は、敗北という形で閉幕を告げたのだった。

 

『ゲームエンド。勝者、ユウ=キリサキ』

 

 アンリエール LP4500→0

 

 

   **

 

 

「よっしゃー! これで埋められずに済んだぜー!」

 

 真っ先に生きる喜びを声に出したクラドは、消え行くARに脇目も触れずユウの肩を勢い良く叩いた。

 

「やったなセンセー! まさか、あんなナンバーズまで持ってたなんて意外だったが、おかげで救われたぜ!」

「……そうだな。俺も最初は驚いた」

 

 Dパッドからデッキを引き抜きホルダーに仕舞いながら、ユウは静かに呟いた。

 どこかで聞いたその妙な言い回しに眉を寄せるクラドだったが、追求する暇も無くユウがアンリエールへ歩み寄っていく。

 崩れ落ちるように膝を付き、俯く彼女からはもう闘志は感じられない。

 

「お嬢様!!」

 

 まだ痛みの残るだろう身体を引きずって、黒服の男が割って入ろうとしたが、そんな彼をアンリエールは腕を伸ばして遮った。

 

「……お嬢様」

「俺の勝ちだ。ルールに従い、お前には約束を守ってもらう」

 

 淡々とそう告げ、敗者たる幽霊姫を見下ろすユウ。黒服の男は恨めしげに眼光を投げつけるが、ユウの視線は彼女へ向けられたままだ。

 アンリエールはゆっくりと立ち上がると、毒気が抜けたような声で静かに、小さく呟いた。

 

「……ええ。承知しておりますわ」

 

 黒艶のあるドレスグローブを纏った繊細な両手を、アンリエールがユウの右手に絡ませる。

 握手でもするつもりだろうか、とクラドが訝しげな視線を送る中。アンリエールは手に取ったユウの手の甲をおもむろに口元へと運び――。

 ちぅ、と可愛らしい音を立て、口づけた。

 

「!?」

 

 その仕草はまるで主に忠誠を誓う騎士のよう。

 今回ばかりは、流石のポーカーフェイスも慌てて手を引き抜き、警戒したように一歩後退した。

 

「このアンリエール・ラムジョレーン。必ずやご期待に応えて魅せますわ、白騎士様♪」

 

 優雅な仕草で一礼し、顔を上げたアンリエール。その美しいルージュの瞳と日の光を知らぬシルクの頬は、激しい恋慕の熱を帯びていた。

 

「し、白騎士ぃ……?」

 

 つい先程まで命のやり取りをしていた相手の予期せぬ豹変。敗北のショックから気が触れたのかとクラドは頬を引きつらせたが、そんなことなど眼中に無いといった様子でアンリエールはユウへ詰め寄っていく。

 

「さぁ白騎士様、なんなりとご用件をお申し付け下さいませ♪」

「……妙な呼び方は止めてくれ。ユウでいい」

「では、ユウ様と。私のこともお気軽にア・ン・リとお呼び下さい♪」

 

 今にも抱き付かれかねない距離まで迫るアンリエール、ユウもその都度距離を取る。

 

「……分かった。アンリ、賭けの報酬として俺達が求めているのは『コイツ』の消息だ。今はこの街で出来る限りの情報が欲しい」

 

 Dパッドに表示した『白面の女』のイラストを見せながら、盾を構えるように後退するユウ。いつもの憮然とした雰囲気は、どこかその色を薄めている。

 

「成程、承知致しましたわ♪ ダスティン!」

 

 パチン、とアンリエールが指を鳴らすと、黒服――ダスティンと呼ばれた男――がサッと隣に控えた。

 

「……お嬢様。まさかとは思いますが、その男を」

「当然ですわ。強きをその血に折り込むことこそ、ラムジョレーンの女の勤めですもの」

「しかし! いくら何でもシンクロ使いの男など……!」

「ユウ様の強さは無粋なシンクロのみにあらず。先のデュエルを見て、お前もそれ位は分かったでしょう?」

 

 何やら問答する決闘組の2人を見て、クラドは顔をしかめてユウに耳打ちした。

 

「……なぁセンセー。どうにも面倒なことになってるっぽいぞ?」

「……らしいな」

 

 断片的に聞いた限りユウの色々なものが危ないというのに、当の本人はいつものポーカーフェイスを取り戻していた。

 黒服の男が渋々引き下がる形で問答が収まると、アンリエールはにっこりと微笑みをユウへ向けた。

 

