遊戯王*ASTERISKs*(アスタリスクス)   作:kohatuka

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第17話 開幕、SSC!

「中々にご盛況……みてーだな?」

 

 元々、様々なスポーツやイベントを運営する為に作られたこのシガマアリーナは、平時のまばらな客席が幻だったかのように人々の熱気で溢れていた。

 

「ネイティブに住む人たちにとっても、数少ないイベントですからね。盛り上がるのも何となく分かります」

「そうでなくとも、宣伝は結構大規模だったみたいだし……他の大陸からもわざわざ足を運んだ人も多いんじゃない?」

 

 ベルと藍が、各々の立場から感想を述べる。

 辺境を放浪していたユウ達の耳に入ったのは少しばかり遅れたようだが、裏を返せばそんな彼らにも届くほどに大きく宣伝していた、ということなのだろう。

 

「そういえば……参加旅団の皆さんも、この辺りじゃあまり見ない服装の人達が目立ちますね」

 

 アリーナの中心に位置する芝生の競技場の中、立ち並ぶ決闘者たちを眺めながらベルが感嘆した様子で呟いた。

 良く見かける『旅の一団』も多数見受けられるが、中にはアンリエールと同じような華美な服装を纏う『外者(ソトモノ)』も目立つ。

 品定めをするように他の参加者を見渡す者。他者のことなど気にも掛けず、暇そうに欠伸を欠く者……多種多様な決闘者達は、それぞれの思惑を浮かべていた。

 

「つか、ゲストチームとやらはドコに……ほほー、お高いところでご見物なさってら」

 

 豪華ゲストたるプロの面々は、客席中央の主賓席で優雅に腰掛けていた。その表情までどこか緩んで余裕に満ち溢れている。どうにもその様子が癪に障ったらしく、クラドが口元を引き攣らせて呟いた。

 

「仕方ありませんわ、あの方々は『正真正銘の』プロデュエリストですもの。マスコミにちやほやされているだけの、どこかのジュニアとは違ってね」

 

 いつも余裕溢れる彼女の意外な一面に妙な親近感が沸いて、ベルはくすりと笑みを溢した。溜め息をついたアンリエールの横顔に、大きく『悔しい』と書いてあったからだ。

 

「ま、いずれは私の足元に下して差し上げる予定ですけれど」

 

 その反対側には『負けるものか』と、殴り書きされていたようだが。

 

「……そろそろ、始まるようだ」

 

 参加者達が見守る中、中央に設置されたステージからスモークが溢れ出す。

 刹那、アリーナにARが展開されその光景が塗り換わっていく。

 

「おいおい……こんな大掛かりなAR、一体どれだけ金掛けてんだよ……?」

 

 モデルは恐らく、『文明の白』に実在する最先端科学の結集した巨大アリーナだろう。

 あちこちに浮かび上がったモニターには決闘者達の顔が映り込み、色とりどりの花火のような光がそこら中ではじけ飛んでいる。

 パールホワイトの外壁には葉脈のようにパイプが走り、血液の如く用途不明の光粒子が流れていく。そんな様子を、子供達が顔を光で照らしながら面白そうに眺めていた。

 先程までのシガマアリーナが石器時代の建造物とさえ思えてしまう、まさに近未来の産物だ。

 

『レディース・エーンド・ジェントルメーン!!』

 

 そんな光り輝く舞台の中心に降り立ったのは決闘者達には馴染み深い、華奢で騒がしい2人組。

 

『……姉さん。その台詞はこの場に相応しいようで、相応しくありません』

 

 審判員機構、コーパル&ネフ。コスチュームは露出の際どいチアガール姿だ。

 

『メタい立場へ更なるOne Step!! 今大会の司会を勤めさせて頂きます美少女審判員コーパルちゃん只今参上♪』

『貴方と、ビリ×Buddies。副司会を努めますネフです。尚、えっちぃ目線はご遠慮下さい』

 

 ぺこり、とネフが頭を下げたのを皮切りに沸き上がる会場もなんのその。コーパルはハイテンションに口火を切った。

 

『さてさて、観客席の皆様? 本日はSSC、通称『シガマのステキなチャンピオンシップ』にご来場下さいまして、まことにありがとうございます♪』

 

