遊戯王*ASTERISKs*(アスタリスクス)   作:kohatuka

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第18話 フルパワー・フルスロットル

「さて、そんじゃバトルフェイズだ!!」

 

 操り人形と化したフェリスと死の竜を携え、意気揚々と宣言するフリン。

 そこへ、ユウの静かな声が割り込んだ。

 

「……バトルフェイズに入る前に、俺は罠カード《光の召集》を発動。手札を全て捨て、その枚数分だけ墓地の光属性モンスターを手札に加える」

 

 手札から送られたカードは《オネスト》《エフェクト・ヴェーラー》《ネクロ・ガードナー》の3枚。そして新たに加えたのはオネスト、ルミナス、ジェインだった。

 

『何とユウ選手、手札に2枚のカウンターカードを所持していたぁ!! これは勿体無い!!』

「へぇ、それだけ抱えてやがったのか。悪ぃコトしちまったな、だが……」

 

 流石に罪悪感が沸いたのか、フリンが苦笑しながら頬を掻く。

オネストの存在は予想していたものの、加えてヴェーラーまで。『相棒』の天敵としてこうして対策を打ち、警戒していたカードが2枚も隠れていた事実に僅かながらの戦慄が走った。

 しかしオネストを再び手札に戻す理由が分からず、どうにも妙だと首を傾げる。メンタルドレインが発動している限り、オネストの効果は使用できない筈なのだが。

 

(すぐに『どかす』手段がある……ってワケか?)

 

 そんな疑問も、ユウの挙動を見てすぐに瓦解した。手札と墓地を交互に確認したユウの『目』を、フリンは見逃さなかった。

 

「改めてバトルだ!! まずはデスカイザーでアーカナイトを攻撃!!」

「……墓地のネクロ・ガードナーの効果を発動。自身を除外してその攻撃を無効にする」

 

 不死の竜帝から放たれたのは、生者を凍てつかせる幽界の蒼炎。

 冷酷な吐息は容赦なく魔術師を襲うも、墓地から這い出た戦士の幻影が盾となって防いだ。

 

『容赦の無いフリン選手の攻撃!! しかしユウ選手も負けじと防いで見せたぁー!!』

「へぇ、ここで使うか?」 

「…………」

 

 ユウは無言のまま決して表情を崩さない。

 ちらりと控えの少女達にも一応目を向けてみるが、表情を悟られまいと口元を押さえている褐色の少女以外は難しそうな顔でデュエルの行方を見守るばかり。

 

(収穫なしか。ま、仕方無ねーな)

 

 フリンは決闘者らしく、素直にカチカチ思考を巡らせた。

 勿論次のドローにもよるが、ユウの手札ではメンタルドレインを崩す手立ては無いように思える。ともすれば単純に『壁』を残したかっただけなのか……。

 

(いや……違うな)

 

 自分がユウの立場であるならチューナーであるフェリスを取り返すことを何より優先するだろう。蘇生効果を持つルミナスがあるなら尚更だ。だとすれば狙いは必然。

 

「……OK、メイン2だ。ここは『乗って』やるよ? 俺はフェリスの効果を発動! このカードをリリースし、相手フィールド上のモンスター1体を破壊する!」

 

 ぴくり、とユウの表情が僅かに揺らいだのを、フリンは見逃さなかった。

 決闘者同士が腹を探り合うその最中で、戦場では腐食の弓兵が全身を光の矢と変え魔術師へと強襲する。朽ちた身で尚、その役目を全うしたのだ。

 爆散するアーカナイトの亡骸の向こうで、フリンが不敵な笑みを浮かべる。

 

「更にその後、デッキの上から3枚を墓地へ送る――残念、アタリは無しか」

 

 墓地へ送られたのは2枚の魔法カードと《ピラミッド・タートル》。

 ベルには知る由も無かったが、アンデット・デッキではメジャーな存在である《馬頭鬼》等の厄介なカードが墓地へ送られなかったことに『にじいろ団』のベンチから安堵の息が漏れた。