「ではユウ様♪ その『探し人』の画像データを頂けますか?」

「……分かった。少し待ってくれ」

 

 すぐにDパッド同士のデータ通信準備が整い、何故か少々興奮気味のアンリエールに件の画像データが送信された。

 データを受け取ったアンリエールは丁寧に一礼すると、すぐさま控えていた黒服の男にデータを送信しながら指示を伝え始める。

 

「ダスティン、街にいる組員全員にこのデータを配布なさい。画像の人物と特徴の一致する者を見つけ次第拘束、この場へ連れてくるように。目撃証言もこの街から一滴残らず搾り出しなさい!」

 

 はっ、と短く返答すると、黒服の男は街の雑踏の中へと姿を消した。

 

「さぁユウ様、捜索が終了するまで少々お時間が掛かりますわ。それまでゆっくりと貴方様のお話を聞かせて下さい♪」

 

 ひし、とユウの片腕に抱き付くアンリエール。

 そういうものだという認識が追いついたのか、ユウは抵抗せずに受け入れると静かに問い掛けた。

 

「……さっきから随分と親しく接してくるが。どういう心境の変化だ?」

 

 何の包みもない『どストレート』を放つユウに、アンリエールも負けじと直線剛速球を投げ返した。

 

「私、一人の女としてユウ様をお慕いすることに決めましたわ♪」

「はぁ!?」

 

 どこか予想はしていたものの、声を上げずにはいられなかったクラド。

 そんな素っ頓狂すらどこ吹く風といった様子で、アンリエールの告白は熱を帯びていく。 

「私……殿方にデュエルで負けたのはお兄様以外では初めてでしたの。負けた瞬間はそれこそ頭がどうにかなってしまいそうな程悔しかったのですが……全てが終わったとき、それは全てユウ様への溢れんばかりの愛と変わっていたのです!」

 

 自分より強い男に恋心を抱く乙女、とはよく聞く話だが。

 相手が決闘組の令嬢とあれば、考え無しに両手を挙げて喜ぶわけにもいかない。

 

「愛、だってよセンセー」

「……弱ったな」

「私を舞台の主役から引き摺り下ろす強引さ! 野蛮な高レベルモンスターと慎ましきローレベルモンスターを織り交ぜ使役する繊細な手腕! ユウ様はまさしく今のラムジョレーンに求められている優秀な遺伝子の持ち主だと、はっきり分かったのです!」

 

 語り舞う様子はまさに舞台劇。スポットライトの1つでも当たっていそうな……と思いきや、本当にスポットライトが当てられている。

 見れば大掛かりな照明器具の傍で汗を垂らす、赤髪の美少女が1人。

 

『……そろそろ、お暇しても宜しいでしょうか?』

 

 賭け品譲渡が完了かどうかを見極められず、その場に留まり演出係まで務めた過労死審判員ネフは、うんざりした様子でそう呟いた。

 

 

   **

 

 

「ここへはただの観光で訪れただけですわ。組の仕事とは何の関わりもありません」

 

 アンリエールはようやく、ほんの少しだけ落ち着きを取り戻し。今はお互いの経緯を話し合い終えたところだった。場所は変わり、近くのカフェに腰を下ろしている。

 場所を変えて大丈夫なのかと問うクラドに対し、アンリエールは興味無さそうに「連絡は致しました」と短く応えただけだった。

 通りに面したテラス席なので、すぐに目に付くだろうとクラドも半ば強引に納得することにした。部下の黒服の気苦労を想いながら。

 

「教養を深めるようにとお兄様からのご提案でしたが……正直、ここの遺跡よりも途中で立寄った大衆市場の方がまだ興味をそそられましたわ」

 

 店で一番値の張るハーブティー『ブラックローズヒップ』を優雅に啜りながら、アンリエールは淡々と話す。

 

「へぇ。その辺の感覚は俺らとあんまり変わらねーんだな?」

「不快害虫さんと一緒にしないで下さいな。傷が付きます」

「何にだよ!?」

 

 ユウとクラドとで露骨に対応を変えるアンリエール。商売柄、順応力の高いクラドはもう扱いに慣れたようだが。

 

「しかし『闇のゲーム』ですか。ユウ様も随分と眉唾なモノをお探しで」

「……本当に、眉唾なら良いんだがな」

 

 そう言ってどこか遠い目をするユウに、クラドは眉を寄せた。

 どうにもユウは、何かを隠している。引っ掛かるような物言いを今こそ問いただそうとクラドが口を開きかけたそのとき。遮るようにユウが質問を被せてきた。

 