 初めて知らされた大会名にどよめく会場。

 なんぞそれというツッコミすら待たずして、ネフが代わって言葉を繋げる。

 

『……本大会は、各大陸代表国がスポンサーとなる最大規模のデュエル大会となります。要するに国の奢りという訳です。ですのでご安心して飲むなり食うなり、観るなりをお楽しみ下さいませ』

 

 投げやりな彼女らの『いつも通りな』説明に、決闘者サイドから失笑が漏れた。

 これも愛嬌だとざわつく会場に、突如として一喝が入った。

 

『そんでもってですねー、参加者の皆様に一言申し上げます……決闘者共ぉ!! 気合は十分かぁ!?』

 

 マイクをキーンと鳴らす演出まで混ぜて、コーパルが力の限りに叫ぶ。

 突然の怒声にビクッ、と一斉に決闘者達の肩が上がったのは言うまでも無い。

 

『勝ちたいかぁ!? 優勝商品が欲しいかぁ!?』

 

 そう叫んでマイクを決闘者達へ向かって突き出すコーパル。

 要するにアレだろ? と何となく空気を読んだ半数が、お~と気の抜けた返事を返して右腕を上げた。

 

『……と、参加決闘者達もこの通り元気いっぱいのようですので、火花散らす白熱した試合にご期待下さいまし♪』

 

 いささか疑問の残る『元気』ではあったが、ひとまず彼女らのやりたいことはやり終えたらしく。その後はゲスト旅団による選手宣誓と中継による各国首脳からの挨拶など特に面白くも無いイベントが続き、いよいよもって大会に関する説明が始まることとなった。

 

『それではお待ちかね……今大会で適用される新ルール発表です!!』

 

 ふりふりとコーパルが小躍りしながら宣言したその瞬間は、恐らくこの開会式で最高潮の『盛り上がり』を見せただろう。

 

『それでは、コチラの大モニターをご覧下さい』

 

 ネフが手をかざすと、アリーナ中央に巨大なモニターに箇条書きの項目が表示された。

 

『これが今大会で試験的に適用される新ルールの主な変更点となります』

 

1.先攻プレイヤーのドローは無し。

2.フィールド魔法は互いのフィールドにそれぞれ発動可能。

3.新型モンスター「ペンデュラム」の導入と、それに伴ったフィールドへの「ペンデュラムゾーン」設置。

 

 会場の『どよめき』は、このときが最高潮だっただろう。

 項目1から既に度肝を抜かれるような発表。加えて正体不明の新型モンスターの登場……それでも決闘者達が落ち着いていられたのは、本能的に新ルール適用後のデッキを脳内で構築し始めていたからだろうか。

 無論、経験の少ないベルは突然の衝撃にわたわたと手を宙に泳がせるしかなかったのだが。

 

『他には、決闘者の皆さんにしか分からないような細かい裁定の変更などですので、まとめて皆さんのDパッドへテキストを送信させて頂きました♪ 旧型ディスクしか持っていない旅団の皆様には、後ほど小冊子をお配りします~』

『尚、新型のペンデュラムモンスターに関しては『一般的には』まだ市場に出回っていないカードですので、ご了承下さいませ』

 

 ネフの補足説明を聞いて、クラドが呆れたように溜め息をついた。

 

「……成程、連中はそういう腹か?」

 

 クラドが見据える先には、主賓席に腰掛ける『夢の旅団』の面々。

 ニヤニヤとモニターを眺めているが、恐らく大会の趣旨や新ルールの概要などは事前に聞かされていたに違いない。

 

「……彼らが既に新型モンスターを、ですの?」

「ああ。そうと考えるのが自然だろ? 要するにこの大会、新型モンスターのプロモーションも兼ねてるんだ。俺らは新型がどれだけ強いかを試す噛ませ犬ってトコだな」

「……最悪ですわ」

 

 げっそりといった様子のクラドとアンリエールとは対照的に、ユウと藍は至って冷静だ。

 藍に関しては、既にカタカタとキーを打ちながらメモを取っている。参加者としては冗談ではないが、実地潜入している記者という立場であれば新型のプロモーションを生で体感出来るなど『オイシイ』以外の何でもない。