 

「どういうつもりだ、って顔してるな? 心配すんな、俺にも俺の狙いがあるんだよ」

「……そうか」

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ」

『フリン選手、相手のカードすら巧みに操る華麗な戦略を魅せてくれました!!』

 

 相手のモンスターを奪い、その効果を活用して見せたフリンの戦術に会場は盛り上がりを見せるその一方で、にじいろ団の面々には何か喉に引っ掛かったような難しい顔が並んでいた。

 

「うーん、奴さんも【ライトロード】の動きを知らない訳でもなさそうだけどなぁ?」

「直線的な性格の人みたいだから、そう捻くれた『狙い』でもないんでしょうけど……」

「ユウ様……」

「もご……」

 

 そんなベンチの不安など杞憂だとでも言わんばかりに、ユウは淡々とカードを引き抜く。  

「俺のターン、ドロー」

 

 ドローしたカードは2枚目の《ソーラー・エクスチェンジ》。

 確認するとすぐに、ユウはディスクへとカードを滑らせた。

 

「メイン1、俺は《ソーラー・エクスチェンジ》を発動。手札のジェインをコストにカードを2枚ドローし、デッキの上から2枚を墓地へ送る」

 

 墓地へ落ちたカードは《裁きの龍》に《ライトロード・ビースト ウォルフ》。

 

「……ウォルフの効果を発動。攻撃表示で特殊召喚する」

「ひゅー、そっちはアタリか。流石持ち主は違うねェ」

 

 そのまま拍手でもしかねないフリンの軽快な口笛を切り裂くように、雄叫びを上げて半獣の戦士がフィールドに降り立った。

 

『ユウ選手、ここで特殊召喚モンスターを引き当てたぁ!!』

『流石です。持っていますね』

 

《ライトロード・ビースト ウォルフ》

☆4/光属性/獣戦士族・効果/ATK 2100/DEF 300

 

「手札からルミナスを通常召喚し、効果を発動……手札の《ネクロ・ガードナー》をコストに、墓地のフェリスを特殊召喚」

 

 ソーラー・エクスチェンジでドローしたカードの内、1枚は2枚目のネクロ・ガードナーと分かったところで、フリンは思わず舌を巻いた。

 フェリスを墓地へ置いたのは自分の意図があったとはいえ、お互いに負けられない『一番槍』同士のデュエル、それ位でなくては面白味が無い。

 

「☆3のルミナスに、☆4のフェリスをチューニング」

 

 アンデットワールドの演出は先程のように『奪われた』ときにのみ適用されるのか、紫のオーラを纏いながらも精錬な姿を取り戻したフェリスとルミナスが宙へと飛び上がる。

 

「古の守り手、伝説の彼方より再来せん。シンクロ召喚、《ライトロード・アーク ミカエル》」

 

《ライトロード・アーク ミカエル》

☆7/光属性/ドラゴン族・効果/ATK 2600/DEF 2000

 

『ここで出ましたぁ!! ライトロード専属の超強力シンクロモンスターです!!』

(やっぱり来やがったな、ライトロードのエースシンクロ……!!)

 

 フリンが想定していたメンタルドレインを取り除く手段。その第一候補がこの黄金の竜騎士だった。【ライトロード】が抱える有名な除去カードだ、予測するには難しくない。

 

「ミカエルの効果を発動。1000ポイントのライフを払い、メンタルドレインを選択しゲームから除外する」

 

 ユウ LP8000→7000

 

「させねぇよ! チェーン発動、罠カード《スキル・プリズナー》! 自分フィールド上のカード1枚を選択し、このターン中に選択されたカードを対象として発動したモンスター効果を無効にする! つまりだ……」

 

 スキル・プリズナーのカードに現れた鎖のエフェクトがそのまま隣のメンタルドレインへと巻きついていく。ワンテンポ遅れて放たれたミカエルの剣戟は、この鎖によって容易く弾かれてしまう。

