遊戯王*ASTERISKs*(アスタリスクス)   作:kohatuka

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※ 前回でのラストシーンで《アーティファクトの神智》発動を、アンリエールのエンドフェイズに発動と修正しています。テキスト確認を怠った私を許してくれ……。

※モラルタのテキスト誤認により、一部デュエル内容を修正させて頂きました。修正前との変更点は主に以下の通りです。

①:モラルタの効果を発動「しない」という白面サンの謎プレイング
②:ネフィリムの融合素材をリザードからドラゴンに変更

辻褄合わせで色々とおかしなことになってしまいましたがご容赦下さいorz


第31話 歪な融和

「アーティファクト……ですって?」

 

 その『特異な性質』から他のカテゴリと組み合わせることが容易な【シャドール】ではあるが、それでもせいぜい1つまでが限度だ。

 種族や属性間での互換性(シナジー)を狙って複数のカテゴリを組み合わせる決闘者は少なくないが、名称を指定するカードが多いデュエルモンスターズにおいてデッキの動きを阻害するリスクも当然発生する。それ単体でも機能するカードを集めたベルの【寄せ集めデッキ】とは訳が違うのだ。

 しかし。白面の女はそんな扱いの難しい混合デッキを、しかも3つも組み合わせたモノを使用している。単に強力なカードを渡されただけの素人なのか――あるいは、扱いきれる自信があるのか。

 

「何も無ければ、効果解決。デッキから《アーティファクト・モラルタ》を特殊召喚」

 

 女の背後に展開された幾つもの巨大な歯車が、重苦しい音を立てて廻り始める。

 歯車が鎖を巻き上げ、地面に突き刺さっていた無数の得物の中から1本の両刃剣を吊り上げると、茶褐色に錆付いていたソレはみるみるうちに白銀の輝きを取り戻した。

 

《アーティファクト・モラルタ》

☆5/光属性/天使族・効果/ATK 2100/DEF 1400

 

 ふわりと宙に浮かんだ両刃剣は、良く見れば半透明の幽霊のようなモノが柄を握って構えていた。その姿はうっすらと青白く輝き、時折不安定に明滅している。

 そんな『彼』が狙いを定めたのは、アンリエールの場にある伏せられたばかりのバックカードだ。

 

「……相手ターン中に特殊召喚されたモラルタの効果。相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する」

 

 光の斬撃によってアルカードは無残にも破壊される――筈だった。

 しかしいつまで経っても、その矛先がアルカードへと向くことは無かった。

 

(……効果を発動しない? まさか)

 

 意味不明な女の行動。アンリエールの疑問は即座に1つの『答え』を導き出した。

 影依人形(シャドール)が『最悪』を謳うその所以。それがもし、手札にあるとするなら……。

 

「私のターン、ドロー。墓地のルキフグスを除外し、手札から《インフェルノイド・アスタロス》を攻撃表示で特殊召喚」

 

《インフェルノイド・アスタロス》

☆4/炎属性/悪魔族・効果/ATK 1800/DEF 0

 

 鋼の甲殻に身を包んだ、不気味な蒼い炎を纏いし煉獄の尖兵。

 翼を広げ槍を構えたその姿は、御伽噺に現れる『悪魔』そのものだ。

 

「このカードは自分の場のレベル・ランクの合計が8以下ならば手札か墓地の「インフェルノイド」を除外して特殊召喚出来る……」

「説明は不要、と言った筈ですわ!!」

「……アスタロスの効果を発動。このカードの戦闘を放棄する代わりに、相手の魔法・罠1枚を選択して破壊する」

 

 怨嗟のような蒼炎を灯した矛先を向け、アスタロスはその槍を残された伏せカードへと投擲する。瞬間、アンリエールがにやりと不敵な笑みを浮かべた。

 

「罠カード《強制脱出装置》を発動!! 対象はモラルタ、手札に戻って頂きますわ!!」

 

 アンリエールの場で立ち上がったのは、タイミングを選ばないフリーチェーン罠。

 槍の一撃と交差するように、白煙を撒き散らしながら発射されたロケットのようなマシーンが白面の女の手札へとモラルタを押し戻した。

 

『これは煽里(センリ)選手、前のターンで選択肢を誤ったかー!? このままではフラグが足りずにバッドエンド一直線ですよぉー!?』

『姉さん、そんな大げさな。どこぞの伝奇ノベルゲームでもあるまいし』

 

 審判員の言葉を方耳に、白煙に黒いドレスを棚引かせ笑顔を見せるアンリエール。しかし、その内心では言い知れない焦燥が沸き上がっていた。

 