 

『ではでは、これより大会のシステムについてご説明します~』

 

 波打つ動揺は、コーパルのそんな一言が見事に鎮めた。

 

『今回はA・Bの2ブロックに分かれての、旅団対抗トーナメント方式で勝ち残りを賭けて頂きます~』

『……各旅団の皆様には、レギュラーメンバー4名と最大3名までの補欠を登録して頂けたかと思います。基本的にはレギュラーメンバーの皆様で『シングル』を2戦、『タッグ』で1戦の計3戦を行い、2点先取で勝利となります』

 

 この予想はドンピシャだったらしく、クラドを始めとした各旅団のブレーン達から安堵の息が漏れる。

 そこへすかさず、コーパルの意地の悪そうな忍び笑いが木霊した。

 

『ふっふっふ……ですが、ただフツーのデュエルをしたんじゃあ面白可笑しくありません。そこで……』

 

 バン、という古めかしい効果音と共に大モニターへ張り出されたのは。

 

『良かれと思って、特殊デュエル決定ルーレットォ!! なんてモノを作っておきましたぁ!!』

 

 また余計なことを! という野次が飛び交う中、これでもかと大きく書かれた箇条書きの項目が再び決闘者達へ突き付けられた。

 

1.いつも通りなハーフライフ、4000デュエル!

2.実はコッチが正式、フルライフ8000デュエル!

3.俺達の満足はこれからだ! 仮想ライディングデュエル!

4.エンターテインメントでなければならない! 簡易アクションデュエル!

 

『この4つの異なる特殊デュエルが、3戦の中でランダムに適用されます♪』

 

 詰まるところ、これはどのデュエルが適用されるかによっても、自分や相手に有利不利が少なからず働くということでもあった。

 そうなると運の要素がかなり絡んでくる。4人のメンバーの内で誰がどこを担当し、より有利な相手にぶつけられるか……そんな果ての無い考察が終わっても、この運という壁が易々と立ちはだかるのだ。

 

「……一筋縄じゃいかねぇようだな。こりゃあ」

 

 新ルールの適用、新型モンスターの脅威。そしてランダムに設定される特殊ルール。

 トーナメント中に『白面の女』の旅団と当たれば御の字、程度に考えていたクラドであったが、そもそも勝ち上がれるかどうかすら、雲行きが怪しくなってくる。

 

『それでは続きまして、対戦トーナメントの組み合わせを発表します』

 

 続いて大モニターに映し出されたのは、木の根のように細かく枝分かれした2つのトーナメント表だった。根の先端には、多種多様な旅団の名前が連なっている。

 

「おっ、俺らはBブロックみてーだな」

 

 指をさしてクラドが微笑むも、そもそもの話。

 

「……そういえばクラド。俺たちの旅団の名前は何だ?」

 

 小首を傾げるユウを筆頭に、メンバーの注目がクラドに集まる。

 登録に向かったのはクラドだけで、慌ただしい中ですっかり忘れていた一行の旅団名は彼に一任されていたのだ。

 が、トーナメント表を横目で見ていたアンリエールが突然噴出したかと思うと、指をさしながらユウの肩を突いた。

 

「ぷっ、見て下さいましユウ様。にじいろ団などという名前の、センスゼロの旅団がございますわぁ」

 

 アンリエールがケタケタと嘲笑う中、どこかからギロリと睨まれたような気がしてベルが慌てて窘めた。

 

「ダメですよアンリさん! そんな風に笑っちゃ!」

「では、貴方は『にじいろ団』に僅かでもセンスを感じると?」

「それは……その」

 

 否定してはいけないという気持ちはあるが、ソレを肯定出来るかどうかというのは別問題だ。

 目線をあちらこちらに泳がせるベルを、アンリエールはそれみたことかとニンマリ口端を丸めて眺める。

 

「アンリちゃん? あんまりベルちゃんをイジメないで」

「あら、私は別に虐めてなどいませんわ。貴女の好きな真実とやらを述べたまでです」

「私が言うのも変だけど……例え真実でも、口に出して良いことと悪いことはあるのよ? あんな名前だって一生懸命考えた人がいるんだから」

 