 

「選択したカードに触れたヤツは皆、腑抜けになっちまうってコトだ!」

『あ~っと!? フリン選手ここで会心の罠カードが発動したぁ!!』

 

 この手のカードにありがちな『対象にならない』効果でもなく、対象となった相手モンスターに付加する効果でもない、という珍しい効果を持つこのカードは、有効範囲こそ狭いものの防御性能は強固だ。

 先程のように既に効果が発動されてからでも問題なくチェーン発動でき、複数のモンスターから同時に狙われる心配も無く、更に罠の効果が通用しない相手にも力を発揮出来る。

 そして、このカードが最も厄介なのは。

 

「まずいぞセンセー……これで少なくとも『もう一度』防がれちまう」

「くっ、あの殿方!! また面倒なカードばかり……!!」

 

 キーッ、と恋人を寝取られたかのようにハンカチを甘噛みするアンリエール。その反応に困惑しつつ口を塞いだままきょとんと首を傾げるベルに、クラドが補足説明を加えた。

 

「スキル・プリズナーはな、墓地から除外して再度同じ効果を発動出来るんだ。流石に墓地へ送られたターンには発動出来ないが……センセーも《スキル・サクセサー》って似たようなカードを使っていただろ?」

 

 もが、と驚きの声を上げてその厄介さを理解したベルは、眉をハの字に下げて再び戦場へと視線を移した。

 

「……だが、俺の墓地の光属性モンスターが5種類になったことで、俺は手札からこのカードを特殊召喚する」

「なっ!?」

 

 ユウの宣言に一瞬ヒヤリとしたフリンだが、僅かな条件の違いに胸を撫で下ろす。

 先程墓地へ落ちたライトロードの代名詞……アレが来てしまえば元も子も無い。

 

「《ライトレイ・ディアボロス》を特殊召喚」

 

《ライトレイ・ディアボロス》

☆7/光属性/ドラゴン族・効果/ATK 2800/DEF 1000

 

 期待はずれ、と言うには少々可哀想ではあるが、白と青の配色が美しい光の竜が姿を現した。逞しい両拳を見るに、ブレス攻撃よりも肉弾戦の方が向いていそうだ。

 荒々しく雄叫びを上げて、光の転生竜が不死の竜帝をその眼に捉える。

 

「バトル。まずはディアボロスでデスカイザーを攻撃」

 

 その外見通り、拳に光を纏ったディアボロスは両翼を羽ばたかせて肉薄すると、デスカイザーの胸元を抉り、軽々と打ち抜いて見せた。

 

 フリン LP7000→6600

 

「くっ……!!」

「続けてミカエルと……ウォルフで、ダイレクトアタック」

 

 一瞬迷うような間を空けてから放たれるユウの宣言と同時。光騎士団の誇る精鋭2体が放つ剣戟と槍術が風を切ってフリンへ迫る。

 

「……おっ?」

 

 一瞬呆気に取られたような顔をしたフリンだったが、どこか呆れたように苦笑を浮かべるとその大ダメージを一身に受け、大きく吹き飛んだ。

 

 フリン LP6600→1900

 

「痛っ~……」

 

 これで『条件』は整った、だが――。

 ゆっくりと起き上がったフリンはズボンを叩きながら、ユウへと問い掛けた。

 

「……さーて。一応聞くけどよ、どういうつもりだ?」

「何のつもりも無い。このデュエル、お互い全力を出すんだろう」

 

 ユウの目、というよりも意識のようなものが、ふとベンチへと向けられる。

 その『目』は恐らく彼らには届かなかっただろうが、フリンの観察眼はそれを見抜いていた。 

 

「お前の『全力』を受け切らなければ『師』として示しがつかない。だからだ」

 

 果たして、その言葉は届いたのかどうか。

 ベンチに座る面々にはそれぞれ表情が浮かんでいたが、口元を覆った褐色の少女だけはその表情が窺えなかった。

 

