遊戯王*ASTERISKs*(アスタリスクス)   作:kohatuka

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第53話 疎まれる勝者

 翌日の昼休み。本人から詳しく話を聞こうと探してみたものの、彼女の姿がどこにも見当たらなかった。残りの授業を終えた俺の足は自然と2年A組……陽依のクラスへと向かっていた。

 

「…………」

 

 幸いというか、2年生はもう1時限残っていたらしい。教室の中からは賑やかな談笑が聞こえている。ごくりと意を決し、只でさえ敷居の高い『上級生の教室』の扉を開くと……予想通りというか、しんと静まり返った教室から先輩達の視線が一気に集まってきた。だが、その中にあの天真爛漫な琥珀の瞳は無い。

 

「えっと……何か用?」

 

しばらく入り口の前で佇んでいると、見るからに性格のキツそうな女の先輩が訝しげに尋ねてきた。軽く化粧をしているのか、ふんと不自然な甘い香りが鼻をつく。

 

「……ちょっと探してる人が。このクラスにいると聞いていたもので」

 

大した用事ではないと分かって安心したのか、他の先輩達はそれぞれの談笑に戻っていく。しかし4人ほどいた、俺に話しかけてきた先輩グループは更に眉間に皺を寄せていた。

 

「……もしかしてアンタ、珠城と仲良くしてるっていう1年の子?」

 

その冷たい視線で、俺に向けられている感情があまり良くないモノだと分かる。正確に言えば俺ではなく陽依に、なのだろうが。

陽依が忌避されている理由は分からないが、俺は迷うことなくこくりと頷いた。

 

「ええ、恐らくは……」

「そ、アイツなら今いないよ。トイレじゃない?」

 

ぶっきらぼうな彼女の口ぶりから、この教室における陽依の立ち位置がおぼろげながら浮かんできた。敵意こそ向けられなかったが、ついこの間までは俺も似たような立場だったから分かる。

 正直、この先輩にはあまり良い印象は受けなかったが……それでも親切に声を掛けてくれたのだ。頭を下げ、素直に礼を言う。

 

「……分かりました。ありがとうございます」

 

 仕方がないので教室の外で待たせて貰うとしようと、後ろに振り向きかけたところで……先輩は頬杖をつきながらぽつりと付け加えた。

 

「アンタさ、珠城と絡むのは止めといた方がいいよ」

 

どうにも引っ掛かるその言葉に、ピタリと足を留まらせる。

見れば、吊り目気味な先輩の目は警告のような色味を含んで俺へ向けられていた。

 

「アイツなんかと一緒にデュエルやってたら……アンタ、友達無くすよ?」

 

 その刺々しい言葉の矛先は俺を通り越し、陽依へと投げられているようだ。

 当然ながら、標的が自分でなくて良かったなどと思える筈も無い。

 

「……どういう意味です?」

「楽しくデュエルしたいならアイツと絡むのは止めとけってコト。自分が勝って楽しむだけなんて、そんな奴と仲良くしようと思う?」

 

 彼女の言葉に周囲の先輩達も失笑して同意を示す。

 しかし俺は、そんな彼女達に同調することは出来なかった。

 

「……決闘者なら、常に勝利を目指すのは当然では?」

 

 決闘者として勝負の場に立つなら勝利を目指すべき。それが俺の掴んだデュエルの理想。そこを曲げるつもりは毛頭ない。

 だがそんな俺の言葉に眉を潜めた先輩は、呆れたように鼻を鳴らしてジロリと睨んできた。

 

「何? アンタもそのクチ? 他人に勝って見下して、気持ち良くなりたいって訳?」

 

 先輩のそんな糾弾に、俺は首を横に振って答えた。

 勝者を羨むことはあれど、敗者を貶すなど決してあってはならないことだ。

 

「……いえ、そういう意味ではありません。ゲームとして勝敗を決める以上、『お互いに』勝利を目指すのは当然だと考えているだけです」

 

 そう言った俺の言葉に、先輩は今度こそ愛想を尽かしたように深く溜め息をついた。

 

「……あのさぁ、それがそもそも迷惑だって分からない?」

「迷惑……?」

「世の中にはね、アンタ達みたいに勝ちにばかり拘らない決闘者だって大勢いるの。好きなカード使って、好きなデッキ使って楽しく戦いたいってね。それを『勝敗』の二文字で片付けられる……そんな相手の気持ち考えたことある?」