「アンリ。お前の持つ《―**―》についてだが」

「……え? あ、はい! ここにありますわ♪」

 

 ユウの物憂げな表情に見惚れていましたとでも言わんばかりの反応で、アンリエールは慌ててデッキから『それ』を取り出した。

 見かけには普通のモンスター・エクシーズと何ら変わりは無い。

 

「何か、これについて知っていることは無いか?」

「そうですわね……我が家に代々伝わる歴史あるカードであることと、一般的にはほとんど存在を知られていないこと、この2点でしょうか。公式試合で使用を禁止されていたのも、そういった経緯で余計なトラブルを招かないようにとの配慮でしょう。恥ずかしながら、このカードに関して知っているのはその程度ですわ」

 

 申し訳無さそうに目を伏せるアンリエール。

 机に置かれたカードを眺めて、ふとクラドがある異変に気が付く。

 

「……歴史ある、って言うには随分とカードの状態が良いな?」

「当然です。ラムジョレーンの管理能力を持ってすれば、この程度」

 

 ふふん、と得意げに目を流すアンリエールに口を噤んだクラドだったが、ユウとしても納得できない節があった。

 丁寧に保管・管理を続けたといっても、ここまで良い状態が保たれるのは『コレクションケースの中で』と条件が付いた場合にのみだ。アンリエールの言葉が正しいなら、このカードは何度か、いや公式戦を除けば歴代当主全てのデュエルで使用されたかもしれない可能性すらある。いくら手入れを欠かさず行っても、それだけデュエルの年数を重ねれば綻びは必ず現れるものだ。

 アンリエールが嘘を付いているようにも思えないが、ともかくこの《―**―》達には何かしらの曰くがついて回る。日の下ですら奇妙な雰囲気を醸し出すソレに、ユウは改めて警戒を強めた。

 

「……分かった、ありがとう。仕舞って貰って大丈夫だ」

「いえいえ♪ 決闘者としてレアカードに興味を持つのは当然の本能ですもの♪」

 

 ユウの感謝が余程嬉しかったのか、アンリエールは鼻歌でも歌い出す勢いでカードを仕舞い込む。

 

「あれ、ユウさん? クラドさん?」

 

 不意に見知った声が掛けられる。

 

「丁度良かったです。ちょっと急ぎで連絡したいことがあって――って、」

 

 振り返ってみれば、観光エリア組のベルと藍がきょとんとした様子で立っていた。

 

「えっと、その方は?」

 

 2人の視線は自ずとアンリエールへ向けられている。

 漆黒のドレスを纏うその姿はやはり、この2人を前にしても人目を引くらしい。

 

「あー、紹介しよう。今回成り行きで俺らに協力して貰えることになった――」

「ユウ様の将来の伴侶、アンリエール・ラムジョレーンですわ。以後、お見知りおきを」

 

 余計なことを口走らないようにと奮闘したクラドの努力空しく。にっこりと微笑んだアンリエールが全ての配慮を上書きして2人に爆発物じみた自己紹介を叩き付けた。

 

「へぇ、伴侶……えぇぇ!?」

「まぁ」

 

 予想通りの全力リアクションを取るベルと、大人らしく言葉半分に受け取った様子の藍。

 藍の方はまだ良しとして、ややこしくなりそうな雰囲気にクラドは頭を抱えた。

 

「え? あ、あの伴侶ってどういう」

「騒がしいですわよ、礼儀を弁えなさい。いくらユウ様の下女とはいえ、これには私も口を挟ませて頂きますわ」

「げ、下女!?」

「いや、あのなお嬢。この子はそういうんじゃなくてだな……」

「不快害虫さんはお黙り下さい。まずはこの不躾なネイティブの下女を再教育する必要がありそうですわね」

「ふかっ……!?」

 

 かちん、とベルの揮発性豊かな堪忍袋に火が灯る。

 ベルの怒りパターンを熟知しているメンバーは皆、やっちまったとばかりに目を逸らした。

 

「い、いきなり現れて!! 失礼なのはどっちの方ですか!? わたしはともかくクラドさんにまで!!」

「街中で馬鹿みたいな大声を上げないで下さいな。不恰好に大きいのは、そのみっともない乳袋だけで結構です」

「みっ!?」

 