「成程、ね……なら遠慮なく打たせて貰うぜ、俺の全力をよ!」

「そのつもりだ。俺はこれでターンエンド。ミカエルの効果で、俺はデッキの上からカードを3枚墓地へ送る」

 

 墓地へ送られていくカードに厄介なものが無いことを確認する。むしろ《死者蘇生》というパワーカードが落ちていったことに安堵しつつ、フリンはすっと思いを巡らせた。

 

(俺の期待に、奴は応えて見せやがった訳だ。なら次は――)

 

 前のターン、フェリスをあえて墓地へと送ったのはある程度こうなること期待しつつのことだ。効果を使わずにフェリスを場に留めておけばここまで展開されることは無かったのに、だ。

 それでもフェリスを墓地へ返したのは、《裁きの龍》降臨というユウの『全力』に期待を膨らませた上で、自分のLPを2000以下にするという条件をいち早くクリアする為。

 しかしその意図は『このカード』を確認していたユウにも伝わっていた筈だ。ウォルフで攻撃をせず、1ターン跨いで攻撃を仕掛ければ『このカード』を出させずに完封できる可能性もあったのだから。

 それでも尚ウォルフで攻撃を仕掛けたのは……ユウの後ろに続く『彼女』の為と、そして立ち塞がるフリンに対しての期待があったのだろう。しかし今のままでは、その期待に100%応えることは出来ない。

 

「俺のターン……」

 

 頼む、俺のデッキ。最後の『鍵』を俺に引かせてくれ。

 そんな願いを込めて、フリンはカードを引き抜いた。

 

「ドロー!!」

 

 舞い込んだカードの枠は緑。

 魔法カードであることに一瞬心臓が跳ね上がったものの、それが『鍵』では無かったことに落胆し――すぐさま、その落胆はある種の期待へと変わった。

 

「……へっ、あくまでフルパワーでいけ、ってか? 俺は手札から魔法カード《成金ゴブリン》を発動!! デッキからカードを1枚ドローし、相手のライフを1000回復させる!!」

 

 ユウ LP7000→8000

 

 相手のライフを増やしてまでドローを行う、その意味。

 デメリットでしかないその効果が敵を貫く槍となるその瞬間は、刹那の静寂を破って訪れた。

 

「――よし!!」

 

 牙を剥いた獣のような満面の笑み。

 それはフリンが見事『鍵』を引き当てたことの証明でもあった。 

 

「このカードは自分のLPが2000以下の場合、手札から特殊召喚出来る……待たせたな、行ってこい相棒!!」

 

 意気揚々とディスクへ叩き付けられたそのカードは、不気味な不死者の世界を震わせながら姿を現した。

 

「《茫漠の死者》を攻撃表示で特殊召喚!!」

 

《茫漠の死者》

☆5/闇属性/アンデット族・効果/ATK ?/DEF 0

 

 腕だけが肥大化した、不恰好な包帯巻きのミイラ男。

 とてもフリンが全力を尽くした結果とは思えないその風貌とは相反し、放たれる不気味なオーラは確かに場を威圧していた。

 

「更に、茫漠の死者の特殊召喚成功時に速攻魔法《地獄の暴走召喚》発動!! このカードの発動トリガーは『相手フィールドに表側のモンスターがいること』『攻撃力1500以下のモンスターの特殊召喚成功時』だが……特殊召喚成功時に攻撃力が?の茫漠は攻撃力を0として扱う!! よって効果が発動し――茫漠の死者をデッキ・手札・墓地から可能な限り特殊召喚する!!」

 

 戦場を、客席さえも揺るがし。

 地を割いて2体の《茫漠の死者》が姿を現した。

 

《茫漠の死者》

☆5/闇属性/アンデット族・効果/ATK ?/DEF 0

 

《茫漠の死者》

☆5/闇属性/アンデット族・効果/ATK ?/DEF 0

 

「そして!! 特殊召喚に成功した茫漠の攻撃力は、相手LPの半分の数値となる!!」

 