 

 勝敗を分かつことこそがデュエルの本質だと、今でもそう考える俺には彼女達の見出した『楽しさ』は分からなかったが……そんな理想もまた、1つのデュエルの在り方なのだろう。

 理想と現実の不一致。カードの価値に比例した強弱に嫌気が差し、デュエルそのものに嫌悪を抱いていた俺とは違い、先輩達はただ自分達を傷付ける『強者』を疎んだ。俺と彼女達の違いはそこしかない。だからこそ、先輩の言う『理想』を俺が否定することは出来ない。だが――。

 

 ――デュエルの中に新しい『楽しさ』を見つけて貰えれば良かったんだけど……。

 

 少なくとも、陽依は。

 俺なんかよりも余程、彼女達の理想の近くに居た筈だ。

 

珠城(アイツ)はただ単に強いだけだからね……そんな考えしてたら憧れちゃうのは分かるけどさ、少しは周りの空気読めるようになった方がいいと思うよ」

 

 自らの主張を吐き出して満足したのだろうか。そう言い捨てた先輩は、もう俺に用など無いとばかりに内輪の談笑へと戻っていった。

 

 冗談じゃない、こっちが言いたいことは山ほどある。

 まだ、俺のターンは終わっていない。

 

「……あの人は。ただ強いだけじゃありませんよ」

「は?」

 

 つい数日前に会っただけの、少し言葉を交わした程度の人なのに。

 俺を、俺のデュエルを変えてくれた人を貶された事が凄く悔しくて。

 言葉はせきを切ったように、止まらなかった。

 

「あの人はデュエルを心の底から楽しんでいる。少なくとも俺が知る誰よりも」

「そんなの、何でアンタが――」

「カードの優劣にばかり拘り、逃げていた俺を変えてくれたのがあの人だからです」

 

 先輩からの反論をぴしゃりと遮ると、小馬鹿にしたように嗤っていた顔が驚いたまま硬直した。

 

「……俺は。自分なりの答えを見つけてデュエルと真剣に向き合った今でも、デュエルは勝敗が全てだと考えています。ですが――デュエルを心の底から好いている陽依(アイツ)が、羨まれることこそあれ、貶されていい理由など何処にも無い!!」

 

 普段は押し込めていた感情の波が、コントロール出来ずに一気に吹き上げ――気付いたときには、自分勝手な主張が語気を強めて飛び出ていった後だった。

 

「…………」

 

 収まりの付かない言葉の刃を鞘に納めるように、ゆっくりと呼吸を整える。

 呆然とする先輩達は口を半開きにして固まり、静まり返った教室では再び注目の矢が俺に降り注いでいる。

 

「……文句があるなら俺がいつでも受けて立ちます。自分の理想が正しいと思うなら……貴女のデュエルで、俺を打ち負かして下さい」

 

 少しはまともになってきたとはいえ、俺の実力など所詮はたかがしれているのに。

 命知らずな挑戦状を叩き付けた俺は、どこかへ逃げるように頭を下げた。

 

「……お騒がせしました。失礼します」

 

 死んだ表情筋(ポーカーフェイス)が良い感じで功を奏したのだろうか。逆上されるようなこともなく、嘲笑されるようなこともなく、俺は静かに教室を後にした。

 

 

   **

 

 

 それからしばらくした、ある日の放課後のことだった。

 陽依とはどうにも顔を合わせるタイミングが無く、学校帰りは喜多村君達と駅前の『ブルサブ』でデュエルをしに行くのが通例となっていた……のだが、今日に限っては補習をサボった罰として俺以外のメンバーが先生に拘束されてしまったため、仕方なく1人で帰ることになった。

 

(……あれから、どうなったのだろう)

 

 ここのところ脳裏を過ぎるのは、そんな不安ばかり。

 後先考えずに怒鳴り散らしてしまったが、それが原因で陽依への風当たりが強くなっているかもしれないのだ。

 教室に乗り込み啖呵を切った1年として俺も何やら奇異の目で見られるようになってしまったため、おいそれと2年生達の様子を伺うことも出来ない。時折、喜多村君達が話す陽依の噂話を又聞きする程度だ。