 うんざりした様子で手をパタパタと仰ぎながら、アンリエールはベルの不恰好に大きいソレを視線で差しながら言った。

 確かに自慢するようなものでも、何か役に立つ様なものでもないかもしれない。しかしこの身体は両親から貰った大切なもの。それを貶されたベルの怒りは更に熱を帯びていく。

 

「お、お胸は関係ないじゃないですか!! それにみっともないって何です!?」

「喧しい。貴女には貞淑さが足りないと言っていますのよ。隣の婦人を見習いなさい、その静かな佇まいに相応しい慎ましきバスト。あれぞ世の女性が目指すべき淑女の姿ですわ」

 

 ぴし、と何かに罅が入る音がした。

 どうなっているのか確認するのが恐ろしくて、クラドは首の位置が決して動かぬようにしっかりと手で固定した。目を合わせたら多分、石化の呪いでも掛かりそうなので。

 

「そこの婦人とユウ様がどのようなご関係なのかはともかく……私もその見事な慎ましさは見習いたいものですわね。まだまだ世界も広いということですか……まぁ、負けるつもりは更々ありませんが」

 

 壊れかけた淑女のハートに、容赦なく紅蓮の弓矢が放たれる。

 無慈悲な追撃の前にLPを削り取られ、瀕死状態でその真価を発揮する彼女のバーサーカーモードは――その蒼い猛炎を披露する間もなく、呆気なく灰燼と成り果てた。

 

「……うお!? 何か雰囲気違うと思ったら、姉ちゃんが日陰の隅のほうで『A』の文字を書いては消し、書いては消しを繰り返している!? あの姉ちゃんをこうも簡単に退けるとは……これが天才決闘者の成せる技か!?」

 

 恐るべき口先の魔王・アンリエールに改めて戦慄を覚えるクラドだったが、まだ希望は残っている。凹凸コンビの凸の方、我らが巨乳メイド・ベルが未だ元気に食い下がっているのだ。

 

「藍さんにまで!? いい加減、あなた基準で話す暴言を止めて下さい!! 世の中にはお胸が小さくて悩んでる女の人だっているんですよ!?」

「あ」

 

 果敢な戦士・ベルが振り上げた剣はその手をすっぽ抜け――あろうことか、後方で倒れていた僧侶・藍の頭にズブリと突き刺さった。まさに痛恨の一撃。

 

「やめたげてよぉ!! 姉ちゃんのLPはとっくに0なんだぞ!?」

 

 バッ、と思わず藍の下へ駆け寄るクラド。小さく丸まった背中を摩ってみたものの……小さく肩が震えているのを見て、クラドは思わず涙を零した。

 

「大丈夫だ姉ちゃん、需要はあるさ……需要はッ……!!」

「……そろそろ良いか。話を戻したい」

 

 魔王アンリエールとの戦いで唯一無傷だったユウは、事態が収拾出来そうなタイミングでそう呟いたのだった。

 

 

   **

 

 

 カセにおける『白面の女』捕獲作戦は結局、夜になるまでラムジョレーン組員がくまなく捜索しても事態は好転せず。当の本人の身柄はおろか、行く先すらも掴めず終いだった。

 たった1つ。『白面の女』は『闇のゲーム』を本当に引き起こしたという証言だけを残して。

 

「……どうも奴さん、尻尾を掴むのも難しいらしいな。おまけに逃げ足も速い。目的地は同じくシガマと共通してるが、この調子じゃそのシガマでも捕まえられるかどうか」

 

 顎に手を当て考え込むクラド。なまじその存在に現実味が増した分、雲を掴むような感覚が逆に不気味に感じられる。

 今は宿泊している宿のロビーに、ついて来たアンリエールを含めた5人が顔を並べ、状況を整理している最中だ。

 

「大会の出場が目的、とは限らないものね……今回のように被害者を出したら、すぐに街を出てしまうかも知れないわ」

 

 すっかり立ち直った藍が、クラドの不安に言葉を添える。

 白面の女が『闇のゲーム』を行っていると分かった以上、その目的が大会出場とは限らない。街に集まった決闘者を闇のゲームの標的とする為だという可能性も出てきた。

 ここでふと、クラドは何か思い出したように顔を上げた。

 

「……そういやセンセー。何でアンタ『姉ちゃん達から報告を受ける前』に『白面の女が闇のゲームを行う』ことを知ってたんだ?」

 

 アンリエールと対峙したあの時。ユウは確かにこう問い詰めた。

 

 ――1つ尋ねる。お前が『闇のゲーム』を仕掛ける『白面の女』か。

 