《茫漠の死者》

ATK ?→4000

 

《茫漠の死者》

ATK ?→4000

 

《茫漠の死者》

ATK ?→4000

 

 一瞬にして並び立つ、圧倒的な死の気配。人間とほぼ等身大だったその背丈は、いつの間にか見上げるほどに巨大な姿へと変貌していた。

 静まり返るフィールドの中で、口元を覆うことすら忘れたベルがようやく捻り出せたのは絶望の声だった。

 

「こ、攻撃力……4000……?」

 

 ソレが引き金となったかのように、圧倒的パワーの魅力にあてられた会場は熱気に包まれる。

 

『これは圧巻!! 圧巻です!! 一瞬の間に攻撃力4000のモンスターが3体も並んだー!!』

『流石です。持っていますね』

 

 審判員達の実況を聞き届けると、それまでの緊張をほぐすようにフリンは長く息を吐き出してから言った。 

 

「……さて、暴走召喚の効果はまだ残ってる。お前もフィールドのモンスターを1体選んで、デッキ・手札・墓地から可能な限り特殊召喚出来るぜ?」

「特殊召喚可能なモンスターはウォルフだけだ。よって俺はウォルフを1体、守備表示で特殊召喚させて貰う」

 

 膝を付いたままの姿勢で、2体目の獣戦士が戦場へと引きずり出される。

 だが最早、そんな壁が1枚増えたところで押し寄せる4000の荒波の前では防波堤にもならない。

 

「行くぜ……バトル!! 攻撃力の低いウォルフから順に攻撃表示のモンスターへ攻撃!!」

「墓地に存在するネクロ・ガードナーの効果を発動。ディアボロスへの攻撃を無効にする」

 

 鈍い風切り音を上げて、茫漠の死者の巨大な拳が断頭台の如く次々と振り下ろされていく。成す統べなく破壊されていく光騎士団のモンスター達だったが、唯一その惨劇の中で生き残ったのはネクロ・ガードナーの加護に守られたディアボロスだけだった。

 

 ユウ LP8000→4700

 

「へっ、そこまでは折込済みだぜ!? メイン2、俺は☆5の茫漠2体でオーバーレイ!!」

『何と、ここでフリン選手まさかのエクシーズ召喚っ!?』

 

 攻撃力4000のモンスターが、紫の光球となって螺旋を描き天へと昇る。

 それだけでも強力なモンスター2体を糧として生まれるモンスターのプレッシャーに、会場の空気が一気に引き込まれていく。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!!」

 

 光の渦に光球が飛び込んだ刹那、巻き起こる大爆発。

 その最中に、《61》の刻印が紅い輝きを伴って浮かび上がった。 

 

「現れろ、俺の隠し玉!! ★5《No.(ナンバーズ)61 ヴォルカザウルス》!!」

 

 溶岩を湧き上がらせる火山のような球体から一転。牙か角のような黄金の突起を体中に纏った紅蓮の恐竜へ姿を変え、爆誕の産声を上げた。

 

《No.61 ヴォルカザウルス》

★5/炎属性/恐竜族・エクシーズ・効果/ATK 2500/DEF 1000

 

『な……《No.》!! 《No.》です!! 世界にただ1枚の超強力カードがここでお披露目だぁ~!!』

「ヴォルカザウルスの効果発動!! 相手フィールド上の表側モンスター1体を選択して破壊し、その元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!! 焼き尽くせ、『マグマックス』!!」

 

 ヴォルカザウルスの両胸にある突起部分が開き、フリンの熱い咆哮をそのまま形にしたような紅蓮の炎がディアボロスへ向けて発射される。

 白と青のコントラストは刹那の間に真っ赤に塗り潰され、爆風は当然のようにユウを巻き込み大ダメージを負わせた。

 

 ユウ LP4700→1900

 

『《No.》の強力な効果がユウ選手を直撃ぃ!! ここで遂に両者のライフが並んだー!!』

「ユウ様ぁっ!?」

 