 藍の言葉に「その通りだ」とコクコク頷くベル。

 

「そうですよ。ねぇクラドさ……」

 

 向き直ったベルが見たものは、

 

「そうだよな、いるもんな。ちゃんと一生懸命、考えた人が」

 

 目の端から光の粒を消費し続ける、悲しき男の姿だった。

 

「ああ、ちなみにな。ソレ、ウチの旅団だから」

 

 毒舌魔王アンリエールも、流石に口を噤んで目を逸らすしか無く。

 男が流した哀れな雫は、しとしとと競技場の芝生を濡らしていった。

 

 

   ** 

 

 

「結局、白面の連中は見つからなかった訳だが……」

 

 涙の跡が残るクラドが気を取り直したところで、控え室での作戦会議が開かれた。

 準備する時間もロクに取れず、試合は1時間後。簡単な調整だけを済ませて、小さな机を中心に5人の小さな円陣が組まれている。

 旅団名だけでは何がなにやら分からない上に、いくら見渡しても白面の女はおろかヒヨリの姿さえ見当たらない。もしや彼らは出場しなかったのだろうか、という不安が過ぎる中、ひとまず目の前に迫る試合に集中することになった。

 

「予選第1試合、先発は誰が行く?」

 

 そうと決まれば、真っ先に上がるのはこの議題。

 フンと得意げに鼻を鳴らして、アンリエールが口先を切る。

 

「無論ですわ、このアンリエール・ラムジョレーンが華霊なる1勝を」

「俺が行こう」

「はい♪ ユウ様ぁ♪」

 

 即決であった。

 藍は元より慎重派であったし、ベルに至っては緊張からか何度も深呼吸を繰り返している始末だ。参謀クラドとしても、ここは実力のあるアンリエールかユウを、と考えていたところだった。

 

「おっ、ヤル気十分だな。それじゃ頼んだぜセンセー?」

「ああ。期待に沿えるよう努力する」

 

 ユウの表情はいつもと同じポーカーフェイスで、落ち着いているように見える。

 だが――。

 

(……焦って、いるんですか?)

 

 彼の内情を知るベルだけは、そんなユウの横顔を不安げに見つめていた。

 きっとこれから先、彼はずっと一番手を立候補して。確実に『1勝』を得ようとしているのではないかと、そんな気がしてならないのだ。

 それは裏を返せば、ユウが自分達を信用していないという悲しい事実の表れではないのか。

 

(……ダメダメ! しっかりしろ、わたし!)

 

 椅子に腰掛け、いつも通りにデッキを眺め始めたユウの姿がどこか遠く見えたベルは、ぶんぶんと首を振ってから気付けのように頬を叩いた。

 

「ちょっ、なんですのいきなり!? 野蛮なネイティブ女はこれだから……」

 

 ぶつぶつと始まったアンリエールの文句も雑音ごと耳から流して、ベルもデッキを手に調整を始めたのだった。

 

 

   ** 

 

 

『ではでは~、続いてBブロック予選第3試合! 【にじいろ団】VS【AKATUKI】の試合を開始しますよ~♪』

 

 コーパルのアナウンスと共に、コートへと入場する一同。

 

「相手方のお名前も……何というかアレですわね」

 

 アンリエールの毒は幸いにして届かず、相手旅団の面々は不敵な笑みを浮かべている。

 ARで改変されているとはいえ、元はスポーツの競技場としても使われていたこともあって選手用のベンチが設けられていた。

 先発のユウ以外がそこへ着くと、ネフのアナウンスが続く。

 

『それでは、第1シングル戦を開始致します。対戦者はコートへお上がり下さい』

 

 かつん、かつん、と靴音を鳴らしながら、ユウが熱戦の舞台へと上がる。

 

「へぇ、アンタが俺のお相手か。お互い一番槍同士だ、ヨロシク頼むぜ?」

 

 待ち受けていたのは、髪を逆立てた快活そうな好青年だ。

 恐らくはユウと同じか、少し上くらいの歳だろう。服装はネイティブの旅団に良く見られる、荒野の長旅に適した茶褐色の服装だ。

 

「……ああ。よろしく頼む」

 