 当の本人は探しても見つからず終い。まさか登校拒否を……などと、悪い方に思考が傾きつつあったときだった。

 

「……あ、あのっ!」

 

 突然、聞き覚えのある声に呼び止められて、俺は声の方へと振り返ると。

 校門の裏からひょっこり現れたのは――栗色の髪にあどけない丸顔の、少ししおらしくなった気がする陽依だった。

 

「き、今日は、お友達と一緒じゃないの……?」

 

 そのタイミングというか何と言うか。「ずっと機会を伺っていました」的な匂いがぷんぷんする陽依の表情が可笑しくて、俺は頬を僅かに緩めた。

 思い返せばここ最近……教室を移動するときも、昼休みも、喜多村君達と行動を共にする事が多かった。どうやら陽依は、そんな俺に妙な気を使っていたらしい。

 

「……ああ。今日は皆、先生に捕まってしまって」

「そ、そうなんだ……」

 

 続く言葉も無く、そのまましばし沈黙。

 仮にも年上に恥をかかせる訳にはいかないと、俺の方から一歩前に踏み出す。

 

「いつもはこのまま喜多村君達とデュエルしてるんだが……良かったら今日は、アンタが相手をしてくれないか?」

 

 何故かびくり、と僅かに仰け反りつつ。

 俺の提案に対して、陽依は尻尾の代わりの如く首を縦に振った。

 

「う、うんっ! 全然大丈夫だよっ! あたし暇だし!!」

 

 無理して笑うその姿も含め、どこかギクシャクと様子のおかしい陽依は半歩後ろをひょこひょこと付いてきた。

 女子としては決して小柄な方では無いと思うが……どうにも自信が無さそうに背中を丸めてしまっていて、その姿は以前よりも小さく見える。

 

「……この間は、ありがとう」

 

 しばらくお互いに無言のまま歩いていると、 ぽつりと陽依が呟いた。

 

「さて、何のことだ?」

 

 俺がとぼけて見せると、陽依はくすりと微笑んだ。

 

「……教室まで来て、怒ってくれたんでしょ? ちゃんと知ってるんだから。お陰であれから、あんまりイジメられなくなったよ。ありがとう」

「あんまり、ということはまだ……?」

「あはは……まぁ無視されたりはしてるけど、大丈夫。その位なら別に気にならないし。『目つきの悪い1年生が珠城の舎弟になった』って皆怖がってるよ? 凄いんだねキミ」

「舎弟、って……」

 

 別に、何か二人して素行不良をしているつもりは無いのだが。

 呆れて溜め息をつくと、陽依は声のトーンを落ち着けて話を続けた。

 

「……ありがとうと一緒に、ごめんねって謝らせて。キミは庇ってくれたけどね、あの子達の言ってる事は正しかったんだ」

「……え?」

「デュエルで勝って、いい気分になって……友達相手に偉そうにして。相手の気持ちを考えて(リスペクト)するデュエルなんて、それまでしたことなかった」

 

 押し潰されそうな、か細い声。それが僅かに潤みを帯びて途切れ途切れに、彼女の口からは懺悔のような言葉が押し出されていく。

 

「だから勉強したんだ、デュエルモンスターズのコト。キミに会う少し前くらいからかな? どうしたら『勝つこと』以外でデュエルが楽しく出来るかな、って。それが分かったら……もう一度、皆とデュエル出来るかもしれないと思ったから」

 

 陽依がデュエルに描いた理想は――勝利でも、カードに対する愛着でもない。

 ただ周囲と自分を、繋ぎ留めたかっただけだったのだ。

 だがそれには、陽依は少々不器用過ぎただけで。なまじ力が強過ぎたが為に、誰とも均衡がとれず周囲から距離を置かれてしまったのだろう。

 

「あたし、デュエルを本当に好いてなんかいなかったんだよ。皆と一緒に居たいから強くなって、皆が離れていったから自分(デュエル)を曲げたの。幻滅したでしょ?」

 

 その問いに、俺は静かに首を振って答えた。

 理由はどうであれ、俺は変わる事が出来たのだ。それには感謝しているし、責めるつもりは無い。

 