 流石のアンリエールも《No.》の登場は予想外だったのか、悲鳴に近い声を上げた。

 それに被せて白熱するコーパルの実況が示す通り、両者のライフはここへ来てピッタリと並んだ。

 

「俺はこれでターンエンドだ。この盤面、ひっくり返せるモンならひっくり返してみな!!」

 

 と、威勢は張ったものの、裁きの龍を引かれてしまえば最早それまで。成す術は無い。

 全ては次のドロー次第。ユウが全力を出し切れるか否かにある。

 

「俺のターン……ドロー」

 

 それでも至って普段通り。この男には感情が無いのかと疑ってしまうほどに、ユウは淡々とカードを引き抜き、それに目を落とした。

 

(……どうだ? 引いたのか?)

 

 表情の窺えないユウからは情報を読み取れない。

 ベンチへ目を移すと――あろうことか先程は褐色の少女を宥めていた『幽霊姫』が「おいたわしや」とばかりに泣きそうな表情を浮かべている。褐色の少女の目もどこか残念そうに下がっている。この反応、少なくとも裁きでは無い。だが――。

 

「――悪いが、これで道は開けた」

 

 ユウの口から放たれたのは、勝利宣言だった。

 

「……何?」

「まずは、手札から《オネスト》を召喚」

 

《オネスト》

☆4/光属性/天使族・効果/ATK 1100/DEF 1900

 

 メンタルドレインの影響下で効果を発動出来ずにいた強力なカウンターカードが、何と戦場に降り立ったのだ。

 ARとしてその凛々しい姿を立体的に出現させることは、彼の知名度に反してそうそう無いことだ。

 

「俺は☆4のオネストとウォルフでオーバーレイ。2体の光属性モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築」

 

 残された最後の希望、それを紡ぐように螺旋の軌跡を描いて光球が飛翔する。

 やがてその遺志を受け継いだ白銀の剣士が、爆燐を切り裂いて降臨した。

 

「エクシーズ召喚、★4《パラディオス》」

 

《輝光子パラディオス》

★4/光属性/戦士族・エクシーズ・効果/ATK 2000/DEF 1000

 

『ここでユウ選手、同じくエクシーズ召喚で対抗していく!!』

「パラディオスの効果を発動。相手フィールドの表側モンスター1体を選択し、そのモンスターの攻撃力を0にしてその効果を無効にする。選択するのはヴォルカザウルスだ」

 

 この効果が通れば、残りライフ1900のフリンはパラディオスの攻撃を受けて確かに敗北する。だが――。

 

「おいおい、忘れたかよ!? 墓地の《スキル・プリズナー》の効果を発動、墓地のこのカードを除外してヴォルカザウルスを選択、ヴォルカを対象としたパラディオスの効果を無効にする!!」

 

 再び現れる鎖のエフェクト。今度はヴォルカザウルスの身体に巻きつき、パラディオスの放った光の剣戟を霧散させてしまった。

 

「へっ……突破、って言うには早計だったんじゃねーか?」

「それはどうだろうな……俺は装備魔法《自律行動ユニット》を発動する」

 

 ユウ LP1900→400

 

「え……?」

 

 漏れ出たのはベルの声だった。

 かつて汎用蘇生カードである《死者蘇生》が無かったとき、ベルのデッキに代わりとして投入されていたこともあるカードだったからだ。

 

(センセー、また妙なカード入れやがったんだな?)