(クソッタレ……ですわ)

 

 アーティファクト・モンスターは魔法・罠ゾーンへセットすることで効果を再利用されてしまう。本来であれば使い所ではなかったものの、黙っていればただ破壊されてしまうだけだ。それなら少しでも場のモンスターを減らした方が良い。

 本来なら『これから召喚されるであろう』モンスターに対して打つ為のモノだっただけに、この展開は非常に歯痒い。

 

 会場の感嘆と声援。そんな明るい雰囲気とは裏腹に、フィールドの状況は今まさに白面の女の方へと傾こうとしていた。

 

「……次に手札から魔法カード《影依融合(シャドール・フュージョン)》を発動」

 

 会場の喧騒が、鈴の音を鳴らしたかのように静まり返る。

 

「このカードは『エクストラデッキから特殊召喚されたモンスター』が相手フィールドに存在する場合、デッキのモンスターを素材として「シャドール」融合モンスターを融合召喚することが出来る。墓地へ送る融合素材は《シャドール・ヘッジホッグ》と《シャドール・ビースト》」

 

 エクストラモンスターを利用しないデッキなど皆無に等しい中で、その効果は最早止めようも無い。莫大なアドバンテージをもたらすソレはまさに『最悪』の名を欲しいままとした。

 

「影に依り添う千の針よ。影を駆ける王者の牙よ。太古の記憶呼び覚まし、今1つとならん……」

 

 混ざり合う影と影が、新たな魂を作り出していく。

 まるで祝詞を読み上げるような白面の女の、白い指先がぴたりと重なった。

 

「融合召喚。出でよ、《エルシャドール・ミドラーシュ》」

 

 カタカタと四肢を不気味に震わせ。歪な能面を貼り付けた緑髪の魔術師が、紫の影糸に吊られた竜人形に乗って姿を現した。

 

《エルシャドール・ミドラーシュ》

☆5/闇属性/魔法使い族・融合・効果/ATK 2200/DEF 800

 

「ようやく来ましたわね……鬱陶しい小娘が」

 

 忌々しげに呟くアンリエール。彼女の反応も無理は無いだろう。

 場に存在するだけでお互いに特殊召喚を1ターンに1度までと制限し、加えてカードの効果では破壊されないときている。生半可な決闘者が相手なら、これ1枚だけで封殺されかねない。エクシーズを多用する彼女にとって、まさに天敵とも呼べる存在だ。

 

「……更に墓地へ送られたヘッジホッグ、ビーストの効果を発動。手札に《シャドール・ドラゴン》を加え、デッキから1ドロー」

 

 強力な融合モンスターを召喚したにも関わらず、白面の女の手札は6枚。

 これが《影依融合》の持つ恐ろしさだ。手札消費が激しく消耗しやすいという『融合召喚』の特徴などまるで無視である。

 

「……バトル。ミドラーシュでアルカードを攻撃」

 

 用は済んだとでも言わんばかりに、影依の魔術師がその杖を振るってアルカードへと魔法攻撃を仕掛けた。

 アンリエールに残された選択肢は2枚。本来ならどちらとも使える状況ではあったが、目の前の『小娘』がそれを邪魔する。

 

(ですが……こうなるのも)

 

 プロを名乗るなら、常に先を見通すべし。ターンエンドしてから、幽霊姫の脳裏では何百とこの光景が繰り返されていた。

 

「既に想定済み、でしてよ?」

 

 放たれた魔法攻撃はアルカードへと直撃し、黒い瘴気に紛れて粉微塵に弾け飛ぶ。

 ココまではアンリエールとて想定内だった、が――。

 

「アルカードの効――ッ!? きゃっ!?」

 

【アンリエール】LP8000→7600

 

 柄にも無くか細い悲鳴を上げてしまったことに、自分自身驚きを隠せない。

 僅か400ポイントのダメージなど、普段であれば涼しく受け流すか、舞台の上であれば多少わざとらしく演技をしたかもしれないが――今、アンリエールの肌を裂いたのは紛れも無い『痛み』。仮初の感覚などでは決して無かった。

 

(何ですの、今の……!?)