 ともすれば無愛想ともとれるユウの態度にも、青年は少し目を丸くしたかと思うとすぐさま獣のような眼光をその瞳に灯らせた。

 ユウが静かに構えたDパッドを見て、闘志十分と判断したのだろう。

 

「さっさと始めようぜってか? OK、審判ちゃんヨロシク!」

 

 少し遅れて展開した青年のディスクにデッキがセットされると、すぐさま2台のディスクがリンクしていく。既に会場にはARが展開されている為か、いつもの手順が省略される。

 

『それでは! 予選第3試合はシングル戦、そのルールを決定しますよ~♪』

 

 全試合をこんなテンションでやっていて疲れないのかという位の元気で、コーパルが持ち出したるはどこかで見たような紅白模様の円盤。ほぼ均等に8つに分けられた紅白模様には、それぞれ4つの特殊ルールが各2つずつ記載されている。

 

『アルティメットルーレット、ゴー!』

 

 おーっ、と右腕を上げるコーパルの合図と共に、紅白円盤が何とも言えない速度で回転し始めた。その3メートル程先には、吹き矢を構えたネフの姿が。

 

「おいおい、まじかよ……」

 

 げんなりとしたクラドの呟きが示した通り、ネフは可愛らしく頬を膨らませると。

 

『……ふっ!』

 

 へろへろと飛んだ吹き矢は、コーパルの持つ紅白円盤に着弾した。

 

『ああっ~と、これは残念たわし……じゃない! 大当たり《8000フルライフ》です! おめでとうございます!』

 

 騒がしくドンパフと紙吹雪を撒き散らすコーパルに祭り上げられ、ネフが得意げに胸を張った。

 何ともいい加減な方法で決まったように思えるが、実際にはコンピューターがランダムに決定したものを彼女達が面白おかしく演出してくれただけなのだろう。

 

「おっ、シンプルなヤツで助かったぜ! これで思う存分実力が出せるってモンだ!」

 

 何かを含んだ青年の笑みに、ユウも口端を僅かに歪めて応えた。

 

「……それは良かった。お互いにな」

「ははっ、言うねェ?」

 

 交わすべき言葉も、最早ここまで。

 

『ではでは、お待たせいたしました! 【にじいろ団】代表ユウ選手VS【AKATUKI】代表フリン選手、試合開始ィ!!』

 

 コーパルが高々と右腕を上げ。

 にじいろ団の行く先を占う、初戦の幕が切って落とされた。

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

 ユウ LP8000 VS フリン LP8000

 

 

   ** 

 

 

 コーパルとネフが投げた、白黒の賽が示したのは――。

 

「俺の先攻か! そんじゃド……ローは出来ねーんだったな?」

『そうですよ~? 既に先攻ドローをしてしまい失格になった選手もいますので、気をつけて下さいね~?』

 

 やぶさかでないコーパルの忠告に、両旅団からごくりと息を呑む音が聞こえる。

 出鼻を挫かれたようで少し調子を悪そうにしながら、フリンは5枚の手札の中からカードを選択しディスクに伏せた。

 

「モンスターを1枚、伏せを2枚でターンエンドだ!」

『フリン選手。まずは様子見といったところでしょうか?』

 

 好戦的な姿勢とは裏腹に、1ターン目で敷かれたのは手堅い陣形。

 初動の手札が1枚減ったことで、思うように動けなくなったのだろうか。

 

「……俺のターン。ドロー」

 

 対して後攻であるユウは十分に揃った手札を眺めると、思考を巡らせることなくすぐさまカードを切っていく。

 

「魔法カード《ソーラー・エクスチェンジ》を発動。《ライトロード・アーチャー フェリス》を捨て、デッキから2枚ドローをして2枚を墓地へ送る」

『あっと、ユウ選手が発動したのは強力な手札交換カード! 一体どんな【ライトロード】なんだぁー!』

 

 墓地へ送られたのは《光の援軍》《カードガンナー》の2枚。

 そんな光景を眺めながら、フリンが研がれたナイフのように鋭く微笑む。

 