 

 毎度ながら一筋縄ではないユウの【ライトロード】に、クラドは思わずニヤリと口元を歪めた。カードが墓地へ送られる機会の多い【ライトロード】に余計な魔法や罠カードはあまり採用されない傾向があるが、どんなデッキが相手になるか分からないこの大会でユウなりに導き出した解答……ということなのだろう。 

 その結果が今、形を成して勝利への道を切り開いたのだ。

 

「1500のライフを支払い発動。相手の墓地のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。俺が選択するのは《デスカイザー・ドラゴン》」

 

 ユウのフィールドに不死の竜帝が降り立つ。

 それから先は、ほんの数ターン前の再現。

 

「デスカイザーの効果を発動。このカードの『特殊召喚』成功時に『相手の墓地の』アンデット族モンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚する……《ゾンビキャリア》を特殊召喚」

 

 カチリ、カチリと。勝利へ至る道しるべがパズルのように完成していく。

 

「☆6のデスカイザー・ドラゴンに、☆2チューナーのゾンビキャリアをチューニング」

 

 自らもよく口にするその口上を耳に受けながら、フリンは何ともいえない複雑な感情を抱いていた。

 裁きの龍による破壊を恐れ『温存』していた自らの遺産が、そっくりそのまま敵に寝返り牙を剥いたのだ。

 僅かに『全力』を出し切れていなかった自分を攻め立てるように、2つの緑輪を潜り抜け竜帝が別の姿へ変質していく。

 

「……文明の残照、今一度空を駆けその牙を打ち立てろ。シンクロ召喚」

 

 ライフも手札も、フィールドさえも枯渇した戦場。

 そこから奇跡の如く捻り出されたこの状況に相応しい、廃棄物で構成された巨竜が降り立った。

 

「結集せよ。☆8、《スクラップ・ドラゴン》」

 

《スクラップ・ドラゴン》

☆8/地属性/ドラゴン族・効果/ATK 2800/DEF 2000

 

『な……なんということでしょうー!! 今度はユウ選手が相手のモンスターをそのまま利用し、あっと言う間にシンクロモンスターを作り上げてしまったぁ~!!』

『流石です。持っていますね』

 

 僅かなカード達から並び立った白黒のモンスターに、会場の熱気は更に膨れ上がっていく。

 

「スクラップ・ドラゴンの効果を発動。自分と相手のカードをそれぞれ1枚ずつ選択し、破壊する。選択するのはパラディオスと茫漠の死者だ」

 

 スキル・プリズナーはヴォルカザウルスを対象としているため、茫漠の死者の破壊までは防げない。パラディオスの召喚は本命であり囮――つまり、二段構えの破壊戦略。

 鉄屑同士が潰れあうような金切り声を上げながら、群青色の巨竜は無差別に廃棄物の隕石を戦場へと振り落としていく。あれだけ絶望的にそびえていた攻撃力4000の茫漠もこれにはあっけなく破壊されてしまい、低い断末魔を上げて墓地へと沈んでいった。

 その片隅で巻き沿いを喰らった形のパラディオスも、ただ黙して己の運命を受け入れていた。

 

「バトル。スクラップ・ドラゴンでヴォルカザウルスを攻撃」

 

 続けざまに空中からの強襲を仕掛け、その巨体が《No.》を圧殺する。

 

 フリン LP1900→1600

 

「……俺はこれで、ターンエンドだ」

 

 お互いに手札はゼロ。墓地で利用可能なものといえば、せいぜいゾンビキャリアの自己再生程度。

 ごくりと息を呑んだのは、果たして誰だったのか。

 

「さて、俺のターンか……」

 

 深呼吸を1つして、フリンはデッキトップへと手を掛ける。

 闘志の炎は消えないままに、カードを抜き取って。

 

「最後まで諦めないぜ……ドロー!!」

 

 一筋の軌跡を描いたそれに目を落とすと。

 フリンの両肩からはフッと力が抜けたのだった。

 

「……悪ぃ。俺の負けだ」

 

 ドローしたカードである《メンタルドレイン》を見せてから、フリンはデッキにそっと手を置く。それはここまで頑張ってくれたカード達を労う様な、彼には似合わない優しい仕草だった。

 

 フリン LP0(SURRENDER)




何か久しぶりの(私的には)濃厚なデュエルパートでした。
ライロVSアンデの構図は、身内のリアルデュエルでも度々起こった組み合わせだったので自然と力が入ってしまったのかも……。
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