 

 疑問が首を上げる前に、アンリエールは首を振って掻き消した。

 恐らくは緊張のせいだ、何かの勘違いだと。

 見れば審判員はおろか、会場の人間だって何の異常も感知していない。

 

 有り得ない。こんな人目につく大舞台で『それ』を行える訳がない。

 

 これが、『闇のゲーム』である筈がない。

 

「あ、アルカードの効果で墓地からマミーを手札に!!」

 

 とにかく今はデュエルに、勝つことだけに集中する。

 勝利すれば。そうすれば何の問題は無いのだ。

 

「そして手札から《ゴーストリック・マリー》の効果を発動、ダメージを受けたとき手札からこのカードを捨てることで、デッキから「ゴーストリック」モンスターを裏側守備表示で特殊召喚致します!!」

 

 現れたのは、埃の積もった金縁の華美な化粧台。

 その鏡に浮かんだ銀髪の少女が思いっきり甲高い声で叫んだかと思うと、2体目のキョンシーがデッキから現れ、くるりと身を翻してアンリエールの場にセットされた。これが普段のデュエルであれば、パフォーマンスも交えて観客を大いに沸かせただろうが。

 

(心苦しいですが……仕方ありませんわ)

 

 これでこのターン、アンリエールはもう特殊召喚を行うことが出来ない。

 すなわち手札にあるランタンはもう使えない。

 

「……なら、手札から速攻魔法《神の写し身との接触(エルシャドール・フュージョン)》発動。手札の《シャドール・ドラゴン》と光属性モンスター《アーティファクト・モラルタ》を融合」

 

 それは先のターン《クリバンデット》の効果で手札に加えたカード。

 アンリエールもこの展開は想定済みだ。

 

「影覆う翼よ。太古に沈みし精霊の矛よ。天突く神の名に依りて今1つとならん……」

 

 再び女の指先が重なる。その光景は先程と全く同じだった。

 背後で蠢く魂、その質量があまりにも桁違いであることを除いては。

 

「融合召喚。出でよ、《エルシャドール・ネフィリム》」

 

 山と見間違うまでに巨大な、その体躯。

 藍色の鎧に身を包んだ鉄の処女(アイアンメイデン)は、慈悲深く目を閉ざしたまま両腕を広げていた。

 

《エルシャドール・ネフィリム》

☆8/光属性/天使族・融合・効果/ATK 2800/DEF 2500

 

「……ネフィリムの効果を発動。デッキから罠カード《影依の原核(シャドールーツ)》を墓地へ送り、その効果で《神の写し身との接触》を手札に加える。更に融合素材として墓地へ送られた《シャドール・ドラゴン》の効果で伏せカードを破壊する」

「……伏せカードは《ゴーストリック・アウト》。墓地へ送りますわ」

 

 大型融合モンスターの召喚、融合魔法カードの回収。そしてバックカードの破壊。

 これが全て戦闘(バトルフェイズ)中に行われた処理だと、理解は出来ても許容はし難い。

 

「バトル。ネフィリムで裏側守備モンスターを攻撃」

 

 続けて下された攻撃宣言を受けて、翼のように広げた無数の影糸がキョンシーへと迫る。

 ネフィリムには特殊召喚モンスターと戦闘を行う際、効果による破壊が発生するのだが、幸いその効果は裏側表示のモンスターには発生しない。結果としては勿論キョンシーは破壊されてしまうが、リバース効果は問題なく発動する。

 雨のように降り注ぐ無数の糸に貫かれながらも、キョンシーはしっかりとアンリエールへバトンを繋いだのだ。

 

「くっ……キョンシーの効果を発動、デッキからランタンを手札に!!」

「……私はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

 相変わらずの機械音声、しかしその宣言にアンリエールの口端は意図せず吊り上がる。

 何とか、このターンを凌いだ。

 

「私のターン!! ドロー!!」

 

 ドローカードは……。

 

「手札から魔法カード《闇の護封剣》を発動!! 貴女の場のモンスター全てを、裏側守備表示にして頂きます!!」

「よし、いいぞお嬢!! 反撃開始だ!!」

 

 クラドが席を立って声を上げる。

 

「裏側にしちまえば制限効果も無くなる!! ミドラーシュの守備力は800、いくら効果で破壊されなくても戦闘でなら楽に破壊出来るぜ!!」

 

 漆黒の剣が天から降り注ぎ、影依人形達を縫い付けていく。あれだけの巨躯を誇ったネフィリムさえも、今は四角いカードの中だ。

 効果では破壊されない。場に存在する限り特殊召喚に制限を掛ける。そんなモンスターに対抗する最初の一手が、このカードだった。

 

「これで思い切り悪戯が出来そうですわ……さぁ、お覚悟を!! 手札から魔法カード《生者の書-禁断の呪術-》を発動!! 貴女の墓地の《シャドール・ヘッジホッグ》を除外し、墓地からアルカードを特殊召喚!!」

 