「へぇ……【ライトロード】か。成程、こりゃ確かにお互いフルパワーでやれそうだな?」

「……《ライトロード・サモナー ルミナス》を通常召喚し、効果を発動。手札の《ライトロード・パラディン ジェイン》を捨て、墓地のフェリスを特殊召喚する」

「おやおや、つれないねェ?」

 

 問い掛けには答えず淡々とプレイするユウに溜め息はつきつつも、フリンは嫌な顔1つ見せずに進行を見送った。

 結果、ユウのフィールドには2体の女性モンスターが凛と並び立つ。

 

《ライトロード・サモナー ルミナス》

☆3/光属性/魔法使い族・効果/ATK 1000/DEF 1000

 

《ライトロード・アーチャー フェリス》

☆4/光属性/獣戦士族・チューナー・効果/ATK 1100/DEF 2000

 

『チューナーと非チューナーがフィールドに揃った……来るぞー!』

「☆3のルミナスに、☆4のフェリスをチューニング」

 

 飛び上がる召喚師を、弓兵が変化した緑光の輪が包み込んでいく。

 

「神秘を担いし封印の魔衣、白き契約に従い答えよ。シンクロ召喚、☆7《アーカナイト・マジシャン》」

 

《アーカナイト・マジシャン》

☆7/光属性/魔法使い族・シンクロ・効果/ATK 400/DEF 1800

 

 光の柱を割いて現れたのは、純白のローブを纏った魔術師。

 守備表示ながらも、目元の暗がりから覗く鋭い眼光がフリンのフィールドを捉える。

 

『決まった~! 初動ターンから速攻のシンクロ召喚だぁ~!』

「アーカナイト・マジシャンのシンクロ召喚成功時に、魔力カウンターが2つ乗る……」

「おっと! ソイツの効果は防がせて貰うぜ? 罠カード《ブレイクスルー・スキル》発動! そいつの効果をターン終了時まで無効にする!」

 

 自身も使用しているそのカードの効果を、ユウは静かに頷いて受け入れた。

 バチバチ、と電流のようなモノがアーカナイトを襲い、力無く膝を付く。

 

『……あらら。無効化されちゃいましたね~』

「カードを1枚伏せて、ターンエンド」

「動じねぇか。ま、この大会に出場したんならその位の気合が無いとな……それならエンドフェイズにコイツはどうだ? 永続罠《メンタルドレイン》を発動!」

 

 アーカナイトの破壊、もしくは無効化まではユウも想定していたのだろうが、ここでピクリとその無表情に小波を立てた。

 その変化を見逃さなかったフリンが、思わず口端を吊り上げる。

 

「お、やっと反応してくれたな? このカードは発動時にライフを1000支払うことで、フィールドに存在する限り『手札で発動するモンスター効果』を封じる……ま、その様子だと説明は要らなかったみてぇだがな?」

 

 フリン LP8000→7000

 

 発動されたカードに驚きの声が上がったのは、ベンチのベルからだった。

 

「手札のモンスター効果を……? そんな、それじゃあ……モゴ!?」

「お馬鹿! 分かり易く表情と声に出すんじゃありませんわ!」

 

 血相を変えてアンリエールが口を塞ぐも、ベルの驚愕を見たフリンは満足そうに頷くとウインクを送った。

 

「成程、やっぱりもう『抱えてた』訳だ。サンキュー、お嬢ちゃん♪」

「あ……」

「お馬鹿……」

 

 サーッと血の気を失っていくベルの隣で、頭を抱えたアンリエールが苛立たしそうに両足をバタつかせる。

 彼女達の反応が示す通り、ユウの手札には《オネスト》と《エフェクト・ヴェーラー》の2枚が握られていたのだ。

 

「さて、そんじゃ俺のターンだ。ドロー!」

 

 勢い良く引き抜かれたカードを満足げに一瞥し、遂にフリンが攻勢に打って出る。

 

「俺はフィールド魔法《アンデットワールド》を発動!」

 

 近未来的な会場の風景が一転、歪に曲がりくねった木々が生い茂る陰鬱とした沼地が出現する。そこかしこにアンデットモンスターが蠢く不気味なフィールドに、ベルは思わず身震いした。

 

「このフィールド魔法が存在する限り、お互いのフィールド・墓地のモンスターはアンデット族となり、アンデット族以外のモンスターをアドバンス召喚することは出来ない」

 