「……でも、そんなあたしと違ってキミは、『勝つこと』以外に意味は無いって自分の意思を曲げなかったよね? それが本当に羨ましくて、だからほとんどヤケクソで【ライトロード】のデッキを渡したのに……キミは自分なりの答えを見つけて、あたしにデッキを返しに来た」

 

 気が付けば、人ひとりくらいの距離が空いていて。

 潤んだ声を懸命に明るく振り絞って、陽依は締めくくった。

 

「ビックリしたし、本当に凄いなって思った。あたしはキミに庇われるような偉い人間じゃないけど――」

 

 駅へ向かう十字路の横断歩道。青色に輝いていた歩道用の信号は点滅し始め、赤に変わってしまった。俺と陽依の足が、ぴたりと立ち止まる。

 

「もしも、あたしを許してくれるなら。受け入れてくれるなら……お願いがあるんだ」

 

 流れる車のエンジン音を聞きながら、俺は真剣な声色の陽依をじっと見据えた。

 

「……あたしは、楽しいデュエルがしたい。出来るようになりたい」

 

 俯いたままの表情は伺えなかったが、その声色にはどこか熱い鉄芯が一本通っているような、そんな頑丈な響きがある。

 俺が、周りがどう言おうが。もう陽依の中で答えは決まっている筈だ。

 

「あたしだけじゃなくて皆が楽しくなれるような、そんなデュエルがしたい。本当の意味で『強く』なりたい。誰からも認められるように。お話に出てくる、伝説の決闘者達みたいに。だから――」

 

 何かを考え込むようにして、しばらく俯いたままの陽依だったが――すっと顔を上げたときにはもう、向日葵のような明るい決意(えがお)が浮かんでいた。

 

「だからお願い、あたしと一緒に……『強く』なって下さいっ!!」

 

 差し出されたのは、どこにでもいる女の子の華奢な右手。

 この頼りない手に俺は道を示され、今度はその手が俺を必要としている。

 ならば答えなど、とうに決まっていた。

 

「ああ。こちらこそ、よろしく頼む」

 

 彼女の理想を握り返して、決意を真っ直ぐに受け止めると。

 信号は、再び赤から青へと切り替わっていた。

 

 

   **

 

 

「あたしは、墓地へ送られた《ギャラクシー・サイクロン》の効果を発動、このカードをゲームから除外して《次元の裂け目》を破壊!」

「げぇっ!?」

 

 喜多村君の張っていた対【ライトロード】用の切り札……除外戦術の要は、何の役目も果たすことなく破壊されてしまった。

 彼は何かを訴えるように()()()()()の俺を横目で見つめてきたが、残念ながら俺も抗う術は持っていない。

 

「更に手札から魔法カード《光の援軍》を発動! デッキトップ3枚を墓地へ落とし、『ライトロード』1体を手札に加える。墓地に落ちたのはジェイン、《超電磁タートル》《ブレイクスルー・スキル》の3枚……そして手札に加えるのはモチロン、ルミナスっ!」

 

 当然のように通常召喚されたルミナスは、その蘇生効果でてきぱきとフェリスが復活させる。

 

「いくよ、あたしは☆3のルミナスに、☆4のフェリスをチューニング!!」

 

 光の射手、フェリスと召喚師ルミナスが同時に宙へと飛び上がる。

 調律の緑輪は、見る見るうちに新たな魂を形作っていく。デュエルディスクを用いたデュエルはやはり演出が派手だ。

 

「古の守り手、伝説の彼方より再来せん……シンクロ召喚っ!! 《ライトロード・アーク ミカエル》!!」

 

《ライトロード・アーク ミカエル》

☆7/光属性/ドラゴン族・効果/ATK 2600/DEF 2000

 

 降り立った黄金の竜騎士に、陽依の口上もどこか気合が入っていた。

 普段の卓上デュエルではそうでもないのだが、ここまで演出が凝っていると格好の一つも付けたくなるだろう。

 

「ミカエルの効果で、LPを1000払い伏せカードを除外!!」

「チェーン発動、《強制脱出装置》。手札に戻って貰おう」

 

 狙われた残りの伏せカードを、仕方なく発動させる。

 しかし、既に陽依の墓地には――。

 