 漆黒のマントを翻し、アルカードが再びフィールドへと舞い戻る。

 窮地に追い込まれたアンリエールの予想外な反撃にクラドや藍、観客たちも皆沸き上がる。自然と不利な方に味方してしまうほど【シャドール】の名は忌み嫌われているのだろう。

 

 だからこそ。『最悪』はその程度の戦略など易々と跳ね返した。

 

「その瞬間。リバースカード《神の写し身との接触》発動。場のミドラーシュと炎属性モンスター、アスタロスを融合」

 

 既に3度目ともなる融合召喚。

 手札は未だに尽きず、モンスター達がその身を溶かし合いながら矢継ぎ早に繰り出される。

 

「記憶辿りし影法師よ。煉獄纏いし槍兵よ。原初の焔溶かして今1つとならん……融合召喚。出でよ、《エルシャドール・エグリスタ》」

 

 真紅に染まった影糸を翼のようにはためかせて、ネフィリムと同格の紅い巨人が姿を現した。

 

《エルシャドール・エグリスタ》

☆7/炎属性/岩石族・融合・効果/ATK 2450/DEF 1950

 

「……墓地へ送られたミドラーシュの効果を発動。墓地から《影依融合》を手札に加える」

 

 シャドールの融合モンスターに共通して、自身が墓地へ送られた場合に「シャドール」魔法・罠をサルベージする効果がある。

 破壊されたとしても、こうして『融合素材』として使われたとしても。再び融合魔法を主の元へと遺していく……そんな光景を目の当たりにして尚、幽霊姫はくっくっと笑って見せた。

 

「……やはり来ましたわね。ですがこの好機、私とて逃す訳には参りませんのよ!! 手札からマミーを通常召喚!! 更に場のアルカードでオーバーレイ・ネットワークを再構築!!」

「えっ!?」

「ばっ!? 何考えてんだお嬢!? そいつは……!!」

 

 クラドと藍の驚く声など聞く耳持たず。

 連続融合へ対抗するかのように、幽霊姫はそのモンスターを呼び出した。

 

「エクシーズチェンジ!! ★4、《ゴーストリックの駄天使》!!」

 

《ゴーストリックの駄天使》

★4/闇属性/天使族・エクシーズ・効果/ATK 2000/DEF 2500

 

 はぁい、といつものように軽く手を振るいい加減な女性型モンスター。……そこへ、エグリスタの紅い影糸が迫った。

 

「……エグリスタの効果発動。相手が特殊召喚する際、その特殊召喚を無効にして手札の「シャドール」カードを墓地へ送る」

「構いませんわ……ただし」

 

 アンリエールの瞳がルージュに輝いた、その刹那。

 星を象った魔法陣が描き――陣の中心へ閉じ込められたエグリスタは、いとも簡単に破壊されてしまった。

 

「……?」

「この幽霊姫に何の策も無いとお思いで? 私は手札からこの子の効果を発動しておりましたのよ?」

 

《幽鬼うさぎ》

☆3/光属性/サイキック族・チューナー・効果/ATK 0/DEF 1800

 

 顔の前で構えた幾枚の札には青い炎が灯り。

 兎のように真っ赤なその瞳を向け、墨色の着物を着込んだ小さな体躯の少女が、白髪をゆらりと流して敢然と立ち塞がっていた。

 

「ご説明致しましょう。この子はフィールドのモンスター効果が発動した時、またはフィールドで既に表側表示で存在している魔法・罠カードの効果が発動した時、手札・フィールドのこのカードを墓地へ送って発動……フィールドのそのカードを破壊する、ですわ」

 

 しかし、アンリエールのフィールドにはもう駄天使の姿は無かった。

 幽鬼うさぎの効果はあくまで『破壊』であって『無効』ではない。恨めしげにジトリと目を向ける駄天使の亡霊と共に、幽鬼うさぎの姿もフィールドから消滅した。

 

「……エグリスタの効果コストで《影依融合》を墓地へ送り、墓地へ送られたエグリスタの効果を発動。《神の写し身との接触》を手札に加える」

「では私も墓地へ送られたアルカードの効果で、墓地のキョンシーを手札に加えますわ」

 

 アンリエールの表情に、僅かながら余裕が戻る。

 

「そしてお忘れなく。私の場には既にマミーが召喚されていますのよ? 彼が表側で存在するとき、「ゴーストリック」モンスターをもう1度だけ通常召喚出来ますわ。キョンシーを通常召喚!!」

 

 ミイラ男の肩に乗り、可愛らしいキョンシーが再び姿を現した。

 

「私は☆3のキョンシーとマミーでオーバーレイ、2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築……エクシーズ召喚!! 《ゴーストリック・アルカード》!!」

 