 おぞましいエフェクトとは裏腹に、それだけでは拘束力の弱い効果にほっと胸を撫で下ろすベルだったが、隣に座る幽霊姫は忌々しげに呟いた。

 

「……鬱陶しいのが来ましたわね。ユウ様なら問題無いかと思いますけれど」

「ああ、相手の戦略次第だが……奴さん、どうにもメタな色が強そうだしなぁ」

 

 アンリエールの呟きに対してクラドが答えるも、やはりそこには不安の色が混じる。

 2人のやりとりについていけない己の知識の無さを呪いつつ、ベルは必死に口を押さえて展開を見守った。

 

「更に、手札からコイツを召喚する! 来い《ゾンビキャリア》!」

 

《ゾンビキャリア》

☆2/闇属性/アンデット族・チューナー・効果/ATK 400/DEF 200

 

 等身の低い、腕だけが大きく膨れ上がった醜悪なモンスターが低く不気味な唸り声を上げる。真に恐るべきなのは、このモンスターがチューナーであることだろう。

 

「そして伏せていたモンスターを反転召喚! 《ゴブリンゾンビ》!」

 

《ゴブリンゾンビ》

☆4/闇属性/アンデット族・効果/ATK 1100/DEF 1050

 

 カードの反転と同時、片手に剣を握った骨だけのモンスターが飛び出す。

 ステータスこそ低いものの、その真価はアンデット族らしく墓地に眠ってこそ真価を発揮する。フリンはまさにそれを、言葉ではなく行動で示そうとしていた。

 

「俺は☆4のゴブリンゾンビに、☆2のゾンビキャリアをチューニング!」

 

 闇に包まれたフィールドに振り注ぐ、神々しい光の柱。

 

「不屈の竜魂、宵闇の加護を受け今こそ蘇れ! シンクロ召喚! ☆6《デスカイザー・ドラゴン》!」

 

 フリンが指を鳴らすと共に現れたのは、腐食した身体を引きずりながらも圧倒的なプレッシャーを放つ、青炎を纏いし亡骸の竜。

 

『おっとぉ、ここでフリン選手もシンクロ召喚だぁ!』

「デスカイザーの効果を発動……する前に、俺はシンクロ素材として墓地に送られたゴブリンゾンビの効果を発動させる! デッキから守備力1200以下のモンスターを手札に加えさせて貰うぜ?」

 

 コーパルの実況を得意げな表情で聞き届けてから、フリンはデッキから排出された1枚のカードをユウへと見せ付ける。

 

「選択したのは……俺の相棒、《茫漠の死者》!」

「……成程、な」

 

 相棒、と呼ばれたそのカードの効果を知るユウは、静かに目を瞑って納得したように頷いた。

 

「続けて、デスカイザーの効果を発動! 特殊召喚成功時、『相手の墓地の』アンデット族モンスター1体を攻撃表示で俺のフィールドに特殊召喚する!」

 

 アンデットワールドの発動はこのカードの効果を生かすため――フリンの狙いを理解したベルの前に、衝撃的な光景が展開される。

 

「《ライトロード・アーチャー フェリス》は……頂いてくぜ?」

 

 光の騎士団に仕えていた頃の彼女の面影は無く。濁った瞳が元主人を不気味に射抜く。

 紫色の魔法陣から這い出てきたのは、無残にも身体の所々が腐食した女弓兵だった。




と。
そんな訳で、これより本作もマスターズルール3を適用していきます。
ライフだけは基本的にアニメ基準の4000ですが、ご了承を。



~スーパー宣伝タイム~

コミックマーケット87に当選しました(白目
Pixivの方で載せてるエロ絵まとめ本の他、拙作『遊戯王アスタリスクス』を文庫本ぽくしたものを販売する予定であります。
挿絵の他、微妙なオマケなどを収録しましたので、今冬の戦に望まれる方がいらっしゃいましたら、帰り際にでもゼヒゼヒ遊びに来て下さい。

暇そうな男が、恨めしそうに他のサークルを眺めているかと思います。

サークルスペースは『3日目東エ03b』デス。
それでは、何卒よろしくお願い致します~。
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