「これで、墓地にはライトロードが4種類! 手札から《裁きの龍》2体を特殊召喚っ!!」

 

《裁きの龍(ジャッジメント・ドラグーン)》

☆8/光属性/ドラゴン族・効果/ATK 3000/DEF 2600

 

 翼を雄雄しく広げ、白き龍が咆哮する。

 陽依の『勝利』をそのまま形にしたような2頭の龍は、その顎をそれぞれ俺達に向けた。

 

「これで詰み(チェックメイト)だよ、『逆鱗のグロウ・ストリーム』!!」

 

 攻撃力3000の光の奔流は、瞬く間に俺達に残されてたライフを削り取り……敗北のブザーを打ち鳴らした。

 

「ま……まじか!? タッグでも勝てねーの!?」

「すまない、あまり良い動きが出来なかった……」

 

 信じられんといった顔で頭を抱える喜多村君に、俺は申し訳なく頭を下げた。

 実質2対1のバトルロイヤルデュエル。それでも陽依は勝って見せたのだ。そんな凄まじい光景を目の当たりにしながらも、周りの皆も俺にフォローを入れてくれる。

 

「いやいや、桐崎はむしろいつもより回ってただろ。前よりずっとデッキのバランスも良くなってるしな……流石にメタカード割られちゃ仕方ねぇって」

 

 詰まるところ、陽依は運という奴に恵まれている決闘者だった。

 あの先輩達はきっと、陽依のこの力に嫌気が差してしまったのだろう。ここぞというときでカードをドローし、勝利への道を切り開く……陽依自身の技量も大したものだが、その能力が彼女をより高い頂へと引き上げているのは否定できない。

 だが――それでこそ倒しがいがあるというものだ。デッキの力を120%引き出す相手をどう倒すか、それを考えるのが俺の『楽しみ』なのだから。

 

「ふっふっふ、強いデッキはメタを張られやすいからね! こっちだって対策するカードは日々研究しているのだ!」

 

 そう言って得意げに胸を張る陽依に、妙な遠慮や気後れは無かった。

 俺と一緒に喜多村君達ともデュエルするようになった彼女だが、その人懐っこい性格は喜多村君達が事前に聞き知っていた『悪評』をもさらりと流し、今ではすっかり打ち解けてしまっている。

 

「くっ……このままやられっぱなしでたまるか!! もう一度だ珠城先輩、今度はプランBに変えて……!!」

「おうよっ、何度でも掛かってきなさいっ!!」

 

 性懲りも無く、喜多村君がデッキを変えて陽依に挑んでいく。

 陽依はここぞというときの運は強いとは言ったが、そこは所詮『運』だ。決して完璧でもなければ確実でもない。幾度かデュエルをしている中で、何度か陽依も調子を崩して負けることはある。

 そういった意味ではこちらも完全に『運頼み』なのかもしれないが……その不確定要素の手綱をどれだけ握れるかというのも、決闘者を測る物差しなのだ。

 

 そう。例えどんなに強い決闘者であっても、無敗は決して有り得ない。

 それこそ、物語の中で語られる『伝説』でもなければ、決して。

 

「? おい、何だアレ……」

 

 ふと、仲間の一人が窓の外を指差した。

 それはまるで心地良く晴た青い空に、幾つもの『星々』が輝いているようにも見えた。

 

 勝つ確立が高いだけなら。負ける確立が低いだけなら。

 何度も何度も何度も、納得のいく結果が出るまで繰り返せばいい。

 

「……待てよ。何か、こっちに降って――」

 

 只1つ、たった一度の勝利があればそれで十分だと。

 その『星々』は、そう主張していたのだろう。

 

 その日。

 夢に向かって歩き出そうとしていた俺達の道は、得体の知れない挑戦者によって崩された。 




~むだ茶番・凸凹~

アンリ「ここに『もしもこのSSが週刊誌に連載したら』という本がありますわ」

ベル「わぁ、誰も得をしない妄想ですね!」

アンリ「では問題ですわ。このSSはどの辺のページに連載しているでしょう?」

ベル「はい! この辺です!」

アンリ「正解ですわ。よく分かりましたわね」

ベル「回想シーンやってる作品って、ページが黒くなってて分かりやすいんですよね!」



ベル・アンリ「はぁ……」
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