 まるで最初から知っていたような口振り。

 しかしユウは、そんな問いに静かに頭を振って答えた。

 

「……思い違いだな。俺はその問いのどちらを否定するか肯定するか、その反応を見極めたくて『鎌を掛けた』だけだ。実際のところ、本当に両者が繋がるとは思っていなかった」

「そういえばそう聞かれましたわね……さすがはユウ様、聡明ですわ♪」

 

 ユウの弁明に、アンリエールが黄色い声を上げる。

 

「……成程、な」

 

 どこか腑に落ちない点はあるものの、クラドはそれ以上の言及は控え前に進むべく提案を促した。

 

「まぁとにかく、俺達が今後取るべき選択肢は1つだ。『白面の女』にこれ以上遅れを取らないように、出来るだけ早くシガマへ向かうこと。寄り道もこれからは極力減らしていく。予定より少し早めに着いちまうかもしれねーが、この分じゃそれ位が丁度良いと思う。どうだ?」

 

 それはつまり、現状のメンバーだけで大会に臨むということ。

 4人が最低限のラインとして定められている以上、どんなルールが設けられるかは定かでないが――恐らくフルメンバーで闘わなければならないだろう。

 自然と圧し掛かるプレッシャーに息を呑みつつ、ベルは他のメンバーと同じく首を縦に振った。

 

「決定だな。それじゃ早速――」

「明日の早朝、ここを発ちますわよ。各自準備を怠らずお願いしますわ」

 

 得意げにそう締め括ったのは、何故かアンリエールだった。

 

「いや、あのなお嬢。こっから先はもう俺らだけで」

「何を言ってますの? 白面の女を捕らえよ、とのユウ様の申し付け。私まだ果たしていませんもの。良い機会ですから私もこの旅に同行させて頂きます」

「「はぁ!?」」

 

 二度見しつつ声を上げたのはクラドとベル。ユウは相変わらず、藍はどこか諦めたように苦笑していた。

 

「いやついて来るってな……あの黒服のオッサンたちも纏めきれるほどウチの旅団は――」

「ついて行くのは私1人だけですわ」

「なら尚更だ! 決闘組の令嬢を迎え入れるほど立派な設備は――」

「私用のキャンピングカーがありますから。ソレを貴方の車に繋げて引いてくれれば結構です。負担になる燃料や物資はこちらで援助致しますわ」

「……親御さんに連絡を」

「教育係のお兄様からはもう許可は頂いております♪ ユウ様にお仕えし、世界を回るのも良い教養になるだろうと快く承諾して下さいましたわ♪」

 

 ユウの問いに関してだけは声色を変えて返すアンリエール。まるで魔法少女が変身でもするような変わりようだ。

 貴き決闘組とはいえ、その辺りは『可愛い子には旅をさせろ』精神なのだろうか。随分と奔放な教育をするお兄様である。

 

「で、でもでも! 有名人ってせいで、大会に出て貰えるかどうかすら分からない人を仲間にするのは!」

 

 話が纏まりそうな雰囲気を察してか、ベルが1人噛み付く。

 

「このアンリエール・ラムジョレーン。ユウ様の為なら、この腕を存分に振るう所存ですわよ? 少なくとも、決闘者経験の薄い貴女よりはお役に立って魅せますわ」

「ぐ」

 

 今度は瞬殺。少なくともアンリエールに口喧嘩で勝てる者はメンバーの中には居ない。

 アンリエールの強引なメンバー入りは、彼女が主導権を握ったままに可決されたのだった。

 

「それでは改めまして。今後ともよろしくお願いしますわね、皆様♪」

 

 軽く一礼して、幽霊姫はにっこりと微笑んだ。




~今日の最強カード~

―**―(アスタリスクス)怪黒兎(ファントム)
★4/闇属性/獣族・エクシーズ・効果/ATK 2100/DEF 1000

レベル4モンスター×2
このカードは自分フィールド上のランク3以下の(エクシーズ)モンスターの上にこのカードを重ねてX召喚する事もできる。このカードがX召喚に成功した時、このカードのX素材の数まで相手フィールド上のカードを選択し、裏側表示にする。
①:このカードのX素材を1つ選択して発動できる。次の相手ターンのエンドフェイズ終了時まで、このカードは選択したX素材と同名カードとして扱い、同じ効果を得る。
②:このカードが破壊され墓地へ送られた場合、このカードが持っていたX素材の数まで相手フィールド上のカードを選択し、裏側表示にする。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。