 2体目となるアルカードだが、その威厳は決して色褪せない。

 彼の行く手を遮るものは、もう何も無いのだから。

 

「アルカードの効果発動!! ORUを使い、セット状態のネフィリムを破壊!!」

「…………」

 

 空を覆う巨躯ですら、今は漆黒の中に包まれ砕かれる。

 

「ネフィリムの効果。墓地の《影依融合》を手札に加える」

「まだまだいきますわ!! アルカードでオーバーレイ・ネットワークを再構築、エクシーズチェンジ!! 《ゴーストリックの駄天使》!!」

 

 こちらも2体目となる、桃色髪の女性型モンスター。

 墓地に眠る同胞への手向けなのか、今度はモノクロチェックのハンカチをつまんでヒラヒラと振っている。

 

「同じモンスターばかり、とウンザリしたご様子ですわねぇ? お生憎ですが私も、貴女の一辺倒な融合戦術には飽き飽きしていましたの。苦しみはお互い分かち合うのが美徳でございましょう?」

「…………」

 

 アンリエールの煽り文句に、女はどう反応しているのか。

 無言のまま佇むその仮面の向こうは窺えない。

 

「駄天使の効果を発動!! ORUを取り除き、デッキからフィールド魔法《ゴーストリック・ハウス》を手札に加えますわ……更にそのまま発動致します!!」

 

 埃の積もった奇怪な洋館が姿を現す。幽霊姫のしもべを守る堅固な要塞の出現に、にじいろ団ベンチのみならず会場からも歓声が巻き起こる。

 

「よっしゃ来たぜ、お嬢のホームグラウンドが!!」

「更に、場の駄天使でオーバーレイ・ネットワークを再構築!!」

 

 加速していくエクシーズ・コンボ。

 いつも以上に気合の入った宣言に、駄天使も調子よく光の渦へと飛び込んでいった。

 

「法嗤う無限面相……混乱の夜を駆け真の身を明かしなさい!! エクシーズチェンジ、★4《―**―(アスタリスクス) 怪黒兎(ファントム)》!!」

 

《―**―怪黒兎》

★4/闇属性/獣族・エクシーズ・効果/ATK 2100/DEF 1000

 

「さて……このカードを出したからには私も全力ということですわ。この幽霊姫にここまで手を煩わせたこと……光栄に思いなさい!!」

 

 場の流れはアンリエールへと傾いている。

 だというのに、【猟犬】のベンチでは不穏な笑みばかりが浮かんでいた。

 

「ファントムの効果を発動、このカードのORUを1つ選択して発動、次の相手ターンのエンドフェイズ終了時まで、このカードは選択したORUと同名カードとして扱い、同じ効果を得ます!! 私が選択するのは《ゴーストリックの駄天使》……『Re:take a lie(リテイク・ア・ライ)』!!」

 

 紫色のORUをハットで捕まえた黒兎の怪人は、可愛らしい女性型モンスターへとその姿をゆらりと変えた。

 

(……残っている伏せカード。本来ならアレを破壊するのにアルカードに変身させるところですが……アーティファクト・モンスターである可能性もありますもの。眠れる獅子を呼び起こしたくはありませんわ)

 

 最も厄介な除去効果を持つモラルタは、その強力な効果が祟り現在では1枚しかデッキに投入できない『制限カード』だ。とはいえ、先に発動された《アーティファクトの神智》は破壊をトリガーに発動する万能除去罠でもある。迂闊に起爆スイッチを踏むわけにはいかない。

 

(ならばせめて、守りを固める――!!)

 

 それがアンリエールの導き出した結論だった。

 女の手札に加わった融合魔法は2枚。それだけあれば返しのターンで再び融合シャドールを展開することも可能だろう。

 幸い、最も厄介なミドラーシュとネフィリムは『制限』カードだ。《死者蘇生》もクリバンデットの効果で墓地へ送られているため、そう簡単には復活出来ない筈だ。

 

「駄天使となったファントムの効果を発動!! ORUを使い、デッキから《ゴーストリック・ブレイク》を手札に加え、ORUとして墓地へ送られたアルカードの効果で《ゴーストリック・アウト》を手札に加えますわ!!」

 

 手札には攻撃を防ぐランタンが2枚。今出来る最善は尽くした。

 後はこのまま、思い通りに事が運ぶのを祈るのみ――!!

 

「バトル、ファントムでダイレクトアタック!!」

 

 白黒の羽を鏃のように飛ばし、白面の女へと迫る。

 伏せられたカードは何の反応も示さないまま――攻撃は女に直撃し、ふわりと後方へ吹き飛ばされた。

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